──まず、今回のアルバム、タイトル「2FACE」の意味を教えて下さい。
SO-TA:読んでその通り、二面性という意味でつけたタイトルです。どこが二面性かというと、今回収録されている楽曲の内容がポップス寄りのものから、僕はもともとブラックミュージックを聴いて育ってきたので、そのルーツとなるブラック寄りの楽曲を収録してみたり、あるいは歌詞も非常に爽やかな明るめの世界観のものから、ちょっとダークな内容なものがあって、そういう二面性で作ってみましたという意味で、「2FACE」と名づけました。この言葉は、アメコミのバットマンに出てくる悪役のニックネームとしても有名みたいです。確か火傷かなんかの跡を隠すために、彼は顔の左右が極端に違うメイクになっています。ただ僕のジャケ写は左右じゃなくて、上下で「2FACE」になっていますけどね(笑)。ジャケ写も爽やか路線とダーク路線をイメージしています。そもそも1stアルバムが草食系の売り方をしていまして(笑)、そのイメージを2ndアルバムでガラリと変えたんです。具体的に言うとそこから金髪になったとか、そういうノリになった(笑)。ただどちらも偽っているわけではなく、「まぎれもなく僕だ」というアルバムなんです。それでそれらの総括ではないんですけど、両方僕なんだよっていうのを見せたかったんです。
──アルバムのリード曲「手をつなごう feat. LGYankees HIRO, Noa」ですが、どんなイメージで作った曲ですか?
SO-TA:一言でいえば爽やかソングです。大人はもちろん、小さな子供でも聴いて楽しい曲というイメージで作りました。
──歌詞の内容をみると、付き合い始めたばっかりのカップル、もしくは新婚さん風ですね(笑)。
SO-TA:そうですね。恋愛初期の気持ちというのが一番純粋というか、ありのままの気持ちだと思うので、そういうものを描いてみたかったんです。ですからPVも、仲良く手をつないでいるカップルの風景の中に僕らが写り込むみたいな感じになっています。実はPVの撮影は、新宿の30階くらいのビルの屋上で、さらにそこにトラスを立てて、空中を浮いているみたいな状態で撮影しました。高いのでちょっと怖かったし、おまけに途中からゲリラ豪雨が来て、風がびゅんびゅん吹くし、もうフラフラになりながら撮りました。
──そして三曲目はサブリードになる「Sweet Girl Feat. LGRookees KENNY」。こちらはKENNYさんとのボーカル合戦ですね。
SO-TA:男性ボーカルと二人で歌うというのはかなり久しぶりで、しかも今回は韓国人アーティスト。最初はどこまでできるんだろうという不安もあったけど、やってみたら、うまく競いあうというか、楽しく出来ました。実際には僕から注文する部分も少しはあったのですが、なんか彼の持っている確固たるものが見えたので、殆どお任せでやってもらいました。当たり前なんですけど、英語の発音がよかったですね。さらに歌い方が、やっぱり日本人とは違います。言葉の置き方とか、声の出し方とか、それは凄く勉強になる部分でもありました。いわゆるKポップの方々は、歌唱力は抜群ですね。今回は作っていく過程も凄く楽しい試みだったし、その結果として、聴きものになっているとうれしいです。
──今出た二曲以外で、SO-TAさんのオススメを教えて下さい。
SO-TA:自分的にチャレンジな曲だったのは「ユメノアト」という曲です。過去に女性アーティストの歌詞を書かせてもらったり、フィーチャリングしてもらうために書いたこともあったのですが、改めて女性目線の歌詞を書いて、自分が歌うというのは初めての経験でした。
──歌詞の内容を見てみると、この女の人は怖いですね。
SO-TA:そうですね。もう想像の世界ですから実際には自分は関係ないけど、この主人公には思い切って凄く不幸になってもらってます(笑)。だから「2FACE」のダークサイド代表ですね。爽やか代表の「手をつなごう〜」と両極端になるように、頑張って書きました。お察しの通り、内容は不倫です。実は2ndアルバムを出したあとに、ある人から不倫の曲を書いてみたらどうかって言われました。でまあ、経験もないし(笑)、ましてや女性側から発想するのは難しかったんですが、考えてみると究極に切ない気持ちというのはそこに行き着くのかなって思いました。そして叶わない恋愛、でも相手を凄く思うのはこのシチュエーションだと思ったので、自分の中でもいろいろな発見があった曲なんです。
──前作もそうですけど、今回もカヴァー曲が入ってますね。
SO-TA:はい、前回は「M」を歌ったのですが、今回は二曲入れました。
──まず、「ひだまりの詩」。これを選んだ意図は?
SO-TA:前回の「M」は僕自身が聴いたり歌ったりしてきた曲なんですが、リアルタイムで聴いていたかと言われたら、そうではなかった。そこで今回はリアルタイムで聴いていて、心のなかに残っている曲を取り上げたのです。実は幼い頃から、父親の影響もあって、僕は邦楽を知らないで育ってきました。でも小学校に入ると、今度は周りの友達と話が合わなくなってしまったので、慌てて音楽番組を見始めた頃に、この曲がずっとランキング1位だったんです。凄く印象深い曲なので、是非、歌いたかった1曲です。
──因みに97年5月に発売された曲で、ドラマの「ひとつ屋根の下2」の挿入歌です。
SO-TA:そうですね、大ヒットした曲で、これを聴くたびに、一生懸命歌番組を見ていた頃の自分を思い出します。もう周りの友達と話を合わせるために、勉強のノリで必死に見てました(笑)。
──一方、もう一つのカヴァー曲「tears」は2000年7月に発売された曲で、ダウンタウンの浜ちゃんと和久井映見が出ていた「Friends」というドラマの主題歌で、Farayが歌った曲です。
SO-TA:これは邦楽を知りたいと思いながら色々聴いていたけど、相変わらずブラックミュージックなどの洋楽も大好きだった。それでこの曲を聴いた時に「日本人がこんな曲を歌うんだ」っていう衝撃を受けた曲です。そういう意味で、こちらも思い入れの強い曲です。
──歌唱力のあるアーティストが過去の名曲を歌うのを聴きたいという需要は、大きいので、これからもアルバムにカヴァーを入れるのは続けていって欲しいですね。歌い手が変わると、曲の新たな面でてきますし、きっとファンの方も楽しみにしていますよ。
SO-TA:そういって頂けると嬉しいです。
──今回のアルバムで、歌詞がちょっと面白いのが「Wonderful★Night feat. 橋本真衣」ですね。普通、夜になったら帰ろうかというところ、眠れないから冒険に行こうという、意外な展開です(笑)。
SO-TA:実は小さい頃から寝付きが悪くて、布団に入ってから5時間以上眠れないなんていうのもザラだったんです。そういう子供だったんですが、幼いながらに夜起きているというのは、ちょっと悪いことをしているようなワクワクする気分もありました。さすがに小さいので夜に出かけることはありませんでしたが、外に行くと想像するだけで、冒険心が首をもたげてきました。例えば大晦日から元旦にかけて、家族で初詣に出かけるときに、夜中、真っ暗な中を車で行くというのにも、すごくワクワクした。それを今思い出して、改めて描いてみたんです。
──ただここで描かれている夜は、暗闇とかおどろおどろしい夜ではなくて、まるで絵本に出てくるようなファンタジックな夜景ですね。銀河鉄道の夜じゃないですけど、深いブルーの夜空に黄色い月や星が瞬いている。
SO-TA:そうですね。そういう幻想的なイメージの夜ですね。今でも、星明りしかない夜空を眺めていると不思議な感覚にとらわれます。その世界観も出してみたかったんです。
──あとドライブ・ソングというのがありますね。これも変わっています(笑)。
SO-TA:はい、「Dreamy Drive」という曲で、これも初の試みです。去年、クルマの免許をとったので(笑)、そういう影響もあります。実はこの曲をかけて走ろうと張り切っていたんですが、まだ実行していません…。今年の仙台はなかなか梅雨が明けてくれないので、ドライブ・シーズンが到来しないんです(笑)。
──そもそもSO-TAさんがアーティストとしてデビューをされるきっかけは何だったのですか?
SO-TA:うちの代表でもあるLGYankeesのHIROさんと出会ったのがきっかけです。僕が高校生のころに、共通の知人がいて、その方を介して知り合いました。その方のお店にカラオケがあって、たまたま遊びに来ていたHIROさんに歌を聴いてもらったんです。その時は「こいつ歌えるから聴いてやってよ」というノリで紹介されました。そのことをHIROさんが憶えてくれていて、後々NO DOUBT TRACKSという事務所を立ち上げる時に誘ってくれたんです。その頃、僕も遊び半分だったのですが、すでに音楽をやっていて、男二人組のデュオで歌っていました。それで「よかったらオーディションを受けてみない」という話を頂いて、事務所に入ったという経緯です。
──記憶に残っていたということは、最初に聴かせたカラオケが相当うまかったんでしょうね。因みに何を歌ったのですか?
SO-TA:スティービー・ワンダーの「To Feel The FIRE」です。
──ああ、そりゃもう、素人が歌う曲じゃない(笑)。
SO-TA:昔からスティービー・ワンダーが大好きで、小学校の時に「To Feel The FIRE」が缶コーヒーのCMに使われていまして、どうしても歌いたかったので、母親に頼んで、英語の歌詞をカタカナにしてもらって覚えた曲なんです。だからカラオケでは歌い込んでいました(笑)。
──手元の資料では、スティービー・ワンダーで一番好きな曲は「Stay Gold」になっています。これまた渋いところをついていますね。
SO-TA:コッポラ監督の「アウトサイダー」という不良映画の主題歌です。もちろん好きになった当時は、そんなことは知らなかったけど。
──因みにその映画は83年に公開されたそうです。
SO-TA:確か作曲がコッポラのお父さんで、作詞と歌がスティービー・ワンダーですよね。この曲を彼の仙台公演の時に、一番前で聴いたんですけど、もう泣きそうになるくらい痺れましたね。普段から「お前には感情がない」っていわれる僕ですが(笑)、この時は感動のあまり、さすがに泣きそうになりました。彼は歌もすごいけど、いろんな楽器もこなすし、例えばベースを弾いても、プロのベーシストが思いつかないようなフレーズをやるらしいです。すごく憧れます。だからプロになる前のデュオの時代にも「Overjoyed」とか、カヴァーしていました。
──スティービーと同じようにSO-TAさんもピアノ・プレイヤーで、ピアノ歴8年ということですが、作曲はピアノですか?
SO-TA:僕らの制作というのは独特で、いわゆるトラックという伴奏を打ち込んだものをベースに作っていきます。そのトラックにメロディと歌詞を載せていくんです。ですから普通は頭のなかで、鼻歌を歌うようにして作ってしまうことが多いですね。でも今回の制作に関しては、結構、ピアノも使いました。ギターかピアノかと言われると、やっぱりピアノを使うことが多いですね。
──作詞は手書きですか?
SO-TA:昔は手書きでしたが、最近はパソコンです。実際には歌詞とメロディは、同時進行で作っていきます。例えば先にメロディを作って歌詞を当てていくと、音符の数に限定されてしまって、いい言葉が使えなくなる。それで歌詞が詰まってしまうんです。だから思いついた言葉に合わせて、メロディも作っていく。そうなるとパソコンのほうが、言葉を吐き出すのには便利なんです。
──ということは歌詞とメロディ、つまり曲がいっぺんにできちゃう?
SO-TA:そうですね。ほぼ書き終わりが、出来上がりという感じです。あとはレコーディンの時に、足したり削ったりすることはありますけどね。
──楽曲作りは昼間ですか、それとも夜派?
SO-TA:作業はやっぱり夜ですね。誰もいない場所で、しかも全くの無音の環境じゃないと作れないんです。何かの音がするだけで、集中が途切れてしまう。まあ、僕自身が落ち着きが無いという性格もありますけど(笑)。
──今回はアゲアゲな曲で、「Life is beautiful feat. ユンジ」という曲もある。ちょっと変わった曲調で、面白いです。
SO-TA:これは最初から盛り上がる曲を狙ったのですが、でも「お酒でも飲もうぜ」っていう感じではない。国籍も性別も違うユンジさんと一緒に作るときに、共通して思える感情をあれこれ考えるうちに「人生って素晴らしいよね」っていうキーワードが浮かびました。それが一番しっくりくるので、それをリズムに乗せて楽しく歌いたかったんです。その狙い通りに出来ました。さらにイントロの部分には、ユンジさんとの英会話教室もあります(笑)。あれは、最初はなかったんですが、ユンジさんからレコーディングを終えたあとに、これを入れて欲しいと送り返されてきたんです。彼女は英語がペラペラなんですが、それを聴いた瞬間に「やっってくれたな」っていう感じ(笑)。この英語の会話だけで1時間以上かかりました(笑)。発音がうまく行かなくて、苦労でした。うちは周りに英語を喋る人間が多いので、密かに勉強しようと思ってます。
──タイムマシンに乗ってどこへ行こうかっていう曲もあるのですが、ご自身ならどこへ行きますか?
SO-TA:僕だったら、ビビリなので未来は見たくない(笑)。だから過去がいいですね。それも自分の記憶に無い過去を見たいです。1歳の頃とかですかね。
──あと今回はコラボ曲もありまして、サクラメリーメンの小西透太さんと「ヒカリ」という曲を作っていますね。
SO-TA:小西さんとはラジオのレギュラーでご一緒させて頂いている縁です。もともとこの曲はラジオの企画で始まったものなんです。今まではうちのファミリーや、同じようなジャンルのアーティストさんとのコラボは何回かあったのですが、バンドの方とのコラボは初めて。凄く新鮮で、いい経験をさせて頂きました。
──ラジオ番組は、現在も放送中ですか?
SO-TA:はい。青森放送ラジオの「土曜ワラッター!」という番組です。これは生放送なので、結構、きついですよ(笑)。決まったテーマはなくて、毎回、振り回されて…、もう凄く勉強になります(笑)。当日までなにをやるのか教えてくれないし、しかも生放送という緊張感でしょ。でも結局、歌詞を書くのと同じで、伝えるためにはボキャブラリーの豊富さが勝負になりますね。いきなり歌えとか、あの看板を見て一曲作れとか、なかなかスリリングな番組です。パソコンでも聴けますので、是非、聴いてみて下さい。去年の10月から参加さていただいていて、楽しいですけど、怖さもあるお仕事です(笑)。ラジオというのは僕自身を知ってもらうのに絶好の機会ですし、直に反応も出るので、凄く楽しいです。でも、番組のリスナーは結構厳しくて、ご意見のはがきも多いです(笑)。
──はがきは男性と女性、どっちからが多いですか?
SO-TA:五分五分ですね。しかも年齢層が非常に幅広くて、下は中学生から上は60代、70代の方からもきます。だから自分の目線からだけものを言っても伝わらないこともあるので、そういうのは凄く勉強になります。
──では最後に、これからの活動についてお聞かせ下さい。
SO-TA:このアルバムを引っさげて、各地をインストア・ライブで回る予定です。それで9月14日に長野県松本市で、うちのファミリー集合のチャリティライブがあります。久々の全員集合なので、是非、遊びに来て下さい。その時にお会いしましょう!
【プロフィール】
ピアノ歴8年、合唱団に2年、ときにはバンドでギター。少年時代は音楽が常に隣にあったSO-TA。高校生の頃から R&B/HIP HOPを聴き始め BLACK MUSIC の奥深さにのめり込んでいった。最も尊敬するアーティストはスティービー・ワンダー。「ジャンルにとらわれず幅広い楽曲を作っていきたい」という彼の信念をリスペクトしている。そんな中、LGYankeesのHIROに見出され、2009年11月に「 Why 」でメジャーデビュー。SO-TAが育てて来た自らの歌声は、その凛とした特徴を指して「クリスタルボイス」と称されるようになった。大注目の本格派シンガーである。
【LIVE情報】
・LGYankees Produce「DOKI DOKI NO DOUBT CHARITY LIVE!!!!!」@長野県松本文化会館 キッセイ文化大ホール
・SO-TA3rd Album「2FACE」発売記念Special LIVE@WonderGOO守谷店「GOOst」