昨年行われたEXILE ATSUSHIソロツアー“EXILE ATSUSHI PREMIUM LIVE〜命をうたう〜”が、4月3日ついにライヴDVDとして発売された。4年目を迎えたソロライヴを経て、ATSUSHIの心境に一つの変化があった。ソロとして活動するうえで見えた、一つのテーマとは?
──4月3日に、昨年開催されたEXILE ATSUSHIソロツアーのライヴDVD『EXILE ATSUSHI PREMIUM LIVE〜命をうたう〜』が発売されました。まず、昨年のソロツアーを経て、ご自身の意識面において、どのような変化がありましたか?
具体的なソロ活動は、1枚目のDVDから数えると4年目になるんですが、4年目にしてやっと、ソロとして活動するうえでの一つのテーマが見えてきたような気がしています。今までは“EXILEのヴォーカルATSUSHI”と、“EXILE ATSUSHIソロ”が重なってしまっている部分があり、その点が自分自身のなかでもどかしいような……少し心地悪いように感じていたことがありました。重なっている部分があるからゆえに“わざわざソロでやる必要があるのかな?”と思ってしまうこともあったり……。自分自身のなかで受け入れられず、うまく消化できていなかった部分が、やっと今回のソロツアーを経て明確になりました。“EXILEのヴォーカルATSUSHI”と、“EXILE ATSUSHIソロ”がしっかりと二つに別れて、それぞれにそれぞれの使命と意味を持たせてあげられるようになったんです。どちらにも明確な意味があるからこそ、両方やる意味があると思えるようになりました。老若男女に愛される、日本の心をうたっていく。これが今回のソロツアーを経て、EXILE ATSUSHIソロとして見えてきた方向性です。
──ライヴを拝見させていただきました。今回のソロツアーでのATSUSHIさんは、これまでと違い、さらに次のステージに上がられたような印象を受けたんです。
ありがとうございます。いちばん初めの2009年の“EXH SPECIAL EXILE ATSUSHI PREMIUM LIVE SOLO”のときはカバーでしたし、2011年1月の“EXILE ATSUSHI Premium Live 〜The Roots〜”のときはオリジナルも歌ったけれど、いわゆる自分の根底にあるルーツをテーマにしていたこともあって、皆さんに僕のルーツを観ていただきたかった。3度目のソロライヴは、東日本大震災発生後だったということもあり、TBSの僕らのテレビ番組と連動させていただいて“EXILE魂 SPECIAL LIVE ATSUSHI solo”として、テレビをとおし全国の皆さんにしっかりとお届けする、という意味を込めてやらせていただきました。そのような経験から、僕のなかでEXILE ATSUSHIソロとして挑戦したいこと、そして提示していきたいことを過去3回できちんと消化できたのだと、昨年のソロツアー後に気づいたんです。EXILE ATSUSHIソロとして、EXILE ATSUSHIソロファンの方々が、何を僕に望んでいて、どのような曲を聴きたいのか、ということも自分なりに考えてもきました。さまざまな意見があるなかで、自分なりにリサーチを取ってみたり、心のバランスを取りながら、オリジナルで「道しるべ」や「煌めきの歌」というものを表現できたことで、やっと方向性が見つかったというか……。かといってEXILE ATSUSHIソロでも、もっとカッコいい音楽をたくさん表現したい、と思っている自分もいたりするので、まず一つ道が見えて、EXILE ATSUSHIソロとしてのスタートラインにやっと立てたような気がしています。
──昨年、ソロツアーの中盤くらいにATSUSHIさんにインタビューさせていただいたとき、ATSUSHIさんが“EXILE ATSUSHIとしてこれからやっていくべきこと、目標などが明確に見えた”とおっしゃっていたことが印象的でした。
本当に“やっと”見えてきました。今年のEXILE ATSUSHIソロとしてのテーマは“日本の心をうたう”。このテーマで今年一年活動してみようかな、と思っています。そうしたら、本当に不思議なくらい絶妙なタイミングで辻井伸行くんから共演作のお話をいただいたり。まるで、もとからこうなるように決まっていたんじゃないかな、と思えるくらいの巡り合わせでした。
──童謡や“日本のこころをうたう”楽曲は、ATSUSHIさんにとってどのような存在ですか?
より自分を神聖な気持ちに立ち戻させてくれるものだと感じています。やっぱり童謡や日本の心をうたった楽曲には、歴史も含めて技術やテクニックだけでは表現しきれない“魂”のようなものが曲のなかに込められています。心が入っていないと形にならないものだからこそ、音楽に対して自分を真摯に向き合わせてくれる。こういうことを辻井くんと一緒に作らせていただいたときに感じたんですけれど、辻井くんはものすごく音楽に対して真摯でまじめで、敬意を表している。だからこそ、込められる音が違うんですよね。それを目の当たりにしたときに、自分は果たしてそこまで真摯に音楽に向き合って、携われているのかどうか……と考えさせられました。童謡や日本の心をうたった楽曲は、そういう感情に立ち戻らせてくれる。僕の歌う「ふるさと」を聴いている方が、ふるさとの情景を思ってくれたり、「赤とんぼ」を聴いている方が、赤とんぼが飛んでいる秋の夕暮れどきを思い出してくれたり……そうやって情景を思い出していただいて、そこから各々が何かを感じてくれることがいちばん大切なんじゃないかなぁと思っています。“この曲から自分が何かを伝えたい”というレベルを超えている存在ですね。
──ATSUSHIさんの童謡を聴いたとき、“日本人で良かった”という気持ちになれたのと同時に、童謡が、あって当たり前のような存在になっていることに気づき、改めて童謡へのありがたさを感じました。
そのように聴いている方それぞれで何かを感じていただいたり、情景を感じてくれることがいちばんうれしいですね。また辻井くんとの話になってしまいますが、辻井くんがピアノを弾きはじめた瞬間に、その曲のテーマにその空間が変わるんです。技術という次元を超えて、その曲が流れた瞬間、自分の頭のなかがその情景に変化する。たとえば川のせせらぎだったら、聴いた瞬間に川のせせらぎがフワーッと浮かんできて、自分が小さいころ、川のほとりを歩いた思い出が蘇ってきて涙が出てくる。いつまでも聴いていたい……そんな気持ちになりました。童謡も、それぞれの感情になってくれることが超一流なんだな、と辻井くんと接したことで学び、僕も少しずつそういうところに近づいていきたいな、と思いました。
──EXILEとしてのツアーではドームという会場を回られていて、EXILE ATSUSHI ソロとして回られたのはホールでした。ホールを回られてみて、改めて気づいたことや感じたことはありますか?
ファンの皆さんに、ありのままの、素の自分を受け入れていただけていると感じることができました。2月に開催させていただいた、シングル「MELROSE〜愛さない約束〜」の購入者特典ライヴのときも同じことを感じたんですけれど、ありのままの自分で話したり、たとえ予定調和ではなくてもそのときのハプニングでさえも楽しめてしまえるくらい、ファンの皆さんの温かさを改めて実感したんです。それが歌への自信にもつながりました。心地良い緊張感はありつつもリラックスして臨めて、何より音楽をやっていることがすごく楽しかったということがいちばんの糧ですね。
──ソロライヴDVD『EXILE ATSUSHI PREMIUM LIVE 〜命をうたう〜』の観どころは、どのようなところですか?
やっぱり、童謡コーナーや、弾き語りを含めた“日本の心をうたう”部分。さらに「Bloom」が初収録されているのも観どころです。もちろん、EXILEのようないつものATSUSHIも観られますし、一緒に回ってくれたSHOKICHIやアンコールでのTAKAHIROなど、ゲストも含めて盛り上がるテイストもあったり……。今までのATSUSHIも観られて、New ATSUSIHも観られて、サプライズもある……そのあたりが観どころですかね。
──本当にすごく充実した内容になっていますよね。
こういうバランス感がいいのかなって。どうしても、バランスをすごく取りすぎてしまう自分に悩んだりすることもあるんですけれど、あるミュージシャンの方から“バランスを取っているからこそいいんだよ”と教えていただいたことがあったんです。やっぱり、自分の好きなことだけに偏るよりも、ファンの皆さんにいかに楽しんでいただくか……それがいちばん大切だと感じています。
interview & edit_桜井麻美