SEKAI NO OWARIが、メジャー第3弾シングル「眠り姫」をリリース。寓話のようなストーリーに、永遠の眠り=死を絡めた、繊細かつ壮大な歌世界。いかにもSEKAI NO OWARIらしいファンタジックなラヴソングだ。
2010年4月の1stアルバム『EARTH』を経て、制作された1曲。同年12月のC.C.Lemonホール(現・渋谷公会堂)公演で初披露され、昨年11月の日本武道館公演でも歌われた、ファンの間では人気のナンバーが、ようやくCD化に至った。なぜ、このタイミングでのリリースを決めたのか、大いに気になるところだが…。
──2010年12月のC.C.Lemonホールでの初披露から約1年半。今回、このタイミングでのリリースとなったのは?
深瀬 慧(以下、深瀬):パッと出してサラッと消化されたくないなという気持ちがすごくあった曲なので、ベストな完成形を追求していたのと、トータルな面で発表の仕方を考えながらリリースのタイミングを僕自身が見ていたんです。「幻の命」(SEKAI NO OWARIの名を広く知らしめた初期の代表曲)が1stステップだとすると、2ndステップ…新しく道を切り開いていく、という時期にふさわしい楽曲だと思っていたので。
──2ndステップで描いているビジョンがあって、その中でこの楽曲をどう生かしていくか、という発想ですか?
深瀬:「眠り姫」という曲ができて、2ndステップという概念が生まれたという方が正しいかもしれません。自分たちが、過激なロックバンドとしてやっていくのか、それとも過激なロック性とポップ性を持った二面性でいくのかを考えていたときにこの楽曲ができて、“ポップな世界に行っても大丈夫だろう”と思えたんです。たぶん、『EARTH』(2010年4月リリースの1stアルバム)に対してみんなが出した“ロックバンド”という評価を、すごく鬱陶しく感じていたんだと思います。
中島真一(以下、中島):ロックって、エンタテインメントという大きな枠の中のひとつでしかないし、その小さな枠にとどまりたくない。だからそれをはずしたかったんです。
──「眠り姫」が、2ndステップの概念を生んだというのは?
深瀬:それなりに自分の感情を生かした“愛の歌”が作れたな、と。それまでは、人を大切に思う気持ちがあっても、それを歌にできるとは思っていなかったので。この歌を作るまでは、“会いたい”“近くに寄りたい”という気持ちよりも、“離れたくない”という気持ちの方が大きかったんですけど、“離れてしまうことに対する恐怖”というのが自分の中で見つかったというのが、僕にとっての2ndステップなんだなと思います。
藤崎彩織(以下、藤崎):でも、元々そういう人ではあったので、“こんな一面があったんだ”とは思わなかったですね。むしろ、相変わらず、死が関わらないと愛が成立しないんだなって。何度見ても言葉の選び方が素晴らしいな、とはすごく思いますけれど。
──初披露された時には、もっとアグレッシヴな印象でしたが?
藤崎:あの時はそうでしたね。武道館(2011年11月22日)でやった時は、今回の形に近かったですけれど。
深瀬:ストリングスとかを入れてファンタジックにしようと思って、行き過ぎて戻ったり…。
中島:アレンジはすごく悩みました。そもそも「眠り姫」って、曲自体が突飛なので。展開があって流れがすごいでしょう。だから、これはちょっとムリかもと思う事も全てやってみました。僕はいつも、自分のやりたいことを自由にやっているんですけれど、この曲に関しては、どうやってまとめるのか、かなり悩みながら拘りました。
──2曲目の「生物学的幻想曲」は、答のない自問自答が綴られていて、「眠り姫」とは異なるダウナーさが見られる作品ですが?
深瀬:僕は、音楽で何かを嘆きたくないので、こういう答えのない曲はあまり書かないんです。しかも、元々の形はアレンジも暗すぎて、聴けたものじゃなかった(笑)。あと少しでお蔵入りになるかもしれなかった曲でした。でも、アレンジが変わって、“あ、(ベストな形が)見つかったな”って。発表できる作品にすることができて良かったです。
──嘆きの極みみたいなところから、アレンジによって変化が訪れた?
深瀬:そうですね。後半でサビのコード進行が変わるんですけれど、そこでちょっと前向きに聴こえるようにアレンジを変えたことで良くなったと思います。
──全体的にはジプシー音楽のような香りを感じましたが?
藤崎:それはアコーディオンの音色とフレーズがそうさせているんだと思います。
中島:異国風だと捉えられる方は多いですね。そういうものを要素として入れているからなんですけれど。ただ、意図的にそうしようと思ったのではなくて、アレンジをしていて、欲しいものを一つ一つ入れていったらそうなった、という感じです。
深瀬:アコーディオンというアイデアを聞いたとき、僕の中のストックにあるイントロのフレーズにアコーディオンが合うなと思って。それで最初にそのフレーズを加えて、アコーディオンの音を入れたんです。そこから間奏、サビにも入れていって。影絵みたいな世界観というか、ちょっと怖い絵本みたいなのをイメージして、途中からはクレイジーな感じもその絵の中に入ってきて。だから、彩織ちゃんとも話し合って、歌い方も少しクレイジーにわざとヘラヘラしながら歌っています。メッセージ性というよりは、僕たちがたまにこういうことを思う夜があって、それをただ楽しく歌って演奏している…それを影絵や絵本のような世界観で表現したという曲ですね。
DJ LOVE:聴いた人が踊れるような感じになってほしいな、と僕個人は思っていたんです。だからギターを録るときにも、“ファンキーな方向に”というテーマを決めて機材を選びました。ファンク系の音楽で、小気味良くてかつ温かみと懐かしさもある…そういうサウンドを目指して。狙いどおりにいきましたし、すごく良い音で録れたなと思っています。
──そして3曲目には、武道館のライブ音源での「インスタントラジオ」を収録。この曲は、今もすごくフィットしますね?
藤崎:改めてライブ音源を聴いてみると、すごいポップだな〜と思います。“SEKAI NO OWARIのライブに行きたいな〜”って私が思うくらいだから、みんなも来たくなるでしょう!?って思います(笑)。
深瀬:楽しいなって僕も思いました。最後のところのドッカーン!っていう特効がね(笑)。
藤崎:そのあとで“キャ〜ッ!”って歓声が入っているのが、またアガるよね(笑)。
──「眠り姫」からの新しいフェイズ、これまで以上にワクワクせずにはいられませんが?
藤崎:“ポップな所に行けば行くほど際立つ。ロックの中に混じってやっているんじゃなくて、ポップな場所に行ってなるべく多くの人に観られたほうが栄えるんだ”って、深瀬が言ってたんですけれど、本当にそうだなと思って。だから、ひとりでも多くの人に届くといいなと思いますし、「眠り姫」はまさにそういう楽曲だと思います。
CDは、初回限定盤A・Bと通常盤の3種をリリース。初回限定盤Aは、深瀬が雑誌“MUSICA”で連載していたストーリーを基に、注目のクリエイター・ファンタジスタ歌磨呂とコラボしたフォトブック付き。初回限定盤BのDVDには、宮崎あおいが“死の女神”に扮した「眠り姫」のミュージックビデオが収録される。
7月からは、全25公演を予定している全国ツアー“HALL TOUR 2012 「Entertainment」”がスタート。
※オフィシャル・インタビュー(インタビュー:竹内美保)より構成。