どんなに絶望的な状況であっても、希望の光は必ず見つかる。大切な“あなた”の存在によって――。
中島美嘉からまたひとつ、聴く者の心を根本から励まし続ける、普遍的な力を持った楽曲が届けられた。中島みゆきの書き下ろしによる「愛詞(あいことば)」に続く、2013年第2弾シングル「僕が死のうと思ったのは」。あまりにも強烈なタイトルを持つこの曲は、シリアスな心象風景を描くことで知られるロックバンド、amazarashiの秋田ひろむの手によるロック・バラードだ。
中島美嘉:今回のシングル、最初はアップテンポの曲を選ぼうと思ってたんですよ。でも、amazarashiさんからこの曲をいただいて、そんな予定は吹っ飛んで"絶対、この曲を歌いたい"と思って。最初の聴いたときは、泣くのをこらえながら放心状態になりましたね。本当にすごい曲だなって…。
タイトルだけを見るとネガティブなイメージを持つ人もいるかもしれない。しかし、この曲は決して絶望や諦念だけを描いた曲ではなく、むしろ、生きることに真摯に向き合おうとする希望の歌なのだ。
中島美嘉:死のうとは思わなくても、きもちがどんより曇っていて、生きることがつらい時期って誰にでもあると思うんですよ。私も実際、27才くらいまでは何もかもがイヤだなって思ったこともあったので…。だから、この曲の歌詞にある“死ぬことばかり考えてしまうのは きっと生きる事に真面目すぎるから”というフレーズにはすごく心に残りました。“そうか、確かに”って思えたし、歌ってると元気が出てくるんですよね。
リスナーに向かって直接語りかけるような切実なリリック、そして、ドラマティックな展開を見せるメロディを圧倒的なカタルシスとともに表現するボーカリゼーションも、本当に素晴らしい。30代になった彼女は、ボーカリストとしてさらなる深みを獲得しつつあるようだ。
中島美嘉:amazarashiさんの曲は譜割りが独特だし、いままで歌ったことのないタイプの曲だから、最初は対応するだけで必死でしたね。レコーディングまでに何度も何度も聴き返して、(デモ音源のボーカルを)完コピするくらいの感じで(笑)。歌詞の世界観は自分に合うと思ったし、そこは心配してなかったんですけどね。もしかしたら、年齢も関係あるかも。もっと若いときにこの曲を歌ってたら、重みがないというか、単に“カッコいいね”で終わったかもしれない。30代のいまだからこそ、良い意味の重さだったり、リアルな表現が出来るんじゃないかなって。楽曲をしっかり受け止めて、責任を持って歌えるというか…。そこは変わってきた部分だと思います。
5月から8月にかけて行われた全国ツアー「中島美嘉 LIVE IS “REAL” 2013 〜THE LETTER あなたに伝えたくて〜」の後半でも披露され、“曲のパワーがありすぎて、お客さんが茫然としちゃうんですよ。もちろん、泣いてくれてる人もいるし”と、しっかりとした反響を呼んでいる「僕が死のうと思ったのは」。中島美嘉にしか体現できない“歌の力”をぜひ、あなた自身の心と体で受け止めてほしい。
中島美嘉:タイトルだけを見て、誤解されちゃうと悲しいなって思います。でも、最後まで聴いてもらえれば、ちゃんと伝わるんじゃないかなって。生きることに真面目で、今日を大事にしたいということを歌っている曲ですからね。
文:森朋之