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──3曲目は、藤井フミヤさんの「わらの犬」のカヴァー。原曲は、1998年のリリースでしたが、覚えていますか?
この曲は、藤井フミヤさんと浅野温子さん主演の“ラブとエロス”というドラマの主題歌だったんですけど、母がそのドラマをいつも観ていたので、すごくよく覚えています。小学校2年生の時でしたね。大人のドラマだから、内容は全然わからなかったんですけど、ドラマの中で、すごくいいタイミングでこの曲が流れてくるんです。その時から、ずっと心に残っている1曲でした。
──今回カヴァーされたのは、何かキッカケが?
去年の暮だったんですけど、たまたま雨が降っている時に、無意識に♪街は雨・雨・雨〜と口ずさんでいたんです。それで、久々に「わらの犬」を聴きたくなって、聴き直してみたら、やっぱりすごく良い曲で。すぐにスタッフにカヴァーをやってみたいという相談をしたんですけど、なんとその翌日、ツアー・リハーサルでスタジオに行ったら、フミヤさんも隣のスタジオでリハーサルをやってらして。あまりの偶然に、これは絶対に何かのサインだと思って、是非、カヴァーをやらせて貰おうと思ったんです。
──「勇者たち」とも共通するイメージがありますね?
どちらも、自分の無力さや虚しさを歌っている曲ですからね。
──カヴァーに際しては、どんなイメージで臨まれましたか?
まずは原曲に忠実に歌いたいと思いました。私自身がこの曲をとても好きなので、だからこそ、音符1つも違う事なく正しく歌いたいなって。歌い方と言うのは、いくらでもアレンジできるんですけど、もし私が逆の立場だったら、忠実に歌って貰えると、ほんとにちゃんと聴いて貰えていたんだなと思うから。1音1音を忠実に再現しながら、自分のオリジナリティーを出していこうと思いました。ちょっとフェイクを入れたり、アドリブを入れたり、サウンド面では、エレキギターにはちょっと遊んで貰って、原曲のアレンジにはないフレーズを入れたり、原曲の素晴らしさを損なう事なく、スパイスを加える事ができたと思います。
──原曲への想いも強いんですね?
本当に素晴らしい曲だと思っているので、私の「わらの犬」だけでなく、是非とも、フミヤさんの「わらの犬」も若い子達に聴いて貰いたいと思います。
──歌の世界観としては、どんな風に捉えてますか?
まずは「わらの犬」という言葉に込められた意味を完全に把握する所から始めました。老子の言葉(老子は古代中国の哲学者。その語録の中に“天と地は無常であり、無数の生き物をわらの犬として扱う。賢人は無情であり、人間たちをわらの犬として扱う”という言葉がある。“わらの犬”とは、取るに足らない物の例え)から引用されていると知って、自分がいかに無力であるか、人間なんてちっぽけな存在なんだと改めて感じて、共感を覚えました。私はこれまで、自分で書いた詞ばかりを歌って来たので、自分以外が書いた歌詞を解釈するというのは、すごく難しかったんですけど、歌詞の1行1行について、ここでは何を言いたかったのかなと、描かれた情景をイメージしながら歌いました。
──作詞という点で感じた事はありますか?
私の詞は、ラップかと思うくらい、言葉をめいっぱい詰め込んじゃうんですけど、これだけ少ない言葉で、これだけ想いを伝えられるというのはすごいなと思いました。それから、“漢字”と“ひらがな”の使い分けとか、句読点の位置とか、改行のタイミングとか、私自身も歌詞を書く時に意識する事なので、そういう所もとても興味深かったですね。
──“うたまっぷ”には、自作歌詞の投稿コーナーもあって、既に40万以上の作品が投稿されているのですが、作詞という点で、何かアドバイスをいただけないでしょうか?
うわ〜、すごい!40万タイトルもあるんですか!私自身も小学校5年生くらいから詩を書き始めましたけど、歌をイメージして“歌詞”のつもりで書いていました。なんとなく歌詞ってこんな感じで出来あがっているというのはわかっているから、歌詞のつもりで書くと書き易いんですよね。私もそこが入口だったし、だから、自作歌詞というのはすごく良い事だと思います。
──ミリヤさんご自身も、そんな風に作詞を始められた?
そうですね。だから、そういう風に歌詞を書いてみたくなるっていうのは、すっごくよくわかります。みんな、思い悩む事があったり、自分の人生に疑問を持ったりする時期があると思うんですけど、私も自分がフツフツと感じていた事を書いていたので、みんなの気持ちは本当に良くわかります。
──ミリヤさんご自身は、歌詞を書かれる時に信条としている事はありますか?
嘘を書かない事。現実的である事。それから、人が驚くような…いわゆるパンチラインと言われる衝撃的な言葉を必ずいくつか入れる事。あとは、自分の言葉で書くと言う事ですね。例えば「勇者たち」で言ったら、“この状況”という言葉が出てくるんですけど、普通は歌詞で使う言葉じゃないですよね。でも、私は、そういう普段喋っている言葉をそのまま使うのが好きなんです。歌詞と言うのは、ついつい美しく書きたくなるものなんですけど、例えば、私は普段、“あなたってなんて素晴らしいんだろう”なんて言い方は絶対しないから、そういう歌詞は書かない。“あんた”と言いたい時は“あんた”と書くし。歌詞というのは自由なものだから、自分が思った事を包み隠さず述べるという事を心がけるのが良いかと思います。
──もし、ミリヤさんが小学生の頃に、投稿歌詞コーナーがあったら、自作歌詞を投稿されていたと思いますか?
絶対に投稿していたと思います。私は、元々、どうしてオーディションを受けたかと言うと、歌手になりたいと言う思いより、自分が書いた歌詞をプロの人に読んで貰いたいと言う動機の方が大きかったんです。ずっと一人でノートに書いてきたけど、誰かに読んで貰いたかったんですよね。だから、今、一生懸命に投稿しているみんなは、すごく嬉しいんだろうなと思います。詞を書いたり、曲を作ったり、一人で制作をするのが好きな子って、実はどこかで、すごく誰かと繋がりたいと思っているはずで、そういうコミュニティーがあって良かったと思っているだろうし、すごくうらやましいですね。私も今度、投稿歌詞コーナー覗いてみますね。未来の大作家がいるかもしれないし(笑)。
──「勇者たち」が2011年の第1弾作品となりますが、今年はどんな抱負を?
どんどん曲を書いていきたいです。去年も一昨年も、とても忙しく、自分としてはよく頑張ったなという思いはあるんですけど、今年は、もう少し余裕を持ちたいというのが目標です。更に細かい所まで1つ1つ詰めていったら、もっともっと良い作品ができるんじゃないかって、ずっと思っていたんですけど、今年は、それを実行に移したいと思います。
──2011年は、じっくり制作に取り組む年に?
そうですね。昨年、一昨年は、タイトなスケジュールの中で、制作だけに集中できるまとまった時間も少なかったので。音楽って、本来は自分がここだという時に取り組むのが一番だと思うし、今年は、焦らない事をテーマとして掲げ、良い環境で、良い曲をどんどん生み出していきたいと思います。今年に入ってからは、今までよりもじっくり向き合って制作できそうなので、今はすっごくイイ感じです。
──楽曲のイメージがどんどん湧いている?
前回のアルバム『HEAVEN』(2010年7月)から、しばらく時間が経っているので、今、自分の中で言いたい事がタンク満タンになって来ているんです。今年は、良い曲がたくさんできる1年になると思います。期待していてくださいね。