ひょんなことから知り合った二人の少年は、妙にウマが合い、年中ツルんで遊ぶようになった。ここまではよくある話だが、二人がちょっと変わっていたのは、遊びの中にTRACKメイクやRAPを持ち込んだこと。やがて二人は自分たちが作ったお気に入りの曲をMDにぶちこんで、大音量でガンガンかけながら、クルマで街をながすようになった。「なんていい曲!オレらはカッコいい」「これ売れちゃうぞ」今聞いたら笑っちゃうような、悪ガキ二人組の他愛ない会話は、意外なことにその未来を言い当てていた。
しかしそれから本格的に音楽を始めてはみたものの、その道のりは果てしなく遠く、情熱だけを頼りに暗闇の中を探る日々だった。でもそのなかでいくつもの出会いがあり、二人を少しずつ大きくしていく。そしてかけがえのない3人目が加わり、力を合わせて星屑の欠片を集め続けた彼らは、いつの間にか周りをほんのりと照らす小さな星へと成長していた。やがてその星はみるみる大きくなり、インディーズでひときわ強い輝きを放ち、ついに2008年メジャー・デビュー。そして気が付けばあっという間に5年が経っていた。
わずか5年、でも5周年。5年も飛び続ければ、燃え尽きて消えてしまう流れ星ではなくて、立派な軌道を描く一人前の星になったとも言えよう。そこで今日まで関わってくれた全ての人々に感謝の気持ちを込めて、さらに明日に向かってちょっと気合を入れ直し居住まいをただす意味も込めて、初めてのベスト盤を編むことになった。
彼らの名はCLIFF EDGE、日本語で崖っぷち。
──メジャー・デビューから5周年、おめでとうございます。まずは今までを振り返っていかがですか?
JUN:この5年は凄く早かった。今まで生きてきた中で、時間の流れが一番早かったです。メジャーでデビューする前は、インディーズでの下積み時代を8年ほど経験していますが、そこでの活動はクラブとかでライブをするというやり方。つまりライブの会場で、直接顔が見える相手に言葉を放り込んでいくというやり方だったのです。ところがメジャーというフィールドでは、それまでの僕らが知らなかったやり方で、例えれば空に向かってボールを投げるような感覚でした。それで詞を書くのにも戸惑ってしまって、ずいぶん悩んだ時期もありました。ただ、あれこれやるうちに、顔の見えない大勢に向かって書く場合も、たった一人に向かって書く場合と同じで、言葉は同じように届くということを実感できるようになってきた。結局それぞれの人が、僕らの投げた言葉を、自分と照らしあわせて考えてくれるもんなんだなぁということが発見できた。そういう色濃い経験をした5年間でした。
──そもそもグループ結成のきっかけは、どうだったのですか?
JUN:SHINとは予備校時代からの友達で、一緒に遊ぶ仲間でした。それで二人でCLIFF EDGEを始めて、ライブイベントに出るようになっていった。その3年後位にGEORGIAと知り合って、メンバーが揃ったという流れです。
ただ最初、SHINと知り合った頃は別に音楽を目指していたわけではなくて、年中遊んでいただけ(笑)。その時には遊びのメニューが色々あったのですが、なんか新しい遊びがないかと考えていた時に、僕は中学の頃に遊びでバンドをやっていたこともあって、「そうだ、TRACKを作って、それに日本語RAPをつけてみたら?」っていう新しい遊びを考えついて、早速SHINを誘った。街のリハーサル・スタジオを借りて、TRACKに歌詞をのせて歌いまくった。そんな遊びをしたことが、この道に入るきっかけとなりました。
SHIN:そのスタジオはMDに録音できたので、二人で歌った曲を録音しては車の中で聴いて、「なんて俺らはカッコいいんだ」「これ売れちゃうぞ」って、無邪気に言い合っていた。それでそのまま走り続けたら、ここまで来ちゃった感じですね。でも当時作った曲は、今では聴けたもんじゃないけど(笑)。
──さて今回のアルバムのリード曲ですが、「壊れるくらいにI Love You」はウエディング・ソング。特に歌詞に苦労されたとお聞きしましたが。
JUN:今回はベスト盤に入れる新曲ということで、まずベストという節目に立って、今僕たちはどうなんだ、という曲を作って入れようというのが3人に共通してあったのです。それで出てきたのは、ここまで来るのにファンや関係者の皆さんなどなど、沢山の人に支えられたということ。その皆さんに感謝の気持ちを表したかったのです。そこから感謝の気持ちを色々な形にしてみようという発想になった。例えばカバーの曲はストレートに「ありがとう」です。一方「壊れるくらいにI Love You」は、根底にあるのは僕らを支えてくれたファンに対して永遠の愛を誓うというメッセージです。それをウエディング・ソングという形を借りて書いてみた。ところがファンに対して永遠の愛を誓うという本心があるからこそ、ウエディングとは違うニュアンスが出てきちゃう。そこに葛藤しました。これじゃない、これじゃないって、何回も書き直しをしました。
──2曲目の「この地球に生まれて…」も新曲ですが、こちらはリード曲とはまた違うテイストです。
JUN:僕らの場合、サビの歌詞は覚えやすいようにとか、歌いやすいようにとかを考えて作っています。そういう入口から入ってきてもらって、その奥にメッセージがあるというのがCLIFF EDGEのスタイルです。でも「この地球に生まれて…」は、逆にそういうことを全部とっぱらって作りました。だから覚えにくいかもしれないけど(笑)、本当に言いたかったことがストレートに表れている。そういう意味では、僕たちの気持ちを100%ぶつけた曲です。
──歌い出しで「あれからもう何年? 決められたレールもう勘弁」って韻をふんで始まりますけど、こういう韻をふむ歌詞はすらっと出てくるものですか?
JUN:いや、そういうのは日頃から気にしていて、ふと出た言葉を書き留めておくことがよくありますね。
SHIN:一番多いのが電車の中。スマホを使って延々といろんな言葉の韻を考え続けています。電車の中で同じ文字数や、同じ読み方だけど意味が違うとか、そういう遊びを延々としていますね。その中から、RAPに使ったら気持ちいいだろうなという言葉が出てくるのです。
──因みに歌詞を書く時は手書き派、PC派のどちらですか?
JUN:歌詞は基本的にPCで書きますけど、歩きながらやお茶しながらスマホにメモることも多いです。その溜まったものを家で、PCで整理するというパターンです。
──ケース・バイ・ケースでしょうけど、作る時は曲が先ですか?それとも歌詞先ですか?
JUN:最初に歌詞を書いて、そこにメロディーを乗せてみようというやり方もしますけど、今回の新曲に限って言えば曲が先です。
SHIN:実際に歌詞をはめてみた後に、ラストのサビだけ書き変えようとか、そういう作業になる時もあります。今回もそうでした。リード曲のラストにある「信じられる強さと生きる意味を」とかは、はめてみた後で言葉を替えて出来た部分ですね。あとライブを通じてファンに教えられることも多いです。僕らの歌詞は会話のツールなんです。こんなことが大事だよねっていう言葉を投げると、それに共感してくれた人がついてきてくれているわけです。だから、その最後に締める言葉というのがとても大切だと思うので、一番悩むことが多いですね。「最後に何を贈ろうか?」っていう悩みが多い。
──意味も大切ですけど、実際に歌った音感から生まれてくるフレーズもあると思います。例えばレコーディングの時に、やっぱり歌詞変えようとかはあるのですか?
JUN:レコーディングの時には99.9%は出来上がっています。過去にはライブ感が欲しくて、スタジオで歌詞を作ったこともありますけど、今はそれはやりません。特にラブソングを作っている時なんかはそうなんですが、僕らはRAPあがりなので、RAPだとハマるけど、メロディーには乗らないという言葉が沢山出てくるのです。例えば「コンビニ」なんていう具体的な言葉は、RAPでは難なく使えるけど、メロディーには使いにくい。そういう中で、今回の新曲はメロディーの要素がすごく強いので苦労しました。もう「てにをは」一つ入れ替えるだけで、意味がガラリと違ってきちゃう。だから歌詞を作りこんでからレコーディングに臨みました。
──その作業はJUNさんとSHINさんでやるのですか?
JUN:僕らの場合、歌詞はチーム全体で考えます。書くのは二人ですけど、GEORGIAは勿論、スタッフも含めて、あれこれ意見を出し合って作っていきます。
──アルバムのボーナストラックでは、TVアニメ「キャプテン」のエンディング曲をカバーしています。これは80年代に大ヒットしたTVアニメですね。
JUN:僕らはテレビのアニメはリアルには見ていないのですが、曲は昔から知っていました。それがYouTubeでたまたま再会して、「えーと、あー、ほらほら、なんだっけこの曲?」ってなった。話をしたらSHINともお互いそんな気持ちがあるということで、いずれカバーしたい曲のリストに入れることになったのです。それが今回、実現したのですが、カバーとはいえCLIFF EDGE初の三拍子の楽曲なんです。原曲は少し暗い感じなんですが、これを僕たちがカバーしたらどんなふうになるんだろうかとか、凄く興味をそそられる楽曲でしたね。
SHIN:特に歌詞はCLIFF EDGEに合いそうな感じがしてました。「君の背中に 夕日が指す」とか青春的なワードもあって、これはハマるという確信はありました。
──ベスト盤なので答えにくいと思いますが、今回のアルバムの中で、敢えて新曲以外に思い入れのある1曲を選ぶとしたら、どの曲ですか?
GEORGIA:僕は「Endless Tears feat.中村舞子」という曲です。この5年の間には色々な変遷があったのですが、僕たちとして「この辺で一発行かないとヤバイな」という時期があって、そこでパシッとスマッシュ・ヒットできたのがこの曲です。ここでひと踏ん張りできたことが凄く励みになったし、ここでCLIFF EDGEも一皮むけた感じです。あと曲としてもひとつのエポック・メイキングになっています。というのはJUN君がTRACKメーカーとして、今までの女の子をフィーチャリングするのとは違った、新しいカタチを作った曲なんです。それが僕ら的にも大きかった。この曲のお陰で出会った人も増えました。初めましての人が増えたわけです。そういう意味合いを持っている曲です。
SHIN:僕は秋元順子さんをフィーチャリングさせてもらった「終わりなき旅feat. AJ」です。これは今までにないフィーチャリングで…もう凄かった。
──確かに異色の組み合わせですね。
SHIN:同じキングレコードということもあって、僕らも昔から秋元さんのファンで、特にJUNも大好きという感じだった。それで「愛」という言葉を秋元さんが歌ったら、僕ら以上の説得力というか、そういうのが出るんじゃないかって二人で話をしていた。それで頼んでみようということになったのです。実際にお願いしたら、秋元さんも面白がってくれて「いいわよ、いいわよ。面白いことは何でもやりましょうよ」って気持良く引き受けてくれた。ヒップ・ホップとシャンソンのコラボをやってみたいって、乗ってくれたのです。
──実際にコラボしてみていかがでしたか?
SHIN:もう秋元さんが格段に凄くて、歌詞の入り方が全然違ってくるので、これはスゴイなって興奮しました。僕としても歌詞を書く側の人間として、ピンと胸を張って歌いたいって頑張りました。曲としては人間の付き合いにおいて凄く大事なこと、「おはよう」と「おやすみ」、ただそんな言葉を普通に言える状態を幸せに思いたいっていう曲です。自分が相手のことを思ってやったことが、相手にすれば真逆に取られたりとか、人生イコール終わりなき旅の中で、やさしさを忘れちゃって、心がささくれだった時にこそ聴いて欲しい曲ですね。
JUN:僕はメジャー版の「LIV ~大切なあなたへ〜」という曲です。この曲はもともと、僕らの親友の誕生会で、サプライズで歌うために作った曲です。インディーズ時代のもっと前の頃の話です。実はこの曲を作るまでは、クラブのライブで歌う曲は言葉遊びオンリーの曲だったり、自分はこんなヤツだ的なものをどう見せるかという歌詞しか書いていなかった。そういう世界しか知らなかったわけです。そんな僕らが初めて人のために書いたのがこの曲です。
──親友は喜んでくれましたか?
JUN:凄く喜んでくれて、僕らの音楽でもこんなにも人ひとりの心を動かすことが出来るんだと逆に僕らが驚いた。しかもみんなが「いい曲だね」って言ってくれるようになっていった。それを今度はメジャー・デビュー盤で、もっと沢山の人が聴けるカタチに書き直したという曲なんです。この曲を書いてからは、人のためにというと本当に恩着せがましいけど、何かのためがないと逆に書けなくなった。つまり原点を教えてくれた、発見できたという曲です。
──では最後に、これからの活動について教えて下さい。
JUN:このアルバムを引っさげて、全国にライブに行きつつ、その最終ゴールとして、8月10日に渋谷WWWでワンマン・ライブをやります。そこまで一気に全力で走りますので、皆さん、色々な場所で生のCLIFF EDGEを、是非、観に来て下さい!
【LIVE情報】
●5/16(木)
ベストアルバム発売記念ライブ@クイーンズスクエア横浜
★Special Guest:パンサー
●5/25(土)
ベストアルバム発売記念ライブ@イオンレイクタウンKaze 1階 翼の広場
●5/26(日)
ベストアルバム発売記念ライブ@イオンモール木曽川
●6/2(日)
ベストアルバム発売記念ライブ@クレド岡山 ふれあい広場
●6/8(土)
CLIFF EDGE Best Album「THE BEST 〜You're the only one〜」発売記念Special LIVE@WonderGOO守谷店「GOOst」
1回目14:00〜 / 2回目17:00〜
●8/10(土)
CLIFF EDGE Premium Live 2013 “崖っぷち魂” @渋谷WWW
Open 17:00 / Start 18:00
ALL STANDING \3,500-(tax in/DRINK代別)
問い合わせ: HOT STUFF PROMOTION 03-5720-9999