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──「そんな今日も、歩いている」は楽器の音が左右で分かれているのが面白いですね。
重松:上がってきたミックスを聴いた時に“あれ?何か違うぞ?”って(笑)。
酒井:最初はスピーカーで座って聴いていたので、妙に前に歌がいたので、何が起きたのかと思いました。それで、もう1回聴いたら“あっ!振り切ってる”って。
重松:ミックスするところで、楽器の音を右と左に振るというアイデアが出たんです。そういうことをやったことが無かったので、とても面白いと思いましたね。最初は不思議な感覚だったんですけど、温かみがあるスゴク良い仕上がりになったと思います。
──二人並んで歩いている感じも受けますよね。
酒井:エンジニアさんが“昔の音楽はそうなっているけど、最近は無いんだよ”と教えてくれて、“スゴク良いと思います”って言ったら、“でしょ、でしょ”みたいな感じで(笑)。歌だけド真ん中にあって、楽器の音が全部右と左に分かれていて、それだけで聴こえ方も全然違うし。音の位置だけで一緒に演奏している絵が見えたり、歌詞の主人公がずっと歩いている姿をイメージ出来たりするのが素晴らしいなと思いました。ミックスでも雰囲気を作るっていうのは初めての経験でしたね。
──歌詞の余所見して歩いている“僕”が酒井さん、“君”が重松さんかなぁと。
酒井:いつも余所見して歩いてるから、私は道を覚えないんだなと思って。だから、北海道でも東京に出て来てからも一人では歩けなくて、自分の買い物をする時もマネージャーや謙太を誘うんです。結局、いつも私は“どこどこ行きたい”って言っているだけで、場所や道を調べるのは他の人に任せっきりで。今までずっとそうやって生きてきたなぁと思って書いた曲です。でも、自分一人でやってきましたみたいな顔をしていても、いろんな人に頼ってきたな、そういう皆が隣にいたからココまで来られたんだってスゴク思いますね。
でも、全部が全部、私のことというよりかは、その時に恩田陸さんの“夜のピクニック”という小説も読んでいて、その登場人物をイメージして書いている部分もありますね。
──「思想電車」は、イントロのギターがスリリングな感じでありつつ、歌詞の始まりが“田舎町”と、そのギャップが面白かったです。
酒井:謙太が“電車の曲を作りたいんだよね”ってギターでリフを作ってきたところから、先にオケだけ全部作って。そこから絵本の挿絵を書いていくみたいに風景を並べていって、ここでは踊りたい、ここでは窓を開けてみたいとか、そういう風に作っていきました。北海道の謙太が住んでいたところには無人駅があったり、緑と青みたいな感じの駅がいっぱいあって景色がとっても良いんです。そういう風景を思い浮かべながら作りました。最初は、ただ電車が走って行くっていうだけの曲にするつもりだったんですけど、その中で、自分のその時の感情とかが織り交ざってきて、それで電車で旅をしている物語みたいになりましたね。
──続く「雨音ワルツ」は、抽象的な内容の歌詞ですが、どのような想いから作られたのですか?
酒井:私は子供が大好きなんです。だから、子供が殺されたり、捨てられたりというニュースを聞くと居たたまれなくなって。でも、私が何を出来る訳では無くて、その子を助けられる訳でも無くて、子供が一番必要としているのは母親からの愛だけだなって思った、ただその気持ちを歌いたいと思ったんです。だから迷いながらというか、答えはずっと見つからないまま自分の気持ちを書き綴ったので、ちょっと抽象的ですね。
──10曲目の「可愛い君へ」はお母さんと子供の歌ですが、ご自身の子供時代がモチーフですか?
酒井:いえ、妹の小さい時の事を書きました。“可愛い君”は妹のことです。お手伝いをしようするけど不器用にお皿を割っちゃったり、小さい頃の妹を思い浮かべてたら可愛いなと。今はもう高校生で、たまに北海道に帰ると内緒で私へのプレゼントを買ってくれていたりして、それを出す時の顔が“ちっちゃい妹”そのままなんですよね。私からしたら何時見ても“ちっちゃい妹”にしか見えなくて。
「可愛い君へ」はライブが終わって走って家に帰っていた当時、よく妹は寝てるかなと思っていたことを、母親と子供に置き換えて書いてみました。
──「それが大人ってもんなのか」は、「ため息」とは違う意味で最後に“ふー”と入っていますね。
酒井:自分が悶々と思っている矛盾を歌った後の“よし全部言ったぞ!” みたいな感じです。だから“ふー”も結構こだわって、何テイクか録った中から“私はこのふぅーが良い!”と言って決めた“ふー”です(笑)。
──「それが大人ってもんなのか」というタイトルは、インパクトがありますよね。
酒井:いつもタイトルは歌詞を見て後から付けるんですけど、この曲はスゴク困りました。それで謙太に相談したら、歌詞の中にある“「それが大人ってもんなのか」で良いんじゃない”って言ってくれて。この曲の一番言いたいことだし、それで決めました。
重松:歌詞の中で強烈に印象が残った言葉だったので。是非インパクトある言葉をと思って提案したんです。でも、すごいタイトルですよね。
──酒井さんの中で“大人”を、どのように捉えていたのですか?
酒井:何を“大人”っていうのかは自分でも分からないんですけど、ふと自分が背伸びしている時に、大人になりたいんだなって思うんです。でも、自分らしくいることが一番あるべき姿というか、こんな人になりたいとか、こんな風になりたいとかっていう、その背伸びしていることがカッコ悪く見えちゃって。この曲を書いた時に東京に来たばっかりだったので。それだけでも少し背伸びしているような気がして。それで、今の自分を小さい時の自分が見たら笑うんじゃないかなぁと考えて書いた歌詞です。
──12曲目の「約束の木の下で」の歌詞は、具体的にモチーフとなった出来事が?
酒井:高校時代、4月ぐらいに企画ライブがあって、元々いたドラマーが“企画ライブでチュールを辞めるわ”って言ったので、そのドラマーに向けて書いたんです。その子は保育士さんになりたくて専門学校に行くから辞めたんですけど、私は諦めていなくて、企画ライブが終わるまで“まだ一緒にやろうよ”と言い続けていました。だから、その子の夢を応援しているけど、いつでもチュールに戻って来ていいんだよっていう想いを歌詞に込めました。
──「願い」は内面的なことを歌った歌詞ですが、曲を作られた時は、どのような気持ちだったのですか?
酒井:率直な言葉は言っていないんですけど、自分のダメなところと言うか、余り人に言えない面を抽象的に書いてみました。
素晴らしい作品を見たり聴いたりすることは楽しいんですけど、気分によっては逆に圧倒されて私はダメだなって落ち込むこともあって。「願い」は“それでも強く生きていくわ”という風に終わっているけど、自分は何て情けないんだろうって思う時もあるんです。そういう時は“それでも自分は自分だ”、“小さいからこそ人に無いモノもあるハズだ”っていう風に自分に言い聞かせて立ち直っていくんで、その時の感じを書きました。
重松:僕は「願い」のギターが一番面白かったですね。歪むギターを入れてみるなんて思ってもいなかったんで、“えっ!?こんなの良いの?”って。予想外でしたね。
最初は全然クリーンな感じで、もっと言ったら暗〜いような感じのイメージの曲だったんですけど、アレンジャーの石崎光さんのアイデアからカタチになったんです。大分アレンジされてポップになったり、ちょっと奇妙な世界観を出してみました。歌詞もドンドン変わっていったしね。
酒井:歌詞のテーマが海に現れてるんですけど、最初は部屋の中の出来事の感じでした。だから、ピアノで弾き語りにしようかなと思っていたぐらいで。でも、歌詞も変わってきて世界観が広くなってきたので、少し気持ちが揺れている、そのフラフラしている感じのイメージが良いかなって思いましたね。さらに歪むギターを入れることで、揺れながらも引っ張っているというか、ちょっと攻撃的な要素もあったりして。悩んでるだけじゃなく、その中にある強さを感じながら歌うことが出来たので、スゴイ面白いなって思います。
──ファーストアルバムをリリースされて一区切りが付きましたが、今後目指していく次なるステージは、どのようにお考えですか?
酒井:完成したファーストアルバムを何度も聴いていると、客観的に自分が見えてきて、元々の自分らしさを少しまだ隠しているようなところもあったので。『ココロノウタ』は、今出来る限りの全てを詰め込んだ作品ですけど、もっともっと素直に、この先もっとホコリを落としていって、自分のありのままの作品をドンドン追求できたら良いなって思います。これからもっと今以上に、酒井さんと重松さんを出していきます(笑)。
重松:「見てみてよ」からレコーディングが始まって最初は分からないことだらけでした。でも自然にいろんな人と出会って、出会えたことで分かったこともあるので、それを作品に生かしていけたら良いなと思います。純粋に、音楽的にも人間的にもドンドン成長している自覚がありますし、その両方があって作品に反映されると思うので、もっともっと良い作品を作っていきたいですね。
■チュール 初のワンマンライヴツアーが決定!!
チュール ライヴハウスツアー2011
Nice チュール meet You ♪
【公演日程】
2011年2月5日(土) 大阪・梅田Shangri-La OPEN 16:30 / START 17:00
<お問い合わせ>キョードーインフォメーション 06-7732-8888
2011年2月13日(日) 北海道・札幌cubegarden OPEN 16:30 / START 17:00
<お問い合わせ>ウエス 011-614-9999
2011年2月19日(土) 東京・shibuya WWW OPEN 17:30 / START 18:00
<お問い合わせ>ディスクガレージ 03-5436-9600
【TICKET】
オールスタンディング ¥3,000-(税込)
5歳以上要チケット / 別途ドリンク代 ¥500-必要
<一般発売日>
2010年12月25日(土)
オフィシャルサイトにて12/1よりチケット先行受付中!
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