倖田來未:感無量でしたね。これまではただの数字に過ぎないと思ってたんですけど、ステージに立って、確かに節目を迎えたんだなっていう実感があって。今まではアルバムのテーマを元に、みんなに楽しんでもらいたい、みんなの背中を押せたらっていう、“ファンのみんな”を意識したライブだったんですけど、今回は15周年ということもあって、倖田來未はこういうアーティストなんですっていう思いをぶつけた“自分”を意識したライブだった。そういう形のライブが初めてだったので、改めて気づいた点もあったし、自分自身を深く掘り下げたライブになった。自分の思いをぶつけて、来てくれたお客さんに受け止めてもらえて、すごく嬉しかったし、気持ち良いコンサートになりました。
大阪城ホール、さいたまスーパーアリーナ、計4日間開催された15周年記念ライブには、『THE ARTIST』というタイトルが付けられていた。新曲のバラードからスタートしたライブは、倖田來未にとって“エンターテインメントとは?”“歌とは?”“ダンスとは?”という3つの問いにパフォーマンスで答える構成となっていた。その意図について、倖田來未は「浅く広くになってしまう部分もあるから、おこがましいんですけど」と前置きした上で、こう答えてくれた。
倖田來未:ダンサーやコリオグラファーに「そんなに踊らなくてもいいんじゃない?」って言われたこともあれば、「せっかくバラードがいいのに演出にこだわると薄れてしまうよ」って言われたこともある。そこで、じゃあ、倖田來未ってバラードの人なの? エンターテインメントの人なの? ダンスの人なの? って考えた時に、やっぱりどれも外せないなって思って。倖田來未というのは、エンターテイナーであり、ヴォーカリストであり、踊り、そしてMCも楽しみたいっていう(笑)。そう言った全部の成分をひっくるめて、倖田來未という、私なりのアーティスト像が出来上がってるんだなって思うんですよね。
そんな彼女の16年目の第一歩となるニューアルバム『WINTER of LOVE』は、彼女の“ヴォーカリスト”としての側面に焦点を当てた、冬のバラードコレクションとなっている。
倖田來未:オーディションで歌ったのは岡本真夜さんの「alone」と高橋真梨子さんの「For You」で、ドリカムさんにも憧れていたんですけど、デビュー当初はなかなかバラードをリリースさせてもらえなくて。それまで踊ったことのなかった私に、ダンサーをつけてくれて、歌って踊ってセクシーな倖田來未という形で世に出て行って。デビュー前に自分の思い描いていた理想像とは違ったんですけど、期待に応えたいっていう一心でやり続ける中で、バラードもみんなにカラオケで歌ってもらえるようになっていって。倖田來未を構築するものはたくさんあるけど、自分の歌で涙を流してもらえるようなヴォーカリストになりたいっていう気持ちが中心にあるのは間違いないし、15年経った今、倖田來未にとってバラードもなくてはならないものだって言えるようになったのも嬉しいですね。
2004年9月にリリースされた13枚目のシングル「奇跡」以降のシングル曲からの選曲された全17曲には、「you」「愛のうた」「Moon Crying」「好きで、好きで、好きで。」などの名曲に加え、新曲2曲が収録されている。アルバムの1曲目を飾る「On And On」は、「実は2年前から温めていた」という楽曲。一聴しただけで思わず口ずさみたくなるほどキャッチーで軽やかな「On And On」というフレーズには、絆や繋がりという意味が込められている。
倖田來未:ファンのことを思って書いた曲なんですよ。私が辛いとき、悲しいとき、みんなの笑顔が私を勇気づけてくれる。みんなからも私の曲で元気づけられましたって言ってもらえたり...。どこかでファンのみんなと私の気持ちが繋がっているというか、一心同体だと思ってるんですよね。ファンのみんなに嫌なことがあったら、私も同じように嫌なんです。だから、この曲には、怯えることや辛いことがあっても、どんな時でも支えていくからねっていう思いを込めてて。本当はね、もうちょっと優しくて透明感のある歌声で歌いたかっですけど、まだ自分の理想にはたどりつけてなくて。5年、10年と歌い続けていくことで、この曲とともに、ヴォーカリストとしても成長していけたらいいなって思ってますね。
理想を追い求めて、現状に決して満足しない姿勢こそが、彼女が長く歌い続け、多くの人に愛されてきた理由だろう。また、もう一方の新曲「NO ME WITHOUT YOU」も「ファンのことを考えて書いた」という。後半にストリングスが入るが、ほぼピアノ一本で歌い上げるストレートで力強いバラードからは強くて弱い、激しくも繊細な彼女の素の表情が垣間見える。
倖田來未:ステージを降りたら、私は普通の女性。倖田來未としてステージの上に立った時は自信があるし、堂々と胸を張って表現できるけど、本当は泣き虫でマイナス思考の部分もある。それでも、私のことを好きって言ってくれるの? こんな私でいいの? って問いかけながら、それでも歌い続ける。そしてアンコールの言葉を待ってる自分がいる。まさに今の私の正直な気持ちを歌ってますね。
新曲2曲はそれぞれミュージックビデオも制作されている。「On And On」はテレビサイズの通常バージョンに加え、スマートフォンを縦にしたままでもフル画面で映像が見れる縦動画バージョンも公開され、大きな話題となっている。
倖田來未:家族や恋人と離れ離れになった時って、テレビ電話をするじゃないですか。ファンのことを思って書いた曲だったので、みんなに話しかけるような、みんなと私が繋がっているような、そういうMVが作れたらいいなと思って。一人一人に電話することはできないけど、私とテレビ電話してるような気持ちで見てもらえたらいいなと思いますね。「NO ME WITHOUT YOU」も絆がテーマで。一人ぼっちだと思っていたけど、実は周りにはたくさんの人が支えてくれていたっていうMVになってて。初めはすごく孤独で、凍えるような寂しさなかで歌ってるんだけど、最後の最後に前向きになって、笑顔になれるっていう。これまでにない大人の女性らしさというか、柔らかい表情で歌えたなと思いますね。
2016年にはこれまでリリースした全58作のシングルを携え、彼女は全国47都市を約1年がかりで巡る全国ホールツアーへと旅立つ。
倖田來未:私の地元である京都を含め、今まで行ったことのない場所に行くという意味では、また新しい挑戦になると思いますね。ライブが一番好きだから、ハッピーな1年になると思う。これからもやったことのないことに挑戦し続ける倖田來未の生き様をどんどん曲にして、これから10年、20年と歌い続けていきたいなと思いますね。
text by 永堀アツオ
<LIVE>
KODA KUMI LIVE TOUR 2016 〜 Best Single Collection〜
12月6日デビュー15周年を迎えた倖田來未が、自身初の47都道府県全国ツアーを開催!
デビュー以来リリースしているシングルは全58作。
膨大なライブラリーからどのようなセットリストが組まれるのか、お楽しみに!
※詳細はオフィシャルサイト
http://rhythmzone.net/koda/live/tour.php?id=1000534