──「野菜のお菓子の作り歌・・・」は、とっても可愛いラヴソングになりましたね。
柿沢さんは、野菜のスイーツを作っている方ですが、最初にお会いした時に、柿沢さんのレシピをそのまま歌詞にしたらどうですかって、僕の方から提案させてもらったんです。柿沢さんが、スタイル・カウンシルとか、そういう音楽が好きだとおっしゃっていたので、その雰囲気で曲を作っていき、こんな感じでどうですか?と、やりとりしながら進めていきました。
──歌詞は、本当のレシピ?
歌詞なので、分量とか細かい部分までは書かれてないですけど、実際のレシピの通りなんですよ。
──レシピでありながら、いい感じに恋愛の要素が入っていますね。
柿沢さん自身は、色恋の話は得意じゃないっておっしゃっていたんですけどね。僕の方から、そういう要素も入れてみては?と提案したんですよ。すっごく楽しい歌になったと思います。
──「最後のプライド」は、いちばん女っぽい、女ならではの心情を描いていると感じましたが。
そうなんですよね。そもそも僕が気になっていた点・・・男が思っている女性と、実際の女性の違い・・・それをいちばん学ばせてもらった作品ですね。
──男女の違いというのは、具体的には、どういう部分で?
昔の恋人を駅で偶然見かけるというストーリーなんですが、♪追いかけないと決めたサヨナラで一つ大人になった・・・というフレーズが一番のサビに出てくるんですけど、最後の部分では、♪まっすぐ見つめ気付かれたなら涼しい顔で 最後のプライド・・・と書いている。結局、追いかけているし、見てほしいんじゃないかって。なのに、気付いた彼氏に涼しい顔をする・・・その相反する気持ち、その揺れっていうのが、女性なんだろうなって。
──女性にとっては、すごく良くわかる心理かと思います。自分が向かいのホームにいる事に気付いた彼に、あえて知らん顔をするというのは、意地でもあるし、気をもませたいとか気を引きたいという感情もあるだろうし。ちょっと仕返し、みたいな感じもあったり。
そうなんですかねぇ(笑)。ほんとに男女の違いだなと思いました。男の方は、もう自分には全く関心がないんだなって思っちゃいますもんね。
──歌詞としての美しさ、ストーリーの完成度というのは、素晴らしいですよね。
僕自身が斎藤さんのエッセイの大ファンなんですよ。お書きになる文章が非常に洗練されているので、どんな詞を書いてくださるのかとても期待していたのですが、完成度の高い素晴らしい歌詞で、作曲もとてもやり易かったですね。
──ユーミン通過世代の1曲という感じがしましたが。
そうそう。ユーミンさんの世界観に通じるでしょう。斎藤さんご自身も大好きだとおっしゃってましたけど。だから、曲調もユーミンさんを意識して作りました(笑)。
──「Dreamer」は、どんな印象をお持ちになりましたか?
荒川さんは、とにかく非常にポジティブな方で、それが、そのまま詞に出ているなと思いましたね。
──もっとご自身の事を書かれるのではないかと思っていたのですが。
オリンピックで金メダルをお取りになって、その後、プロのフィギュアスケーターに転身されてというこれまでのお話は、お会いした時にはたくさん聞いたんですよね。歌詞には、そういう部分は特に入っていないですけど、でも、やっぱり、バックボーンには、荒川さんの人生があると思うんですよ。誰かを応援する形をとりながら、夢はあきらめちゃいけない、夢をあきらめないでほしいっていう荒川さんのメッセージが歌詞になった作品ですよね。
──曲のイメージは、どんな風に?
やっぱり、荒川さんと言えばフィギュアスケートですよね。だから、荒川さんご自身が演技する時に使っていただけるような曲というのは意識しました。そういうイメージの曲調になったと思います。
──「My dignity」の歌詞には、とても驚かせれました。
描いているのがレイプですからね。でも、それが、きっこさんがいちばん伝えたい事であるなら、やりましょう、と。きっこさんとは、メールのやりとりだけだったんですけど、ご自身がレイプ被害者だという事も書かれていました。レイプ事件というのは、マスコミも取り上げる事が少なく、被害の実態や被害者が負った心の傷の問題とか、なかなか世の中に伝わっていない。そういう中で、あえて、今回のような詞を書かれたんだと思います。非常に辛い事を書かれていますけど、いま、彼女は希望を見出して頑張っているので、みんなもそういう想いで頑張ってほしいというメッセージでもあると思います。
──実際に歌われて、違和感や抵抗感はなかったですか?
きっこさんは非常に真面目な方で、真剣にこの問題に取り組んでいて、きっこさんが言わんとしている事は、何度も交わしたメールのやり取りの中ですごく良くわかったので、歌う事に、違和感や抵抗感のようなものは全くなかったです。ただ、生々しい描写も入っている詞だったので、これを、ポップスのアルバムの中にどのように落とし込んでいくかという点では悩みましたけどね。
──重いテーマですが、非常に聴きやすいポップなサウンドになりましたね。
ポップスとして広く聴いてもらう事で、こうした問題に、男性も女性も興味をもって知るキッカケになったら、すごくいいなと思います。
──「泡々」は、“今を生きる女性”というテーマで“うたまっぷ”で歌詞を募集。そのグランプリ作品ですが。
2,000通くらいの応募があった中で、この詞は特に印象に残ったし、目を引きましたね。僕だけでなくスタッフも全員一致で、三日月さんのこの詞を選びました。
──それほどの印象を放ったというのは、どんな所だったのでしょう?
彼女は、言葉選びに独特なものがあって・・・これはニュアンスなので、説明するのはすっごく難しいんですけど、♪ふわふわと 甘いあわ・・・というくだりとか、ああいう表現の仕方が、すっごく引っかかってきましたね。、
──他の作品とは大きく違った?
違いましたね。詞の内容は、大まかに分類すると、いわゆる失恋ものに入るし、アプローチもそれほど特別ではないんですけど、とにかく使っている言葉が新鮮で、そこに非常に面白みを感じました。
──メロディーをつける時は、どんな風に?
言葉がとにかくイイので、その語感の面白さを伝えられる、それが生きるメロディーというのをいちばんに考えました。
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