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──続いて、1曲ずつ伺っていきます。「君が僕にくれたもの」は、新里さんの作詞・作曲ですが?
新里:これは、前作『PARADE』を作っている時に出来た曲なんです。君がいたから自分に自信が持てて、前に進めた。君が今の自分を全て作ってくれた。支えてもらった。それに対する、ありがとうという気持ちを込めた歌です。
──かつての恋愛を振り返っている歌のようにも聴こえますが?
新里:恋愛に限らず、自分の周りにいる人みんなですよね。周りに人がいるから、自分を知る事ができるんだし、自分という人間が出来ていくんだと思うんです。
──曲調も斬新ですね。アルバムの流れとしては、「いちばん近くに」が終わって、いきなり、このイントロが鳴ると、えっ!?という感じになりますよね?
新里:なんて言ったらいいのかな、ジャジーと言ったらいいのか…HYの中ではあまり使わないコードを探しながら作っていったんですよね。あ、これカッコイイなっていうコードを探して、そこから膨らませていって。今までと違う曲にしたいという想いで作っていきました。HYの曲の中では、すごくクセがある曲調だと思うんですよ。細かいアレンジをいっぱい入れてるから、そこも是非楽しみに聴いてほしいですね。
──「バイバイDay」も新里さんの作品ですが、「君が僕にくれたもの」に通じるものがあるような?
新里:別れて初めて気づく事ってたくさんありますよね。あの時、自分が言ったひとことが、すごく相手を傷つけていたんじゃないかとか、あの時、どうしてもっと優しくできなかったんだろうとか。でも、バイバイした後に、そういう事を考えるというのは、その人の事を本当に好きだから、大切に思っているから、振り返る気持ちになるんだと思うんです。こういう気持ちを持つ事の大切さと、そして、また次に同じ場面があったとしたら、自分が一度失敗した過ちに気づいて行動したいし、行動していこうという想いも込めました。
──メロディーは元気があるのに、だからこそ歌詞が響くのか、すっごく切ない気持ちになりますね?
新里:すごくアップテンポな曲調なのに、泉の張り上げて歌うヴォーカルが乗ると、すごく雰囲気が出て、この曲も、これまでのHYには、ありそうでなかった曲だと思います。
──「至近距離恋愛」は、名嘉さんと仲宗根さんの共作ですが?
名嘉:はじめは、僕ひとりで書いてたんですけど、2〜3週間、歌詞で悩んじゃって。それで、“一緒に書こう”って泉を誘ったら、3時間くらいで出来ちゃって(笑)。近すぎる二人の距離感、近すぎて見えないものを表現したかったんです。よくある日常的な事ですよね。今日はすっごくうれしい事があって電話したのに、何かのキッカケで喧嘩になっちゃって、結局言えなかったとか。そういう日常的な事を書きました。サウンド面では、敢えてちょっと古めの感じを狙った曲です。
──タイトルがとっても印象的ですね?
名嘉:近いから見えるものもあるし、近すぎて見えなくなってしまうものもある。それを表現したくて考えたタイトルです。
──歌詞に出てくるエピソードがどれも身近で、自分自身と重ねて聴く人が多いでしょうね?
名嘉:周りの友達とかに聴いてもらったら、みんな“いいね”って言ってくれるんですよね。やっぱり、みんな、こういう恋愛してるんだなって。「いちばん近くに」とか、すごく苦労してみんなで頑張って作った曲はもちろんなんだけど、こういうサブ曲も気に入って貰えると思うと、ますます早くアルバムを届けたいという気持ちになりました。
──「RAPしてチン!」も名嘉さんの作品ですが?
名嘉:これはもう、自由に遊ばせてもらいました。制作中、最後の方に出来た曲で、こういう一癖あるのもいいかなと思って。音に関しては、とにかく楽しんで貰いたい、笑わせたいというのが第一で。音楽って、こんなに遊べて楽しいものなんだよっていうのを、今からバンドする若い子たちにも伝えたかった。例えば、こういうのコピーしてみたらどう?って。
──発想としては、どんなところから?
名嘉:“なんで、こんな音使うの?”っていうのがテーマでした。それがメンバーにも伝わったのか、普段だったら、歪み系ではそのギター使わないよねっていうのを敢えて持って来たり。今までのHYとは違う、“変化”というのをメンバーと共有できた。自分達が意識すれば、自分達から変わっていけるんだという事を実感した第1作目とも言えると思います。
──そして、また、「流れ星」で、ガラリと雰囲気が変わりますが?
宮里:自分の中に“流れ星”というテーマがあって書いた曲なんですけど、恋愛を通して自分自身が感じた事と沖縄の風景を重ねて…やっぱり、伝えることが一番大切なんだけど、でも伝え切れない。ちょっと弱っちい男の歌ですね(笑)。
──曲調も斬新ですね。ボサノヴァ調と言うか?
宮里:泉と一緒に作り始めて、泉がすごく面白いアレンジを出してくるので、それで、ボサノヴァ調と言うか、そういう曲調に持っていったんですけど。
──♪まだ温かなアスファルト〜という歌詞がイイですね。それだけで、夏の夜なんだってわかりますね?
名嘉:そうなんですよ。すっごくイイとこ突いてくるんですよね。しかも、歌詞は、自分が想っている人には好きな人がいるという内容で。自分が好きな人の“好きな人”は誰なんだろうって。こういう事って、誰もが経験してますよね。だから、もし、今、好きな人と一緒にいられる人は、お互いに同じ気持でいられるっていうのは奇跡なんだぜっていうのを感じてほしいですね。
──ところで、うたまっぷには、HYの楽曲の全歌詞が登録されているのですが、「366日」「NAO」「Song for...」「AM11:00」は非常に根強い人気で、ウィークリーランキングTOP100に何年にも渡ってチャートインしているんです。
名嘉:それはうれしい!!すごいですね。
──みなさんご自身では、どんなところが支持されているのだと思いますか?
名嘉:HYの曲に限らず、アクセスが多い歌詞というのは、やっぱりリアルを書いているんでしょうね。1億2千万人の日本人が、日々過ごしている中で感じたものを素直に落とせてる歌詞なんだろうと思います。希望とリアルの間を書いているんだろうなって。
──希望とリアルの間、と言うと?
名嘉:生暖かくて、ちょっと気持ちいいぐらいの感じ。イメージはお風呂です。そういう曲を書けたらいいなと思いますね。
──仲宗根さんの楽曲が多いですが?
宮里:やっぱり、泉はスゴイなって尊敬します。とにかく、うれしいですね。
新里:みんな、恋したいけど、それが叶わないもどかしさっていうのがあって、そこが共感に繋がっているんじゃないかな。あ〜自分と同じなんだっていう感覚が助けになるって言うか。会いたいけど、会えない。会えないけど、会いたい…その気持ちの人がすごく多いんでしょうね。
許田:でも、新たな挑戦心も湧いてきますね。昔の曲だけじゃなくて、これから作る曲もまた、10年20年愛される曲になっていってほしいなって。だから、すごく励みにもなります。
──「いちばん近くに」も、リリース前からずっと、TOP10に入っているんですよ。
名嘉:それって、すごいですよね。音楽って、普通はサウンドから耳に入って、歌詞は後からじゃないですか。歌詞を先に読んで、あとから音楽を聴くっていうのは、また違った捉え方になるんじゃないかなって。
──ドラマでは、フルコーラス流れないから、続きが気になるんでしょうね。歌の主人公達は、この先、どうなるんだろうって。
名嘉:それは、すごくうれしい傾向ですよね。ドラマでのオンエアは、泉の声しか聴こえないので、是非、2コーラス目からの英之の声を聴いてください。
──歌詞という事に重点をおいて伺ってきましたが、改めて、どうですか?
新里:HYにしか書けない歌詞というのがあると思うんですよね。HYは男女混合のバンドで、全員が曲を書くので、男性目線、女性目線、男女の掛け合いと、1つのバンドで色んな歌詞が書ける。それから、もう一つ自分達の核となっている部分は、沖縄で生まれたということだと思っています。自分達では、そんなに意識して沖縄のことを書いているつもりはないんだけど、自然とそういうニュアンスが表れていると思います。
名嘉:みんな、言葉の力を欲しがっているんだと思うんですよね。思う存分、言葉の力を信じて、色々な歌詞を検索して見てほしいなと思います。
──『Route29』は、聴いたみなさんにどんな風に受け止めてほしいとか、どんなことが起こったらいいなとか想像したりしてますか?
名嘉:自分達も20代最後になって、周囲の友人達を見ていても、決断する時期にきているんだなと思うんです。色んな道があると思うんですよ。その中で多分、みんな、迷いもあると思います。そういう時に、このアルバムの曲達が背中を押してくれると思います。立ち止まってもいいと思うんですよね。立ち止まった時、そしてまた進む時、いつもこの歌があるっていうのを感じてほしいですね。
新里:『Route29』は、すごく身近なもの、今生きている中で大切なものを歌っているアルバムだと思います。近いからこそ、忘れがちなことってすごく多いんだけど、その忘れがちな大切なものに気づいてもらうキッカケになったらいいなと思います。
許田:これから何かに挑戦しようとしている人だったり、夢を追いかけている人だったり、そして、悩んでいる人がいたら是非聴いてほしいアルバムです。絶対に背中を押してくれる曲があると思うので、また長い間愛されるアルバムになってほしいですね。
宮里:みんなが生活していく中で、1曲1曲が寄り添っていってくれたら、うれしいなと思います。1曲1曲の方向は違うけれど、恋愛だったり、未来だったり、夢だったり、色んなものが詰まっているので、曲と一緒にみんなが進んでくれたらいいなと思います。
──リリース後、大晦日には紅白歌合戦がありますが、来年はどんな抱負を?
名嘉:泉は産休中でしたが、泉が大丈夫だよと言った瞬間、すぐにツアーをやりたいと思います。まだ、具体的には何も決まっていないですけど、メンバー全員、やりたいねという気持ちでいっぱいです。全国で待っていてくれる皆さんの街まで、また行きたいと思います。みなさん、楽しみにしていてくださいね。