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──ニュー・シングル「勇者たち」。いよいよリリースとなりますが、まずは、どんな手ごたえを?
今回は本当に良い曲を書いたと自信を持って言える楽曲です。切なさがありつつも、最終的には、ちょっと前向きになれる要素を持っている曲だと思います。
──言葉、メロディー、トラックそれぞれが独立した世界観を持ちながら、その3つが合わさった時に、1つの物語が明確に見えてくる。そんな印象を持ちましたが?
トラックに関しては、生音のギターに泣きの部分があって、ストリングスの弦の美しい流れがよりドラマチックにしてくれて。私は、良いメロディーを作って、良い歌詞を書く。それぞれの感情が合わさって、色々な魂の叫びが入っているような気がします。
──楽曲作りはトラックから?
トラックが最初ですね。いつも、こんな曲を作ろうと言うイメージを決めてから、トラックを作ってもらいます。私は今、90年代のR&B、HIPHOPサウンドをすごく必要としていて、それは私にとっては懐かしい要素なんですけど、今回はそのイメージから、YANAGIMANさんにトラックをお願いしました。
──その後で、メロディーと歌詞?
私はいつも先に歌詞を書くんですよ。歌詞を見ながらそこにメロディーをつけていくという進め方をします。トラックの完成を待っている間に、自分の頭の中でストーリーを組み立てて、歌詞をパソコンで打っておきます。でも、今回の「勇者たち」は言葉とメロディーが同時に出て来ました。最初にトラックを聴いた時から、もがき苦しんでいるような青年の姿が浮かんできて。ちょっとプライドが高くて、世の中を斜に構えて見ちゃう…そんな青年像が浮かんできて、そこからストーリーが膨らんで、主人公が乗り移ったかのように一気に書けました。
──いまの時代をどう生きたら良いかわからない、自分がどうあるべきかもわからない。そんな現代の青年像が見えて来る歌詞ですが、そういう青年像が出てきたと言うのは、ご自身の中にどんな想いがあったからなのでしょう?
私の周りでは最近、就活を開始した人が多いんですよね。私の弟も就活を始めたし。私は就活と言うものを体験していないですけど、テレビや新聞の報道では、就職率史上最悪というニュースが連日伝えられていて、そういう状況の中で、やりたい事が見つからない、わからないと迷っている人たちを目の当たりにして、感じるものがあったんです。私は幸運な事に、進むべき道が早くから見つかったので、何をするにも選択に迷うという事がなかったんですけど、同世代の多くが、やりたい事がわからなくて迷っている、そこでつまづいていると言うのは、すごく胸に刺さった光景で、それで、色んな事を思ったんですよね。私は、ただ美しいだけの曲と言うのは書けないし、曲を書く時は必ず現実的な部分を入れたいと思っているんです。その現実がすごくショッキングだったり、虚しかったり、マイナスの印象を受けるものだったとしても、それが事実なんだったら書くべきだと思うんです。だから、「勇者たち」は、淡々と今の状況を嘆いていたり、愚痴をこぼしたり、生まれ変わる時はもっといい人生送れたらという漠然としたこととか、お金持ちに生まれたかったなとか、そういう事を淡々と述べていると言うのが、この曲のポイントだと思います。
──同世代へのメッセージ?
自分のダメな所って、実は自分が一番良くわかっているんですよね。だけど、それを認めたくない、認める事ができない時ってあると思うんです。言われなくてもわかってるよっていう時ありますよね。そんな時にこの曲を聴いて、次の日に、ちょっとだけでも昨日より頑張ろうという気持ちになって貰えたらと思います。
──虚しさや苦しさと言うのは、同じ気持ちに同調する事で消化できる場合もありますものね。
そうですよね。これから、大人になっていけば、昔のようにしょっちゅう友達とも会えるわけじゃなくなるけど、そういう時に私は、“あなたの事絶対に忘れない”とか書けないし。でも、次にあなたと会うのは、いつになるかわからないけど、次に会う時は、今の自分よりも成長していたい。そういう想いで、この曲を聴いて貰えたらいいなとも思います。
──社会に出ようとしている男の子が主人公ですが、歌詞の中には、ミリヤさんご自身のお考えが入っているかと思います。♪こんな時代〜とか、♪同じ痛み同じ運命〜という言葉からは、今の世の中をあまりプラスに捉えられていないように感じるのですが、いかがですか?
物心ついた時から不景気と言われていて、そういう中で育ってきて、就職率が史上最低だとか、自殺者が増えているとか、マイナスな要素ばかりが目につくので、どうしても、日本って素晴らしいんだとか、毎日って素晴らしいんだというメッセージを感じづらいと言うのはあるかもしれません。みんな、生きていく事に必死で、でも、そうやって苦労しながら生きていくのが本来の姿なのかなとも思うんですけど、私の母達が若かった時代、バブルの頃は、なんか、今と全然違う感じだったんじゃないかと思ってしまったり。
──ミリヤさん達の世代で、この世の中を変えていこう!というような感覚はない?
私の知る限りでは、何かを発信していこうという感じを前面に出してくる子は少ないように思います。例えば、大学生で起業した人とか、私の周囲にはいないですし。そういうエネルギッシュな同世代にももっと会ってみたいし、話をしてみたいと思うんです。エナジーがもっと必要ですよね、世の中に。
──ファンの皆さんにとっては、ミリヤさんはエナジーを持っている人、エナジーを出してくれる人と映っているんだと思いますが?
そうでしょうか。そうだったら良いんですけど。人に影響を与える事ができてるのであれば、私はすごい事をやらせて貰っているんだといつも思っています。だから、いつでもパワーを持ち続けて、自分のエネルギーを感じて貰える存在でありたいなと思っているんですけど、でも、私自身、もしかしたらパワーを出し切っていないんじゃないか、実はもっとエネルギッシュになれるんじゃないかと思ったりもします。
──2004年にデビューされた時は16才でしたよね。ご自身では変化を感じられますか?
意外と変わってないですね。昔から異議を申し立てたくなるタイプで、元々、音楽を始めたキッカケも、言いたい事があるから、ひとこと言わせてくれと言う思いで始めたわけで。そういう部分は全く変わっていないですね。
──ご自身で、変化したなと自覚している点はない?
世の中は矛盾していると今でも思っているし、それは変わらないんですけど、でも、その中でちょっとした喜びを見つけて、やっぱり人生って素晴らしいと感じたり、生きる事を絶対にあきらめてはいけない、頑張るという事を絶対に恥じてはいけないと思う部分が、年々、熱くなっている気はします。
──10代の頃と大きく違う?
10代の頃は、努力なんてみっともないって思っていた時期もあったんです。私は元から何かを持っているから練習なんて必要ないし、努力なんて大嫌い。当時はそんな風に自分を過信している所がすごくあったんですよね。だけど、ずっと音楽活動を続けてきて、今は、努力は絶対に嘘をつかないという事を実感しています。
──そうした変化も含めて、今回の歌詞はどう思われますか?
本当に今だから書けた言葉だと思います。私自身、この歌は、よく歌詞を朗読しています。
──リリースされて、たくさんの方の耳に目に触れるわけですけど、どんな事を想像していますか?
聴きながら泣いてもらえたら嬉しいです。私もこの曲を聴きながら一人で涙が出てくる事があるし、辛いなとか、ダメになりそうだという時に一人で聴いて、自分ってなんてダメなんだと思いながらも、でも、頑張らなきゃって。そんな風に聴いて貰えるといいですね。
──2曲目の「SIGN」は、ラヴソングですが、この歌詞はどんな所から?
例え恋人同士であっても、思っている事を100%相手に伝えなくてもいいと思うんです。その方が、より滑らかに時間が動いていくって言う事もあると思うんですよね。例えば、彼が家に来た時に靴を揃えてなかったとしても、“また靴を揃えてない!”とは言わない。食器を片づけてなかったとしても、“また飲みっぱなし!”とは言わない。気付いた自分がやれば良い事だと思うし、靴が揃っている事、食器が片付いている事で、自分が相手を好きだという気持ち、相手が自分を好きでいてくれているからこそ、そうしているんだという事に気付いてほしいし。自分が疑問に思っている事だったり、なんかちょっと噛み合わないなみたいな事を、口にしなくても、お互いにわかり合えたらいいなって。そういう想いを、散文的に並べた詞です。
──最後の一行には、ドキリとしましたが?
結局どうなんでしょう。本当の事はわからない。ちょっと怖いオチですよね。
──サウンドのイメージはどんな所から?ちょっとオリエンタルな感じですけど。
最初に上がってきたトラックは4つ打ちの曲だったんですよ。でも、その時の自分のブームもあって、HIPHOP調の90年代っぽい懐かしさのあるサウンドにしたいなと思い、もう1回、特にビートに関して作り直して貰ったんです。
──シングル全体を通して、サウンドに統一感が感じられますよね。
タイトル曲「勇者たち」と3曲目の「わらの犬」が既に先にできていたので、トーンを揃えたいという意識もありました。