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“泣けるロック”を体現するバンド鴉が、6曲入りのミニアルバム『感傷形成気分はいかが』をリリース。1stアルバム『未知標』(2010年12月)を経て、今年3月にドラマーがチェンジ。近野淳一(Vo/G)、一関 卓(B)、榎本征広(Dr)の新生・鴉の第1弾作品となる。
作詞・作曲を手掛けるのは、ヴォーカルの近野淳一。昨今のJ-POPは、作者の実体験に基づいたノン・フィクション的な歌詞が主流となり、話し言葉をそのまま用いた作風が多く見られる中、近野の詞は異彩を放っている。日常性を排し、自身の感情や知覚を表現する作風は、難解とも言えるが、そこに描かれている世界を感じ、様々な物語を想い描く事こそ、“詩”の醍醐味。韻を踏んだフレーズも多く、そのまま朗読しても、充分に美しい“詩”だが、そこに、メロディーとサウンドが重なる事で、言葉がより一層エモーショナルになり、“詩”が“歌”に変化する。
今作について、“人に聴かせたい歌の原点は、まず自分に聴かせたい歌だと思って作った”と言う近野。
鴉流に消化したモダンエモ・サウンドで描いた「幻想蝶」は、自身を羽ばたけぬ蝶に例え、その存在意義を自問自答しているかのよう。アルバム・タイトルにもなっている“感傷形成気分はいかが”という一文で始まる「居場所」は、ネット社会のバーチャルなコミュニケーションの風刺だろうか。大きな夢を胸に旅立った“春”を振り返る「春」は、疾走感溢れるサウンドが、切ない感傷を未来への希望に転じてくれる。
アマチュア時代からの代表曲「ココニアル」は、強い決意が感じられるナンバー。そこに描かれているのは、恋人との別れ、友との別れ、はたまた過去の自分との別れだろうか。繰り返される“騙して”という言葉が印象的な「曇りなき私」は、バイオリンとピアノが絶妙に絡み合う、壮大かつ壮絶なバラード。人と人の出会い、そこに生まれる交流や行き違いを、鉄道に例えた「列車」は、これまでの鴉には見られなかった超ポップなナンバーだ。
ダークな部分は更に深く濃く、鮮やかな部分は一層カラフルに、鴉が持つ独特な世界観がより鮮明に感じられる6曲。“泣けるロック”ここにあり。じっくり歌詞と対峙して、この激しく美しい歌世界を感じてほしい。
リリース後は、10月にMERRYとの対バン・ツアーが控えている。
MERRY×鴉 Wレコ発ツアー.激唱FREAKS.
10月1日(土)大阪 ESAKA MUSE