井上実優ファーストアルバム「Sparkle」全曲トレーラー映像
幅広いジャンルの楽曲を歌いこなす圧倒的な歌唱力から、次世代を担う女性シンガーとして期待が集まる井上実優。2月にリリースした3rdシングル「この空の果て」が人気シリーズドラマ『科捜研の女』の主題歌となり、その歌声に魅了された方も多いことと思う。そんな人気急上昇中の彼女が、待望の1stアルバム『Sparkle』をリリースした。今作はデビューシングル「Boogie Back」、セカンドEPのリードトラック「Shake up」、くだんの「この空の果て」に新曲4曲を含む全10曲を収録。14歳から音楽塾ヴォイスで学び、努力を重ねてデビューを果たした彼女。その軌跡の中での葛藤や夢への想いから紡がれた歌詞は、同じように夢を追う人々の心にきっと響くハズだ。ということで、井上実優に直撃インタビューを敢行。初めて自分自身だけで作詞をした新曲「近未来」「again」の2曲を中心に話を聞いた。ビデオ・メッセージと併せてお楽しみください。
──1stアルバム『Sparkle』がリリースとなりました。ツイッターやインスタグラムを拝見したところ、CDショップで撮影された写真がアップされていました。
各CDショップでは、デビューシングル「Boogie Back」から振り返られるようなパネルを飾って『Sparkle』のコーナーを展開してくれて、本当に嬉しかったです。今まで、様々なビジュアルを撮影してきたなと、あらためて思いました。全てが初めての経験だったデビュー当時と比べると、本作では「こういうジャケットはどうですか?」など、自分の考えも伝えられるようになったので、そういう面でも成長したかなと思います。
──アルバム制作は、いつ頃からスタートしたのですか?
3rdシングルの「この空の果て」の制作と同時進行でした。収録曲を選んだり、DVDの収録内容などを具体的に考え出したのは去年の10月末からですね。シングル表題曲はもちろん収録を決めていましたが、そこからの選曲はすごく悩みました。個性豊かでバラエティに富んだ楽曲を収録したアルバムになるだろうなと思っていたので、1曲1曲の繋がりを重視しながら選んでいきましたね。ラストナンバーまで惹き込まれるような流れにしたいと思い、次はこのサウンドから気持ちよく聴けるか、激しいビートの後は別の一面を聴いて貰いたいななど、私自身がリスナーになった気持ちで考えました。特に1曲目とラストナンバーは大事なポジションだと思ってジックリ考えましたね。幕開けを飾る楽曲は登場感・疾走感のある「近未来」、ラストはこのアルバムを締めくくるに相応しい、初めて自分で作った楽曲の「again」に決めました。
──アルバムタイトルは収録曲が決まってから考えられたのですか?
そうですね。『Sparkle』という言葉は音の響きもいいし、以前から心に引っ掛かってはいました。ただ、やはり“初めてのアルバム”を表すタイトルがいいのかなと思っていたんですね。でも、スタッフと話し合う中で「“初めて”にこだわらなくてもいいのでは?」と言われて気付きました。この10曲をアルバム収録曲としてあらためて考えると、必要なのは「ここから行くぞ!」という意気込みが伝わるタイトルなのでは?と。「Sparkle」は「火花を散らす」「輝く」などの他に「異彩を放つ」という意味もあります。前向きでポジティヴな想いを込めて、『Sparkle』に決めました。
──収録曲の歌詞に関しては、ある意味、井上さんの10代の集大成のように思いました。
確かに、歌手になりたいと頑張ってきた歴史が詰まっているかもしれないですね。
──実体験そのままではないでしょうけど、14歳から音楽塾ヴォイスで学び、努力を重ねてデビューのチャンスを掴み、そして今日に至るまでの葛藤や想いが歌詞に表れているように思いました。
様々な年代に制作した楽曲が詰まったアルバムでもあって、私が生み出した言葉に、その時のリアルな想いが無意識に表れているかもしれませんね。「Break down」は作詞を初めたばかりの14歳の頃に制作したので、少し背伸びをして迷いながら歌詞を書いているようなところもありました。それから徐々に読書や映画で疑似体験をしながら作詞の経験を積んで、ようやく本当の意味でありのままの自分の言葉で歌詞を書けるようになってきたのではないかなと思います。
──それに、キャッチコピーの「私だけが放つことの出来る、輝きをー」は、夢や将来を考える時に同じような想いを抱く若者もいるのではないかなと思います。だから今作の歌詞は、井上さんと同世代の方々が、より共感できるのではないかなと。
そう言って頂けると嬉しいです。好きな事や特技を見つけたいと悩んでいる同世代の人に自分が輝きを放てるなにかを見つけようとするのは、何歳であっても遅くはないと思います。自分が輝くためには何が出来るだろうと迷っている時に、このアルバムがその人自身の輝きを見つけるキッカケになったら嬉しいですね。
──新曲は4曲収録されています。
「近未来」「Break down」「消えない」「again」ですね。
──1曲目の「近未来」とラストナンバーの「again」は、井上さんお一人で作詞を手掛けています。
今まではミワコウダイさんと共作で、2人で協力をして歌詞を書いていましたが、今回初めて私だけで作詞をしました。「自分で書きます!」と宣言した訳ではないのですが、気付けば歌詞を書き上げていました。
──この2曲はいつ頃制作されたんですか?
一番新しい楽曲は「近未来」です。秋に歌詞を書いて11月から12月に歌入れをしました。「again」は14歳の時に一度は完成していましたが、1stアルバムに収録が決まって、元の歌詞からテーマもガラッと変えて、あらためて私が歌詞を書き下ろしました。「近未来」と同時期に書き初めましたが、「again」のほうが時間を掛けましたね。
──幕開けを飾る「近未来」は不変の愛を歌っています。どんな想いから歌詞を書き始めたんですか?
デモ音源を聴いた時に、日常的な穏やかなテーマを歌う楽曲ではないなと直感し、今の私では体験できない世界を表現してみようと思いました。それで、大好きなアニメ作品と組み合わせてみました。
──どういう事ですか?
「近未来」のデモ音源を流しながら、音声を消した様々なジャンルのアニメ作品を観て想像を膨らましていました。そうして楽曲に合う世界観を探していたら、ロボットアニメがマッチするような気がしたんですね(笑)。
──どんな作品をご覧になったんですか?(笑)
私の好きな作品で新海誠監督の『ほしのこえ』というSFロボットアニメがあり、同じように映像に音楽を合わせてみたら本当にピッタリで。それをきっかけに『ほしのこえ』にインスピレーションを受けて、ミワさんに「不変の愛」というテーマを話したら「いいね」となり、そこから作詞はスムーズに進みましたね。
──「近未来」というタイトルは、どのように決められたんですか?
この楽曲は、SF的な世界観をイメージして作ったので、最初は漢字よりもカタカナや英語のタイトルがいいのかなとも思ったんですね。例えば「ユートピア」であったり。でも、せっかく私が初めて描いた世界観で、今までとは異質な歌詞を書いているから、リスナーに深いところまで読んで貰いたいなと思いまして。まず初見で「おや!?」と思わせるような目を引くタイトルがいいなと、あえて「近未来」と付けました。ありそうで中々無いタイトルのように思えて、今はすごく気に入っています。
──歌詞では、「I wonder how exist as liar…」という英語詞が気になりました。どんな想いを込められたのでしょうか?
この部分はメロディのノリに合わせるだけではなく、シッカリと意味のある英語詞にしたいと思っていて。先程話した『ほしのこえ』は人類と地球外生命体が戦うSFロボットアニメで、宇宙と地球で離ればなれになった少年と少女の遠距離恋愛を描いた作品です。作中では、地球外生命体に侵略されてしまった人間は自我を失い、ただの破壊兵器になってしまうんですね。その設定をイメージして、特にBメロでは主人公が離れ離れになった大切な相手を探してもがいている様子をイメージしています。日本語訳は「嘘をついてまで、どのように存在していいのか分からない」。一度自我を失えば恋愛感情ではなく、抹殺する目的で好きな相手を探す事になる、2番の「I started searching you without heart…」では心を失くした状態でまで好きな人に会いたくないという、どちらも主人公の苦悩を描いています。
──また、歌詞のワードでは「オーパーツ」が分からなくて辞書で調べてしまいました(笑)。
「オーパーツ」とは“そのもの自体にそぐわない時代やズレた場所で見つかった古代の物”という意味で、この楽曲の中でも特に気に入っているワードです。先程も話したように、この楽曲のメインテーマは「不変の愛」です。昔の人たちは短歌や俳句を書いて愛を伝え合っていましたが、それが音楽になったり今はスマホやSNSになったり、伝える媒体が変わっただけで、“人を愛する想い”自体は不変だと思います。それと同時にもう1つ、「時代錯誤」や「ズレ」を裏テーマにしています。最初にデモを聴いた時に、EDMサウンドとは相反して、サビにすごく和な感じがして、実際に琴や三味線の音が入っていて、最初は『千と千尋の神隠し』の湯屋の風景がパッと頭に浮かびました。そんな第一印象から、後々ロボットアニメのようなSFの世界観が合うなと感じたそのサウンドとイメージの「ズレ」も、また歌詞に描いている2人の変わらない愛もある意味「時代錯誤」だなと思い、象徴的に「オーパーツ」という言葉を使いました。
──ラストナンバーの「again」は母親への想いを綴っています。歌詞の「笑っていれば大丈夫だよ」、「一人で何もかも決めないで」というフレーズは、実際に母親から言われたのでしょうか?
母とは胸に刺さるような言葉を沢山言いあったなと思って、実際にあったエピソードを入れました。作詞にあたって、母に言われた言葉、ケンカやその要因など覚えている全部を書き出してみましたが、恥ずかしかったですね(笑)。その中からリアルでグッと胸に刺さりそうな言葉を思い切って選んだフレーズです。
実は音楽塾ヴォイスに入った頃から、中高校生の間は母とほとんど話をしていませんでした。今振り返ると、音楽や学校の問題ではなく、単純に私が思春期だったんだと思います。当時の私はこうと決めたらその道しか見えない一直線な考え方でした。そんな私に対して、父は自分で厳しい道を選んだのだから辛くても突き進んで欲しいという考え方でしたが、母は「そんな頑張らんでよくない?」と言ってきたりして。思いやってくれているのは分かるのですが、一生懸命頑張っている時に言われると、その気遣いが逆に癇に障って。でも、それで私が言い返してしまうと、母からしたら「何を勝手に怒っているん?」とケンカになるので、徐々にお互い口を聞かなくなりました。本当に高校卒業間近まで話をしませんでしたね。
──お互いに頑固ですね(笑)。
多分お互いが似ているからそうなったように思います。当時、母は私の気持ちを理解してくれて当たり前だと思っていたところがありました。でも、話もしないのに分かり合える訳は無かったなと思って、今はすごく後悔しています。今では母と普通に喋りますし、とてもいい関係です。東京に来てから母親のありがたさが泣くほどわかりましたし、この想いをどこかで必ず伝えたいとずっと思っていたので、1stアルバムという1つの節目に、「again」で自分なりに想いを伝える事が出来て本当に良かったです。
──母親に「again」の歌詞の内容を伝えました?
直接は言って無いです。母に「あの時、実はね」と言うのが恥ずかしいから歌にしたので、直接伝えるのはまだ時間が掛かりそうです。でも、ラジオでは「母への想いを綴った曲なので聴いてくれたら嬉しいですね」と話しているので、わかってくれていると思います。
──歌詞にも「ありがとうさえまだ 照れてしまうけど」とありますね。また、タイトルにはどのような想いが?
実はデモの段階で既に付けられていたタイトルでした。1度こじれてしまった母との関係をまたやり直せたから、そういう意味を込めて「again」というタイトルはそのままにしました。
──そして、この曲のレコーディングには、シナリオアートのハットリクミコさんがドラムとして参加されています。
クミコさんは事務所の先輩です。以前のデモ音源ではドラムを打ち込みにしていたのですが、あらためてレコーディングをするに当たって、ダイナミックさや臨場感のある生のドラムを入れたいと思って、「是非よろしくお願いします!」とオファーしました。クミコさんのドラムがあるからこそダイレクトに音が伝わり歌詞にも更に説得力が生まれたので、参加して頂き本当に良かったです。
──もう1つの新曲「消えない」は、学生時代の友人に向けて書いた歌のように感じました。
高校時代に「恋と夢の選択」をテーマに歌詞を書いたラブソングです。お互いに好き同士だけれど、相手の夢を分かっているから引き留められないという葛藤、青春時代にしか感じられない想いを書きたいと思って。当時の私は歌手になるという夢を追いかけている側だったので、私のリアルな想いを入れた曲でもありますね。
──歌詞にある「光の Knight」は、具体的に誰かをイメージされましたか?
メロディから連想した言葉です。最初に楽曲を聴いた時に、ミュージックビデオを撮るなら絶対にキラキラした星の下で歌うだろうなと思いました。それで、夜や夜空という言葉を入れたいと思い、そこから英語の「NIGHT」、さらに音の響きから騎士という意味の「Knight」を連想して、このワードは彼氏という意味にも掛かるなと思い、歌詞にしました。
──そんな高校生当時のリアルな想いから生まれた曲もある今作は、井上実優の10代の集大成とも言えるアルバムになったと思います。1stアルバムは1つの節目でもありますが、次なるステップに向けての想い、また、今後新たに取り組んでみたい事などもありましたらお聞かせいただけますでしょうか?
私は以前からSNSで、観た映画や読んだ本、描いた絵を紹介しています。そういったアウトプット、自分から発信して行く事をもっと伸ばして行きたいです。それが私の音楽を知って貰うキッカケにも繋がると思うので、先程の『ほしのこえ』のようにインスピレーションを受けた作品や私のルーツなど、素顔の井上実優をもっと知って貰えるように努力したいですね。音楽的な面では、作曲に取り組み始めています。詞も曲も私自身で創り上げて、井上実優を100%表現出来る楽曲を1日も早く皆さんに披露したいです。
取材・文:岡村直明