あのAAAの日高光啓のソロ活動名義であるSKY-HI。そのSKY-HIが3月12日に満を持してファーストアルバム『TRICKSTER』をリリースした。そもそもSKY-HIは昨年8月、メジャーデビューシングル「愛ブルーム/RULE」を発表し、その類稀なるスキルと音楽性の振れ幅によって、HIP HOPヘッズはもちろん、ROCKシーンやサブカルシーンからも賞賛と注目を集めている。今回のアルバム・タイトル曲の「トリックスター」では、SEKAI NO OWARI 「RPG」や、ゆず「雨のち晴レルヤ」などの編曲・プロデュースを手掛けるCHRYSANTHEMUM BRIDGEとタッグを組み、そのタイトル名を体現するアンセムを誕生させた。そこで、すでにこのアルバム曲を引っさげてのツアー中に、直撃インタビューを敢行。するとラップを歌うように滑らかな口調で、熱く骨太な言葉たちが吐き出された。
──今日はよろしくお願い致します。実はAAAさんでは、二年前に横浜アリーナの、「虹」のシングルリリース前のライブに行き、去年も大宮ソニック・シティでのライブを見ています。その流れの中で、SKY-HIさんとして、去年の「908 FESTIVAL」への出演が凄く印象に残っています。あれは凄くカッコ良かったですね。
SKY-HI:ありがとうございます。
──あの時「オレもいつか一人で、これだけの会場でやってやるぞ」という発言をしましたね。
SKY-HI:言いました、言いました(笑)。
──凄いこと言うなぁって驚きました(笑)。しかもあのKREVAさんのオーディエンスの中に溶け込んでいるというか、ある種認められている存在でした。
SKY-HI:そうですかね。だとありがたいです。KREVAさんにはライブを終えたあとも直接言いましたけど、ファンと凄く素敵な関係を作っていますね。だからオレなんかが出てきても、声援をくれたり、拍手してくれたりとか…。それと具体的に正解のあることではないですけど、自分の中でラッパーとか関係なく、人間として、ミュージシャンとして、どうあるべきかが凄くクリアになった瞬間でもあります。だからあの「908 FESTIVAL」のあの日は、自分にとっても大事な日でした。
──さらに先日はw-inds.さんの日本武道館公演でも、びっくりしました。1曲だけでパッと出てきて、パッと引っ込んだ。すごい贅沢だなぁって。
SKY-HI:あれはいろいろな意味で驚きますよね(笑)。出る直前までは、ごめんなさいと思っていて…。
──いやいや、凄くカッコ良かったです。
SKY-HI:ありがとうございます。
──そういうライブの流れがある中で、すでにSKY-HIさんとしてのツアーが進行中です。アルバム発売前にツアーが終わってしまいますが、ライブでアルバムのナンバーはやっているのですか?
SKY-HI:やっています。具体的に言うと「サファリ・システム」と「またね」以外は全部やっています。
──アルバム曲のライブでの手応えはどうですか?
SKY-HI:手応えは素晴らしくいいものを感じているのですが、まずその前の段階、ツアーのセットリストを作っている時に、惰性でやる曲を一曲も入れないという覚悟を決めました。全て意味と必要性がないとやらないようにしているし、そこが惰性で繋がっちゃっている感じには絶対にしたくないのです。そういうところをちゃんと考えた結果、アルバムの12曲中、10曲がセットリストに入っても何ら問題なく、むしろそれがベストだという判断でした。
──実際にオーディエンスの反応はいかがですか?
SKY-HI:ソロ・アーティストとしてメジャーデビューして半年くらいですから、お客さんも「あの曲が聴きたい」とか、いわゆる待ち望んでいるレベルでいえば、そんなに期待値は高くないと思います。そりゃそうですよね、リリースしてないんだから(笑)。というだけの話なので、そういう爆発力みたいなのは、端から計算に入れていません。それよりもライブを見終わった時に、「本当にこの時間をSKY-HIに費やしてよかった」って思って貰える時間を作ることとか、明日とか明後日とかにライブに来たことが生きてくるものにしたかったのです。僭越ながら聴いてくれる人の人生に、丸ごと携わらせて頂きたいのです。そういう意識でライブを作っていて、それはやれたと思っています。
──今回のアルバムのコンセプトには、どういう狙いがあるのですか?
SKY-HI:まず、音像的に右に左に揺さぶっていこうというのがありました。なぜ振れ幅を大きくするかといえば、単純に自分がワクワクするものを突き詰めていったらそうなったからです。あともう一つは、振れ幅っていうのは軸が強いとより大きく振れると思うのです。その軸になる部分を突き詰めていって、『TRICKSTER』というタイトルに辿り着きました。
──それはいきなり出てきたんですか?
SKY-HI:実は今回、アルバムを作っている最中に制作のやり方を根本から変えました。通常、例えばビートをどうするかという時に、ビート・メーカーの人と話をして、ビート・メーカーのデモから膨らませていくっていうのが普通のヒップホップ・アーティストのやり方です。でもそれをやめて、自分の中で一回完結させるやり方に変えた。トラックを作り、歌詞を載せて、メロディを作り、そこまでを一気に自分でやってしまったのです。同時に頭の中も一気に整理していって、実に前向きになれたのです。ところが身の回りで色々なアクシデントが起きて、絶好調から一転して絶望の中に叩きこまれてしまったのです。でもその絶望の中から「これをチャンスだと思わないと、オレはアルバムが出せないなぁ」と思い直したのです。そうしたら絶望をきっかけにして、自分のことをより音楽にあらわせるになったのです。つまり、絶望していた自分をひっくり返した、そこに「TRICKSTER」という考え方が出てきたのです。そう考えると、これはいくらでも出来るぞということになります。つまり絶望が大きければ大きいほど、そこには希望が散りばめられているということです。ネガティブの中にこそ、ポジティブの鍵がある。それをひっくり返すやり方さえあれば、人生は劇的に変るのです。それでオレは聴いてくれた人の人生をひっくり返す「TRICKSTER」だよっていうのが出てきました。さらに聴き終わった瞬間に、君自身が君の人生をひっくり返す「TRICKSTER」でもあるということです。
──「TRICKSTER」を辞書で調べると詐欺師、ペテン師と出てくる。そこでえっと驚くのですが(笑)、さらに神話や民間伝承に出てくるイタズラモノという意味があって、善と悪という矛盾した二つのものを媒介するのが「TRICKSTER」だそうです。
SKY-HI:そうですね。例えば北欧の神話に出てくるロキとか、そういう奴です。
──あるいはティンカーベルとか?
SKY-HI:それもありますね。
──さらに言えば、「TRICKSTER」のSKY-HIさんは、ポジティブとネガティブを媒介する?
SKY-HI:その通りです。人生の視点とかいうと、人は、なぜかわからないのですが、凄くネガティブな、絶望とか、マイナスのほうへ視線がいきがちです。大抵そういうネガティブの中にはポジティブの鍵が散りばめられていたりとか、絶望も大きければ大きいほど、その分隠されている希望も大きかったりするんですけれども、でも見るのが嫌だから目を閉じてしまうことが多いのではないでしょうか。そこで目を閉じずに、その視点をひっくり返すのです。しかも普通、親とか、恋人とか、友人とかがひっくり返すキッカケをくれるものですけど、オレは幸いなことにミュージシャンだから、音楽でそれが出来ます。それを音源にパッケージングすると、半永久的に生き続けることにもなるのです。逆に大げさではなく、人生がいい方向に変わったって思ってもらえる作品を作らなければ、時間泥棒だと思うのです。このアルバムを聴いて、いい方向に変われた、いい時間を過ごせたってならなければ、時間泥棒です。今はフリーで音楽を聴ける時代だから、リアルに泥棒になっちゃう(笑)。そういう意識が凄くあるので、それを一番大事にしています。例えばジャンルとしてのロジックとか、そういう頭でっかちな部分とかはアクセサリーに過ぎないし、今のトレンド的にどうかとか、もっとゲスいマーケティングとか、こういうのを作ったらこういう層にウケるとか、そういうのは全部必要ないとは言わないけど、それらはアクセサリーに過ぎないと思います。
──もっと本質を攻めたい?
SKY-HI:そう、だから本質として一番突き詰めるべきは、みんなが毎日のように立ち向かわなければいけない問題で、小さいことから大きなことまで、そこには様々なネガティブが潜んでいると思うのです。普通の通学路だって、超ルンルンな人ってあんまりいないでしょ。どこか憂鬱な気持ちを抱えていて、そういうのをひっくり返せる、そういうネガティブを一瞬にして欺いてひっくり返せるというのを作る人だ、というので「TRICKSTER」なんです。ただそのまま曲にしたら説教臭くて、それこそ聴いて貰えなくなるので、そういう信念が根っこにありつつ、その分、どんどんカラフルにしていって、気がついたらそういうメッセージが最終的に心のどこかに残っているような作りにしようと思いました。
──実際に聴いてみて、非常にいい仕上がりで、それは伝わってきますよ。
SKY-HI:本当ですか?ありがとうございます。
──冒頭の曲から、おっと思わせる作り方で、どんどん聴き進むに連れて、あれ、こういうふうになるのって意外性を感じさせます。
SKY-HI:それは一番大事にしたことなんです。実は事前に知識が必要っていうほど、ダサいことはないと思っています。例えばヒップホップが好きっていう前提が必要だとか、ラップに抵抗がないことが前提だとか、今までにこういう音楽を聴いているとか、そういう前提がないと楽しめないなら、わざわざコンパイルして作品にしません。そういうものは、お金を取ってやるべきではない。もしそういうのがやりたくなったら、その時はフリーで出します。そうじゃなくて前提が何も必要じゃないことが大切なんです。それこそCDが出るというのは、お店の中で色々なアーティストさんと並んで置かれるわけです。このアルバムが例えばJ-POPのラックに置かれたとしても、それは凄く光栄ですし、もちろんヒップホップの棚に置かれていても同じようにありがたいです。そういうカテゴライズとかジャンルとかは全く意識していません。ただ、ありとあらゆるアーティストさんと同列で並んだ時に、「これが好きだ」って、一人でも多くの人に言ってもらいたいのです。聴いた人が理由なしで、今聴いた中で一番好きだて言ってもらえるようなものにしないと、やっている意味が無いので、それは凄く大切にしました。
──ジャンルを超えて、音楽そのもので勝負がしたい?
SKY-HI:そうですね。具体的に言えば、今回のアルバムだと、まるでこっちから降りていくかのようにポップにするとか、聴き易い感じにワザともっていくとか、そういう感じの、階段を降りたようにPOPにすることは一切していません。そうではなくて、自分の持っている武器とか、ポテンシャルとかを研ぎ澄ませていって、聴く人の心のどっかに深く刺すような作りにしようっていうのを考えました。実はそういう方法のほうが、POPになりうると思うのです。
──とかくラップというと、狭いジャンルを考えがちになりますけど、多分、SKY-HIさんはそのジャンルという考え方を超えていくんですね。ヒップホップとかラップというジャンルではなく、エンターテインメントとしてナンボだということですね。
SKY-HI:そうですね。
──ところで「TRICKSTER」のSKY-HIはポジティブとネガティブを媒介するということでしたけど、実はラップとJ-POPを媒介するというのもある?
SKY-HI:正直に言うと「TRICKSTER」というタイトルをつけた時に、ラッパーとアイドルというのは頭の中になかったというと嘘になる。でも、それって凄く小さな話です。まずオレのことを知らないといけないし、AAAのことも知らないといけないし、というハードルをくぐれた人だけに、初めて通じる話なんですよ。それは大々的に、ファーストアルバムのタイトルになるようなスケールの話ではなくて、パーソナルな小さい話です。もちろん、後々にそう感じて頂けるのは、それはそれで嬉しいですけどね。ですからもっと大きなくくりでの「TRICKSTER」として、リスナーに関わっていく覚悟があって、それが出来ないならこの時代にCDは出さないってことです。
──頂いた資料に「新人ラッパー」ってありますので、その覚悟は伝わります(笑)。
SKY-HI:いや、本当に新人です。オレのことを知っている人なんて、本当に少ないですよ。カウントダウンTVのリリース情報にも載らないレベルで、しかもAAAがゲストで出ている週ですからね(笑)。ちょっと根に持っています(爆笑)。ただそれは誰が悪いのでもなく、オレが悪いんですけどね。自分の実力、実績が培ってきた知名度が足りないからそうなるんです。それこそ楽曲の中でも、そういう話になっているのが何曲かあるんですけど、自分に降りかかる不条理に思えることは、ちゃんと自分の問題として捉えないと、ポジティブなキッカケにはなりえません。誰々のせいとか、何々のせいにして目を背けるとダメです。それは絶対にしたくない。ですから、次のシングルはもっと広がるものを絶対に作ろうと思っています。改めて身を引き締めましたね。今はSNS時代じゃないですか。今、自分の周りのスタッフとか、ダンサーやDJ含めて、状態が凄く良くて、お客さんからのリアクションもライブをやる度に最高のものを頂けている。そうするとSNSではそういう意見が溢れてくるので、自分もそういう気持ちになってしまうのです。待ち望まれているような気持ちにどんどんなってくるのです(笑)。でも実際のスケール感でいったら、広い世界の中のアジアの中の極東の中でも、まだちっちゃいところの人であるということが改めて分かりましたね。具体的につきつけられました。「テレビでお前なんて紹介するまでもないよ」ってね(笑)。でもそれも、いい意味に、ポジティブに捉えています。
──今回のレコーディングはどうでした?
SKY-HI:最後の「またね」っていう曲以外は、やり方を変えて完全なものを自分で作ってから臨みました。「またね」に関しては、いわゆるヒップホップの作り方で、実はこの曲は制作期間が極端に短かったのです。3時間とかの奇跡の曲です(笑)。色々なトラブルがあって、実際にアルバムは11曲収録で出そうになったのです。でももう一つだけ、どうしても入れたいメッセージがあった。それはやらなければならなかったので、マスタリングの前日と前々日のスタジオをおさえてもらって、そこまでに楽曲が用意できなかったら、11曲でいきましょうという話にしました。
──でも曲そのものはあったんでしょ?
SKY-HI:その時点ではゼロです。それでビートをもらって、速攻で思いのたけを載せていって、一番いいアプローチのメロディを探して、曲として作って、プリプロダクションなしで本番収録でした。短く作ることがすなわちいいことではないのですが、でも、その曲が3時間でできたのは、それだけ吐き出したいことが溜まっていたわけです。伝えたいことがあって、これができれば「TRICKSTER」というアルバムが完成するという思いが強かったから、出来たのだと思います。因みに「またね」と「逆転ファンファーレ」は同じことを言っています。今から君のネガティブを一気にポジティブに変換しに行きますというのが「逆転ファンファーレ」で、一方「またね」はもう少し親身というか、これからもずっとひっくり返し続けていくよっていうメッセージです。ひっくり返すという言葉は、「背中を押す」とか「手をひく」とか色々な言葉に置き換えられますけど、「そういった意味での君の人生のサポートは常にやっていくぜ、オレは戦うけど君はどうする?戦うなら力を貸すよ」ということを言っていて、それに「逆転ファンファーレ」が再び繋がるという構造です。
──確かに「逆転ファンファーレ」はSKY-HIさんの決意表明っぽく思えました。
SKY-HI:それはありがたいです。実は意識していないうちに自ずとそれが出てしまったという感じです。
──「逆転ファンファーレ」には「受け売りの信念を持って」という言葉がありますが。それはご自身が色々な方と交流を図っているという体験があって、そういうことから出てきているのですか?
SKY-HI:そんなつもりはないです。バースの部分であるあるのネガティブを歌いたくて、「なんで人生をやっかいだと思うんだろうなぁ」っていうのを抽象的にも具体的にも書いてみようと思って、それをブリッジやサビでひっくり返そうと思っただけです。その意識は「トリックスター」の方がより具体的で、「逆転ファンファーレ」は決意表明っぽくなっていますね。
──「トリックスター」はスクラッチ・ノイズから始まっていますので、ラップっぽい曲だと思ったら、なんとビッグバンドです。これには驚きましたけど、アレンジは最初から構想されていたのですか?
SKY-HI:タイトルナンバーで、明確に壁を壊しに行きたかったのです。「ラップの人ってこういう人」という想像を超えたかった。「愛ブルーム」もそういう気持ちで作っていたのですが、アクセサリーの部分が強くなってしまった。この曲は、その時のUSのブームに合わせて作った曲で、ちょうどダフト・パンクがグラミーでいいパフォーマンスをしていたりしていたのです。その辺の流れをリアルタイムで汲みながら作っていたので、その分、クオリティも高くて、受け入れてくれる人も多くて、実際色々なDJの方が色々なところでかけてくれたりしています。ただそういうアクセサリーに寄りかかりすぎちゃうと、次のフェイズに行けないとも思っています。もっと無条件に、ワクワクするファンタジックなものにしたいという思いもります。だから今回の歌のテーマとか、ビデオでもずっとやっているのは、リアルとファンタジーの境目風のタッチです。
──確かに面白いプロモでした。
SKY-HI:現実味とかって、あるようでないような毎日を送っている人が多いと思うし、嫌なニュースとかでもあまり現実味がない。極端に言えば「明日戦争が起きるわけがない」という感じです。それが正しいか正しくないのかを含めて、それが絶対悪だと決めつけて歌っているのではなくて、そのくらいリアルとファンタジーの境目の中だと、フワフワして生きているとそのままフワフワいくらでも時間が過ぎてしまうでしょうということなんです。フワフワしないで自分で何が正解かを自分で決めていくと、アンパンマンじゃないけど何が幸せかとか分かってくるし、自分の軸足の1歩目が決まるのです。一方、フワフワしていると、具体的な理由もないのにネガティブに感じたりする。仕事が嫌だ、学校が嫌だって、具体的にいう人はいない。なんかいやだとか、朝起きるのがダルいとか、そういうのって具体的な理由がほとんどない場合が多い。そこで自分の軸足を1本決めれば、そういったことが全てウソみたいに、騙されたみたいに、コロって劇的に変わるから、そういう話を歌にしたかったのです。ただ、そういう話を重いビートで暑苦しくやると誰も聴いてくれないので、だからこそファンタジックにしたかったのです。
──一方、「Diary」という曲はすごく綺麗です。切ないストーリーで、歌詞が生々しいです。
SKY-HI:アルバムを作る時に、ストーリー・テーリングなものは絶対に入れたかった。自分が人のラップを聴いている時も、楽しいのはストーリーが進んでいくものなんですね。それで「Diary」とか「Blanket」のような曲が入れてあるのです。オレは「歌」って、物語だと思っている。例えばいいJ-POPって余白が多いものもあるけど、物語がちゃんとありますよ。言葉数は少ないけど物語がちゃんと進んでいて、それは聴き手の想像に委ねられていて、それは美しい関係だと思います。でもラップは言葉数を具体的に重ねることが出来るので、より鮮明な物語になるなぁと思って、それは聴いていて凄く楽しいはずです。
──ともかく内容がリアルで、SKY-HIさんはサラリーマン経験があるのかと(笑)。聴いた人は、これはオレの話だって思うような、まるで短い映画を見ているようです。
SKY-HI:それは意識しています。ビートの感じも含めて、映画みたいにしたかった。istっていう若いビート・メーカーと作っているのですが、ビートが綺麗だったから生々しいワードが出てきても大丈夫だと思って、物語を具体的にしていきました。だいたいオレの場合、歌の中で思想を省いて経験談みたいなワードが出てきたら、完全な実体験は100%ないけど、完全な空想も100%ないですね。経験した何かのワードを膨らませて、例えば恋愛じゃないものを恋愛にしたり、その逆もあったりという感じで、実体験は必ずもとになっているけど、そのままのことは絶対に無いです。
──一転して「サファリ・システム」は非常にバイオレンスな曲で、最後の薬莢が転がる音も妙に生々しい。
SKY-HI:あれは苦労しました。銃声もライブのものはギャング映画に出てくるみたいな銃声なんですが、アルバムは違うもの、いわゆるライフルみたいな音になっています。今回のアルバムは、人や動物が死なないアルバムにはしたくなかったのです。人間も動物も植物も、必ず死ぬから。喰うか喰われるかみたいな関係に、関わらない生き物はないから、アルバムの中で絶対に取り上げたかったのです。それでどうやってやるかで、諸行無常じゃないけど、食物連鎖に終わりはないし、何が強くて何が弱いかも見方で一気に変わるし…。例えば「井のなかの蛙、大海を知らず」といいますが、大海を知ったうえで、井戸の中を滑る蛙がいたら、それはそれで生き方として正しいじゃないですか。しかも、大海に挑まないのは臆病者という感じで使うのもおかしい。「サファリ・システム」はそれの逆というか、やってきたことは返ってくるし、強さというのも曖昧だしということを描きたかったのです。だからそれを比喩にして考えてもらえればいいです。例えばこの話は実はうちの業界のことだとか、誰々のことだねとかね(笑)。
──なるほど。そう言われると、今回のアルバムはリスナーの空想を広げていく作品になっていますね。
SKY-HI:アルバムの中には、発想の転換とか、気付きの転換とか色々と散りばめてあります。それが自分のイズムとして注入されているのですが、でもそれを聴く側にわざわざ汲んで貰う必要はありません。何も思わないでさらっと聴いて下さい。それで十分楽しめると思いますし、それが一番嬉しいです。なんとなく良かったで、OKで、それが最大の褒め言葉です。勘違いしてはいけないのは、作る側は人様の人生に関わる覚悟が絶対に必要で、命を削って作らないとダメですけど、聴く側にはなんの責任もないし、あくまでも娯楽です。映画とか漫画とか色々ありますけど、音楽もそれと同じです。ただその中でオレの音楽に触れた時のほうが幸せな時間であったり、後々その人の人生にまでいい影響を与えるものであるべきものを作れたと思っています。それはずっと続けていくし、ライブになれば更に倍以上、色濃くそういうものを伝えていく覚悟は出来ています。少しでも気になったら、是非、SKY-HIという存在をチェックして貰って、損はないと思います。
【SKY-HI サイン色紙プレゼント】
1stオリジナルアルバム『TRICKSTER』を3月12日(水)にリリースするSKY-HIのサイン色紙をプレゼント!!
詳細・応募方法は「うたまっぷプラザ」をチェック!!
⇒ http://gift.utamap.com/utamap_plaza/index.php
【SKY-HI オフィシャル・メールマガジン配信中】
毎回SKY-HI本人によるコメントムービーでお届けするオフィシャル・メールマガジンを配信中!!
メルマガ登録はコチラ
⇒ https://ssl.avexnet.or.jp/mailmag/sky-hi/index.php