夏に出会った2人の恋を描いたキラキラR&Bナンバー「Endless Summer」が、恋愛成就ソングとしてリリース前から注目を集め、本人がデザインした“恋の芽(目)がでるピンクのデメキン”デコメも恋のお守りとして早くも大きな話題に。
“終わらない夏”をテーマに、ミニ・アルバム『ENDLESS SUMMER』をリリースした滴草由実。R&B、ロック、ポップからラテン調ナンバーまで多彩なサウンドに乗せて、様々な夏のシーンを描いた詞は全て本人によるもの。詞と歌に込められた想いとは・・・?
──今回のミニ・アルバム『ENDLESS SUMMER』は“終わらない夏”をテーマに制作されたという事ですが、こうした趣向は初めてですよね?
季節を意識してアルバムを作ったというのは今回が初めてなんですけど、私の中では、夏は“挑戦する季節”なんですよね。それで、何か新しい事にチャレンジしたくて、“夏”をテーマに作品を作ってみようと思ったんです。
──全6曲、実に様々な夏のシーンが描かれていますが、リード曲でもある「Endless Summer」は“恋愛成就ソング”として、アルバム・リリース前から女の子の大きな支持を得ていますが・・・。
夏に出会って、最初は片想いなんだけど、2人で初めて海に行ったりして、少しずつ想いが通じていって、恋が成就する。夏は、あっという間に終わってしまうけれど、2人の恋は、夏だけのものにしたくない。次の夏も、その次の夏も、これから先ずーっと一緒にいて欲しい。そういう女の子の一途な想いを綴った曲ですね。今、片想いをしている人がいるとしたら、その恋が叶いますように・・・そういう願いをこめて作った曲です。女の子に向けての恋の応援ソングですね。
──♪サイダーの泡みたいに あなたはとても刺激的・・・という表現がとても印象深かったのですが。
サウンド先行で、あとから歌詞を書いたのですが、曲を聴いた瞬間に浮かんだのが“サイダー”のイメージだったんですよね。あのシュワシュワシュワ〜という感じ。サイダーがキーワードとなり、サウンドのキラキラ感と、恋する時のトキメキ感が重なって、詞のストーリーが広がっていきました。
──由実さん自身の恋愛観とも重なります?
そうですね〜。やっぱり歌詞を書く時は、自分の実体験から書きたいなといつも思っているので、恋愛観と言うか・・・実体験と重なる部分はありますね(笑)。
──例えば、どんなフレーズですか?
え〜っすっごく恥ずかしいんですけど、サビの♪半袖の腕つかんで顔をうずめてる・・・とか、♪座席倒して 斜め後ろから そっと見つめてる・・・とか。本当にドライブした時の事を書いてますね(笑)。
──スウィートな「Endless Summer」から一転、2曲目の「LET'S GO」はラテン・ナンバー。ヴォーカルもぐっと低音になって、ガラリと雰囲気が変わりますね。
1曲目からの流れだと意外な展開でしょう?アルバムならではの遊び心と言うか、ちょっとビックリさせたいなっていうのもあったんですけど(笑)。元々、ラテン調の曲だったのを、ラテン・テイストをより強めたアレンジにして、力強い感じを出しました。
──失恋ソングというか、“別れ”がテーマですよね?
そうですね。恋人が大きな夢を抱いていて、その道を進もうとしている。彼女としては、彼の夢を応援したい気持ちもあるんだけど、自分の傍にずっといてほしいとも思っている。そんな2人を描いた詞です。
──男女の別れを描きながらも、とても前向きな情熱が感じられますが・・・。
パッションと言うか、夏にしかない情熱や想いというものを感じるサウンドで、一方で凄く儚い感じもあって。色で言うと、やっぱり赤いのイメージだったんですよね。それで、サビもストレートに積極的な感じで書いていったんですけど。私自身、シンガーになる時、色々な葛藤があったんですけど、今は、あの時諦めないで良かったと本当に思っているので、この曲には、今しかない時間を後悔しないで歩んでほしいという想いもこもっています。
──この曲では、初めて歌詞を共作されていますね?
作家さんとの共作は初めてだったんですけど、色んな発見がありました。
──発見と言うと?
私とは全く違う目線からの描写だったり、メロディーにばっちり合わせた言葉の使い回しだったり、共作した事で、詞が格段に深くなりましたね。冒頭のAメロ、Bメロから、情景がすごく浮かんできて、私が伝えたかった事がより伝わりやすくなったと思います。
──特に印象的だったフレーズなどは?
ものすごく心に残ったのは、♪誰かこの手を握ってよ my heart 一人じゃないなら・・・というフレーズの“一人じゃないなら”という表現。私だったら、“一人じゃないから大丈夫だよ”というような書き方になったかと思うんですけど、“一人じゃないなら”という表現には見入っちゃいましたね。
──今回のアルバムは、サウンドが実に多彩ですね。3曲目「I wanna run to you」では、ロック・ナンバーに展開しますね。
UKっぽいでしょう?実は、これは私が10代の頃に書いたもので、今回のアルバムの中では唯一、作曲もしている曲なんですけど。
──では、もう4〜5年前にはできていた曲?
そうですね。4〜5年前には、歌詞もアレンジも完成していました。ちょうど色々な葛藤があった時期で、“走っていきたい”という歌になったんですけど。10代の頃の想いも残しつつ、歌詞をちょっと書き変えたり、素朴な印象にしたかったので、ドラムを生ドラムに差し替えたりとかしていますが。
──改めて、歌い直してみて、いかがでしたか?
歌い出しの部分に、♪枝分かれの道を 行ったり来たり・・・というフレーズがあるんですけど、当時は本当に進むべき道で悩んでいたんですよね。でも、今の私には、もう一本の道しか見えてなくて全く迷いがない。だからこそなのか、♪I wanna run to you・・・というストレートなフレーズを、10代の頃よりも素直に歌えたんですよね。そういう意味でも、この曲はやっぱり“今”歌うべき曲だったんだって思いますね。
──“枝分かれの道”というのは、当時、どんなことで心が揺れていたのですか?
今思うと、自分の道・・・“歌”という道は、目の前に真っすぐにあったんですけど。その方向性というか・・・自分にとって一番良いものが、聴いてくれる人にとって一番良いものとは限らないし、そういう事で色々悩んだり葛藤したりしたんですよね。でも、先の事はわからないけど、頑張りたいと思っていた。前へ進みたいと思っていた・・・イメージとしては、青空があって、海があって、浜辺があって、足をとられながらも砂浜を走っていく・・・そんなシーンが浮かんでました。
──Remember the sky というフレーズも効いてますね。真夏のキレイな青空を見上げると、ウジウジ悩んでるのがスッ飛ぶというか、スカっとしますよね。家に引きこもってる人がいたら“窓を開けて、いま空を見てみて!”と言いたくなったり・・・。
そう、ドアを開けて欲しい!私も、よく空を見上げるんですよ。悩んだ時とか、ちょっと立ち止まってしまう時とか。“Remember the sky”というのは、空を見上げて何か決断した時の気持ちを忘れないでいたい、という想いでもありますね。
──4曲目の「もう一度キスをして」は、ぐっと色っぽいメロウなスロー・ナンバーになりましたね。恋の終わりを予感している女性が主人公ですが・・・。
色んな夏を描く中で、夏の終わりと愛の終わりを重ねた曲を作ってみたかったんですよね。夏の終わりのちょっぴり肌寒くなってきた感じを表現したくて。思っていたそのイメージと、この曲の雰囲気がピッタリだったので、ちょっと大人っぽい女の詞を書いてみたんですけど。
──ハッキリ“終わりにしよう”と言われたわけではなく、表面上は以前と変わらないんだけど、彼の気持ちが冷めてきている事は感じている。彼は、これからどうしたいと思っているんだろう。わからないから不安になる・・・。
そうなんですよね。すごく微妙な距離感だと思うんです。この曲を聴いた瞬間から、そういうイメージが浮かんできたんです。
──もどかしさが切ないですね。
そういう時こそ“キスして”とか言えたらいいんだけど、うまく言えない。そのもどかしい感じを書きたかったんですよね。やっぱり、ずっと一緒に居ても、本当の自分の気持ちというのは、ちゃんと言葉に出さないと伝わらないんだよっていう思いもあったし。
──色々な事を言いたいのに、言えずにいる女性の心理が、コーラス・ワークで見事に表現されていますよね。
コーラス・ワークに特にこだわった曲ですね。後半フェイクが出てくるんですけど、ただカッコいいからとかじゃなくて、主人公の想い、ほんとはこう言いたいのに、もっと伝えたいのにという部分が、より伝わるようになったと思います。 |