デビュー以来、音楽シーンのトップを走り続けてきた、千紗(Vo)、鈴木大輔(Key)、井上裕治(Gt)の3人組ユニット"girl next door"が、デビュー5周年となる9月3日に、12月8日のライブをもって解散することを発表した。周知の通り、ヴォーカルの千紗は、オリンピック男子平泳ぎ金メダリスト・北島康介選手との結婚を機に芸能界を引退する。新曲を含む5年の軌跡を余す事無く収録したLAST BEST ALBUM『girl next door THE LAST』をリリースするgirl next doorの3人にインタビュー。LAST BEST ALBUM『girl next door THE LAST』の話から、最後の新曲「URBAN DANCE」や5年間の活動の思い出、そしてラストライブまで、3人が絶妙な掛け合いで語ってくれた。
──今日は11月20日リリースのラストベストアルバム『THE LAST』、ラストライブについてお話しをお聞きしますが、その前に、千紗さんは9月22日に婚姻届を提出されたそうですね。ご結婚おめでとうございます。
千紗(Vo):ありがとうございます。
──婚姻届を提出して、心境の変化などはありましたか?
千紗:よく聞かれるんですが、自分の名字が変わったことで結婚を実感するぐらいで、特に何も変わらないですね(笑)。
──千紗さんが芸能界を引退されるというお話しをお聞きになって、鈴木さん、井上さんは、どのように思われましたか?
鈴木大輔(Key)(以下、鈴木):結婚の話は昨年末には聞いていました。年齢も年齢ですし、おかしな話では無いので、“おめでとう、良かったねー”という。自然な流れで受け止められましたね。
井上裕治(Gt)(以下、井上):(北島康介選手と)お付き合いをしていると初めて聞いた時は驚きましたけど、(芸能界引退の)話は聞いていたので、本当に僕も同じ感じですね。
──デビュー5周年となる9月3日に解散を発表されましたが、実際に決めたのは、いつ頃でしたか?
鈴木:春ぐらいですか。
井上:うん、3月のアルバム『Life of Sound』のリリース後ぐらいですね。
千紗:ガルネクは自分の大事な居場所でもあり、ずっと活動を続けたいなぁという想いもあって、悩みました…。決断するまでにモノスゴイ時間が掛かりましたね。
解散発表後は、やっぱりファンの方々からのメッセージが、とても気になりました。いろんなメッセージをいただいて、こんなに大事に想ってくれているんだなぁって改めて実感しました。
──11月20日にラストベストアルバム『girl next door THE LAST』がリリースされますが、制作を終えていかがですか?
鈴木:シングルベストを1枚出したことはありますが、今回は“THE LAST”ということで、デビュー曲から新曲も含め、入れられるのなら全部入れてしまおうと。さらに「Infinity」のデモ・バージョンだったりとか、そこまで入れて全て僕らの曲を聴いてもらって終わろうかなぁと思いまして。
千紗:レア音源やリミックス音源などを集めるのは本当に大変だったんですけど、出し惜しみするものは何も無いので(笑)。
完全受注生産限定のPREMIUM COMPLETE BOXで、私は今まで歌ってきた全ての曲の歌詞を、手書きで書かせていただいてます。歌詞を書いているうちに、その時々のことを思い出したり、少しずつでも自分の成長を感じられたり。いろんなことを振り返りながら、想いを込めて作ったモノがパッケージになるのはスゴク嬉しいですね。
井上:そのPREMIUM COMPLETE BOXの特典には、スゴク豪華なブックレットが付いてきたり、3人で資料を見ながら5年間を振り返ってトークをしている映像もあります。
鈴木:DVDのスペシャル映像の収録で5年間の活動を振り返ったんですけど、タウンページのように分厚い資料がありまして(笑)。本当にいろんなことをやってたなぁと思いましたね。
井上:スタッフが用意してくれた分厚い資料に、その時々の写真やそれについて一言情報が書いてあって、誰かが思い出して喋り出すんですよ。
鈴木:“あった、あった”とか。
千紗:“言ってたやーん”みたいな感じで(笑)。
井上:より昔のほうが懐かしい感じで盛り上がりましたね。ミュージックビデオも海外で撮影したりもあって、海外でのコボレ話もタップリしました。
千紗:何時間話してたんだろう? 収録途中に“振り返り疲れ”になりそうになって(笑)。ラフな感じで楽屋トークみたいな雰囲気で撮っているので、観ている方も笑えるんじゃないかなって思います。
──5年間の活動で、特に印象に残っている出来事は?
鈴木:僕は、デビューから1年半後ぐらいに行ったファーストライブツアーが印象に残っています。
取材や収録、イベントなどはありましたけど、それまではCDのリリースが中心でした。なかなか自分たちのファンが見えなかった時期で、不安になったりもしました。だから、初めてツアーで全国を周った時に、実際にファンがいるって感じられたことがスゴク印象に残っていますね。
千紗:私も大輔さんと同じでファーストライブツアーです。ライブツアーを初めて経験することによって、歌詞を考える時やレコーディングの時に何を想って歌うのかが全く変わっていったので、私の中で、とても大きかったですね。
あとは4枚目のアルバム『アガルネク』をリリースした後、“大人ガルネク”をテーマに、元Every Little Thingの五十嵐充さんと楽曲制作をさせていただいて、その頃から自分の心境や考え方が変わったなぁと感じています。それまでgirl next doorのイメージは、ポップで元気で明るいサウンドという印象が大きかったと思うんですが、当時27歳の等身大の自分、もっと女性らしさを出して行こうと。自分の中からもフツフツと違うモノが出てきたなっていう感覚は覚えています。
井上:僕はちょっと切り口を変えて。「運命のしずく〜Destiny's star〜」が映画主題歌に決まって、ウルトラマンとコラボレーションをした時ですね。ミュージックビデオの撮影で実際にウルトラマンが参加してくれたり、僕らもウルトラマンのイベントに出演したり、その時にリアルなコラボ感がスゴク感じられたんですよ。例えばテレビのテーマ曲やCMソングというタイアップも嬉しかったのですが、ウルトラマン、円谷プロさんとコラボしたときに、一緒に一つの作品を作ったという感じを体験できたことが大きかったと思います。
──楽曲では、いかがですか?
鈴木:「Infinity」ですね。この曲で初めて1位になったという意味でも印象に残っています。
エピソードとしては、僕が別の曲を出していたのですが、ドラマサイドから“もっと明るい曲”というオファーがあり、結構ギリギリの作業になりました。本当に時間が無くて、ミックスしている麻布のスタジオのその場でピアノを弾いて作ったのを覚えています。ディレクターさんを前に、“例えばサビってこういうことですかね”とピアノを弾いて。そのメロディがドンピシャだったらしくて、“それ! そういうこと、そういうこと!!”という風にサビが決まったんです。
千紗:私も「Infinity」です。初めて1位になったことはもちろんですが、「Infinity」があったから、本当に沢山の人に“girl next door”という存在を知っていただくことが出来ました。いろんなところでこの曲を披露することになって、“ライブで一緒に盛り上がることがこんなに楽しいんだ!”ということも学びました。今では本当に私たちのライブで欠かせない曲になってますし、私たちの全ての思い出を共にしてきたんじゃないかなって思えるぐらい、思い入れがある大切な1曲です。
井上:僕は切り口を変えて(笑)、「偶然の確率」ですね。
girl next doorとしてデビューする1年ぐらい前に、大ちゃんからデモの曲にギターを入れて欲しいと頼まれたことがありました。実はその曲が後の「偶然の確率」だったんです。
その時はギターを入れて終わったんですが、それから半年ぐらい経って、girl next doorのメンバーとして始動した頃、“この曲でスタートして行こうと思う”ってテープを聴いた時に、“この曲、俺がギター弾いてない?”となったんですよ(笑)。アプローチとか音とか、自分のニュアンスで分かるんですよ、“これ俺だ”って(笑)。それが面白くて。そんなことがあるんだなぁっていうスタートだったことをスゴク覚えています。
そこから9月のデビューまで半年かけてプロモーションもさせてもらったし、初めて皆で海外に行って、初めて皆で行動を共にして、何だかんだ始まりの顔みたいな曲なんでね。
──『girl next door THE LAST』には、最後の新曲として「URBAN DANCE」も収録されています。新曲「URBAN DANCE」を制作された時期は?
鈴木:アレンジや歌詞は変わっているのですが、もともとストックしてあった曲です。イメージ的にもシンミリして終わりたくないなぁと思っていて、バラードという選択肢が無いことだけは全員一致していました。“だったらこの曲があったよね”というところから制作していったんです。
千紗:皆で決めましたね。私たちらしくアッパーで盛り上がれる曲が良いと思っていたので。
井上:12月のラストライブで演奏しようというビジョンもありました。だからシッポリというよりは明るく華やかに。
──その曲に千紗さんが歌詞を付けられたんですか。
千紗:ハイ。既に歌詞も付いていたのですが、やっぱり最後に出す曲として、私やメンバーの想いも込めて、絶対に書き換えたいと思いました。
書き始めてスグに、サビで繰り返し歌う“Don't forget, we don't forget”というフレーズが浮かんで、まずコレを入れたいと思いました。皆の記憶に残るような、そして自分たちの感謝の想いを入れた1曲にしたいと思い、最後は自分一人で歌詞を書くのではなく、デビュー当時からずっと一緒にお仕事をさせていただいたKenn Katoさんと一緒に作らせていただきました。スゴク納得のいく歌詞に仕上がっています。
──歌詞のテーマやストーリーの発想は、どんなところから?
千紗:何事にも始まりがあれば終わりもありますが、それは全部悲しいことばかりではないと思います。girl next doorの解散は、新しい未来に繋がっていく終わりなんです。「URBAN DANCE」の歌詞にも、夜から朝にかけてずっと楽しんでいる、明けても明けても終わりが無いというような想いを込めています。今この瞬間をスゴク大切に皆と一緒に楽しみたいという想いを、皆さんに少しでも感じてもらえたらと思って書きました。
──サビの歌詞の“we”に千紗さんの想いが込められているように思いました。
千紗:自然に“we”になりましたね。自分一人だけじゃないから“we”しか思いつかなかったです。もちろんメンバーのweでもありますし、今まで応援してくださったファンの方々や、支えてくださったスタッフの皆のweでもあります。やっぱりそこは“みんな”でという想いが一番ありました。
この歌詞の気持ちは、私だけが経験している特別なものでは無いと思います。誰の人生にも、何かが終わり、そこからまた始まることが絶対にあるハズです。ですから皆さんにも共感していただけるのではないかなと思います。ラストライブに来てくれる皆さんも一緒に口ずさんでくれたら、そう思い描きながら書きましたね。
歌詞を書き換えたのでタイトルも変えようかとも思ったんですが、元々付いていたタイトルがピッタリだったので、皆の意見が一致して「URBAN DANCE」に決まりました。
──ラストベストアルバムには「URBAN DANCE」ミュージックビデオも収録されていますが、どのような仕上がりになりましたか?
千紗:これまでと違うところは、どのカットも全て3人が映っています。
鈴木:出会いがあって別れがあってという印象もある作品に仕上がったかなぁと。このミュージックビデオの雰囲気をラストライブにも持っていけたらと思いますね。
井上:ロケーションが2個所あるのですが、どちらもスゴク良い画が撮れ過ぎて、編集が相当困ったそうです(笑)。
千紗:使いたい画があり過ぎるみたいな(笑)。
鈴木:途中で“もう十分撮れたんじゃないの?”と言ったのですが、監督も同意しそうになりながら“もっと撮ろう!”って(笑)。昔から知っている監督だったので、和気あいあいと順調に撮影できましたね。
井上:ビルの屋上では夕陽を使って撮影したんですけど、この画が最高なんですよ。最高なんですけど夕陽はドンドン沈んでいくので。僕らは1曲を通して演奏したんですが、それよりカメラマンさんが大変でした。
千紗:私たち3人を中心に周りをグリングリンにずーっと走り回って撮影しているんです。カメラマンさんは汗かいてたよね。
井上:完全に肩で息していて“もうピッチャー交代してあげて”(笑)って言いたくなる気分でした。おかげさまで素敵な映像に仕上がっています。
──そして『girl next door THE LAST』リリース後の12月8日(日)に東京・shibuya AXで、girl next doorとして最後の活動となるラストライブが開催されます。
井上:普段はライブハウスとか、人間対人間みたいなライブをしてきたんですが、ラストライブは仕掛けというか、セットとか照明などの映像効果も交えて作り込んだライブになると思います。
鈴木:5年間の歴史を振り返るという意味も含めながら、ストーリー仕立ての構成にしようかなと思っています。まだリハーサルもしていないので何とも言えませんが、ただ、皆さんの心に残るライブが出来たら良いなって思います。
千紗:ストーリー性のあるライブというのも、打ち合わせを重ねて皆で決めました。私も楽しみです。
──girl next doorの解散をもって、千紗さんは芸能界から引退されるそうですが、鈴木さん、井上さんは?
鈴木:girl next doorとして5年間走り続けてきたので、少し休もうかなとも思っています。僕は作曲家としても活動をしているので、しばらくは作曲活動をやろうかなと思うのですが、少し休憩しながら作曲をしていこうかなと。
井上:僕は今年の初めから、個人的にギターのインスト曲を月1で作ってYouTubeにアップしてきました。ムービーも自分で作ったり全部手作りで上げていたんですが、そういうのが功を奏して、来年ギターの本が出せそうなので、今は執筆をしてます。でも、ずーっと書いていると文章の出だしと終わりが全部一緒になって来たりして(笑)。ライターさんってスゴイなぁって思いながら打ってますね。
──最後に3人にお聞きします。ご自身にとって“girl next door”とは?
鈴木:本当にファンの方々に支えてもらった5年間だったと思います。girl next doorがあって出会えた人も沢山いて、本当にありがたかったですし、自分の歴史の1ページになったと思います。
千紗:私は今28歳ですけれど、これまでの人生の中で一番大きな出来事だったかなと思っています。大輔さんも言うとおり、応援してくれるファンの方々や、周りで支えてくださるスタッフがいたから、ここまで活動できたと思います。その5年間の中で、普段は出来ないようなことを沢山経験させていただいて、自分自身、大きく成長させていただいたと思います。
井上:僕は、最後もちょっと切り口を変えて(笑)。
僕にとっては“30代の青春”かな。たまたま誕生日と重なって、girl next doorのデビューの日に僕は30歳になったんです。デビューしたばかりの頃は青くさい時期もあっただろうし、5年で大人になったのかと言われればそうじゃないかもしれないですが、まぁ、いろいろあったんでね。だから10代の時より濃い、かなり濃い青春だったと思います。