モデルや声優、映画出演など幅広く活躍し、ファッション、カルチャーのPOPアイコンとしても人気を集めるMICOのソロプロジェクト“SHE IS SUMMER”。6月にリリースした2nd E.P.「Swimming in the Love E.P.」がオリコンインディーズチャート6位、i-tunesエレクトロチャートで1位を記録。1st E.P.「LOVERY FRUSTRATION E.P.」収録の「とびきりのおしゃれして別れ話を」のMVが160万回再生を超えるなど注目度急上昇中の彼女が、自身初のフルアルバム『WATER』をリリースした。2nd E.P.に引き続き、ひろせひろせ(nicoten / フレンズ)、原田夏樹(evening cinema)、元ふぇのたすコンビのヤマモトショウに加え、LILI LIMITの土器大洋、ヒックスヴィルの木暮晋也、Schroeder-Headzの渡辺シュンスケ、かせきさいだぁなど豪華アーティストが集結。キャラクターや風景の独特な描写が印象的な歌詞と多彩で耳馴染みの良いサウンドに惹き込まれる素敵なポップアルバムだ。ということで、SHE IS SUMMERのMICOを直撃し、初めてのフルアルバム制作の話から参加アーティストとの共作エピソードまでタップリと話を聞いた。「“なりたい自分”が“本当の自分”」と語り、SHE IS SUMMERを通して常に自身の成長を考える姿勢が印象的で、今後の動向が益々気になるインタビューとなった。3月からスタートする初のワンマンツアーも必見だ。
──1stフルアルバム『WATER』は、前作「Swimming in the Love E.P.」の世界観を踏襲しているような印象を受けましたが、いつ頃から制作をスタートされていたのでしょうか?
フルアルバムを作ろうとハッキリ決まったのは「Swimming in the Love E.P.」をリリースしたあたりです。ただ、昨年から常にライブのために新曲を作り始めていたので、曲作りという意味では「Swimming in the Love E.P.」と同時進行でした。「私たちのワンピース」や「LAST DANCE」などは既にライブで披露していました。
──アルバムタイトルは、制作のどんなタイミングで決められたのですか?
2枚のEPをリリースして、フルアルバムはその集大成になるような作品にしようというコンセプトは最初からありました。これまでリリースした2枚は日常の細かいシーンを切り取ったようなタイトルでしたが、フルアルバムはもっと長い時間軸を表現できるタイトルにしたいなと思っていて、一言のほうが逆に表現できる範囲が広がるかなと。それで、フルアルバムのタイトルは一言にしようと決めていたんです。
フルアルバムの制作が始動してから、具体的にタイトルをどうしようかなと考えたときに、私の中に『WATER』という言葉があって。その頃、音楽を聴いている時や音楽をやっている時にすごく心が潤うなと感じていて。だから、生活の潤い、日々の潤いの1滴になるようなアルバムが作れたらいいなと思っていたんです。それに、耳触りの良い音が入っている楽曲を好んで聴いていたりもして、パーカッションの音が水の雫の落ちる音のように聴こえる事があって。そういう音を自分の曲にも取り入れたいとも思っていたので。本当にいろんな事を連想しましたけど、『WATER』という言葉しかしっくりくるものが思い浮かばなくて、そのままタイトルに決まりました。
──『WATER』という言葉は何かを象徴されているんですか?
固定のモノを象徴していない広い範囲を表せる言葉だと思ったからこそ選んだんです。フルアルバムはそういうものだと私は思っていたので。このタイトルには本当に色んな想いや意味があったりします。こうして取材を受けた後に思い出す事もあったりしますし(笑)。でも、『WATER』じゃないとダメだったなと思います。
──ツイッターを拝見したところ、曲順を決めるのに相当悩んでいたようですが。
2枚のEPや音源化していなかったライブ楽曲と、アルバムタイトルが決まってから制作した楽曲を半分ぐらいずつ収録しているんですけど、曲順はかなり悩みました。
──幕開けを飾る「(mirage)」はインストナンバーです。
聴いた瞬間に「ここから何が始まって行くんだろう!?」とワクワクするようなインストが1曲目にあるといいなと思って。それで、今回はこういうイントロダクションを付けています。イントロダクションを付け加えると、同じ曲でも受け取り方が変わったりして音楽的にとても面白いなと思っていたんです。SHE IS SUMMERのコンセプトの1つに「日常にあるモノを見方を変えて楽しめるようにしたい」というのがあって。代表曲の1つで、EPではラストナンバーだった「とびきりのおしゃれして別れ話を」も、イントロ明けに収録する事で聴こえ方が変わって、そのコンセプトにピッタリの曲順になったかなと思っています。
──一方、コチラも代表曲の「出会ってから付き合うまでのあの感じ」をラストナンバーにしたのは?
それこそEPでは1曲目ですけど、ライブで歌って行く中でだんだんエンディングを飾ってくれるような、私の中でフィナーレ感のある曲に育って行ったんですよね。この曲が最後にあるから、そこに辿り着くまでに出会って来た全員の顔が再び頭に浮かぶみたいなイメージに変わって行って。それで「ラストを飾るのはこの曲!」と思いました。
──曲順はそのままSHE IS SUMMERさんのライブステージみたいですね。
ライブで曲が育っていったからこそ、この曲順になったというのもありますね。ライブに来てくれた皆さんの反応が曲を育ててくれて、曲に対する私の想いがかなり変わったところもあります。
──ブログには「フルアルバムを作っていく中で、私は"憧れを日常生活にしてしまいたい"という気持ちが強くなっていきました」と書かれていましたが、どうしてそう思ったんですか?
SHE IS SUMMERとして活動していく中で「自分は本当に好きなモノを選べているのかな?」と考えるようになって。例えば、日常生活の効率を優先して本当に好きなモノを選べていなかったりする事があるなと思って。「日常だから」「憧れだから」とそれぞれを切り離して考えずに、憧れを日常生活にしてしまいたいと思ったし、自分次第でそう出来るなとも思ったんです。きっと「なりたい自分」が「本当の自分」だと思うから、「なりたい自分」を歌って、いつかそうなりたいなというのがSHE IS SUMMER全体のテーマとしてあります。今回のフルアルバムは1st EPと2nd EPでやってきた事の集大成なので、曲を作って行く中でより色濃くそう思ったのかもしれないです。
──『WATER』で「なりたい自分」を表現できました?
ある意味で満足をしていますし、またいろんな事が変わって来ているなとも思いました。ここ2ヶ月ぐらいで自分の精神年齢がグッと上がったような気がしていて。『WATER』を作って「なりたい自分」がまた変わってきているんですよね。
──ところで、MICOさんのツイッターを見ていたら、アルバム制作が一段落したあたりから、映画を沢山ご覧になっているようでした。
もともと映画は沢山観ます。SHE IS SUMMERという名前も、映画『(500)日のサマー』のヒロイン、サマーちゃんに憧れて付けているので。楽曲を作る上でも映画や映像がキーポイントになっていたりします。例えばアレンジを依頼する時に「こういう映像を表すような音を入れて欲しい」とお願いするぐらい映像がポイントになっていますね。
──無茶振りですね(笑)。
アレンジャーの人からしたら迷惑な話かもしれませんけど(笑)。でも、意外と分かりやすいと言って貰えたりします。
──それで上がって来たアレンジはイメージ通り?
ブレの無い事が多いです。映像を渡してお願いしたほうがイメージにブレの無い事が多かったりして面白いですね。意外と映像や視覚的なモノの方が、音を作る上でもイメージが伝わりやすいのかもしれませんね。
──また、前作のインタビューで岡崎京子さんの漫画を読んで影響を受けたとおっしゃっていましたが、『WATER』では影響を受けた映画などはありましたか?
引き続き、岡崎京子さんや、岡崎さんのアシスタントをされていた安野モヨコさんの作品には影響を受けています。お二人は女子としてどんな事を発信できるのか、ということを体現されていると思っているので、私もそういうガールズ・カルチャーの一部になって発信できる事があればいいなと思っています。
あとは、好きなミュージックビデオにインスパイアされて「LAST DANCE」の歌詞を書いたり、「とびきりのおしゃれして別れ話を」は『(500)日のサマー』に影響を受けて書いています。それに「思い出はシャンプーの中に」のメロディは、あだち充さんの漫画に影響されているかもしれません。漫画を読んで、その世界観からインスパイアされて「こういうメロディがいいかも」と考えたりしましたね。
──参加アーティストの豪華な顔ぶれも目を見張ります。リード曲の「WATER SLIDER」の作曲は、LILI LIMITの土器大洋さんです。どのようなキッカケからコラボレーションされたんですか?
リード曲は今までとは違う、新しい作り方をしたいなと考えていて。今までは、プライベートで仲良くなった人に楽曲制作をお願いするパターンが多かったんですけど、今回は純粋にアーティスト同士、湧き上がってくるイメージから楽曲を創り上げてみたくて。土器さんとは一度だけ対バンをしたことがあったんですけど、プライベートでの交流はなくて。そう言った流れも含め、土器さんに作曲とアレンジをお願いしました。
土器さんには、今までのSHE IS SUMMERより大人っぽい曲にしたいとか私の好きな音とか、いろいろお話しさせて頂きましたけど、最初に依頼した段階では、曲のタイトルは伝えないで“水”というテーマだけ伝えていました。その時には私はリード曲に「WATER SLIDER」というタイトルを付けられたらいいなと思っていたんですよね。でも、土器さんのイメージから出て来る曲を聴いてみたかったから、タイトルまで言ってしまうとイメージを縛り過ぎてしまうと思って。タイトルは伝えずに作って貰ったんですけど、「これは『WATER SLIDER』だ!」と思う曲が上がって来て。もう一発で「リード曲はコレっ!」となりましたね。その曲に土器さんは「POOL」という仮タイトルを付けていたそうなんですけど、「水」というテーマに向かって作って行く感じがメチャクチャ気持ち良かったです。そういう意味でも『WATER』は良いアルバムタイトルを付けられたなと思いました。
──歌い出しの「この頃わたし 不機嫌な気分が続いて」はご自身の気持ちを映し出していますか?
ムチャクチャご自身のお気持ちかもしれないですね(笑)。この曲も最終的には前向きですけど、1日中寝ていたかったりする「ヤル気出ない週間」みたいな時ってありません?そんな時に自分に贅沢をさせてあげてヤル気を出したりします。象徴的なのが、雨の日にタクシーに乗って東京の街を一望する事なんですけど。雨の日の東京が好きで、水滴が張り付いている窓ガラスを通してアスファルトが光っている光景などを見ていると、すごく綺麗だなと思います。それに、停まっていたタクシーがアクセルを踏んで進みだした途端、窓の水滴が後ろになびいていく感じがウォータースライダーみたいにすごく気持ち良さそうで。グッタリとして窓を眺めながら「私もこの水滴の一粒になって一瞬で見た事ない世界に飛び込んだら、今のこの気持ちなんて忘れてしまうんだろうな」って思う事が良くあります。その感覚が好きだし、私自身が一瞬にして全く違う世界に自分の身を投げ入れる事で成長してきたりもしているので、その想いを歌詞にまとめた感じですね。
──また、全てのレコーディングを終えた後に「WATER SLIDER」のミュージックビデオを撮影されたようですが。
はい、そうですね。私は、日常生活で次の瞬間何が起こるか分からないけど、それを自分で巻き起こす事も出来ると思っていて。何かを変えれば流れも変わるんじゃないかみたいな希望は詰め込みたいと思いつつ、今までより大人っぽくもあり、視覚と聴覚とをくすぐる楽しいビデオになったかなと思います。
──撮影はどうでした?
初めて横浜で撮影しましたけど、面白いロケーションが沢山ありました。今回は絵コンテが無くてスナップ写真のようにドンドン撮って行ったので、編集の時に「このカットも使いたい」とか選択肢が多くて悩みました。スタッフ皆で集まって編集をしたりもして、撮影方法としても今までと違ったカタチになりましたね。
さらに、この曲をライブでやる時に、体感できるモノに変換して行けたらなと。純粋に曲を聴く、ミュージックビデオで観て聴く、ライブでこの曲の世界に自分が入って行く。曲を聴いて映像を想像したり、ただ踊るのもいいかもしれない。それぞれ違ったタイプの楽しみ方が出来ると思いますし、楽しんで貰えたら嬉しいですね。
──3曲目の「私たちのワンピース」は、Alaska Jamの石井浩平さんの作曲です。Alaska Jamさんの曲とは全く違う渋谷系のサウンドに驚きました。
石井さんとは昔からの知り合いで、そういうJ-POPも詳しいんですよね。以前に私がバンドをやりながらたまにソロとして活動していた時にも一度曲を書いてくれた事があります。「MICOちゃんにはこういう歌を歌って欲しい」と書いてきてくれたその曲も渋谷系でした。私は小さい頃、深田恭子さんの「キミノヒトミニコイシテル」を聴いてビビッと来て、その後に小倉優子さんの「オンナのコ オトコのコ」を聴いてまたビビッと来て。そして、この2曲を小西康陽さんが作っている事を知ってピチカート・ファイヴに入り、渋谷系の音楽を好んで聴いていました。以前のバンドはエレクトロな音楽をやっていましたけど、その当時一番好きだったのが「Lamp」というバンドでしたし、オーガニックなサウンドも好きだったので、石井さんともう一度そういう曲を作りたいと思って制作しました。
──MICOさんから石井さんに作曲をオファーされたんですね。
そもそも「私たちのワンピース」は、「LEBECCA boutique」という洋服屋さんをやっている私のお友達、赤澤えるさんが開催するフリーマーケットのテーマソングとして書きました。えるさんと石井さんも交流があって「石井さんに作曲を頼みたいね」という話になって。それに、フリーマーケットの開催地が下北沢という背景もあり、渋谷系の音楽が合うのではないかなと思って、こういうサウンドになったというのもあります。
──続く4曲目の「NIGHT OUT」は、ORESAMAの小島英也さんの作曲です。
前作で「出会ってから付き合うまでのあの感じ」のアレンジをして貰った時に、小島さんが「次はメロも書いてみたいな」と言ってくれて今回のフルアルバムで実現しました。
──間奏にアルバムの世界観にピッタリの音が入っていたり。
あの音は小島さんが考えてくれて。アルバムタイトルを意識してくれたんだなと思いました。この間奏はメッチャお気に入りポイントです。
──そこは要チェックですね。また、「LAST DANCE」はヒックスヴィルの木暮晋也さんの作曲です。さっきのお話しでは既にライブで披露されている曲だそうですが。
アルバム収録にあたって木暮さんがアレンジをし直してくれて、少しアレンジが変わりました。
──木暮さんとは以前からお知り合いで?
知り合いではなくて、私がファンだったので頼みました(笑)。木暮さんが作るメロディのファンです。それでライブの新曲として作曲をお願いしました。SHE IS SUMMERの中でも面白い立ち位置の曲になったなと思います。
──そして「思い出はシャンプーの中に」は、匂いフェチというMICOさんらしいシャンプーの香りをモチーフにした歌詞が印象的です。evening cinemaの原田夏樹さんの作曲で、Schroeder-Headzの渡辺シュンスケさんのアレンジです。どんな経緯で渡辺さんにアレンジをお願いしたのですか?
私は土岐麻子さんのファンでもあって、お気に入りのアルバム『Bittersweet』を渡辺さんがアレンジ、プロデュースされているので、ずっとご一緒してみたいなと思っていました。それで「この曲がいいのではないか」とアレンジをお願いしました。
「冬の街とキミと永遠に」の作詞をかせきさいだぁさんにお願いしたのも私がファンだからです(笑)。この「冬の街とキミと永遠に」は90年代っぽさをモチーフに宮野弦士さんと曲作りを進めていて、作詞を誰に頼むかとなった時に、かせきさんが良いのではという事になって。かせきさんが歌詞を書いているでんぱ組.incさんの「冬へと走りだすお!」も好きな事もあり、SHE IS SUMMER初の冬ソングを作りましょうとなりました。
──「冬の街とキミと永遠に」はリリース時期にピッタリの歌詞です。それにしても、ご自身がファンのアーティストとのコラボがドンドン実現していますね。
そうですね(笑)。逆にいうと発信源はそこしかないですからね(笑)。
──また、ヤマモトショウさん作詞、ひろせひろせさん作曲の「待ち合わせは君のいる神泉で」は、「Additional Words MICO」というクレジットに目が留まりました。
元々1番の歌詞を私が書いたんですけど、この手の歌詞ならショウさんが強いだろうと思って。それでショウさんに私が書いた1番の歌詞を渡し、歌詞で伝えたい事や歌詞に入れたいキーワードを共有して、それらを元にショウさんに作詞をして貰った感じです。
──クレジットの謎が解けました(笑)。そして今作を引っ提げ、来年3月には『WATER』のリリースツアーの開催が決定しています。
実は人生初のツアーです。バンド時代に仲良くして貰っていたバンドのツアーに参加する事はありましたけど、自分自身のワンマンツアーは初めてで。『WATER』はこれまでの集大成のような曲と今までに無い新しい音の二面性があるアルバムなのかなと思っています。でも、「WATER SLIDER」を作った時のように何もないところからスタートして、何かから着想を得て創り出した世界をみんなで楽しむ事が出来るライブになればいいなと思っています。
< LIVE >
SHE IS SUMMER “WATER TOUR”
アルバム『WATER』のリリースを記念した、SHE IS SUMMET初の東名阪TOUR 開催決定!!
2018年3月10日(土) 【名古屋】 ell.SIZE
2018年3月11日(日) 【大阪】 SECOND LINE
2018年4月01日(日) 【東京】 WWWX
※各公演の詳細、最新のLIVE情報はOfficial HPをご確認下さい。
http://she-is-summer.com/