3歳でウクレレと出会い、少年時代から天才ウクレレ・プレイヤーとして活躍、昨年19歳でシンガーソングライターとしてデビューを飾った平井 大が初のフル・アルバム『ALOHA』を完成。ウクレレ、スラッキー・ギターなどのハワイアン・ミュージックならではの爽快な音色と、ロック、レゲエ、ヒップホップなど多彩なビートが融合する唯一無二の平井 大流アイランド・ミュージックがここに。まっすぐなメッセージと共に、心地よい夏の風を運んでくれる極上作が誕生です。
──ミニ・アルバム『OHANA』でデビューしてから1年。振り返っていかがですか?
すごく楽しかった!というのが率直な感想(笑)。まだ歌を歌う前、ウクレレ・プレイヤーとして活動していた頃とは違う世界を体験できて、自分にとって本当に大きな1年でしたね。
──新作『ALOHA』は、初のフル・アルバムとなりますが、作り始める前に何かイメージしたことはありますか?
いつもと変わらないんですけど、ポジティブでハッピーなものにしたいってことかな。あと、子どもからからおじいちゃん、おばあちゃんまで、幅広い世代の人が聞ける作品。そこは、ハワイ語で“家族”というタイトルをつけた『OHANA』のときから、自分の中でひとつコンセプトとして掲げていることですね。デビュー前と違うのは、曲を作るときに、僕の音楽を聞いてくれる皆さんの顔が思い浮かぶこと。ウクレレ・プレイヤーの頃はメロディーで自分の思いを伝えてきたわけだけど、言葉を載せて歌うってことを始めてからはダイレクトにメッセージを届けられるようになった。それによって、よりお客さんとの一体感を持てるようになったと思うし、その喜びを体験できたことで、曲作りでも自然とお客さんのことを思い浮かべるようになったんです。この歌はみんな楽しんでくれるかな?とか想像しながら作っていった曲ばかり。ありのまま、素のままを表現して、すごく自由に作れたアルバム。等身大の平井 大を詰め込みました。
──タイトルは、ずばり『ALOHA』。ハワイ語でもっとも有名な挨拶の言葉ですね。このタイトルにした理由は?
初のフル・アルバムってことで“改めましてこんにちは”っていう意味もあるんですけど、僕が一番素直になれる言葉なんですよね。“ALOHA”の5文字には、それぞれ意味が込められていて、Aは“Akahai=優しさ”、Lは“Lokahi=調和”、Oは“Olu’olu=思いやり”、Hは“Ha’aha’a=謙虚さ”、Aは“Ahonui=忍耐力”、すべて含めて“ALOHA”なんです。ハワイですごく大切にされてる言葉。僕も今までたくさんの“ALOHA”に触れてきて、助けられて支えられて……。自分にとって原動力の言葉なんですよね。だからこのタイトルしかないな、と。
──タイトル曲「ALOHA」では、“魔法の言葉”と表現してますね。
ハワイでは、知らない人同士でもみんな笑顔で“ALOHA!”って挨拶しあうんです。親指と小指を立てる“シャカ”サインをしながら。道ですれ違う人も、車で信号待ちしている隣の車の人も、むちゃくちゃイカつい男の人だってニコニコで声かけてくれる(笑)。それだけ素直になれるし、大事なことを思い出させてくれる魔法の言葉なんだと思う。ハワイに行くと、子どもの頃を思い出すんですよ。あの頃はなにをやるにも夢中で、毎日が夢に溢れていて、1日がすごく長くて濃厚だった。大人になって時間に追われてばかりいると、大切なものをどこかに置いてきてしまった気になるじゃないですか。でも、ハワイで空や海を見ていると、素直にきれいだなって思えてる自分がいる。子どもの頃みたいな新鮮な気持ちが蘇るんですよね。「ALOHA」は、そんなふうに素直な自分になって書いた曲であり、皆さんにも自分に素直になってほしいっていう思いを込めた曲です。
──本作には、デビュー・ミニアルバムのリード曲「FOR THE FUTURE」を、新しく「FOR THE FUTURE 2012」として収録していますね。
歌詞は同じですけど、トラックも変えてまったく違う曲という認識でもいいくらい雰囲気を変えてます。もともとこの曲を作ったのは高校を卒業するときで、未来に対する不安がすごくあったんですよね。だから、ある意味1人よがりだったと思うんです。でも今は、友達も僕も少しずつ不安が薄らいでハッピーに過ごせてる感じがする。だから今度は、応援してくれている人たちや周りで支えてくれる人たち、そういう皆さんの未来を祈って歌いたいと思ったんです。自分の中で、そこはすごく大きな違いがあったので新たに収録しました。
──シングル曲「祈り花」も収録されています。これは、2年前に亡くなったおばあ様に捧げる歌だそうですね。
3歳の頃おばあちゃんにウクレレをもらって、そこからハワイアン・ミュージックを好きになって……。もし、おばあちゃんからウクレレをもらっていなかったら、自分の人生はこうなっていなかっただろうなっていう感謝の気持ちと、天国に向けて自分は今こういうことをしているよって伝えたくて作った曲です。大切な人の死って、誰でも経験すると思うけど、亡くなったからと言ってその人との記憶がなくなるわけじゃない。みんなが少しでも寂しさを乗り越えられるように、そういう祈りもこめて。
──“祈り花”という言葉がすごく素適だなと思いました。
おばあちゃんがすごく花が好きだったんですよ。あと、ハワイでは、花は神様に一番近い存在として崇められてる。ダンスのときに首から提げるレイは、神様に捧げる花という意味合いがあるんですよ。おばあちゃんは、ハワイの音楽がすごく好きだったし、そこから思いついた言葉ですね。
──「Can’t Help Falling In Love」は、エルビス・プレスリーのカバー。なぜ、この曲を選んだのですか?
エルビスは僕の憧れなんです。アメリカ本土生まれだけど、ハワイの音楽の魅力に気づいて、それを当時のメインストリームだったロックンロールと掛け合わせてポピュラーに伝えた人。僕も東京生まれだけど、ハワイの音楽は小さい頃から傍にあった大切なルーツで、今それをどうポピュラーに伝えていけばいいか模索中だから、エルビスにはすごくシンパシーを感じるんです。今エルビスだったらどう表現するか、僕だったらどう表現するか、そんなことを考えながらリスペクトの思いも込めてカバーしました。
──これまでも共演歴のあるラッパーのALEXXXXが今回は3曲参加しています。
ALEXXXXとは、自分の表現したい“アイランド・ミュージック”っていう部分で深くつながっていて、今となっては兄弟みたいな感じ(笑)。デビュー作で共演した「Island Girl」、シングル収録曲の「Island Queen」に続いて、今回の「Island Princess」で三部作を完結させてみよう、と。最初の「Island Girl」は、中学生のころの話。僕たち2人が女性に抱くリスペクトの思いを書いていて、「Island Queen」は、高校生になってバイトや勉強で大好きな彼女に会えなかったころの話。最後の「Island Princess」は、指輪を渡しに行って、ずっと一緒にいようと誓う。ラストはハッピーエンドです(笑)
──まさに、幸せいっぱいの胸キュンな感じが伝わるビートとサビが印象的でした(笑)。ALEXXXXを迎えたもう1曲「ANGEL〜First Love〜」は、オールディーズの薫りがするトラックがいいですね。
オールディーズ大好きなんですよ。キュンとしますよね。それを現代風な音とミックスして、過去と現在を行ったり来たりできるような曲をイメージしました。さらに、初恋という甘酸っぱいテーマを載せて、メッセージ的にもキュンキュンできる感じに(笑)
──「Dream Goes On」の“No Rain No Rainbow”というフレーズ、すごく耳に残ります。
ハワイで古くから言い伝えられてる言葉。ハワイでは、雨が降ると必ず虹がかかるんですよ。きっと夢も同じ。涙のあとには輝く未来が待ってる。挫折しても、新たに夢は見られると思うんです。夢を持つってことはすごく大切なこと。僕は昔から、自分の音楽をとおしてみんなが笑ってくれることが夢でした。その気持ちを伝えたいという思いと、みんなにとっても応援歌になってくれたらいいなと思って作った曲です。
──歌入りとしては本作のラストとなる「Road to Happiness〜ISLANDream pt.2〜」は、どんな想いで書いた曲ですか?
とにかく、皆さんへの感謝の気持ちを書きたくて。音楽は、決して自分一人でやってるわけじゃなくて、支えてくれる人がたくさんいるからできている。この1年で、僕の音楽を聞いてくれる人も、サポートしてくれる仲間も、たくさん増えたので、そういう感謝の気持ちをこめた曲ですね。
──“僕にもし子どもができて/パパになったらこうやって言おう/大切な仲間たちと夢追いかけるんだ/何処までも”というリリックが印象的です。
僕は、自分の父親のような父親になりたいって思ってるんです。父はいつでも僕に、自分の好きなことを好きなようにやりなさいって言ってくれた。悩んだときは話を聞いてくれるけど、まったくレールを敷かないんです(笑)。それで僕は夢を追いかけることの大切さを教えてもらったので、子どもができたら自分もそうやって接してあげたいなって。
──ハワイの海が目に浮かぶような美しいインストも聞きどころですね。ウクレレの旋律にうっとりするアウトロ的な「Pau'ole」は、聞いたあとも余韻が残る1曲でした。
「Pau'ole」は、ハワイ語で“永遠に”という意味。このアルバムを何十年先までずっと聞いてほしいという想いと、これからもずっと僕の音楽は続いていくという意味をこめて作った曲。僕にハワイアン・ミュージックの素晴らしさを教えてくれたスラッキー・ギターの名士、山内‘ALANI’雄喜さんが参加してくださってます。ALANIさんは、一緒にバンドをやっていたメンバーであり、僕の心の師匠。ほかの曲でも参加してくださってるんですけど、今回は全体的にバンド・サウンドが多くて楽しかったですね。前にサーフ・ロックのバンドをやっていたし、バンドは自分の根本にあるもの。みんなで作り上げた1枚だと思っています。
──このアルバムで一番伝えたかったことは、どんなことでしょうか?
直接的なメッセージはないけど、“LOVE&PEACE”を願う気持ちが根底にあります。ただそれも世界規模というより、まず周りの近い人から幸せになってくれたらいいなって。それが広まっていったら、最終的に世界中がハッピーになるはず。だから、僕の音楽を聞いて少しでも嫌なことを忘れて、“ALOHA”な気持ちになってくれたら嬉しい。それに尽きますね。
──平井 大さんの音楽は、クラブ・ミュージックのアプローチを持った踊れるビートでありながら、ハワイの海を連想させるあたたかさ、風通しのよさもあって、そこがすごく新鮮に聞こえます。
僕は、“アイランド・ミュージック”を表現したいと思っているんですけど、“島”のおもしろいところって、いろんなカルチャーが融合されているところだと思うんですよ。僕自身もヒップホップ、サーフ・ロック、ジャワイアン、いろんなジャンルが好きだし、そういうミックスな部分を平井大っていうフィルターを通して伝えていくのが、自分のやりたいことなんだなって。今回1枚アルバムを作ってみて、それがちゃんと見えた気がします。日本とハワイは同じ“島”として通じる部分がたくさんあると思うし、親近感を持って聞いてもらえたら……。日本とハワイをつなぐ音楽になれたら嬉しいですね。
──これから先、どんなアーティストでありたいと思っていますか?
音楽に対していつもピュアでいたい。それって本当はすごく難しいことかもしれないけれど、その気持ちはずっと前から変わらないですね。音楽に触れるとハッピーになれるし、楽しいし、おじいちゃんになってもこの気持ちを忘れずにずっと歌い続けていたい。それが僕の大きな目標です。
取材・文/岡部徳枝
ライブ情報
[平井 大 LIVE TOUR 2012 〜ALOHA〜]
6月23日(土)福岡 BEAT STATION
6月30日(土)愛知名古屋 OZON
7月1日(日)大阪 心斎橋 Music Club JANUS
7月8日(日)東京 渋谷 O-EAST
詳細は公式HP→http://hiraidai.net