──今回の『THERE'S NO TURNING BACK』で、ようやく解き放たれた、と?先程、”鎖国が終わった”とおっしゃってましたが。
ROY:本当に、ようやく鎖国が終わったという気分なんです(笑)。僕らのイメージって、ジャケットの印象とか、すっごくクールなロックンロール・バンドと思われがちなんですけど、実際は、すっごく良く喋るし、良く笑うし、いつも楽しくありたいって思ってる。ポップな面も強いんですよ。今回は、そういう僕らの人間性というものを余す所なく発揮できたと思います。
──先程、ROYさんが“人間性”とおっしゃいましたけど、歌詞の内容云々ではなくて、音そのものが、その人を伝えるというのはありますね。暗い人みたいだとか、笑わせてくれそうとか、怒りを感じたり・・・音にも人間性・・・音人格みたいなものがあるんですよね。
TAXMAN:そうそう、本当にそう思います。僕は『THERE'S NO TURNING BACK』をもう何度も聴いていますけど、その度に、本当に楽しそうだなって自分でも感じるし、聴きながら、その曲のレコーディングの時の事を思い出して、1人で笑っちゃったりするんですよね。馬鹿っぽい音が入っていたりとか、なんか、ちょっとダサイ音が入っていたりとか。その辺が、すっごく僕らっぽくていいなって。
──1曲目が始まった瞬間から、なんて楽しそうな人達なんだろうって。それが第一印象。最初のギターのジャーンという音だけで、ワクワクしましたよ。
TAXMAN:そう言って貰えるのは、すっごくうれしくて、僕らもレコーディングしながら、とにかく楽しかったんですよね。音楽をやっている事に対する喜びだとか、楽しさが溢れ出て来て、レコーディング中は、ギターを弾いている時も、ヴォーカル録りの時も、とにかく楽しかった。こんなに楽しかったレコーディングは初めてです。
──楽曲作りは、どんな風に?
TAXMAN:ROYがベース&ヴォーカルで、メロディーとベースの弾き語りで曲を持ってくるんですよ。それに対して僕らがセッションして、入っていくんですよね。僕らは、パソコンを使って、データを送り合ったりとかしないし、だいたいROYはパソコン持ってないし(笑)、必ず4人で集まって、セッションしながら作っています。
──今回は、楽曲もこれまでとは違う印象でした?
TAXMAN:メロディーがすっごく良かったんですよね。ROYが、自分というものをさらけ出して来たなって。それをすごく感じたので、僕らも素のままで応えた。もう、1回目のセッションだけで、ほとんど決まりましたね。
──4人だけで?
TAXMAN:後から、ここにもうちょっとパーカッションで面白い音を加えてみようかとか、ヴォーカルはもうちょっとエフェクトかけてみようかとか、3本目のアコースティック・ギターを裏で入れたりとか、そういう事はしますけど、ライヴを前提に、4人だけでできる事をしようというのが基本ですね。
──他に何かを足したくなったりしない?
TAXMAN:ギター、ベース、ドラムだけでも充分に色んな表現ができますから。例えば、ドラム・セットひとつにしても、チューニングを変えるだけで全く音が変わるし。今回は、スネアの音をベロベロにして、電子ドラムっぽい音にしたりとか、そういうアイデアがすごくたくさん詰まっています。電子音っぽいものが入ってもいいじゃない、60年代の音色にこだわらなくていいじゃないっていうのも、大きな変化ですね。
──今回も、歌詞は英語ですが。
ROY:僕らが目指した音楽が洋楽だったから、そのまま英語になっただけなんですけど、ロックンロールは、体が勝手に動いてしまう最高のダンス・ミュージックだと思うんです。ダンス・ミュージックにメッセージ性は必要ないでしょう。日本語だと、言葉が先に入って、体で感じる前に、一瞬でも頭でわかろうとしちゃうじゃないかと思って。動き出す一歩目を遅らせたくないんですよね。
──それでも、歌いたい事、伝えたい事というのはあるでしょう?
ROY:もちろん、僕らにも“言葉で伝えたい事”はあるし、でも“考えるんじゃなくて感じる音楽”という事自体も僕らが伝えたい事だし。そこは矛盾しているかもしれないけど、どっちも伝えたいっていうのが素直な気持ちなんですよね。だから、難しい言葉は使っていないし、リズムに乗った時の語感がイイ単語を選んだし。でも、わからなくてもイイんですよ。とにかく、感じたまま、体を動かしてくれたら。
──粗野で奔放。楽しけりゃいいじゃないと言う、ロックンロールの醍醐味そのままのアルバムになりましたね。この作品を通して、みんなとどんな事を共有したいですか?
ROY:一番伝えたかったのは、みんなもっともっと楽しもうよって事なんですよね。今って、バンドをやっている人もそうだし、聴いている人もそうなんだけど、すごく考える人が多すぎるなって。音楽って、考えるんじゃなくて、感じるものだと思うんですよ。感じた事で喜びが得られるものが音楽なんじゃないかなって。楽しむという事は、すごく重要な事だと思うんです。みんな、すぐに“つまんない”って言ったり、“楽しい事なんか全然ない”って言ったりしてしまうけど、それって、待っているからだと思うんですよね。自分から向かって行って、発見できる楽しみっていうのも、すごくたくさんあるから、楽しむという事に、自分からどんどん向かっていってほしいと思うんです。
TAXMAN:今回のアルバムは、どの曲も、“ん?”と思わせる事をたくさんやっているから、だから、僕らの曲が耳に入ったら、ジャンルがどうとか、英語だからとか、何かを考える前に、疑わずに聴いてほしい。ただ疑わずに聴いてくれるだけで、絶対に楽しい気持ちになれるから。
──これから、目指す方向は?
ROY:やっぱり、ライヴを大切にしていきたいですね。もっともっとみんなにライヴを楽しんで貰いたいと思います。だから、僕らは、ライヴの事をパーティーと呼んでいるんですけど。まだまだみんな、ライヴとはこういうものって言う変なルールに従ってると思うんですよ。対バンの時、お目当てのバンド以外は、のっちゃいけないんじゃないかとか、誰も立っていない時は立っちゃいけないんじゃないかとか。そういうのを変えられたらいいなって。もっと、みんな、好き勝手でいいんじゃない?周りの事なんか気にしないで、思わず踊り出しちゃう、気がついたら体が動いていた、そういうライヴをどんどんやっていきたい。
──2008年は、オーストラリア公演も経験されましたが。
ROY:みんな、好き勝手にライヴを楽しんでいるんですよね。年齢も性別も関係ないし、踊り方に決まりもない。座って飲みながら観ている人もいれば、僕らに背を向けて踊っている人もいるし。食事をしていた老夫婦が突然、手を取り合ってテーブルの前で踊り始めたり。それでいいんだと思うんです。そこに音楽があって、それが楽しいと思ったら、そこに参加して、それぞれが全く違う表現だけれども、そのグルーヴが一体感を生んで、1つの空間を作る。素晴らしいなと思いました。日本でも、そういう環境が早く整えばいいなと思いますね。みんなが自由になれるのは、やっぱり、ロックンロールが一番だと思うから。そういうバンドであり続けたいし、そういうバンドがどんどん増えてくる環境を作っていきたい。それが目指すところですね。
──これから、ツアーが始まりますが。
ROY:ライヴのしきたりみたいなモノは一切取っ払って、縁日とかお祭りに行く感覚で来てほしいんですよね。例えば、縁日に行く時に、いちいち縁日って、どういう歴史があるの?とか、どうやって楽しむの?とか、考えたりしないでしょう。子供の頃から、ただ、楽しみにしてただけじゃないですか。行ったら楽しかった。それだけじゃないですか。行ったらワクワクする。ワクワクしたら、そのまま楽しむ。ただそれだけ。ロックンロールもそういうモノだと思うんですよね。
TAXMAN:僕らのライヴは、最近、40代、50代の人が増えて来たんですよね。親子2世代で来てくれる人がすっごく増えたんです。THE BAWDIESを好きになってくれた子達が、ルーツ・ミュージックにも興味を持つようになって、親と子に共通する音楽の話題が出来た。“サム・クックっていいよね、お母さん”なんていう会話が生まれている。そういう話を聴くと、すっごくうれしいし、少しずつだけど、何かキッカケができて来ているなって思うんです。
ROY:年齢も性別も関係ないし、みんな、力を抜いて、考えないで、一緒に踊って、一緒に汗をかいて、一緒に楽しみましょう。そんなパーティーに是非、参加してください。待っています!
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