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──ニューアルバム『Route29』がいよいよリリースに。まずは、どんな手応えを?
名嘉 俊(以下、名嘉):HYはこれまで、1年半〜2年に1枚というペースでリリースしてきたんですけど、もっとファンのみなさんと繋がりたい、もっともっとスピードを上げて届けたいという想いがあって、今回、初めて1年に2枚のアルバムを出すというチャレンジをしました。完成してうれしいという気持ちはもちろんなのですが、乗り越え切れたなという想いがすごく強いですね。
新里英之(以下、新里):アルバム制作前に、5人で夢を再確認したんですよね。それがすごく大きかったなと思って。もう一度、自分たちの目標というものを掲げて、また、より今まで以上に責任をもって物事を決断していこう。そうすることによって、10年後、20年後も、自分達が思い描いた通りにやっていけるようになるんじゃないかって。そこから固めていったアルバムなので、自分達の決断とか、こうしたいという意思が込められたアルバムになったと思います。
許田信介(以下、許田):この1年は、すごくチャンレンジが多かったなと思います。ツアーに関しても、レコーディングに関しても、挑戦だったし。時間がない中で、1曲1曲への向きあい方がすごく濃厚だったなと思います。
宮里悠平(以下、宮里):今回は、ドラマ主題歌や番組テーマソングから作っていったんですけど、テーマがあって楽曲を作るというのは、それまであまり経験したことがなくて、プレッシャーもありましたけど、そういう挑戦を通して気づいた事もたくさんあって、制作期間はすごく短かったんですけど、とても充実した時間でした。頑張って乗り越えた…すごく達成感を感じています。
──みなさんから“挑戦”“達成感”“乗り越えた”という言葉が聞かれましたが?
名嘉:20代最後の年となって、選択しなくちゃいけない場面がものすごく多くなった気がしたんですよね。これから30代へ向かうという時に、周囲の友達も、結婚したり子供を持ったり、会社勤めの中でも責任ある立場に昇格したり、あるいは、会社を辞めて新たなチャレンジをする人がいたり。そんな中で、自分達はHYとして、これから何をしていくべきなのかを考えて取り組みました。
新里:ほんとに“乗り越えた感”はありますね。
名嘉:今までだったら、1年にアルバムを2作出せるなんて考えてもいなかったし。やっぱり、夢を語り合うというのは大事だなと思いました。僕らは、高校時代に結成したんですけど、その時はまだ、日々日常の中でみんなが夢を語っていたんですよね。“いつかHEY!HEY!HEY!に出たいね”とか“ミュージック・ステーションに出たいね”とか。そういう夢がどんどん叶っていって、10年経って気がついてみたら、あんまり夢を語らなくなっていた。でも、もう1回、HYとしての20年目を話し合ったのが、ターニングポイントになったと思います。
──アルバム制作はどんな風に?楽曲が貯まったら作品にまとめるという感じ?それとも、アルバムを出す事を先に決めて楽曲作りに取りかかるのですか?
名嘉:後者ですね。まず、アルバムを作ろうというのが先です。HYは、全員が作詞作曲をするので、リリース時期を決めたら、逆算して、いつ頃までに何曲くらい出来たらいいねとか、最初に全員でミーティングします。
──具体的には、全員が曲を持ち寄って、選考するのですか?
名嘉:そうですね。まず聴いて、選曲して。結果、お蔵入りする曲もあるし。
──楽曲作りにおいては、今回はこんなテーマでいこうとか決める?
名嘉:アルバムを通してのテーマを決めるということはないですね。日々感じる感情を曲にする。ずっと、そういうスタイルです。
──今回は、どんな進行だったのですか?
名嘉:一番最初に取り組んだのは「タイムカプセル」です。NHK沖縄の特別番組“沖縄本土復帰40年企画”のテーマソングのお話があって、作っていった曲なんですけど。
──NHK沖縄で、タイムカプセルを企画されたんですよね?今から10年後をイメージして、未来へのメッセージをタイムカプセルにして残す、という。1,713通もの応募があったとお聞きしていますが?
新里:寄せられたメッセージを読んで、そこから作っていったんですけど。本当にパワーになりましたね。自分達だけでは作れなかったと思います。
──具体的には、どのように進行していったのですか?作詞・作曲は“HY”となっていますが?
新里:まず、楽曲の方向性を考えた時に、沖縄の歴史も踏まえて、戦後、沖縄がアメリカに占領されていた事とか、ようやく復帰した事とか、そういう戦争の話を伝えていくのはすごく大事な事だし、忘れてはいけない事なんだけど、今回は、重すぎるのはちょっと違うかなって。「時をこえ」(2010年)の時は、僕らのおじぃー(祖父)、おばぁー(祖母)の戦争体験を基に、その苦労や悲しみを書いたけれど、今回のテーマは未来へのタイムカプセルということで、もっと明るく未来について考えていきたいねという事をミーティングで話し合ったんです。それで、全国から寄せられたメッセージを読んで、まず、5人それぞれがひとりで詞を書いてくることにしたんです。こういう作り方も初めてでしたね。
許田:僕にとっては、これも大きな挑戦でした。これまで、共作で詞を書くことはあっても、ひとりで全部書くという事はなかったから。それで、みんなで詞を持ち寄った時に“身近”というテーマが見えてきて、一番身近な視点で“今”を書いているのが、ゆーへい(宮里)の詞だったので、それを基に、みんなの詞の良い所を織り交ぜながら作っていったんです。
宮里:今を表現するというのはすごく難しくて、みんなで話しながら進めていったんですけど。友達だったり、家族だったり、そういう身近な人を想いながら書いていきました。
──そこが大きく変化したところ?
新里:これまでのHYの曲は、例えば“夢を掴みにいこう”という歌詞があったとしたら、その夢というのは漠然としたすごく大きなものだった。夢を掴みに行くのはわかるんだけど、そのために何をするのか、その過程がないと言うか。大きすぎて共感できない、わかるんだけど、掴みきれないと言うか。
──そこからもっと日常的な視点へと?
新里:そうですね。“がんばろう”だけじゃなくて、転んだり、悩んだりという事にも目を向けて、身近なものに目を向けて歌詞を書いていこう、と。でも、それは、すごく難しくて、いいものはできているんだけど、何か物足りない。熱量が足りない…となって。それで、みんな持ち帰って、また持ち寄って…そういう作業を何回も繰り返しました。
許田:ほんとに何度も書き直して、あの時は、1日2日寝られないのが当たり前という感じで。
名嘉:小学校の卒業文集に書いた“将来の夢”と現実って、ほとんどの人が一致してないじゃないですか。自分達も、小学生の頃は全然違うことを思っていたし。だけど、夢をあきらめつつも、また夢を持つ。その大切さであったり、自分達が今、生きていけるのは周りの人がいるからだよなっていう、本当にそういう当たり前の日常の事が書けたのでよかったと思います。10年後に「タイムカプセル」を聴いた時に、あの時はこんなだったんだと振り返る事ができるような、“今の想い”を曲に書いておく事って大事だなって。そこに辿りつきました。
──NHK沖縄の番組は、沖縄県内だけの放送なんですよね?
名嘉:そうなんですよね。だから、この「タイムカプセル」という曲を、少しでも早く全国の皆さんにお届けしたかったんです。
──続いて、取り組まれたのが、NHK連続テレビ小説“純と愛”主題歌ですか?
新里:そうです。“純と愛”の主題歌を作るにあたっては、10曲くらい曲ができましたね。最終的に「いちばん近くに」が主題歌に、「二人で行こう」が挿入歌となったんですけど。
──NHK連続テレビ小説の主題歌という事で意識したことは?
新里:朝ドラは、幅広い年齢層の日本中の方が見るから、聴きやすい曲、わかりやすい歌詞であるべきだって、ちょっと難しく考え過ぎてしまって。じゃあ聴きやすい曲って何だろう、伝わりやすい歌詞って何だろうって、どんどん自分達を追い込んでしまって。でも、5月にパレードツアーのファイナルを沖縄でやった時に、NHKのプロデューサーさんも観に来てくれて、ドラマのカラーと、HYの考え方や素直さがすごくマッチしてるから、HYが作ってくる曲ならば、何でもいいよって言ってくれたのがすごくうれしくて、プレッシャーがなくなったんですよね。それで、そこからすごく幅が広がって。
──楽曲作りは、どんな風に?「いちばん近くに」は、新里さんと仲宗根さんの共作ですが?
名嘉:台本を読ませてもらって、まずは、5人それぞれがひとりずつ曲を書いてきたんですけど、みんな、台本に書かれたストーリーのまんまの歌詞で(笑)。
新里:みんなで話し合ううちに、泉(仲宗根)と男性メンバーひとりずつでコラボして作っていこうというアイデアが出て、4組それぞれで楽曲を作っていきました。そこから“純と愛”にマッチしていて、よりHYの個性が見える曲という中で選んでいきました。
名嘉:家族は血が繋がっているけど、恋人や夫婦は他人同士。その他人同士が一緒になって一緒の道を歩んでいく、その原動力は何だろうとか、そういう事を考えていくうちに、“信じる力”という言葉に辿りついたんです。
──ドラマの主人公2人の物語でありつつ、普遍性を持ったラヴソングになっていますよね?
名嘉:ドラマに寄り添いすぎることもなく、いい距離感だと思いますね。
──挿入歌の「二人で行こう」は、仲宗根さんの作詞・作曲ですが?
許田:最初は、テンポもすごく早くて、4つ打ちで、全く違う曲調だったんですよ。
新里:やっぱり、HYらしさというのは、イーズ節があってこそなので、こういう頭からイーズ節全開の曲調になったんです。
宮里:あるようでないような曲調なんですよね。だから、アレンジ面でも、間の取り方がすごく難しくて。この曲も、新しいチャレンジですね。
名嘉:僕と泉はいとこ同士なので、小さい頃から全部知ってるんだけど、泉は常に自分の今をリアルに書き続けてきて、恋愛の痛い部分とか、そういう歌が多かったのに、前回のアルバム『PARADE』で、初めて「私のHERO」というハッピーソングを書いて、そして、この「二人でいこう」は、お腹にもうひとりの命がある中で仕上げた曲なので、泉の今の心境は、こんななんだなって。これからが期待できる1曲になったと思います。
──“純と愛”の第一回のオンエアを観た時は、どんな気持ちでした?
新里:これもまた達成感でしたね。曲を作り上げるまでにすごく苦労したので、よく頑張って乗り越えられたな、成長できたなっていうのが最初に思った事でした。
名嘉:主人公の純は、ものすごくポジティブで素直で、思った事はすぐに口にしてしまう。あのパワーから、自分達も励まされました。