──楽曲作りはどんな風に?
基本的にはメロディーが先です。作曲はすぐできるんですよ。湧き出て来ます、泉のように(笑)。その代わり、歌詞は苦手ですねぇ。すっごく苦労します。
──歌詞を書く時は?
移動中に、ケータイで書いている事が多いですね。頭の中でメロディーを鳴らしながら、ケータイを打っている。それを家に帰ってから、パソコンで整理するというパターンが多いですね。
──『四次元アドベンチャー』の楽曲は、様々な主人公が出て来て、様々なストーリーが展開されていきますが、歌詞を書く時は、物語を書こうとしている?
物語を書こうとしていますね。自分の歌を、自分の現状で歌わないと言うか。「四次元ビューティーガール」という曲にしても、グラウンドを好きな女の子が走っていて、それを男の子が教室から見てるというシチュエーションだけど、最初から学園ソングを作ろうと思っていたわけではなく、核になっているのは、モヤモヤした感覚。自分の中にあるモヤモヤ感を、自分ではない主人公に当てはめて物語を作っている。ノン・フィクションから、フィクションを作る、みたいな。
──どの曲も、物語が映像となって見えてきますね。それって、言葉の組み立てのセンスだと思うのですが、そういうセンスのバックボーンとなっているものって何でしょう?読書ですか?
本はよく読みますね。読書家と言うほどではないですけど。それより、いちばん大きな要素となっているのは映画ですね。アニメも含めて。何マニアですか?と聞かれたら即答します“映画マニアです!”って。映画とアニメですね。あと、ドラえもん!(笑)
──マニアと言い切るくらい、映画好き?
好きですねぇ。ものすごくたくさん観てます。今でも、週に何本も観てますね。SFやファンタジー、サスペンス、ミステリーに偏りがちですけど、基本的には何でも観ます。映像のモノローグの部分って言うんですかね、ああいうのにぐっと来るタイプなので、それを音楽で表現したいんですよね。映画の感覚と似てますね、歌詞の世界と言うのは。
──映画の感覚を、音楽という自分の分野で表現している感じ?
そういう感覚はありますね。音楽で映像を見せる事はできますからね。実際に電車の音が入っていなくても、電車の音が聴こえて来たり。
──そうですね。風に吹かれたり、波の音を聴いたり、暑さや寒さも感じるし。
その通りですよねぇ。歌詞に犬なんて出て来なくても、犬が吠えているイメージが浮かんで来たり、夕焼けなんて一言も言ってないのに夕焼けが見える事もあるし。そういう歌を書きたいって、ずっと昔から思って来て、いつも、それが根底にあるんですけど。
──例えば、「もういいよ」は、失恋の曲ですけど、悲しいとか切ないとかそういう感情表現は1つも出てこない。だけど、この主人公の女性が、どれだけ苦しいか、どれだけ泣いたか、伝わって来る。主人公の心情は書いてないけど、その気持ちが想像できる。これも、とても映像的な感覚だと思うんですよ。
でも、今回は、映像的という部分よりも、どの曲にも、すごく大事なワンフレーズを、1つだけ置く事ができれないいなって。今の状況を投げ書かける1フレーズだけを意識したんですよ
──その結果、より映像的な歌詞になったんじゃないですか。
そうかもしれないですね。
──例えば、映画にもキメのセリフがあったり、その映画の代名詞となるようなワンシーンがあったりするでしょう。
そうそう、そういうものを1つだけ置きたいと思って書いて行ったんですよ。そうか、それで、より映像が見える歌詞になったのかもしれませんね。そういう意味でも、聴き手の想像力に賭けたアルバムだって言えるかもしれないですね。
──ヴォーカルのバリエーションも格段に広がりましたね。全曲、表情が違いますよね。
その点は、今までと大きく違う所ですね。僕の中には、作曲家、作詞家、ヴォーカリスト、ギタリストと言う4つの人格があるんですけど、これまでずっと、メロディーメーカーというのが自分の一番の魅力だと思っていて、圧倒的にメロディーメーカーとしての自分が強かったんですね。例えて言うと、作曲家の先生が圧倒的に偉くて、この曲はこういうイメージだから、そのイメージに合った歌詞を書け、ヴォーカルはこんな風に歌え、サウンドはこんな感じって、全部指示を出していたような感じだったんですけど、今回、プロデューサーさんから、それぞれを別の人格として尊重した方が良いと指摘されて、目から鱗と言うか、スコーンっと来たんですよね。
──それで、ヴォーカルも変わった?
全く変わりましたね。音楽で体を使う事を教えて貰いました。ライヴで体力を使うという意味ではなくて、上手に歌う事が必ずしも良いヴォーカルとは限らない。体で表現するっていう事ですよね。これまでは、最初に作曲家の頭で完成像を描いて、ヴォーカルもそこに到達したら、それでOK。そんな作り方をして来たように思うんです。でも、今回は、作家という部分を切り離して、ヴォーカリストはヴォーカリストとして、一番いいものを求めて行く。そんな風に変わりました。
──サウンドも実に多彩ですよね。1曲毎に全く違うアプローチで。
1曲毎に、この曲を一番生かすものってなに?というのをとことん考えたんです。サクラメリーメンが演奏するという前提も取っ払って、単に1つの曲として、その曲を一番生かすアプローチを考えて行った。その曲が一番輝く瞬間を追いかけて、ヴォーカルも100回以上歌った曲もあるし、演奏も1日かけてやり直し続けたり。
──すごくライヴ感のあるアルバムだなとも感じました。ライヴの様子が目に浮かぶと言うか。
うわ〜っ本当ですか?
──ステージの様子が見えて来ると言ったらいいんでしょうか。きっと、ここで照明が変わってとか、このバラードで一旦静かになって、シーンとした所で、ジャーンとノリの良いイントロが鳴って、お〜みんな立ちあがり始めたぞ・・・みたいな。
めっちゃ、うれしいです〜。曲を作る時に、ライヴの事は、頭のどこかでは常に意識していると思うんですけど、自分を取り巻いているものって、やっぱり、フィクションとかファンタジーの世界なんですよね。そこにライヴっぽさを感じて貰えたと言うのは、リアルさと言うか、生っぽさを感じて貰えたという事でしょう。今回のアルバムの醍醐味の1つは、フィクションとかファンタジーの世界なのに、生っぽさがあるって言う事だったんですよ。
──まだライヴは観てないですけど、きっと、ここで、こんな事するんだろなって思わせる。あたかも観て来たかのように、ニヤニヤして来ちゃう感じなんですよ。
うわっ。それって、まさしく想像アドベンチャー・・・四次元アドベンチャーじゃないですか!それ、すっごいうれしいです。
──『四次元アドベンチャー』を、こんな風に聴いてほしいとか、イメージはありますか?
このアルバムを、色んな所に連れて行って、聴いてみてほしいんです。家の中だけじゃなくて、近所の公園で聴いてみる、電車の中で聴いてみる・・・そうしたら、その度に違う聴こえ方がすると思うんです。その度に、違う自分と出会うと思うんです。みんな、本当は、もっともっと広い幅を持っていると思うんですよね。色んな事を想像して、空想して、自分の幅の広さに気づいてほしいなって思います。
──ツアーも始まっていますが、ライヴは3人だけで?
今は、とことん、そこにこだわっています。
──そうすると、曲によっては、アレンジを変えるものもある?
そうなりますね。CDは聴いてくれる方の想像力に任せるものだけど、ライヴは、僕らの思っている事を直接伝えられる場所だから、ライヴでCDを忠実に再現しても意味がないし。みんな、それぞれ『四次元アドベンチャー』を聴いて、こう感じましたというのを持って観に来てください。サクラメリーメンとしては、こう感じているんですよっていうステージを僕らはやります。それで、みんなで答え合わせをしましょう。そんな感覚になって貰えたらうれしいなと思います。 |