彼女のデビューへの道のりは、ちょっと変わっている。まず彼女は、音楽ではなく演技の方、それも子役としてキャリアをスタートさせた。そこから年を追うごとに、もともと持っていた歌をうたいたいという気持ちがどんどん膨らんできて、ついにそれまで順調だった子役としてのキャリアを投げ打ってしまう。そして改めて音楽系のオーディションを受け続け、キャリアを一から作り直していった。2011年にシングル「どうして/080」をリリース。レコチョク・クラブ・チャート1位を獲得した同曲は、You Tubeでも30万再生を突破する等じわじわと注目を集めている。
その後、発表させる曲も、歌詞サイトのアクセス・ランキングで上位に顔をのぞかせるようになった。これまで書きためてきたものを一枚にまとめ、発売される事となった彼女の1st.アルバム「Loveholic」。5月22日のリリースにさきがけて、本人が今回のアルバムについて、そして作詞についての創作の秘密などを語った。
──今回のアルバムは、ファースト・アルバムにもかかわらず、2011年発売の曲から新曲まで、まさにここ数年の活動の集大成になっています。
山岸:そうですね。以前にCDで出した曲が「どうして」「080」の2曲、配信で出した曲が「君のいない世界」「Smile」「ずっと好きだよ」の3曲。そして残りの5曲が新曲です。内容はズバリ、ラブソング集で、全曲恋愛がらみ(笑)。しかも失恋率が高くて、70%は失恋味かな。
──そもそものプロ・デビューまでの経緯をお聞かせ下さい。
山岸:もともと3歳から子役をやっていて、音楽ではなく演技の世界で活動していたのですが、実は小さい頃から歌うことが大好きでした。中学校の頃になると、作詞のことはよく分からなかったけど、自分なりに歌詞を書いたりもした。それで16歳の時に音楽を本気でやりたいと思い、一度思い切ってドラマとかの子役のお仕事はお休みして、音楽系のオーディションを受けたんです。そこからユニットになったりバンドになったりしながら、音楽活動がスタートして、それが今につながっています。ソロで歌いたいとずっと思っていたので、このCDでようやく夢が叶いました。
──自分で歌詞を書いて歌うようになったのはいつからですか?
山岸:今は、歌詞を自分で書いて、作曲家さんにメロディーをつけてもらうパターンで曲をつくっています。私はスマホに歌詞を書いていくんですが、ある程度たまったところで、それを作曲家さんに渡して曲を当ててもらうというやり方です。でも最近は、先に曲が出来てきて、そこにハマる歌詞を考えるというパターンも増えて来ました。
──でもメロがない場合は、字数も行数も全くの自由ですよね。制限なして「さあ、好きなように書いて」って言われるのも、なかなか難しいような気がしますが?
山岸:私の場合、まず、自分の気持ちをストレートに箇条書きにしてしまいます。その時には曲とのハマりや、どこがサビになるとかも全く関係なく書いてしまうのです。まずは伝えたいことを、しっかりと詰め込むことが肝心です。そうして出来上がったものを、今度はスタッフさんたちに読んでもらって、「このテーマいいね」という感じで曲が出来てきます。そこからいよいよ歌詞として詰めていく。そういう二段構えの制作です。
──いわゆる曲のコンセプト(芯、核になる部分)を最初に書いて、ということですね。
山岸:そうですね。だからホントの歌詞にしていく作業は、そこから始まるんです。
──歌詞を書くのはスマホとおっしゃいましたが、因みに録音ですか?それとも文字を打ち込む?
山岸:喋りではなく文字を打ち込んでいます。書く場所は電車の中と寝る前のベッドの中というのが一番多い(笑)。例えば、長く電車に乗って遠くまで行く時とか、そういう時はここぞとばかりに書きますね。だからバッテリーの予備は常に持っています(笑)。
──作詞をするにあたって、日頃から心がけていることはありますか?
山岸:なんでも新しいことにチャレンジするように心がけています。例えば新しい友だちを作るとか、常に自分に刺激を与えるようにしています。慣れてくるとダメなので、いつでも新しいことを取り入れられるように、習い事をしてみたり、あまり会わない友達と会うとか、そういう些細なことから意識してやっています。あと旅行も行きます。
──お気に入りの旅行先はありますか?
山岸:アメリカのセドナが好きです。パワー・スポットで有名な場所で、アリゾナにあるネイティブアメリカンの聖地です。ここが凄く好きで、一年に一回は行きます。しかも3週間とか、わりと長期で行きますね。この前行った時には、ニューヨーク出身のヴォイス・トレーナーの方が住んでいらっしゃるのですが、その方にレッスンをしてもらいました。そういった具体的なことは別にしても、セドナには、色々とパワーを貰える気がします。
──曲の雰囲気からだと、セドナよりパリとかに行ってそうですけど。
山岸:ええっ、ホントですか?パリどころかヨーロッパには行ったこともない。自分ではよく分かりませんが、私の曲の感じは、パリとか青山みたいな都会の雰囲気なんですかね?でも例えば、歌詞の中には英語は入れていない。英語がスゴく喋れるわけではないので、カタコトで入れるくらいなら、自分のもっているストレートな言葉を入れたほうがいいかなって思うのです。英語にした方がお洒落で、雰囲気がカッコ良くなるというのはありますけど、それはやってない。
──今回のアルバムの中で、お薦めの曲はどれですか?
山岸:「Too Late〜消せない記憶〜feat. Tarantula fromスポンテニア」です。スポンテニアのTarantulaさんとご一緒させていただいた、私にとっては初めてのフィーチャリング曲です。それまでは自分の気持ちだけをバンっと書いていたのが、初めて男性側の思いとかも入って、それをまとめるのはすごく大変だった分、出来上がった時の満足度が高かった曲です。歌詞の内容は、その女の子には今、新しいカレがいるけど、昔つき合っていたカレを思い出してしまって、ちょっと戻りたいなって想っている状況です。実はその元カレの方も同じような気持ちで動いているけど、でも、戻れないという…。
──ややこしいですね(笑)。一般に失恋からの立ち直りは女性のほうが早くて、忘れるのも女性が早いといいますけど、そんなふうに糸を引いちゃう時もあるんですか?
山岸:女の子のほうがケロッと忘れると言いますけど、それには裏があって(笑)、実際には思っていますよ。それで落ち込んだ時とかに、心によみがえる。そこで連絡するかしないかは別問題ですけど、よみがえった話はよく聞きますね。特に最近はフェイス・ブックとかツィッターとか、昔にはなかった繋がり方をする方法がありますから。例えばそこに「元カレが出てきちゃうと切ない」とかはよく聞く。結婚したとか、彼女が出来たとか、元カレの今が分かっちゃいますからね。それで自分は自分で幸せだけれども、ちょっと切なくなるというのはよく聞く話です。
──「Too Late 〜」は新曲ですけど、では既発の曲のお薦めはどれですか?
山岸:「どうして」が、私の想いがずっしりと詰まっている曲ですね。大好きな彼がいるけど、ワガママを言ってしまう。喧嘩をしかけるようなことを、敢えて自分から言ってしまったり、素直になれない女の子の気持ちを歌った歌です。「どうして私はこうなんだろう」って心のなかでは思っているけど、素直になれないのです。この曲をYou Tubeで知ってくれて、コメントを書いてくれる方が多いんです。「スッゴく共感しました」って書いてくる小学生の子とか中学生とかもいるので、ちょっとびっくりします。「スゴいな。そんなに若くても分かるんだ」って感じです。
──それだけ山岸さんの歌詞がリアルだということだと思いますが、そういう歌詞の発想はどこからくるのですか?
山岸:いろいろありますけど、友だちと話をしていることから発想する場合も多いです。女子会をしていると、かなりダークな話題になることもあるので(笑)。女の子が集まると、必ず恋愛トークをするので、それを聞いていると「ええ?私の価値観とぜんぜん違う」という事がしばしばありますね。今の言い回しは面白いから覚えておこうとか、そういう会話が発想のもとになっています。ただ、私はターゲットを定めて書いているわけではないので、私の歌詞がどこにウケるかは分からないですね。実際に、私が書いた恋の話が中高生にウケるというのも、実はとっても意外なんです。
──「080」という曲もありますけど、これは携帯電話のナンバーのことで、「090」じゃないところが、妙にリアルです。
山岸:確か2000年あたりに携帯の番号が足りなくなって080が追加されたはずで、その頃の話です。ですから敢えて「080」のままにしました。実は当時、大失恋をしたことがあって、そのことは自分のなかで何曲も書けそうなくらいのストックになっている。言ってしまえば、別れた彼氏は080の携帯を使っていたわけです(笑)。そう言えば、このアルバムは殆ど体験談で、しかも失恋率が高いな(笑)。
──ご自身の経験や女子会以外に、山岸さんの創作につながる趣味とか活動はありますか?
山岸:普通ですけど、小説を読んだり映画を観たりは好きです。好きな作家は江國香織さんかな。好きな映画はアクションもので、男臭い喧嘩系のものや、最近では「アウトレイジ」も良かった。ああいうのは、見ていてスカッとするからいいですね。趣味では、ダンスを習っています。ジャンルはガールズ・ヒップホップやベリー・ダンス。いわゆるちょっとセクシー系のダンスです(笑)。でも運動量はハンパなくて、プロのダンサーは本当にスゴいですね。私はちゃんと習い始めて1年くらいですが、身体が凄く柔らかくなりました。前屈が、最初は全くつかなかったのが、今はピタッてつくようなった。いつかダンスもコンサートで生かせればいいですけど、今のところそういう曲はないんですよね。いつかはダンサブルな曲にも挑戦したいです。
──では最後に、これからの抱負をお願いします。
山岸:このアルバムをもって、リリース・イベントを各地で展開していきます。夏に向かって全国各地で、皆さんにお会いできるように頑張ります。このアルバムは全曲が恋愛ソングなので、今、恋してなくても、恋したいなって思っている人も、本当に失恋中の人も、どこかしら、なにかしら刺さる言葉があるのではないかと思っています。ぜひ、歌詞に注目して聞いて下さい。あとブログも読んでみてください。よかったら曲についてコメントやメッセージが貰えると、うれしいです。
【LIVE情報】
山岸リサ 1st.Album「Loveholic」リリース記念イベント
5月25日(土)13:00〜 ラゾーナ川崎 ルーファ広場 グランドステージ
5月26日(日)14:00〜/16:00〜 イオンモール高崎1Fセントラルコート
6月1日(土)14:00〜/16:00〜 イオンモール太田 1Fセントラルコート
6月2日(日)14:00〜/16:00〜 Bell Mall カリヨンプラザ
6月9日(日)16:00〜 アリオ川口1階センターコート