楽曲の掘り起こしという点では、コブクロとコラボレーションした「木蘭の涙」もそうだと言う竹善さん。「木蘭の涙」と言えば、スターダスト・レビューを代表するバラード・ナンバーという印象が強いが、実は、スターダストレビューが「木蘭の涙」のアコースティンク・ヴァージョンをリリースしたのは2005年。竹善さんが「木蘭の涙 with コブクロ」を発表したのはその前年のことだった。
──「木蘭の涙」も竹善さんが掘り出した?
あの曲も、僕の中では“掘り出してきた曲”なんですよ。スターダスト・レビューがずっと歌い続けてきましたが、元々はいわゆる大ヒット曲ではないんですね。オリジナルの「木蘭の涙」(1993年のアルバム『SOLA』に収録、後にシングルカット)はね、プログレロックなアレンジだったんです。その時は、それほど印象的なものではなっかたんですが。
──何かキッカケがあったんですか?
僕のイベントにゲストで来てくださったときに、ア・カペラのバラード調で歌ってくれたんです。それが鳥肌ものでした。それを聴いて、いい曲だな〜と改めて思って、歌いたいって思ったんですよね。それで、コブクロに声をかけて一緒に演ったんですけど。
──「amanogawa」も掘り起こし?
これは、Skoop(現Skoop On Somebody)の曲ですけど、超がつく名曲ですね。リリースは1999年でしたけど、僕の中では、その年の邦楽ナンバーワンだったですね。
もう大好きな曲だったから、歌いたくて。カヴァーすることを伝えたら、Skoop On Somebody自身がコーラスで参加してくれることになって、僕のソロ・シングルとしてリリースしたんですけど。ただ、僕としては、ミックスにちょっとだけ納得いかないところがあったんですよね。それで、今回、ミックスし直したんです。
──納得いかなかったというと?
全体にブレンドし過ぎた感じがあって。もっと、一つ一つの楽器の音や声を生々しく存在させてみたくなったんです。
──ところで、今回のアルバムにも「真夏の果実」が収録されていますが、竹善さんのカヴァー・シリーズではサザンオールスターズの曲が多いように感じるのですが…。
僕は、サザンオールスターズの大ファンなんですよ。デビュー・アルバムからずーっと聴いてます。特に『ヌードマン』『Kamakura』あたりまでは、もう全アルバム、全曲、非常にヘビーに聴いてましたから。
──サザンオールスターズだったら、アルバムを丸々カヴァーできちゃいますね?
そうですね(笑)。でもね、桑田さんの声だからこそっていう曲も多くて、歌いたいけど歌えない曲も実はいっぱいあるんですよ。歌ってみると、やっぱりこれは桑田さんの声じゃないとっていう曲がいっぱいあるんですよね。
──例えば?
僕が「マンピーのG★SPOT」歌ってもねぇ(笑)。
──うわっ。まさか竹善さんの口から“マンピー”が出てるとは・・・。
あはははは(爆笑)。「虹色ナイトクラブ」とかも、ちょっとねぇ(笑)。
──竹善さん、ぜひ「マンピー」歌ってほしいです!
いやいやいや(爆笑)・・・カラオケで盛り上がるくらいならいいけどねぇ(笑)。
──じゃ、ライヴのときに、ちょっと余興ってことで…。決して、ライヴアルバムとか出さずに歌いっぱなしということで…お願いします(笑)。
余興〜?(爆笑)ハッハッハッ・・・(笑い止まらず)。余興だったらねぇ。あんまり、様にはならないと思いますが(笑)。
* * *
アルバムには、「今日も君に恋をした」をはじめ「夢みたものは」「LET ME IN」など竹善さん自身が作詞・作曲した珠玉のラブソングも多数収録。
様々な愛の形を描いた、こうしたバラードは、どんな風に生まれるのだろうか。
──竹善さんが、ご自身で曲を作るときはどんな風に?メロディが先ですか?
必ずメロディが先ですね。
──作曲は何か楽器を弾きながら?
歌うんですよ。メロディを歌っていくんです、自分の声で。それを録音して聴いて、ああしたい、こうしたい、と作っていく。メロディは、それを歌う人の声で気持ちよく響くかどうかが一番大事。その声に合うメロディ、合わないメロディというのがあると思います。だから、自分の声でメロディを作っていくんです。
──メロディに言葉を乗せるときは、どんな風に発想していくのですか?
まだ歌詞がついていない段階のときは、無声映画みたいな感じなんですよ。歌詞をつけるというのは、その無声映画にセリフを入れていく感覚なんですね。セリフをはめ込んでいく感じです。
──では、メロディが完成した時点で、もう歌の情景はできている?
そう、もう情景としてはありますね。ストーリーの流れもできている。ただ、同じ映像でもそこで何を喋るかで全然違うものになるでしょう?だから、その情景にいちばんピッタリ来る言葉を探していくんですね。
──トーキー映画の弁士みたいですね?
そう、弁士みたいな感覚です。そのストーリーを伝えるには、どんな語り口調でどんな言葉が一番合うんだろうって。
──詞を書かれるときは一気に?それとも、ポイント、ポイントの言葉が埋めていく感じですか?
僕の場合は、一行目から順番に書いていきますね。千章(SING LIKE TALKINGの藤田千章)なんかは、パズルのように言葉を散りばめるようにして書いてますけど、僕は会話を進めるように、順番にストーリーを書いていきますね。
──手で書かれますか?
いまは、パソコンですね。パソコンで書いたり消したり、書いたり消したりです(笑)。
──自作歌詞コーナーに投稿をしている方に何かアドバイスをお願いできませんか?
え〜っアドバイス〜?!いやいや、僕はね、詞に関してはアドバイスできるほどの者じゃないです。まだまだ修行中の身だと思ってます。ただ、僕がいつも思っているのは、歌詞は歌詞であって、詩ではないということ。その違いは大きいと思いますね。
例えば、にしきのあきらさんの「空に太陽がある限り」という歌があるでしょう。♪愛してる〜(愛してる〜)とても〜(とても〜)…って、最初から最後まで、愛してる、愛してる、愛してるって、ずっとそればっかり。でも、メロディがあるから、そこに行間が生まれてイメージが広がっていく。この行間があってこそ歌詞になる。文字だけで完結しようとすると、もう、それは歌詞にならないと思うんですよね。歌詞でいちばん大事なのは、行間を感じるということだと思いますね。
いい歌というのは、歌う人の表現力とメロディと歌詞の行間の一体感で生まれるものだと思います。
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