──「カンパニュラの恋」は、これまでの平原さんの作品とはかなり印象が異なりますよね?
倉本先生とご一緒したことで、とても勉強になりました。主人公とその背景をしっかり設定してアプローチしていく、脚本的な詞の書き方を学びました。これまでの私の作詞方法には全くなかった視点だったので、とても勉強になりました。
──平原さんは、ご自身で詞も曲も書かれますが、ふだんの楽曲づくりはどんな風に?
曲先行の方が多いですね。私自身がサックスを専攻していましたし、父もサックスプレイヤー、祖父もトランペッターという家庭で育ちましたから、やはりメロディーの方が先に出てきますね。
──詞を書くときは、メロディから受けたイメージで書いていくのですか?
そうですね。音にメッセージが入っている気がしてて、そのメッセージを受け取って書いていきます。例えば、ストリングスが入っているデモを聴いたときに、“ジュラシックパークっぽいな”と感じて恐竜という言葉が出てきたり、“あ、これは雨だな”と感じる音があったり。でも、あまり合わせ過ぎちゃうと立体感がなくなっちゃう気もするんですよね。例えば、効果音で雨の音が入ってるときに、歌詞でも雨と言っちゃうと、ストレートすぎて奥行きがなくなってしまったり。音に合わせつつ、でも、合わせ過ぎないような歌詞というのを心がけています。
──他の方の歌詞を見たり、読んだりもしますか?
実は私、“うたまっぷ”をよく使っているんですよ。松井五郎さんが大好きなので、松井さんの歌詞を調べたり、それから小田和正さんの詞も好きで、よく見ています。新曲のタイトルをつける時に、同じ言葉が使われていないか調べたりもしますよ(笑)。
──うたまっぷには自作歌詞の投稿コーナーもあるのですが、投稿している皆さんに何かアドバイスをお願いできませんか?
共感できるというのが一番なんじゃないかと思います。共感できることを言葉にしてほしいなと思います。
共感というのは、誰もが感じることだから、目新しいテーマは見つからないかもしれないけど、当たり前の普通のことが、すごく大事なんだと思うんですよ。だから、既に誰かが歌っているテーマと重なってもいいと思うんです。何か1つ、心にぐっとくる言葉があれば、その歌詞は無限の広がりを見せてくれると思います。
──平原さんご自身が、これから歌っていきたいこと、伝えていきたいことは?
私は音楽を聴くときに共感したいんですね。そうだよね〜って共感したいんです。そういう歌を聴きたいし、読みたいし、歌いたいし、伝えていきたい。
今までもずっとそうだったし、これから先も多分ずーっと、愛を歌い続けていると思います。愛と言っても、様々な愛の形がありますよね。強い愛、弱い愛、優しい愛もあれば、すごく攻撃的な愛というのもあると思います。
「ジュピター」でデビューして以来、壮大な宇宙的な愛をテーマとすることが多かったので、もっと身近な年相応な愛の歌を書くべきなのかなと迷っていた時期もあったんですけど、例えばちょっと背伸びして書いた歌詞があったとしても、結局はそれも、その時の自分にしか書けない詞なんですよね。だから今は、どんな言葉も必然だと思って、自分の心に正直に書いた方がいいのかなと思うようになりました。
音楽って、思いを人に伝えたいから、始まったんだと思うんですよね。例えば、まだ人間が言葉を持たなかった原始時代とかでも、何かを打ち鳴らして音を出していたと思うんですけど、それは、音を伝えたかったんじゃなくて、思いを伝えたかったんだと思うんですよね。だからきっと、そういうDNAは変わらないし、私はこれからもずっと共感できる愛を歌っていきたいと思います。
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