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──今回は、原曲のままカヴァーされている作品もありますが?
ガーシュインさんの「Someone to watch over me」は、英語詞のままカヴァーしています。キッカケは、野村不動産“プラウド”のテーマソングで、これまで色々な方が演奏されてきたんですけど、今回私が担当させていただく事になって。恋に恋すると言うか、自分の心の中にある運命の人を追い求めて、まだ、そういう人は現れていないけど、私はずっとその人を探していくわという、とっても可愛い曲です。どんな曲も、自分の日本語で歌いたいと思っていたんですけど、今回は、この歌詞にとっても共感して、敢えてそのまま歌いました。
──「Danny Boy」は、日本語詞のカヴァーと原曲の英語のままの作品と2ヴァージョン収録されていますが?
毎回、歌詞を書く前に、“綾香語”と呼ばれている、英語でもない日本語でもない言葉で歌って、色んな感情を出していくんですけど、「Danny Boy」に関しては、オリジナルの歌詞が本当に素晴らしかったので、そのまま歌う事にしたんです。歌い出したら、涙をこらえ切れなくなって。それだけ心を動かすメロディーだし、その時の純粋な気持ちというのを、そのまま皆さんにも聴いていただきたいと思って、今回は英語ヴァージョンも収録する事にしました。
──ご自身で、どうしても取り上げたかった曲というのはありますか?
「くまんばちの飛行」です。前回の『my Classics2』では、「アラフェス協奏曲〜Spain」を私の声と岡田治郎さんのベースだけで表現したのですが、今回、その第2弾をやりたくて選ばせていただいた曲です。今回も、岡田さんのベースと私の声だけですが、スキャットや息の音など色々な声を使って表現しています。今回も本当に楽しい曲になりました。
──書かれた歌詞の中では、「ブラームスの恋」が、異彩を放っていますね。咎められる恋を書かれていますが、物語として書いていこうという取り組み方?
ヒントは、ブラームスさんからいただきました。すごく切ないメロディーで、切羽詰まったような気持ちも感じられて。この曲を書いた時、彼は50才だったんですけど、26才のアルト歌手(ヘルミーネ・シュピース)に恋をしていたんです。でも、それだけじゃなくて、彼が本当に好きな人は別にいて、それはクララ・シューマン…シューマンの奥さんなんです。シューマンさんはブラームスを見出してくれた恩人であり、親友でもあり、シューマン夫妻にはとてもお世話になっている。だけど、クララさんへの想いは捨てられない。彼にとっては運命の人だったんだろうと思うんです。結局、自分の気持ちを押し込めたまま、生涯独身を通すんですが、ブラームスさんの苦悩や切なさは、現代においても共通するものだし、ブラームスさんの想いや姿勢にすごく共感したので、彼をイメージした恋愛の歌詞を書きました。
──共感と言うのは、必ずしも同じ経験をしている、という事ではないですからね。
そうなんですよね。今回、改めて、そう思いました。だから、「ブラームスの恋」と言いつつも、ブラームスさんの恋を歌ったものでもあり、実は、自分の真実の気持ちを書いた歌でもあると言えると思います。
──いよいよリリースですが、改めて『my Classics3』を振り返ってみて、いかがですか?
『my Classics!』がシリーズ化するとは当初は全く思っていなかったのですが、こうして続ける事ができたのは、やはり、クラシックというのはみんなのものだからだと思います。リクエストを通じて、リスナーのみなさんから教えていただいた事も多く、みんなで作ったみんなのアルバムになったと思います。
──ご自身にとっては、どんな作品となったのでしょう?
24歳、25歳、26歳というこの時期にクラシックをカヴァーさせていただいたという事は、私にとって非常に大きな事だと思います。この3作品を通して、色んな事が見えたし、体験できたし、生き方のヒントもたくさんいただきました。そして何より、“経験しなくても、共感できる”という事を実感したのがすごく大きいです。歌詞は、経験があるから書けるものではなく、想像で書けるんだ。想像だけれども、それは自分にとっての真実なんだという事が、とても大きな勇気になりました。
──歌詞を書く事で自分自身を発見できた?
思いも寄らない発想に連れて行かれるんです。例えば、1作目でカヴァーした「仮面舞踏会」だったら、仮面をつけてパーティーに行く事で、普段隠している本当の自分を出す事ができる。と言う事は、日常の自分の顔こそが仮面なのかなと思ったり。2作目では「カルメン」をカヴァーした時に、カルメンのような要素は自分の中には全くないと思っていたのに、実はちょっとカケラはあったんだという事に気づいたり。人との出会いと似ているような気がします。ある人と出会った事で、新しい自分を発見したり、本当の自分になれたりするように、曲との出会いによって、こんな私もいたんだと発見する事も多く、この3年間で、すごく自分の中で旅ができたような気がします。
──リリース後のご予定は?
楽しい楽しいツアーが待っています。ずっとスタジオに籠もっていたので、ツアーは私にとって、ご褒美のようなもの。今度は外に向けて発信できるのでとにかく楽しみです。『my Classics3』の曲をステージで歌う事を想像すると、ワクワクしてきます。
──『my Classics3』で始まった2011年ですが、今年はどんな抱負を?
今年の私の目標は“冒険だ”なんです。まだ私には歌えないとずっと思っていた「別れの曲」も、思いきってチャレンジしてみたら、すごくお気に入りの1曲になりました。色んな曲にチャレンジしていく事も“冒険”の1つだし、自分がイヤだな、苦手だなと思うものほど選んでみる事も大切なのかなと思うようになりました。嫌いと言うのは、好きの裏返しのような気もするし。昨年のテーマ“from The New World”も、自分のこだわりとか、今までの自分を捨てて、その場その場で今を自由に生きていくと言うものでしたが、、それをそのまま続行するためにも、色んな事に冒険して、また新しい地に辿りついていきたいなと思っています。
http://www.camp-a-ya.com/free/tour2011/