──サウンド作りはどんな風に?
高橋:オトナモードの曲は全曲、僕が作詞・作曲していますが、新曲ができた時はメンバー全員の前で、アコギ1本の弾き語りで初披露するんです。それから、その曲のストーリーの背景とか、ビジュアル的なイメージをみんなに伝えます。
──セッションのように、自由に少しずつ音を重ねていく感じ?
高橋:いや、全く逆で、メンバーにはすぐには音を出させない(笑)。最初に誰かがなんとなく自分の考えでリズムを鳴らし始めたりすると、その印象が残っちゃって、そこから離れられなくなっちゃうんですよね。アコギの音と僕の声だけ聴いてもらって、その後は、その他の楽器の音を想像する時間。方向性が固まって“あ、今だ!”っていうタイミングで僕がキューを出して、初めて音を出す。僕はそれを聴きながら、これだ!と思う音を捕まえていく。“今のイイから記録〜!”とか“あ〜今のメモって〜!”とか(笑)。
──全編を通して、“風”を感じる曲が多いですね。歌詞のストーリーだけでなくサウンドからも。
高橋:そこがすごく大事だと思っているんです。例えば、「風になって」だったら、♪風になって 僕ら走ってゆくんだ・・・と歌う時は、サウンドもそこで風が吹くべきだって思うし。「グライダー」なら、グライダーが空をシューって飛んでいくように演奏しなきゃいけない。“それじゃ飛べないよ〜!”とか言いながら演ってたり。「グリーン」にも風が必要だし、「MOMENT」では海の風とか波しぶきが必要だし。サウンドを作りながら、目の前に波がフワっと表れる音がした瞬間はホントに楽しくて。
──インディーズ時代のアルバム制作と比べて、変化した点はありますか?
高橋:インディーズ時代にミニ・アルバムを3枚リリースしていますが、ホントに自分達だけでやってきたんですよね。だから、メジャー・デビューに際して、プロデューサーの下で制作するとなった時は、どうなっちゃうんだろうって。明日からいきなり、君たちはこうだ!みたいに色々変えられちゃうのかなぁって(笑)。でも、プロデューサーの根岸孝旨さん(一青窈、くるり、GRAPEVINEらも手掛けるプロデューサー。ベーシストとしても活躍)は、僕らのこだわりをとても尊重してくださって。例えば、「あの木のように」や「Our Way」でのストリングスも、キーボードの山本がアレンジしたものなんですけど、できるだけ自分達で最後までやりたいという僕らのポリシーを貫きながら、最後のところで更に伸ばしてもらった、更に良いものにしてもらった。そういうプロ・ミュージシャンとのやりとりは、すっごく勉強になったし、僕らの音楽も格段に成長したと思います。
──「さよならはさよなら」は、PVも大きな話題となりましたが、この曲だけは、アレンジがオトナモードではないですよね。これも初めての試み?
高橋:この曲だけは、プロデューサーもアレンジャーもミックス・エンジニアも初めての方に託して作った曲です。僕らとしては、新しい挑戦でした。作詞・作曲の段階からプロデューサーと話し合いながら作って。できた曲を、アコギ1本の弾き語りで、アレンジャーの浅田信一さん(元SMILE)に聴いてもらって。出来上がったサウンドをデモ音源で聴いて、僕らの演奏で再現するという全く新しいアプローチでした。
──イントロのピアノは、桜の花びらが舞い落ちる風景が目に浮かびますね。
高橋:完全にアレンジはお任せしたんですけど、花びらがヒラヒラ舞い落ちる音だけは必ず入れてくださいってお願いしました(笑)。
──アルバム全体としては、“今”をテーマにしたハッピーなラヴソングと“過去”を振り返る苦しい失恋ソングとかが半々の構成ですが・・・。
高橋:言われてみるとそうですね。ただ、僕としては、“時の流れ”というのがすごく重要で、ハッピーなラブソングも暗い失恋ソングも、けっこう同じところを見つめている所があって。例えば「グリーン」や「MOMENT」は、幸福な時間の中で、今この瞬間の彼女を掴みたい、一瞬の輝きを捉えたいと歌っている明るいラブソング。一方で、「ノーザンライツ」や「さよならはさよなら」は、時間の経過と共に変わっていっちゃう悲しさを描いた失恋ソング。それぞれ全く異なるストーリーですけど、共通しているのは、過ぎていく時間と忘れてしまう事の悲しさなんですよね。人は忘れちゃうんですよね。絶対、忘れちゃう。忘れたくないものとか、絶え間なく続くものっていうのも信じているし、だけど、信じていても、続かないっていう事もわかっている。だからこそ、大事にしたいって思える事があって。忘れてしまうからこそ、今ある輝きを大事にすべきじゃないかって思うんです。だから、ものすごく悲しい曲や苦しい曲もあるんだけど、全編を通して聴くと、とっても明度が高いアルバムになったと思います。
──作詞・作曲をする時は、詞が先ですか?曲が先ですか?
高橋:ほぼ同時なんですよ。ちょっとした時間差。言葉が出てきて、メロディつけて、また言葉が出てきて、メロディをつけてって・・・。詞が出てきた時に、詞がメロディを持っている事も多いから、それを大事にしています。言葉にはイントネーションがあるでしょう。例えば、「会う」という言葉は「あ・う」ですけど「あ・う」という音がついたら「会う」に聞こえないですよね。言葉のイントネーションがメロディと寄り添った方がちゃんと届くと思うので、そこにはすっごくこだわります。
──「グリーン」の中で“草原(クサハラ)”という表現が印象的だったのですが。
高橋:ソウゲンと言われると、ものすごく雄大なイメージ、ファンタジーなイメージになると思うんですよね。でも、僕があの曲で描いた風景は、近所の公園とか空き地、土手みたいな身近な風景なんです。だから“クサハラ”と歌うことにした。文字で見たら理解できるけど、音だけで聴くとわからない単語ってありますよね。たとえば、“ゲントウ”と言われた時に、“厳冬”もあるし“幻燈”もある。聴くだけで意味が伝わるかどうかをすごく意識しています。言葉選びも大事だし、選んだ言葉をどんなメロディ、リズムを乗せたらいいかというのもとても重要。早口で畳みかけるように歌った方が入ってくる言葉もあるし、少し余韻を残した方が理解できる単語もあるし。そういう言葉とメロディの寄り添い加減というのを、歌を作る人間として・・・シンガーソングライターとしては大事にしたいなって思っています。
──うたまっぷには自作歌詞の投稿コーナーもあるのですが、これから詞を書いてみようと思っている方へ、何かアドバイスをいただけませんか。
高橋:僕なんか、アドバイスできるような立場ではないですけど、例えば、大切な人への手紙には、心がこもっていますよね。根本はそういう事だと思うんですよ。僕はよくファンの方から手紙を貰いますけど、ものすごく感激したり感動したりする事が多いんですよね。例えば、友達を励まそうと思って書く手紙って、その人の事を一生懸命に考えて出てきた言葉でしょう。それだって立派な詞だと思うんです。どれだけカッコイイ言葉を並べても、気持ちがないと言葉は届かない。どうして、この詞を書きたいかというハートの部分がないと。ホントに周りの友達のために手紙を書くようなつもりで詞を書いたらいいんじゃないかと思うんですけどね。
──この後のスケジュールは?
高橋:7月にワンマン・ライヴツアーを行います。東京・名古屋・大阪・福岡の4都市なんですが。その後に、松本隆さんに作詞していただいた「雨色」という楽曲をリリースする予定です。
──作詞:松本隆、作曲:高橋啓太・・・夢が叶った?
高橋:いやいや、もう、そんな、松本隆さんに詞を書いてほしいなんて、考えた事も夢見た事もなかったです。もう、それくらいかけ離れた雲の上の方だと思っていましたから。松本さんとのご縁は、僕にとっては奇跡です。本当に素晴らしい詞を書いていただいたので、それに恥じないよう、いい作品に仕上げたいと思っています。
オトナモード ワンマンライヴツアー“Watercolor Tour”
●7/4 (土) 福岡DRUM SON
【問】キョードー西日本 092-714-0159
http://www.kyodo-west.co.jp
●7/12 (日) 名古屋ell FITS ALL
【問】サンデーフォークプロモーション 052-320-9100 http://www.sundayfolk.com/
●7/15 (水) 渋谷クラブクアトロ
【問】ホットスタッフプロモーション 03-5720-9999
http://www.red-hot.ne.jp/
●7/18 (土) 心斎橋クラブクアトロ
【問】清水音泉 06-6357-3666 |
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