2010年4月にインディーズから発表された1stアルバム『EARTH』から2年3ヶ月。活動のフィールドをメジャーに移し、いくつもの全国ツアーを重ね、日本武道館公演も経験。世の中のネガティヴな部分もエンターテイメントに変換していく、独特な歌世界を確立したSEKAI NO OWARIが、メジャー第1弾となるアルバム『ENTERTAINMENT』をリリースした。
インディーズ時代の「天使と悪魔/ファンタジー」も含め、「INORI」「スターライトパレード」「眠り姫」と、『EARTH』以降に発表されたシングルをカップリング曲も含め全網羅。これまでの集大成とも言えるニュー・アルバムだ。
──アルバム制作にあたっては、どんなコンセプトを?
深瀬 彗(以下、深瀬):アルバムを作ろうと思って、そのために曲を作っていったわけではなく、できたものを入れましたという形なので、すっごく自由に作っていった感じです。元々“コンセプトがある”ということが嫌いですし、アルバムと言うのは、基本的には“記録”だと思っているんです。『EARTH』というアルバムを発表してから2年3ヶ月が経っていますが、その約2年半という僕たちが生きてきた歳月にはコンセプトというものはなかった。ですから、この『ENTERTAINMENT』は、『EARTH』を完成させてからの“コンセプトなしの僕らの2年半の記録”だと思っています。
──制作にあたっての指針のようなものは?
深瀬:いつものことですけれど、何かに特定されたり、カテゴライズされたりするのはイヤなんですよね。例えば、ポップなものを“白い”と表現するなら、その白いものができたら黒いものが欲しくなるし、黒いものができたらまた白いものも欲しくなる・・・そういう点ではバランスをとって、1曲ごとに調整していきましたけど。とにかく飽きないものにする、ということを意識しました。1曲1曲にパワーがあって、アルバムのどこから始まっても、どこから聴いてもらってもカッコいいもの、という構成を心がけたつもりです。どの曲に対しても“1曲勝負”。曲を作る時、僕は“木”しか見ていない。森は見ていないんです。アルバムのためにその1曲があるわけではなくて、すごい木が16本あれば、それはそれでいい森になるんじゃないか、と信じてやっているので。
藤崎彩織(以下、藤崎):一般的には、シングルのカップリング曲は、アルバムに入れないことが多いみたいなのですが、私たちは、1曲1曲どの楽曲に対しても同じ熱量を注いできているので、入れない理由がない。カップリング曲も当たり前のこととしてアルバムに入れているんです。
──では、その楽曲作りは、どんな風に?
深瀬:例えば、なかじん(中島真一)が挑戦的なアレンジをする時は、僕が引いた立場から見たり、逆に僕が挑戦的なアイデアを進めると、なかじんがアドバイスをくれたり。そのアイデアやトライを実現可能なものにしていくために、より良いよいやり方をみんなで考えていくという感じですね。
中島真一(以下、中島):「天使と悪魔」の歌詞みたいだよね。“「賛成」と「反対」の間に「答」が生まれればいい”という。例えば、僕と彩織ちゃんとLOVEの3人が“こっちのほうがいいね”と言ってるものに対して、深瀬はあえて反対意見をぶつけてきたりする。実はそんなに反対しているわけではないんだけど、一石を投じるために敢えて石を拾ってくる(笑)。
藤崎:本気でダメだと言っている時と、一石を投じることで“それが本当にいいのかもう1回考えてみよう”という時とがあるんですよ。
中島:みんなの意見が凝り固まっているんじゃないかと思う時に、ちょっと鼓舞するような石を敢えて投じてくる。
深瀬:その石をバーン!と弾き返されるときもあるんですけど(笑)。
──そうした議論がいちばん激しかった曲と言うと?
藤崎:「眠り姫」ですね。いちばん討論があって、二転三転して。「眠り姫」以降にやった曲はスムーズなイメージがあるので、あの曲でちょっと成長したんじゃないか、とも思います。
深瀬:前衛的にアグレッシヴに攻める部分と、守る部分のバランスにすごく苦労したと言うか…。
中島:そのバランスが「眠り姫」で決まったような感じもするね。「眠り姫」はメロディも、歌の力も強力。メロディが強力であればあるほど、強力な楽器、フレーズ、音をぶつけられる。“アレンジでどうにかすればいい”というような根拠のない希望は持たず、メロディが生まれた最初の段階から妥協せずに取り組んでいく。“歌がしっかり届く”ということがいちばん大事なので、そこはすごく心がけてやっています。
深瀬:『EARTH』の頃は、“奇抜なことをしよう”という意識があったんですけど、今回はそれが全くなかった。メロディがポップであればあるほど、自然とアレンジの幅も広がる、ということもわかったので。
──既にライヴでお馴染みの「Love the warz」などは?
深瀬:すごく苦労しました。CDに落とし込むのがすごく難しくて…。
藤崎:ライヴで何度もやっている曲なので、みんなの中にヴィジョンがありすぎて…。お客さんがいる曲、になっていたんですよね。
中島:しかもデカい会場でやってたイメージが強くて。だから“これが「Love the warz」だ"と思っていた部分を、CDに落とし込みづらかったんです。
深瀬:でも、ライヴを表現しようという考えは違うな、と思って。CDにはCDの良さがあるので、そこを重視して完成させていきました。
──歌詞もより深くなったような…。ラストの「深い森」や「illusion」など、考えさせられる歌詞も多いですが?
藤崎:「深い森」はお気に入りです。イントロのピアノのフレーズは、私がこのバンドに入る前からあるので、原曲ができたのはかなり前です。で、イメージを膨らませながら時間をかけて作ってきた楽曲ですね。
深瀬:“End of the world”という言葉がこの曲の中に出てくるんですけれど、SEKAI NO OWARIというバンド名はそこからインスピレーションを受けた記憶があります。この曲の原形は、バンドより先に生まれていましたから。形になるまでにはかなり時間がかかりましたけど、英語にしてオートチューンを使ったことでようやく完成しました。
藤崎:育てていって、なかじんの狂ったギターソロ(笑)も入って。
中島:ハイテンションですよね(笑)。あのギターソロを作るのに、1曲ぶんのメロディを仕上げるくらいの労力と時間がかかりました。でも、この楽曲をいちばん最後に収録することで、アルバムとしての世界観も面白いものになったと思います。
深瀬:この曲がなぜ最後になったかっていうと、後ろに連結できる曲がなかったからなんです(笑)。この曲が浮かんだとき、すでに“アルバムの最後の曲になるだろうな”とは思っていたんですけれど。でも、この曲は僕らにとってのアンセム的な存在になってほしい、と思う楽曲ですね。「illusion」は、僕より下の世代に向けて歌っているんですけれど。歌詞というよりは、論文みたいな感じで書いています。かなり強い気持ちで書きました、この作品は。
──楽器や機材のセレクトはLOVEさんの担当。今回、特に印象深い曲は?
LOVE:どの曲も最終的には狙い通りなんですけれど、急きょ“明日録るからすぐに機材を集めなきゃ”という話になったにも関わらず、ドンピシャでハマったのが「炎の戦士」。これまでの経験を生かして、閃いた機材を使ってみたらすごく良かったんです。読みが当たった、というか。
中島:「炎の戦士」は、レコーディングを進めていく終盤戦にできた楽曲です。こんなに短期間で曲を仕上げてレコーディングするのは、僕らとしては異例中の異例。すごい勢いで作り上げました。でもだからこそ、詞も曲もアレンジも、良い意味で吟味しすぎないというか、すごく僕らしいものが出たような気がします。
LOVE:今回は、本当に色々な楽器が入っています。楽曲ごとに楽器を替えているので、音色はすごくカラフルになっているんじゃないかな、と思います。
中島:僕は、初めてマンドリンを弾きました。
藤崎:管楽器の生も入ってるし。『EARTH』のときは完全に4人だけでしたけど。
深瀬:もうバンドという感じじゃないよね。『EARTH』のときがバンドだったとすると、『ENTERTAINMENT』はクリエイター集団になった感じですね。
──クリエイター集団による“エンターテイメント”。アルバム・タイトルに関しては説明不要な気もしますが?
藤崎:もう絶対これしかない!と思いました。
深瀬:タイトルと言うのは、深い意味があればあるほどダサい気がするんです。このタイトルは、深い意味のない、でも意味を限定しない良さがあると思います。
──間もなく、アルバムタイトルを冠した全国ツアー“HALL TOUR 2012 ENTERTAINMENT”がスタートしますが?
藤崎:ツアータイトルも、早々に“ENTERTAINMENT”と決めていました。初めて行く場所がかなり多いので、“初めまして”の気持ちを大切にして各地に行きたいと思っています。選曲、演出に関してはいろいろなアイデアを着々と進めていますので、楽しみにしていてくださいね。