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──AZUKIさんの歌詞は、当て字が多い事も特長の1つかと思うのですが、ご自身では、いかがですか?
AZUKI:すごく感覚的なものなんですけど、言葉というのは、それ自体がリズムを持っていますよね。歌の場合は、メロディーがあるから、それにハマる言葉選びというのが大事なんだけど、それを文字にした時に、文字の上でのリズムが崩れてしまうという場合もあるので、そういう時は当て字を使いますね。
──今回のアルバムでも、例えば「stranger」では、落陽<おちてゆくひ>という表現や、一番ではstrangerが<みしらぬひと>に、2番では<とおりすがり>となっていたり、多くの当て字が使われていますが。
AZUKI:特にこだわって考えているわけではないんですけどね。そこに時間をかけたり、作為的な事ではないんですけど、メロディーのリズムと、字面のリズム、両方とも大事なんですよね。
──モチーフとしては、空、青、翼を持っているもののイメージが強いように感じたのですが。
AZUKI:歌詞を書く時に、何かを軸にして発想していくという事はないんですけど、今回のアルバムの中で唯一のシングル曲「Over Drive」を、そういうイメージで書いたので、その雰囲気が残っていたのかもしれないですね。
──サウンド作りにあたっては、詞世界は意識されますか?
古井:既に歌詞が上がっている場合は読ませて貰いますけど、大抵の場合は、作詞とアレンジは並行して進んでいるので、どんな歌詞になるのか、わからずにアレンジする事が多いですね。結果的に、イメージが一致する事もあれば、ミスマッチ?という事もあり得るんですけど、そこも、GARNET CROWの面白さ、持ち味なんだと思います。結局、最後は、由利さんがまとめてくれるから、例えば、“この歌詞とこのアレンジ、全然合ってない”と言われたとしても、“そこがいいんだよ”と言い切れる。それが、ヴォーカリストの力ですよね。
──うたまっぷには、自作歌詞の投稿コーナーもあって、既に40万曲以上が登録されているのですが、日々、詞を書いているユーザーにアドバイスをいただけないでしょうか。
AZUKI:作詞をしたい、歌詞を書きたいと思っているのなら、何でもいいからメロディーに乗せて書いた方がいいと思いますね。カラオケでもいいし、外国語の曲でもいいし。歌詞というのは、メロディーに乗せるのがルール。これはもうゲームやスポーツのルールと同じで、決まり事なんですよね。文学詩とは全く違うもので、自由に書いて良いわけではないんです。だから、必ずメロディーに当てはめて書いた方がいいと思います。
──訓練として?
AZUKI:もちろん訓練にもなりますし、メロディーがあった方が断然楽しいと思います。そうすれば、すぐに自分が書いた詞を歌えるでしょう。自分が書いた詞がすぐに歌になる。そうやって書いていった方が楽しいと思いますよ。どんな人に歌ってほしいか、そのヴォーカリストの声を思い浮かべて書くのも楽しいですよね。日本語じゃない曲を持ってきて、そのヴォーカリストの声質でイメージして、書いてみたり。
古井:僕は、色んな人のデモを聴く機会が多いんですけど、最近の傾向として、みんな感情に走ってる気がしますね。だから、作文に見えちゃうんですよ。“好きです”と書かずに、“好きです”を伝えるのが歌詞だと思うんですよ。
──確かに、近頃は、心情を吐露するだけの歌詞が多い傾向にありますね。
古井:情景描写が乏しくなってますよね。どんなシチュエーションなのか見えないし、匂いもしない。例えば、“雨音が…”という言葉が1つあるだけで、雨が降っているとわかるし、傘をさしている風景が見えてくる。今、このふたりは一緒にいるんだなとか、彼はたぶんジーパンを履いてるみたいだなとか。そこまで想像させる、言わずして思わせる、それが歌詞だと思うんだけど。好きです、好きです、愛してる・・・と繰り返されても、聴き手としては、何も想像できないですからね。
AZUKI:無心の状態で、本当にメロディーから感じたのだとしたら、好きです、好きです、愛してる・・・でもいいと思うんです。でも、そうじゃなくて、自分がその言葉を書きたいから書いてしまうというのは、メロディーに対して失礼だと思うし、やっぱり、伝わらないと思うんです。歌というのは、音楽だから、支配するのは“音”なんですよね。それを言葉で邪魔したら全部台なしになっちゃう。言いたい事ありきでは成り立たないのが歌詞だと思います。
古井:今の若い人って、自分のテーマソングを持っていないって言うんですよね。僕らの世代は、みんなその時々の自分のテーマソングを持っていた。朝起きた時はコレとか、車の中ではコレとか、勝負する時はこの曲とか。歌とのそういう関わり方って、素晴らしいと思うんです。その歌詞に描かれている情景や状況を自分に置き換えて、切ない気持ちになったり、ハッピーになったりする。そういう楽しみ方もあるんだという事を、伝えていきたいと思うんですよね。そのためにも、歌詞は、やっぱりすごく重要だと思います。
──岡本さんのソロ・プロジェクトSUPER LIGHTのアルバム『Now Printing...』も同時リリースですよね。今、歌詞について、お話している時に、ご自身のアルバムの歌詞カードに見入ってましたが?
岡本:いやいや、果たして、そういう詞になっているかなって(笑)。でも、僕のは、作詞とは言えないですよ。単なる言葉遊び。もう全くの別次元の話です(笑)。
──ソロ作品というのは、GARNET CROWの岡本さんとは、全くの別人格ですか?
岡本:ソロ作品は洒落でやってますからね、別人格と言えば、別人格ですよね。
──今回の『SUPER LIGHT』は、ソロ作品として一番のこだわりはどんな所に?
岡本:うーん、特にないんですけどねぇ(笑)。
中村:ええ〜っ、ないの〜?(笑)
古井:岡本さんは何でも出来ちゃう人なので、ああしなきゃ、こうしなきゃとか考えなくても出来ちゃうんですよ。
岡本:いやいや、そんな事ないですよ。まぁ強いて言えば、いわゆるバンドのギタリストが、ソロ・アルバム出しました、どうですか〜みたいなアルバムには絶対したくなかったと言うのがこだわりですかね。
──1曲ごとに全く異なる曲調で、ギター表現としてやりたい事を全て出したという作品かと。
岡本:1曲ごとにバラバラだと感じました?
──ほんとにバラバラですよね。
岡本:それは、大成功です(笑)。そのバラバラ感、全体をバラバラにしてやれ〜っていうのが、1つのテーマではありました。
──GARNET CROWでは表現できない事を出し尽くしたと言うような?
岡本:そこまではないんですけど、いたずらで音楽作ってるような感じが僕の場合はありますね。
──AZUKIさんが作詞された曲もあるんですよね?
岡本:AZUKIさんには3曲書いて貰ったんですけど。3曲のうち、2曲は、もう4年位前に作った曲なので、たぶん、AZUKIさんも忘れてると思うんですけど(笑)。
──GARNET CROWの作品として中村さんが歌う事を前提に書く時とは、書き方は違ってくるものですか?
AZUKI:作業としては全く同じです。メロディーラインが異なるというだけで、誰が歌うかを意識する事はないですね。無心になるというのは同じです。
──男性ヴォーカル、女性ヴォーカルも意識しない?
AZUKI:歌詞を書く時に、男女を意識する事はないですね。
──『parallel universe』と『Now Printing...』、AZUKIさんの歌詞の聴き比べも楽しみですね。
岡本:そうですね。ぜひ、そんな風にも楽しんでほしいと思います。