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──ラヴソングから一転、続く「ME.N.DO.KU.SA.I」は、理屈抜きに楽しい曲ですね?
この曲は、ビートを聴いた瞬間にアイデアが浮かんだんですよ。“面倒臭い”というワードを羅列していくイメージが降りて来たんです。僕自身が、だらしのない、片づけられない男なんですけど、みんな、日常生活の中で面倒臭いと思う事、たくさんあると思うんですよ。ライヴで、そういうのを羅列して、みんなして“面倒臭い、面倒臭い”って連呼したら、すっごく楽しいんじゃないかと思って書いてみました。
──エピソードとして出て来る事柄は、ご自身のこと?
全部、僕にとっては、面倒臭いと感じる事柄ですね。たぶん、みんなも同じだと思うんだけど。例えば、洗濯機を回す所までは楽しかったりするんですけど、終わった後に干すのが面倒臭い。干した後も面倒臭い。あと、僕はメールを打つのがすごく苦手なんですけど、たくさん営業メールを打つキャバ嬢なんて、ほんと面倒臭いだろうななんて思ったり。だから、♪メールを打つのもめんどくさい〜の部分だけは、女の子に言わせてるんですけど(笑)。
──ライヴでは盛り上がりそうですね?
こういう曲を超イイって言って貰えたら、すっごくうれしいですね。
──「その手は何のためにある」も、ライヴの様子が目に浮かぶ曲ですね?
ラッパーとして必要な要素って、声質、フロウ、リリックと色々あるんですけど、すっごく重要な要素として、左手…利き手じゃない方、マイクを持たいない方の手を、いかにカッコ良く動かすかっていうのがあるんです。左手は、ラッパーにとって、すっごく重要なファクターなんですよね。スポーツでも、利き手じゃない方の動きが重要だったりするでしょう。そんな事もイメージしながら書いた曲ですね。キッカケは、みんなで、クラップを連打する曲を作りたい。そんな思いつきからのスタートだったんですけど。
──改めて考えてみると“手”というのは人間だけのものなんですよね。歌詞の中にも出て来ますが、広げる、音を出る、繋がる、掴む・・・と実に色んな事ができる。
確かに人間だけですね。ライヴの時には、手を叩いたり、伸ばしたり、拳を突き揚げたり、指をさしたり・・・手を使いまくりたいですね。
──手という題材で、ここまでストーリーが広がるというのは、感服いたしました。
ちょっと今、僕の中では“手ブーム”なんですよ。手を見たら、その人の生き様とか日頃の生活ってわかるじゃないですか。洗い物とかたくさんしてそうだなとか、逆に、家事なんか全くやってないんだろうなとか。シングル「約束」のジャケットは、僕の手が写っているし、プロモーション・ビデオも、手にこだわった映像になっています。武骨な男性の手を映す事で、すごくリアリティーが感じられると思うんですよね。
──「That’s Right」もまた、ライヴ感のある曲ですね?
これはもう、♪Yes,that's right!〜って言わせたいがために作ったような曲です(笑)。ライヴでは、もっと長い尺(時間)でやりたいと思ってるんだけど、♪誰だ○○してるのは?(誰だ?) 誰だ○○してるのは?(誰だ?) 誰だ○○してるのは?〜とまくし立てて、お客さん1人を指して、♪you,お前か?って。そんで、すかさず、“Yes,that's right!”と答えて貰う。そういうライヴの絵が見えてる曲ですね。ほんと、ライヴが楽しみです。
──収録曲の中では、最速ですよね?とにかく速い!
最初は、もっともっと速くて、どんだけ速くいけるか挑戦した曲でもあったんですけど、聴きとれなくちゃ意味ないし(笑)。でも、ライヴではもっと速くなると思いますね。
──一転して、「ヒーリングバス」は、ゆったりと心地よいテンポになりますが?
ビート先行で、聴いた瞬間に乗物のイメージだと思ったんですよね。スポーツカーほど速くはないし、船という感じでもない。ちょうどバスくらいのスピード感だったんです。乗り物の曲はけっこう作っていて、馬、車、自転車とか色々歌ってきたけど、バスをテーマにしたのは初めてですね。田舎のあぜ道を小気味よく排気量たっぷりで走ってるバスのイメージが降りてきたので、そこからストーリーを広げていきました。
──SF短編小説みたいな印象を受けました。気がついたら、僕は、知らないバスの中にいました、みたいな?
バスって、あの揺れ方とか、ちょっと浸っちゃう独特なムードがありますよね。普段、車を運転している時は、景色を気にしたりしないのに、バスに乗ると、ずっと景色を見ていたり。それで、ちょっと考え事なんかしてると、全く景色が変わっていたり。気づいたら、すごく遠くまで来ていたとか。そういうバスのイメージを描いた曲ですね。
──続く「君がいるから」の“君”というのは?
これは、いつも応援してくれているファンのみんなに向けて書いた曲です。モバイル・サイトの会員向けライヴ・イベントの時に、みんなに喜んで貰える事をしたいと思って、作った曲です。本当にみんな温かいなと思うし、みんなに支えられて歌っているんだと思う、素直な気持ちをそのまま書いた曲です。
──♪自分のためから君のため 少しずつ考え方が変わって・・・というフレーズが印象深いのですが?
若い頃と言うのは、自分さえよければイイと思っていたし、もっと言うと、俺がすごいからみんな着いてくるんだ位に思ってたんですよね。でも、色んな苦労も経験し、ようやく、みんなが支えてくれているから俺は成立しているんだって気づいたんです。本当に愚かでしたよね。若い頃は、先の事なんて全く考えていなかったけど、35歳になってみると、自分の音楽人生もあと10年かなと思ったり。そう考えると、今日は歌いたいとか歌いたくないとかじゃなくて、みんなが待っていてくれるから歌うんだって、そういう意識に変わりましたよね。
──「約束」に通じるラヴソングのような印象も受けましたが?
ファンのみんなへ向けての言葉として書いたんですが、完成してみたら、大切な人との関係を描いた、すごく広がりのある曲になっていたんですよね。確かに「約束」に通じる所はあると思います。
──ラストは「終わりと始まり」ですね。卒業をテーマとした曲ですが?
旅立ちや決意といったテーマで、これまでにもたくさん書いて来ましたけど、これは本当に一番良くできている曲だと思います。「マタアイマショウ」を超えてますね(笑)。物事の終わりと言うのは、物事の始まりでもある。卒業したら、また違う新しい人生が始まるんだよという曲です。
──“ちゃんとサヨナラする”という事を感じる曲ですね。卒業ソングと言うと、離れても繋がっているとか、そういう表現が多いですけど、「終わりと始まり」からは、人生には、一度は、ちゃんとサヨナラしなくちゃならない時があるんだよというメッセージを感じました。
ホント、そうなんですよね。やっぱり、誰でも、今現在いちばん身近にいる人を大切にするし、過去の人間関係は薄れていくものなんですよね。僕自身も、元々はダンスをやっていて、ダンスからラップに入ったんですけど、ダンスの仲間とはすっかり疎遠になっちゃいましたからね。でも、そういう事の繰り返しで、人間は大きくなっていくんですよね。だから、物事が終わる時には、しっかり挨拶をした方がいいと思うし、それが、卒業式だったりするわけで。別れというものをきちんと認識しないと自立できないと思うんですよね。
──駆け足で1曲ずつお聞きしてきましたが、この13曲が入ったアルバムに『messenger』というタイトルをお付けになったのは?
僕が今ラッパーとして、ラップという技法を用いた表現の中で、何ができるかと考えると、それはやっぱり自分の年齢観や経験談だったりをメッセージに盛り込んでいく事だと思うんです。それが、自分の使命なんだと思うんですよね。だから、メッセンジャーでありたいし、そう呼んで貰えたらうれしいなと思って。僕は、自転車が好きなんですけど、自転車を使ったメッセンジャーの方のように、僕もメッセージを届ける…そんな想いもあって、アルバム・ジャケットは、横断歩道をデザインしたものになっているんです。
──いよいよリリースですが、その後のご予定は?
まずはツアーをやって、夏には恒例の“TOKAI SUMMIT”があって、夏フェスがあって、またツアーに戻って、その勢いでもう今年も暮れまで行っちゃいそうですね。
──今年は、このアルバム中心の1年に?
この後もリリースの予定はあるし、新たなユニットなんかも企んだりしていますし、今年は、SEAMOにとって、最も忙しい1年になると思います。
──どんな抱負を?
ものすごく欲張ってますね。僕は今年36歳になるんですけど、新しい事を仕掛けるには最後のタイミングかも知れないと思ったりもするんですね。僕が10年後にこうありたいとイメージしているもの、その全ての仕掛けを今年中に済ませておきたい。キッカケとなるものは全部並べておきたい。そんな風に思っています。だから、2011年は、SEAMOにとって、ものすごく重要な1年となると思います。期待していてください。