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──続く「透明だった世界」は、アニメ“NARUTO−疾風伝”のオープニングテーマですが、楽曲作りに当たっては、アニメの世界観を意識されましたか?
番組主題歌の場合は、その作品の世界観と自分が共有できるものを探して書いていきます。“NARUTO”は忍者の話ですけど、主人公には、ライバルでもある親友がいて、その彼と別れたり、戦う事で成長していく。そこが、自分の経験とも重なる部分だなと思ったんですよね。例えば、本当に毎日のように会っていた友達と急にパッタリ会わなくなる事ってあるでしょう。それが久々に再会してみると、昔のままでもあり、お互いちょっと変わったなと意識する所もあったり。その経験とか感情が、アニメと僕を結ぶポイントに思えたんです。友達との別れ、少年性との決別というものがテーマとなりました。
──「今日もきっと」も、テレビ番組のテーマソングですね。
この曲は、“めざにゅ〜”(フジテレビ系)という朝4時から始まる番組のテーマソング。朝4時という時間帯は、その頃に起きる人もいれば、これから寝るという人もいる。目覚めた人が“今日もまた、1日が始まるんだ”と感じたり、眠りにつく人が“明日は、こんな1日にしよう”と思ったり、どちらのタイミングで聴いても、元気が出る曲にしたいと思いました。
──声高に“頑張ろう”とは言っていないけど、“生まれたての風”とか“新しい陽射し”とか、情景描写の中で感じるものが多い歌詞ですね。
いくら頑張ろうと言っても、頑張れない時はありますからね。情景として浮かんだのは、やはり、通勤途中の街の風景ですね。これから仕事に行くんだという時の朝の街の風景。そこを描いていきました。
──「パレードパレード」は、ちょっとコミカルで、アルバムのアクセントにもなっていますね。
この曲は、ギターのリフから作っていったんですけど、同じ所をぐるぐる回っているメリードーランドのイメージと重なって、そのメロディーをどう生かそうかという発想から、遊園地でのデートというシチュエーションを選びました。メロディーだけでなく、歌詞のバリエーションという意味でも、アクセントになっていますよね。
──でも、あまり、楽しいデートではないような・・・?(笑)
僕の個人的な見解かもしれないですけど、遊園地のデートって、上手くいかない事が多くないですか?待ち時間が長くて会話がもたないとか、例えば、映画なら、終わった後に感想を言い合ったり会話が生まれるんだけど、遊園地の場合は、その場で楽しみも終わっちゃうし。そんな事を思いながら書いたストーリーです(笑)。
──続く「朝が来る前に」は、昨年1月リリースのシングル曲でもありますが、別れの決意を歌ったナンバーですね。別れは必ずあるものだという所に立脚しているように思えるのですが。
自分自身を振り返っても、何かを終えて、新しい始まりに向かっていくという事を繰り返して生きて来たように思うし、これからもそうだと思うんです。始まりがあれば、必ず終わりはある。でも、終わりと言うのは、次の新しい何かが始まる瞬間でもある。決してそこで途切れるわけではないんですよね。今起こった事が、未来に対してどう作用していくのかはわからない。つまり、過去の自分が何をしてきたのか、それが、今の自分にどう繋がっているかというのは、自分次第だと言う事ですよね。この曲の主人公は、今ここで別れを選ぶ事で、前に進んでいこうとしている。そういう情景を自分なりに描きました。
──「Selva」は、非現実的な妖しげはストーリーで、アルバムの中で異彩を放っていますね。
今回のアルバムでは、具体的なシチュエーションや情景描写を織り込んだ曲が多いんですけど、この曲は、絵画で言ったら抽象画のような作品ですよね。メロディーが持つ妖しげな匂いがより強く出るものにしたくて、この歌詞を書きました。
──“Selva”というのは、アマゾン川流域の熱帯雨林地域を指す名称ですが、そこに迷い込んだ男性が、妖しい魅力を持つ現地の女の子と出会って、誘われるまま奥地へと入り込んでしまう・・・そんなエロティックなストーリーを想像しましたが(笑)。
現地の女の子っていうのがイイですねぇ(笑)。そういう解釈もアリだと思います。僕自身の中には、けっこうハッキリとした映像があって、そのイメージを歌にしているんですけど、全然特定していないんですよね。そこがどこなのか、“君”が何者なのか、どうして“僕”がそこにいるのか。何一つ説明していない。サウンドもかなり無国籍な感じだし、想像をいっぱい膨らませて貰える曲だと思います。
──「アゼリアと放課後」で描かれている少年は、小学生くらいのイメージ?
小学生くらいの自分と、今の自分を対比して描いてますね。自分の中にずっとあった原風景を曲にしたいという思いから始まった曲です。
──秦さんご自身は、この曲の主人公のように、友達の後ろをついて行くタイプだった?
僕には兄貴が2人いるんですけど、いつもお兄ちゃんの後をついていって、何もかも真似してるような子供でしたね。友達同士でも、率先して何かをやるようなタイプではなかったと思います。
──でも、ある日、そこから抜け出すわけですよね?
ずっと誰かについていけば良かった自分がいて、だけど、初めて自分が奮い立たなければいけない瞬間というのを知る。それが自立だったり、自我の芽生えというものだと思うんですけど。この曲は、その瞬間ではなくて、そこから随分と大人になった自分が、その頃を振り返っている。そんな距離感で書いていますね。
──“面映ゆい”という言葉がとても印象に残りました。
普段あまり使う機会のない言葉ですけど、懐かしい場所に行った時のちょっとした気恥しさというのにピッタリ来る言葉だったので使いました。日本語というのは、イイ表現がまだまだいっぱいあるんだなって本当に思いますね。
──そして、ラストが「メトロ・フィルム」。最新シングル曲でもありますが、やはり、この曲が締め括りの1曲に?
今回のアルバムにとって、1曲目の「ドキュメンタリー」と、ラストの「メトロ・フィルム」が、特に重要な曲だという想いがあるんです。自分がこのアルバムで表現したかった事、言葉においてもサウンド面でも、それが一番色濃く出ている2曲だと思っていて、だから、この2曲を1曲目とラストに置く事は、最初から決めていました。
──帰宅途中の電車の中から見える風景を切り取りながら、まさに、何気ない日常が特別なものに変わる瞬間を描かれていますね。
音楽を聴きながら電車に乗っていたり、道を歩いていたりすると、ちょっといつもと違う感覚になったりする事があるんですよね。音楽って本当にいいなと思う瞬間だったりもするんですけど。僕の曲も、そんな風に聴いて貰えていたらうれしいな、そういう手助けになっていたらいいなという思いはずっとありました。ただ、この曲を作る時には、決してそこまで考えていたわけではなく、地下鉄が地下を抜けて外の景色が見えた瞬間とか、電車の中の独特な孤独感、他人と密着しているのに自分の世界だけで色んな事を考えている時間、そういう情景を描いていく中で、音楽に対して思っていた事が自然と重なって歌詞になっていったんです。だから、本当に自分自身の創作の源流が流れている歌詞なんですよね。このアルバムにとって大切な1曲であると同時に、僕自身にとってもすごく重要な1曲となりました。そこまで言えるほどの事が書けたんじゃないかと思います。
──いよいよ、リリースですが、かなり大きな手応えを感じていらっしゃるようですね。
自分自身が表現したかった事、やりたかった音楽性も含めて、想い描いていた以上のものができたと思います。
──リリースの後のご予定は?
11月11日から、全国ツアーが始まります。来年2月までの長いツアーとなります。
──ツアーに向けては、どんな抱負を?
バンドを率いての全国ツアーというのは、本当に久しぶりなので、僕自身もすごく楽しみにしています。今回のレコーディングで中心的存在として参加して貰ったミュージシャン達と一緒に回るツアーなので、“3rd”の音、匂いを存分に届けられると思います。これまでの曲も、新しいバンドで、どういう風に生まれ変わるのか、それも楽しみにしていてください。
■ライブ情報
HATA MOTOHIRO CONCERT TOUR 2010-2011 -Documentary-
11月11日(木) 三重県文化会館 中ホール
11月17日(水) ホクト文化ホール 中ホール(長野県県民文化会館)
11月18日(木) 富山県教育文化会館
11月23日(火) 高知BAY5SQUARE
11月29日(月) 周南市市民館
11月30日(火) 倉敷市芸文館
12月02日(木) 熊本県立劇場 演劇ホール
12月16日(木) 静岡市民文化会館 中ホール
12月22日(水) 秋田市文化会館 大ホール
12月24日(金) 函館市芸術ホール
12月26日(日) 盛岡市民文化ホール 大ホール
01月08日(土) 広島ALSOKホール
01月15日(土) 新潟県民会館
01月21日(金) 札幌市民ホール
01月28日(金) 中京大学文化市民会館 オーロラホール
01月30日(日) 神戸国際会館こくさいホール
02月02日(水) NHKホール
02月05日(土) サンポートホール高松
02月07日(月) 京都会館第一ホール
02月09日(水) グランキューブ大阪
02月13日(日) 福岡市民会館
02月18日(金) 大宮ソニックシティ
02月19日(土) 東京エレクトロンホール宮城(宮城県民会館)
02月22日(火) 神奈川県民ホール
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