うたまっぷ
UTAMAP review
倖田來未
“世界初”の360°バーチャルリアリティ・ミュージックビデオが話題沸騰
自身初のデジタル・シングル「Dance In The Rain」
2014.11.05 ON SALE
NEW
「Dance In The Rain」
「Dance In The Rain」 iTunes
デジタル・シングル
発売:2014.11.05
rhythm zone
収 録 曲
01.Dance In The Rain
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倖田來未は、デビュー以来、耳で聴く“音楽”だけでなく、目で見る“映像”や、体で感じる“ライブ”という分野でも革新を追い求めてきたアーティストだ。

現在では当たり前のようになっているが、ミュージックビデオを収録したDVD付きのシングルという形態をいち早く取り入れた先駆者であるだけでなく、2004年には新曲をDVDのみでリリースするシングルDVD「girls〜Selfish〜」を発表した。翌年、大きなニュースにもなった12週連続シングルの発売時には、3篇の恋愛オムニバスが4本のMVで完結するという連作短篇を製作し、アルバムのコンセプトに沿ったドラマ「Cherry Girl」や、アルバム収録曲の全曲分のMVも製作したこともあった。

また、ライブにおいては、2009年に開催された横浜スタジアムライブで“日本初の3D生中継”が行われた。さらに、2012年に武道館で開催されたライブでは“アジアのアーティストとして初”となる、360度の超パノラマ写真が撮影できるデジタルソリューション「FANCAM」を実施。常に「新しいことにどんどん挑戦していきたい」と語り続けてきた彼女は、今回、なんと“世界初”となる360°VR(バーチャルリアリティ)ミュージックビデオ「Dance In The Rain」を完成させた。

バーチャルリアリティ・ミュージックビデオ(以下VRMV)とは、「オキュラスリフト」に代表されるヘッドマウントディスプレイを装着し、さらに3Dオーディオと言われる「立体音響」システムを加えることで、視聴者を360度包囲する異空間に入り込むことができる、体感型の映像コンテンツだ。

本作のトータルディレクションを手がけたのは、各国のアートコンペティションで数々の賞を受賞し、昨年はパリ・シャトレ座で初音ミクのバーチャル公演を成功させたYKBX。サウンドは三次元の「立体音響」のエキスパート、Evalaが担当し、ファッション面でも、ニッキー・ミナージュのツアー衣装を手がけたファッションディレクターのミーシャ・ジャネットを筆頭に、日本が世界に誇るトップデザイナー、Yohji Yamamotoが近年発表した新ライン “discord”。更にはYohji Yamamotoの実娘である山本里美のブランド“LIMI feu”も参戦。
女性ならではの強さや美しさを体現した衣装で魅せる。Yohji Yamamotoと山本里美の親子ブランドが同プロジェクトに参加するのは今回が初となる。そして、レディ・ガガも愛用していることでも話題の、新進気鋭のデザイナーRoggykeiも加わり、ファッション面でも神の布陣がサポートした。更に、VFX アーティストのKhakiやプログラマーのMasato Tsutsuiを含め、日本のクリエイターたちによる最新テクノロジーへの挑戦となっている。

倖田來未(以下、倖田):世界初の映像コンテンツということで、日本が誇るアーティスト、クリエイター、ファッションブランドの方々と一緒に創りたいという思いがあって。倖田來未という声や体を通して、世界に向けて、日本のクリエイティヴを表現できればと思ったんです。
そこに、これだけ豪華な方々が集結してくださって。だからこそ、プレッシャーも相当なものでしたが、一生懸命に応えたいと思い、監督とは何度もディスカッションを重ね一緒に作り上げた作品です。

お互いのクリエイティヴィティを存分にぶつけ合った作品は、今年9月にイギリスのデザインイベント「TENT LONDON」で世界初公開され、数ある出展作品のなかでも、いちばんの盛り上がりをみせ、会場では長蛇の列ができたという。
体験者は、足が着かない台座に座らされ、怪しいマスクマンに「オキュラスリフト」の装着を促される。すると、「オキュラスリフト」のディスプレイの中の映像にも同じマスクマンが現われ、彼らのリーダーと見られる倖田來未のナビゲーションのもとに、未知の世界へと誘われる。雨が降り、海が広がり、巨大な岩が浮かぶ、幻想的な空間で、倖田を中心としたダンサーたちが360度を踊り回る内容になっている。

倖田:まるでそこにいるかのように錯覚させる、バーチャルリアリティの凄さが感じられる映像になっています。どこを見ても360度、絶対に何かが動いている、隙のない映像を堪能してもらいたいですし、一度じゃなく、何度も見て、Dance In The Rainのドラマティックで幻想的な世界を楽しんで頂けたらと思います。

10月25日からは東京で開催される「TOKYO DESINERS WEEK」に凱旋出展となる。さらに、このVRMVに使用されたエモーショナルなダンスバラード「Dance In The Rain」は、倖田初のデジタル・シングルとしてのリリースも決まり、2Dによる “新たな”ミュージックビデオも製作されている。白い砂漠、白い塔、山脈に囲まれた祭壇、市街地跡の屋上という4つの場所にいる4人の主人公が、恐怖、失意、感謝、希望という4つの感情を表しており、白い塔の中で椅子に拘束され、黒い羽根に視野を奪われた倖田は“なにかの映像”を見たあと、拘束を振り払い、勇気をもって新しい扉を開く。このMVの中の彼女が見ている映像がVRMVの世界とリンクしている。

倖田:VRMVはいわばティザーで、2Dの映像で全貌が見えるようになっていて。私の中では、ダンス=生きるという表現だと考えているんですね。白い塔の中で閉じ込められた主人公が、苦しみから抜け出して、戦士達と共に踊る。今回は、悲しみの雨が降っても、勇ましく踊り続ける人間の力強さを身体で表現したかったんです。と、同時に、たとえ倒れて、動けなくなっても、時間は進み続けている。そこで立ち止まるか、歩き出すか、踊り出すかは自分次第で変わってくるっていうメッセージも込めています。

彼女はこの曲と、11枚目のアルバム『Bon Voyage』に収録されたミドルバラード「Imagine」が実は同じ系譜に位置するとも教えてくれた。「Imagine」では、「20代から30代を経て、環境も大きく変わり、更に自分を高めて行かなきゃならない時期なのかなって、感じた1曲」と語っており、今作には「辛い状況から抜け出すために、懸命に努力した人だけが成功をつかむことができる」という裏テーマが隠されている。今年12月6日に記念すべきデビュー15周年イヤーに突入する彼女が、このタイミングで、降り荒ぶ雨の中で「変わりたい」と感じているのはなぜだろうか?

倖田:デビュー15周年に向けて、2014年は倖田來未の音楽性にクローズアップするタイミングだと感じたて、ライブを中心にした活動をしてきたんですね。みんなに生で私の歌声を聴いて欲しい、ダンスを見て欲しいという思いで。15周年は、確かに節目な年ではあるけど、やっぱりそれはただの数字で、ただの通過点に過ぎないって感じていて。今回、クリエイティヴな発想をもった方々とご一緒をさせて頂いてかなり刺激を受けましたし、新しい世界を発見することもできた。
これからどんな面白いことが待っているんだろう?と思うと私自身今から凄く楽しみだし、変化していく自分に期待しているんです。

前作「HOTEL」では、ギラギラした夏ではなく、涼し気な夏をテーマに、力の抜けた女性観を表現し、新曲「Dance In The Rain」では、女性のセクシーさではなく、悲しみや力強さを体現した。さらに、初のデジタル・シングルとしてのリリースを敢行し、ファンクラブ限定では初の紙ジャケット仕様のパッケージも制作している。「目標やゴールは変わり続けていくけど、15年前に『walk』の歌詞に書いた<歌いつづける>という意志は絶対に変わらない」という彼女は、今、間違いなく新たな季節を迎え、新しいステージに進もうとしている。それがどんな場所であるのか、いまは想像するしかない。だが、彼女の目の前に広がっている可能性は、私たちが考えているものより大きいはずだ。

取材・文/永堀アツオ

November 7, 2014
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