儚く美しい歌声と誰にも真似できない不思議でリアルな異世界ファンタジーが各方面から注目され、デビューから続々とアニメ、映画、ドラマの主題歌等に抜擢されているシンガーソングライター、edda(エッダ)。そんな彼女がニューシングル「フラワーステップ」をリリースする。個性派俳優・滝藤賢一と人気若手女優・広瀬アリスのダブル主演で話題の読売テレビ・日本テレビ系新ドラマ『探偵が早すぎる」の書き下ろし主題歌。滝藤が「どんなに疲れていても、1日の始まりに聞けば、俄然パワーがみなぎってくる生命力に溢れている曲」、広瀬も「綺麗な歌詞だけどその中に人間味のある曲」と太鼓判を押す疾走感溢れるナンバーだ。ということで、前作「ねごとの森のキマイラ」に続き、eddaに直撃インタビューを敢行。「フラワーステップ」の書き下ろしの経緯から、歌詞、アレンジ、歌唱その1つ1つが持つ意味をタップリと語って貰った。
──ニューシングル「フラワーステップ」は、読売テレビ・日本テレビ系新ドラマ『探偵が早すぎる』の主題歌です。書き下ろしだそうですが、制作はどのようにスタートしたのでしょうか?
ドラマの制作サイドからは、私が昨年発表した「半魚人」のように疾走感と軽快さのある楽曲、聴いた時に陰な感じはしない、どちらかと言えば陽であって欲しいというお話を頂いて。後は、広瀬アリスさんが演じているヒロイン、一華ちゃんの心情とリンクするような内容という事でした。それで制作を始めたんですけど、ドラマの内容をそのままなぞっている訳では無くて。今回の「フラワーステップ」は、体に花が生えてしまう病にかかった主人公が、体全体が花になってしまう前に君に会いに行こうとする物語です。病で全身が花になってしまう儚さや弱さ、それでも前に進んで行く主人公とヒロインの一華ちゃんのキャラクターをリンクさせて聴いて貰えたらなと思って作りました。
──ヒロインの一華は5兆円もの莫大な遺産を相続した事から命を狙われる役柄です。そのキャラクターからどのようにイメージされて、今のお話にあった体に花が生えてしまう病の主人公の物語に繋げて行ったのでしょうか?
そうですね。1話の台本を読んで、突然命を狙われる立場になってしまうというところから何かストーリーを作れないかなと思って。一華ちゃんは突然命を狙われる立場に置かれながらも、そんな状況とは無関係に自分の道を切り開いて行くように思ったんです。Bメロに「もぎ取られて」とありますが、体に咲いた花は価値のあるもので、もぎとられたりするんですね。つまり、一華ちゃんのように突然今までとは全く違う立場に置かれてしまう。そして、病のせいで命を落としかねない立場にありながらも、君に会いに行きたいという自らの想いを貫く物語を描きました。
──その物語から「フラワーステップ」という言葉は、どう発想されたのですか?
簡単に言ってしまうと、この物語の中の病名ですね。そう呼ぶ事によって、主人公の病気に対する感覚を軽くしたいなと思って。ただ、ファンタジックでありながら毒気のような要素も入れたいなと思っていたので、ちょっと小ばかにしたような、ダークな意味合いも孕んだ響きを考えました。
──歌詞ではサビの「花の束になり腐っても」という表現が印象的です。何故「なり腐っても」と軽蔑、ののしりの気持ちを込めたのでしょうか?
ドラマサイドからは、か弱い人を描いて欲しいという要望はありました。でも、私はそういう人があまり好きではなくて(笑)。か弱くなりそうな境遇でありながらも、この主人公にはどうしても「なり腐っても」という言葉を使うぐらいタフで居て欲しくて。全身が花の束になってしまうのは素敵な事のように聴こえるかなとも思ったんですけど、そうでは無くて、体に花が生える事に対しての拒絶を表したかったし、本当は花にはなりたくないという気持ちも置きたかったんです。要は自分が望んでいない、誰もが望まないような姿になってしまったとしても笑ってくれるかなというところに持って行きたかったので。「なり腐っても」は第1稿から歌詞にしていました。ドラマサイドに提出した時に、この言葉は何か言われるかなと思ったんですけど、そこはスルッと通して下さったので良かったと思いました。私もすごく気に入っているフレーズですね。
──「軽率な願い ちらり」という歌詞からも、この主人公はあまり希望を持たないようにしている印象を受けました。そういう主人公が「なり腐る」という言葉を使うのは何故だろう?そこから花とは何だろうと思ったもので。
この病は、感情が昂ったりすると体にポッと花が咲いてしまうんです。歌い出しも、君に対して何となく会いたいな、今どうしているんだろうと思ったから「小さく花が咲いていたんだ/左耳あたりポツリ」となります。
──一方サウンド面では、疾走感のある軽快な楽曲という要望があったそうですが、アレンジはYUKIさん、いきものがかりさん、ClariSさん、乃木坂46さんなどを手掛けている湯浅 篤さんが担当されています。
湯浅さんはスタッフさんからお話を頂きました。私が大好きなClariSさんのアレンジをされているという驚きがあったのと、湯浅さんのアレンジが「フラワーステップ」に合うと思ったのでお願いしました。
──前作「ねごとの森のキマイラ」の取材時に、歌詞だけで表現している訳では無く、音やアレンジで表現しようとか、逆に言葉で表現して音を少なくするとかを考えながら制作しているというお話がありました。アレンジに関して、湯浅さんとはどのようなお話をされたのでしょうか?
楽器も私が入れて欲しい音について、いろいろお話しをさせて頂きました。特にDメロでテンポが変わるところがあります。そこに至るまでは、主人公が君に会いに走っているのを表現したくて、速いテンポになっています。そして、Dメロで君を見つけてトボトボ歩き始める様子を表したくて、そこだけを4分の3にテンポを変えようと思ったんです。そこまではポップスのノリでいいんですけど、最後の場面だけは綺麗であって欲しかったのと、綺麗な中にも不思議な気持ちになったり、死を目の当たりにする瞬間を音で表現して欲しいなと思って。それで、最初はピアノソロを入れて頂いていたんですけど、そこを面白い音にしたくてピアニカに変えて貰って。でも、もう少しコクが欲しくて、結局アコーディオンに変えて下さいとお願いしました。それも本番のレコーディング2日前ぐらいに、試行錯誤しながら変えて頂いたんです。私がいろいろとお願いしてしまったんですけど、本当に素敵なアレンジに仕上げて頂きました。
──歌詞のストーリーと見事にリンクしたアレンジですね。一方、歌のレコーディングはいかがでしたか?
ストーリーに入り込んで歌っている感じがしました。映画を観ている時や本を読んでいる最中にそういう気持ちになるんですけど、ストーリーの中の人物になっているような感覚で、レコーディングがすごく楽しかったです。私の作詞作曲ですけど、すごく心地いいテンポ感や音域で作れたなと思っています。
それと、私は地声が低いんですけど、歌う時は中音から高音が楽しく歌えるんです。なので、私一人で曲を作ると中音から始まり高音に伸びて行くパターンになりがちなので、その特徴が出ている曲かもしれないです。
──つまり、前作の「ダルトン」のような曲は珍しいのですね。
「ダルトン」はキーを上げて頂いてレコーディングしています。Coccoさんに提供頂いた曲なので、やっぱり自分で作った曲を歌うのとは違って難しかったですね。
──ここまでのお話を聞いて、「フラワーステップ」は歌詞、アレンジ、歌唱の全てで表現した映画のような1曲ですね。
歌詞のストーリーはもちろん、そのストーリーを音やテンポでも表現している感じはありますね。
──初回限定盤のDVDには「フラワーステップ」と前作「ねごとの森のキマイラ」の収録曲「夢のレイニー」の2曲のミュージックビデオが収録されています。「フラワーステップ」のミュージックビデオは、どんな作品に仕上がりましたか?
とても可愛い映像になっています。「マジョリカ マジョルカ」という化粧品のCMがダークファンタジーの世界観を持った映像作品で、私はすごく好きなんですね。その「マジョリカ マジョルカ」のCMを制作された田中宏大さんに制作をお願いしています。最新の技術でプロジェクションマッピングを水面に投影して、物語をなぞって行くような映像を作って頂きました。
私が「フラワーステップ」をイメージして絵を描いていたんですね。その絵を見せながら、こういうイメージで物語をなぞって頂ければというお話はしました。主人公が走っている姿や体に花が咲いて行く様子、そういうところを表現して欲しいなって。プロジェクションマッピングを水面に投影するアイデアは田中さんの方から頂きました。お話を聞いた時はそんな事が出来るんだ、すごいなーって思いました。
──水面の花はCGでは無いんですね。
だから独特の画質というか。ちょっとこう彩度が薄い感じも出ていて、物語の中の子という感じがするから可愛いなと思っています。
──カップリングの「ミラージュ」はポップなデジタルサウンドに驚きました。
3、4年前に書いた曲です。テクノポップのようなサウンドに乗せて、毒の要素を入れた物語を作りたいと思って書いた曲です。可愛い恋愛ソングのように聴こえますけど、実は鏡に映った自分を自分と認識出来ずに好きになってしまう子のお話です。ショートホラーのような感じにしたいと思って作りました。ラストのAメロでガラッと曲調が変わって、好きな相手が鏡に映った自分だったと気付く。その種明かしの場面を最後に差し込みたかったからこそ、ゴリゴリに可愛いラブソングを描いて、そのギャップを楽しみたいと思って作った楽曲です。
──という事は、最後の2行の歌詞は最初から構想にあったんですか?
ありました。最後の2行でどんでん返しをしたいがための物語という感じです。
──eddaさんはツイッターで、前作収録の「案内人」について、曲の尺をもう1秒長く2:59にして地獄の語呂合わせにしておけば良かったと書かれていました。だから「ミラージュ」もそんな風に後付けで、爽やかなラブソングが完成してから最後の2行を足したのかと。
いいえ、結末からストーリーを組み立てて行きました。最初にドンデン返しがしたいと思って、それならきっと可愛い曲がいいなと制作が始まりましたね。
──「ミラージュ」というタイトルはどのように付けられたんですか?
ダジャレですね(笑)。鏡に映ったのは幻想だったという意味合いで、鏡のミラーに掛けて「ミラージュ」が面白いなと思って付けました。
──曲の中に人の話し声を散りばめていますが、どのような意図が?
完全にラストを匂わせたくて、主人公の周りの人の話し声を入れています。多分音源では聴き取れないと思いますけど、主人公に対して「あの人見て」とか「いつもああしてるんだよ。気持ち悪いね」というような事を話しています。主人公にとっては、ただ好きな人を目で追っているだけなんですけど、いつも鏡を見てヘラヘラしていたり、ガラスに映る自分を見てハッとしたりする人は、周りからは不気味に見えると思います。そういう状況を匂わせられたらなって。
──また、サビの後の歌声はアドリブですか?
アドリブでは無くて、元々そういう風に歌おうと思っていました。恋をしている気分、恋をしてテンションが上がっている様子を表現したかったんです。昔から言葉にせずに表現する事が好きですね。例えば「リピート」でもため息や咳払いを入れてみたりとか。楽器と肉声は耳に当たる時の感覚が全然違って、肉声がポンと入ってくると「うわっ!」となる時があって。楽曲を聴いている時に、例えば遠くの咳払いや鼻をすする音が偶然入っていたら驚くように、そのドキッとする感覚を効果的に使えたらなと思って。それで「リピート」では、ため息をつく事でその状況を思い浮かべて貰ったり、また、ハッキリ伝えたい言葉の前に咳払いを入れたりしています。咳払いをしてから「あのですね」と切り出すと、何を話すのだろうって注目すると思います。
「フラワーステップ」は落胆している様子を表現する声を入れて、その後の言葉が際立つようにしています。「ミラージュ」のサビ終わりの歌声も、テンションの上がっている様子が何となく伝わればと思って。言葉では無くて肉声で表現したいというのはありますね。
──3曲目は、映画『アヤメくんののんびり肉食日誌』挿入歌となった「魔法」のスタジオライブバージョンです。デビューシングル「チクタク」の収録曲ですが、スタジオライブレコーディングされたキッカケは?
ライブでもよく歌っている曲です。ライブではピアノの伴奏で歌う事が多いんですけど、「いいね!」という感想を多く頂いていました。それで、スタッフさんと「魔法」をライブのアレンジでレコーディングするのはどうかという話をして。eddaのライブに来た事が無い方にも、ライブの雰囲気が伝わったらと思ってレコーディングしました。
──ピアノとチェロだけの少ない楽器編成で歌っているのに壮大な印象があって、グイグイ惹き込まれました。レコーディングは楽器も同時に一発録りですか?
まず、ピアノと私のフリーセッションでレコーディングをさせて頂いて、チェロは後から乗せて頂きました。それで、このスタジオレコーディングバージョンは、フリーテンポのところとかも一切ピッチ修正をしていないんです。修正してしまうとスケールダウンというか、こじんまりしてしまうような気がしましたし、ピッチのブレがあってもライブ的でいいのではと思いました。それで、スケールが大きく聴こえるのかもしれないですね。
──ところで、eddaさんは映画『アヤメくんののんびり肉食日誌』の主題歌「ディストランス」も歌っています。ちなみに、映画『アヤメくんののんびり肉食日誌』は8月25日にBlu-rayがリリースとなり、9月15日にリリースイベントが開催されるようです。そのイベントで主題歌、挿入歌の生ライブをする予定は?
今のところ予定は無いですね(笑)。
──残念です(笑)。さて、今回の「フラワーステップ」で書き下ろしのドラマ主題歌を担当し、1作毎に進化しているような印象を受けるeddaさんですが、昨年7月にリリースした初の全国流通盤ミニアルバム「さんかく扉のむこうがわ」から1年、つまり全国デビュー1周年となります。この1年間の活動を振り返っていかがですか?
本当にあっという間でしたね。ただ、心情的にはあまり変わっていなくて、制作に対する向かい方も変わらずにやれています。大きかったのは今年の5月にリリースした「ねごとの森のキマイラ」ですね。様々なミュージシャンやアレンジャーの方と制作するのを初めて経験して、そういう方法もありだなと思えたので、スタッフさんに相談する事もあります。でもやっぱり、基本スタンスはあまり変わっていないかもしれないです。本当に変わらず、面白い作品を作り続けて行きたいなと思っています。
取材・文:岡村直明
< LIVE / EVENT >
New Single「フラワーステップ」発売記念インストアイベント9月4日(火) 21:00〜 【東京】タワーレコード渋谷店
9月7日(金) 19:00〜 【大阪】タワーレコード梅田NU茶屋町店 6F イベントスペース
9月8日(土) 16:00〜 【福岡】タワーレコード福岡パルコ店
※最新のライブ情報はオフィシャルサイトをチェック!
http://eddavilla.jp/