──『10周年記念シングル・コレクション〜Dear Jupiter〜』は2枚組。Disc-1は、デビューからの5年間となりますが、“初めて○○しました”という曲が続きますね。初めてのCMソング(「君といる時間の中で」)、初めての作詞・作曲(「虹の予感」)、初めてのミュージカル・テーマ曲(「BLESSING 祝福」)、初めての映画主題歌(「Eternally」)等々…。
ほんとですね。Disc-1は、初めてづくしですね。歌手・平原綾香としては、いま10才という事なので、前半の5年間…5才までは、色んな初体験というのがあって、すごく刺激的な日々だったように思います。
──大学生でもあった時期ですね?
Disc-1は、まだ学校に通っていた頃の楽曲が中心ですが、学校と音楽活動の両立で、すごく忙しかったんですけど、でも今思うと、どれがほんとの忙しさなのか、何が普通なのか、あんまりわかっていなかった気がします。卒業してからは、こんなに時間があるんだって、すごくうれしくなったんですけど、逆にストレスも感じるようにもなって。それまでは、学校に行って、友達と会いお喋りしていたから、ストレスを発散できていたんだなと気づいたり。
──大学卒業は、転機になった?
考えてみたら、保育園から始まって、小学校から大学まで、ずっと“どこかに通う”という生活をしてきたわけで、毎日まず、学校に通って、帰ってきてから習い事をして…という十数年間続いていた生活の流れが一気になくなって、あぁ大人になったんだなって。大学卒業というのは、やはり大人になる第一歩だったんだと思います。そういう経験も含めて、この10年間、自分探しの旅みたいなものを続けてきたような気もします。
──「ノクターン」からDisc-2となりますが、「ノクターン」以降は、歌い方も、歌われている内容も、随分変化したように感じるのですが?
歌が変わったというのは、本当にその通りだと思います。自分の心自体もいろんな変化をした時期でもありますし。
──「ノクターン」は、ドラマ“風のガーデン”の主題歌、「カンパニュラの恋」は劇中歌。平原さんご自身も、歌手・氷室茜役でドラマにも出演されましたが?
脚本をご担当された倉本聡さんに起用していただいて、女優というものに初めて挑戦しました。お話をいただいた時は、演じる事と歌う事って、ちょっと似てるんじゃないかと思っていたんですけど、実際にチャレンジしたら全く違うものでした。
──でも、歌の中でも、様々な主人公を表現していますよね?
それが全く違ったんですよね。歌の時は、平原綾香を軸として、歌の中で色んな役を演じる事ができていたように思っていたんですけど、“風のガーデン”で氷室茜という役を演じた時には、軸が氷室茜になってしまったんですよね。共演の俳優さん達は、撮影が終わったら、パっとご本人に戻るんですけど、私はずっと氷室茜のまま。氷室茜を演じるんじゃなくて、私自身が氷室茜になってしまって、本当の自分がわからなくなっちゃって。不安になったり、悩んだりもしました。
──歌への影響も大きかった?
すごく大きかったですね。私が演じた氷室茜という女性は、歌手なんですけど、愛する人が死んでしまう。でも、その訃報を知りながら、ステージに立つんですね。そのシーンでは、ステージで「カンパニュラの恋」を歌うんですけど、茜の悲しみが手にとるように伝わってきて、感情が自然と溢れ出してきたんです。
──そういう経験は初めての事?
そうだったかもしれないですね。感情を表に出して歌う、より情熱的に歌う、そういう歌い方に初めて出会ったのが「ノクターン/カンパニュラの恋」でした。
──「ノクターン/カンパニュラの恋」も大きな転機の一つに?
「ノクターン」は、誰もが知るショパンの有名なメロディーですし、ちょっとすごくシャンソンのような感じもあって、そういう曲を歌うとなった時、今の自分では太刀打ちできないなという気持ちもあったんです。それで、気持ちを更に前に出す歌い方というのを、本当に何回も何回も練習したんですけど。氷室茜として歌った時には、茜の感情と共に一緒に歌を歌うような感覚になって、ドラマと役と歌と全てがその時に合致して、また新たな表現を発見するキッカケになりました。
──歌詞という点でも、「ノクターン」以降は大きな変化を感じますが?
2009年から続いた『my Classics!』シリーズが、大きく影響していると思います。この10年間でいちばん歌詞を書いたのが『my Classics!』の時ですね。
──非常に表現の幅が広がったように感じますが?
自分の感情を書く、自分の気持ちを書くという点は変わらないんですけど、例えば、「Greensleeves」だったら、元々は叶わぬ恋を歌った曲だと言われていますが、その主人公の想いを書くというよりは、その主人公に共感しながら自分の想いを書いています。
──共感点を探して、自分の想いと重ねていく?
『my Classics!』は、クラシックの名曲に、私自身が書いた歌詞を乗せて歌うというシリーズだったのですが、歌詞を書く時は、まず、作品に対する作曲家の想いとか、曲の時代背景とか、原曲自体が持っている物語とか、そういったものを紐解いて、そこからスタートしました。一見、私自身の人生とは全くかけ離れたものに思える曲でも、必ず何か共感できる部分って見つかるんですよね。その共感点を引っ張り出して歌詞にしていきます。
──必ず答えがあるんじゃないか、みたいな?
そうなんです。メロディーの中には必ず答えがあるんですよね。必ず生きるヒントが隠されているんです。だから、一人で作っているという感覚は全くなくて、それぞれの作曲家が、テーマを提示してくれて、いつも隣で見守ってくれている。導いてくれる。そんな安心感がありました。いつも一人ではなくて、二人で作っている、そういう感覚でしたね。
──『my Classics!』というのも、作詞の点では大きいですか?
大きいですね。歌詞を書きながら、自分の人生以上の経験をしていると言うか。25〜26才の頃でしたけど、実際の生活では経験していないもの、経験できないものを曲として受け取って、そこに共感点を見出して、色んな人生を生きながら、自分の感情を書いていった。この経験は、歌詞を書く上ですごく大きかったと思います。
──これから先、更に10年後は、どんな平原さんになっているでしょう?
うーん、結婚して・・・ないかも(笑)。今は、恋と音楽どっちとる?って聞かれたら、迷いなく音楽なので…それがよくないのかもしれないですけど(笑)。そういう事もひっくるめて、色んな心を歌っていきたいなと思います。更に10年の間には、色んな実り、色んな気付があると思ので、10年後はもっともっといい歌い手に、いい音楽家になっていけるようにというのが今の夢です。
──テーマとしたいことは?
世界中を旅して歌うというのが夢なんですけど、そうなると、日本が故郷という事になりますよね。だから、もっともっと故郷を大切にしなきゃいけないと思うし、まずは、この日本で、日本の人たちにしっかりと歌を届けられるようになること。それが私の第一歩だと思っています。
──日本に対する想いというのは、変わっていますか?
デビュー当時から、自分の故郷に対する想いは変わっていないですけど、もっともっと世界に足を踏み入れたら、日本の良い所というのがたくさん見えてくると思うんですよね。世界で活躍されている方に聞くと、みなさん、“日本のここがいいんだよ”と教えてくださるので、私もそんな風に語れるようになりたいと思うし、日本語の美しさというのも日々感じていて、日本語をちゃんと歌える歌手になりたいと言うのも目標の1つです。日本語を知る事で、もっと日本の良さがわかってくるという事もあると思うので、大切に日本語を歌っていきたいです。
──リリース後のご予定は?
6月8日から、全国ツアー“AYAKA HIRAHARA 10th Anniversary CONCERT TOUR 2013 〜Dear Jupiter〜”がスタートします。この10周年ツアーでは、皆さんに、“10年間支えてくださってありがとうございます”という気持ちを伝えたいです。どんな事があっても、ステージに立って、お客様の拍手を聞くと、頑張ろうっていう気持ちになれるんですね。お客さんがいてくれたから、今の私がいる。その感謝の気持ちを込めてアルバムもお届けしたいですし、ライヴでは、皆さんに喜んでいただける事をたくさん準備しています。楽しみにしていてくださいね。
AYAKA HIRAHARA 10th Anniversary CONCERT TOUR 2013
〜Dear Jupiter〜
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