3月26日、累計出荷30万枚を突破した『Summer Ballad Covers』に続くMay J. カバー作 第2弾『Heartful Song Covers』がリリースされた。前作ではリスナーからのリクエストに応えるかたちでカバー・アルバムをリリースしたMay J.だが、第2弾となる本作では、自身が歌を唄う上でずっと大事にしている「私の歌を通して明日一歩踏み出す力になって欲しい」という想いをもとに、今、彼女が伝えたいメッセージが込められた楽曲を「歌詞」の内容を重視して選曲したメッセージ・カバー作品だ。さらに今年のアカデミー賞で長編アニメーション賞と主題歌賞をダブル受賞したディズニー映画『アナと雪の女王』の日本語版主題歌「Let It Go 〜ありのままで〜」を映画とは違うアルバム・バージョンで収録、聴きモノのひとつとなっている。幼い頃からディズニー映画の歌を歌いたいと夢見ていたことや、小田和正のミラクルボイスに挑戦した話など、今作に込めたMay J.の熱い気持ちを語ってもらった。
──3月26日にカバー・アルバムの第二弾『Heartful Song Covers』が発売になります。このアルバムは去年の年末、ディズニー映画の主題歌決定のニュースと合わせてリリース情報が流れましたが、因みにアルバムの制作はいつぐらいから始まったのですか?
May J.(以下M):カバー・アルバムを作るという話をして、選曲を全部決めて、レコーディングが始まったのが12月の下旬でした。実はアルバムの中で曲順が最後になっている「Amazing Grace」の収録が最初の収録で、それが去年の12月下旬でしたね。
──アルバム制作までのいきさつはどうだったのですか?
M:前回のカバー・アルバムは、カバーをやるきっかけとなったテレビ番組を見た方からのリクエストがあって、それに応える形でつくりましたけど、その結果、本当に沢山の人にアルバムを聴いてもらうことができました。実際に、聴いて元気が出たとか、明日から頑張ろうと思えるようになったというファンの方からのメッセージをたくさん頂きました。そして自分自身でも小さい頃から音楽に救われたというか、自信を失くした時とか、元気が無い時に音楽を聴いて、その歌詞を読んで、歌詞に凄く影響されて、そこからまた明日から頑張ろうと励まされてきたのです。そういうパワーを常に音楽から貰っていたので、デビュー当時から音楽を通じて、歌うことを通じて誰かを喜ばせたりとか、元気づけたり、勇気づけたり出来たらいいなぁと思ってきました。今回のこのアルバムは、そういった自分の思いに加えて、前向きになれるメッセージが込められた歌詞というところを一番重視して作りました。つまり歌詞を主眼にして、力のある歌詞を選んで選曲してカバーした作品です。
──アルバムのテーマとして、明日も笑顔でいられるようにとなっていますが、このテーマは今おっしゃったところから出てきた?
M:はい、そうですね。
──そういえば前作の『Love Ballad』でも、幸福感のある歌というか、すごく前向きな歌詞が多かったですね。
M:前作からの流れというより、自分が音楽を通じて明日に進んでいくためのパワーになれたらいいなぁと、そういう思いを常に持っているので、今回も自然と、そういう選曲なったのだと思います。
──タイトルの「Heartful Song Covers」は、どのように決まったのですか?
M:「Heartful」という言葉は和製英語ですけど、心が温まるとか、そういうポジティブなメッセージが込められています。今回自分が伝えたいことはまさにその「Heartful」という部分で凝縮されているので、敢えてこの言葉を選びました。
──前作、前前作とタイトルにはバラードという言葉がありましたね。
M:今回は全くバラードという縛りはしていないです。バラードは今まで沢山歌ってきたし、元気になるっていう視点から考えるとバラードだけではありませんよね。早いテンポの曲だってあります。ですから、そこは縛らないで作りたいと思いました。今回は曲もそうですけど、歌詞に凄くパワーを貰ったりとか、歌詞を読んだだけで元気になれるとか、そういう曲を選んであります。ただ私は洋楽ばっかり聴いて育ってきているので、日本の曲で知っている曲が少ないのです。一方で私の歌声を聴きたいと言ってくださっている方々の年齢層は凄く幅広いので、私の世代を中心に少ない中から選曲をしてしまうと、多くの人を置いていってしまうことにもなってしまいます。そうではなくて、幅広い年代の方々に「この曲はあの時に凄く聴いていた」というふうに、そういう思い出が詰まったものを感じてもらえるような選曲にしたかったのです。そこで色々な年代のスタッフに話を聞いて、そこで出てきた曲の中から、歌詞に凄くパワーのあるもの、明日から凄く頑張ろうって思って貰えるようなメッセージが込められた曲、歌詞を選んで選曲しました。
──確かにリリース年を見るとバラエティに富んでいます。May J.さんが生まれる前の楽曲もあります(笑)。その中でも最初にレコーディングしたのが「Amazing Grace」というのは…。
M:それはたまたまその曲が最初だっただけですね。もちろんCMソングとして使っていただいた流れもありましたけど、そもそもこの曲は自分が13歳の時から歌っていた曲で、自分のライブでも歌うことが多い定番の曲なんです。
──アルバムの中で、絶対に入れたかった曲はありますか?
M:とくにどれというのはありませんね。本当に思い入れは全曲平等です(笑)。
──前回のインタビューの時に、カバーをする場合には、歌詞を何度も読んで自分の経験と照らし合わせたり、それぞれの世界観をしっかりと理解してから歌うということでしたが…。
M:そうですね。その作業は今回も凄く念入りにやりました。実際にスタジオに入るまでの期間というのは凄く大切にしていて、もちろん原曲はリスペクトしながら、何回も聴きましたけど、それをどういうふうに自分の歌にするかっていう作業が必要になります。そのためには歌詞を何十回も読んで、自分なりに解釈をして、そこから感じたものや、自分の過去と照らしあわせて、こういうふうに歌おうというイメージを頭のなかに作ってからスタジオに行って、それを初めて爆発させるっていう、そういう作業をずっとしました。
──因みに歌詞を一番読み返した曲は?
M:全部そうですね(笑)。全部、何回も読んでいますね。
──ではスタジオでマイクの前に立って歌うまでに、イメージを作るのに苦労した楽曲はなんですか?
M:どれも大変でしたけど(笑)、敢えて言えば「手紙 〜拝啓 十五の君へ〜」じゃないですかね。この曲は15歳の自分と25歳の今の自分っていう二人の自分を、一曲で、両方表現できたらいいなと思いました。1番の歌詞は15歳で、2番の歌詞は今の自分で、ブリッジから二人の自分が同時に歌っていて、そしてサビで15歳の弱い自分に戻り、最後は二人また力を合わせて歌って、サビはそれを全て乗り越えた自分っていうのを、一曲で表現していきました。その気持を作るのが凄く大変でした。
──ボーカリストとして、技術的に歌うのが難しかった曲はなんですか?
M:小田和正さんの「キラキラ」かな。小田さんの声自体本当にミラクル・ボイスだなって思っていて、どんな音でも、どんなに高い音でも低い音でも常に凄く透き通った声で歌われているじゃないですか。それが小田さんの特長であり魅力で、しかも「キラキラ」を知っている人たちはそれを聴き、それが耳に残っている人たちが殆どだと思うのです。一方、男性ボーカルの曲を歌う場合、まず、男性の方がキーの、声のレンジが広いのです。凄く低いところまで出るし、高いところも出る方が多いので、レンジが幅広くて、女性のキーにすると歌うのがすごく大変になるのです。実際に歌ってみると高いところは物凄く高かったんですが、でも、ファルセットで逃げたくなかった。小田和正さんはずっと地声で、クリアな声で歌っているので、そのイメージを崩したくないと思って、高いところは頑張って地声で歌いました。
──なるほど。それは聞いてみないとわからないことですね。出来上がったアルバムを聴いている限りでは、さらっと歌っているように聴こえますけど(笑)。
M:実は凄くギリギリなところで歌っているのです。
──声が伸びやかで聴き心地が凄くいいので、全く気が付きませんでした。
M:ありがとうございます。
──アルバムの曲順はどうですか?何か意識されましたか?
M:今回は凄くキーが高い曲があるかと思えば、「元気を出して」とか、あるいは「やさしさに包まれたなら」の曲のようなゆったりと力を余り入れずに歌っているものもあって、両者のバランスが凄く上手くとれていると思っています。そういう意味で良いバランスで出来ました。もちろん予め考えて選曲したし、曲順も練ってあって、ハイトーンがある曲と落ち着いた曲のバランスも考えて、聴いている人が飽きないように心地よく聴いて貰えるような順番になっています。例えば1曲目の「手紙〜拝啓 十五の君へ〜」はフルパワーでガーンって歌っていて、続く「Believe」もそのままの勢いでいくんですが、「キラキラ」から少しずつトーンダウンして、そのあとまた「Let It Go 〜ありのままで〜」で、ドンとアップビートな曲が来て、という起伏のある感じになっています。
──「Believe」という曲は、卒業式で歌われる定番ソングですね。因みに98年のリリースですから、当時、May J.さんは10歳です。
M:そうなんです。今28歳位までの人は、殆どの方が学校で歌ってきた曲で、音楽の教科書に載っています。
──当時10歳だと、2年後に小学校の卒業式ですが、この曲に具体的な思い出はありますか?
M:学校でいつも歌っていましたね。合唱コンクールや授業や何かの行事の時には必ずって言っていいほど歌っていた曲です。
──じゃあ歌詞は暗記していて、ソラで歌えるくらい(笑)?
M:そうですね。ただ昔歌っていた時はいい曲だなとは思っていましたけど、今改めて歌詞を読んでみると、凄くストレートでシンプルだけども、本当に前に向きな歌詞です。みんなで一緒に手を繋いで、明るい未来に向かって、苦しい時も一緒に頑張って乗り越えていこうっていう、なんか本当に前向きになれるなぁと思ったので、ちょうど今回のテーマにぴったりでした。
──もう一つ気になったのは「Let It Go 〜ありのままで〜」ですが、ディズニー映画の『アナと雪の女王』の日本語版主題歌です。今回はアルバム・バージョンが収録されているのですが、まず映画の主題歌を歌うというのはどうでした?
M:もう決まった時は泣きそうでした。実は生まれた時からディズニーが大好きで、殆どの映画を見ています。ディズニーに凄く影響を受けていて、歌を歌いたいと思ったのもディズニー映画がきっかけでもあります。だからいつかはディズニーの主題歌が歌えるようになれたらいいなぁと思っていて、ずっと夢に見ていました。その夢が叶って、凄く嬉しいです。
──映画もアカデミー賞をとりました。
M:長編アニメーション賞と主題歌賞のダブル受賞でしたね。
──どうでした?もう感激ですか(笑)?
M:本当に素晴らしい曲で、みんなそれぞれが持っている自分らしく生きていたいというメッセージが凄く強く表現されている曲なので、聴いていて勇気の出る曲です。原曲を歌っているイディナ・メンゼルというブロードウェイ・シンガーの方が映画の主人公の声も担当されていて、その劇中でも歌っているのですが、本当に歌の力は素晴らしいですね。御存知の通りミュージカル映画ですから、曲自体がしっかりとストーリーを伝える曲になっていて、逆に歌うのが物凄く難しい。普遍的な名曲として、今後もずっと残っていくんだろうなというふうに思っていたので、主題歌賞を獲って本当によかったと思います。
──日本語版の歌詞については、May J.さんの思いとリンクしているように思いましたけど…。
M:そうですね。私はこの曲を聴いた瞬間、自分のことを歌われている感じがしました。だから自分のことをそのまま歌えばいいって思いました。もちろん映画も見て、主人公が歌う曲なので主人公の気持ちを理解しながら歌っています。この歌詞が言うように、誰しも自分は常に自分らしく生きていきたいけど、人にこういうふうに思われるからこれは言えないとか、こういうふうに期待されているからこう応えなきゃとか、そういう弱い自分もいる。でも私自身も本当の自分って何なんだろうって常に考えているし、それを常に出せるような、解き放てるような、自分になりたいと強く願っています。もっと輝くためには勇気のある行動を自分から起こして、自分の壁を壊して、自分らしく生きていきたいっていう気持ちを出していこうって、それをそのまま歌っています。
──主題歌バージョンは既に配信されていますけど、アルバムは違うバージョンです。具体的な違いはなんですか?
M:まず、歌は録り直していますし、トラックも全く違います。アルバムでは新しく生音というか、ストリングスを入れています。イメージでいうならもっとダイナミックで、ドラマチックに、大人っぽくなっています。それに主題歌バージョンはポップスですけど、アルバム・バージョンは少しロックの要素も入っていて、もっとドラマチックですね。
──では、このアルバムを通して伝えたいことがありましたらお聞かせ下さい。
M:一曲、一曲が自分への応援歌だったり、大切な人と一緒に夢に向かって頑張って行きたい思いを歌っている曲だったり、辛い時は一杯泣いてあとで笑おうよっていう曲があったり、本当に一曲、一曲でテイストは違っていても、共通しているのは辛いことがあっても、努力し続けていればいつかはちゃんと形になるというか、みんなそれぞれ自分の中に綺麗に咲く花を持っていて、それが今はまだ蕾であってもいつかは必ず大きなきれいな花が咲くと思うのです。その気持を忘れずに、辛いことがあっても、諦らめずにまた明日から頑張ろうって思ってもらえるような、このアルバムを聴いてそういうパワーを皆さんに届けられたらいいなぁと願っています。
──では最後にライブのお話です。去年は春と秋にツアーが有りましたけど、今年はどういう予定ですか?
M:今年は7月に全国ツアーをやります。今回も生バンドで、もちろんカバーの曲とオリジナルの両方を歌います。今回アルバムに載せたメッセージを、ライブでも、是非、体感して欲しいですね。ライブに来てくださるみなさん、ひとりひとりが笑顔になって、元気になって、また明日から頑張ろうって思ってもらえるような、そんなライブにしたいです。
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