昨年12月、3年ぶりとなるオリジナル・アルバム『COSMONAUT』を発表したばかりのBUMP OF CHICKENが、僅か2ヶ月のインターバルでニュー・シングルをリリース。
2011年第1弾作品となる「友達の唄」は、長編アニメ映画“映画ドラえもん 新・のび太と鉄人兵団 〜はばたけ 天使たち〜”主題歌として書きおろされたナンバー。もう会う事もない幼年期の“友達”に想いを馳せ、思い出の断片を繋ぎ合わせていく、繊細で儚く美しいバラードだ。
今回の映画は、1986年の“ドラえもん のび太と鉄人兵団”のリメイク版。幼い頃から“ドラえもん”をこよなく愛してきた彼らだが、中でも、小学校1年生の時に公開されたこの映画は思い出深い1本だと言う。人間を奴隷にしようと地球に侵攻してきたロボット惑星の鉄人兵団にのび太達が立ち向かうストーリー。敵でありながら、少女ロボット・リルルとの間に芽生える友情。「友達の唄」に描かれた追憶は、リルルとのび太達の友情の記憶とも重なって聴こえる。幼少期に買って貰った“ドラえもん のび太と鉄人兵団”の単行本を今なお愛読していると言う藤原基央。「友達の唄」は、どんな想いからソングラティングに向かっていったのだろうか。
藤原基央:子供の頃から何度も読み返している“鉄人兵団”のコミック版で、自分がいちばん思い入れのあるシーンを思い浮かべました。終盤の、のび太とリルルというメイン・キャラクターの友情を巡るシーンなんですけど、鉄人兵団に壊された街の地下鉄の階段で、思い悩むリルルがしゃがみ込んでいるところをのび太が見つけるんです。で、リルルは振り返って笑うんです。子どものころからそのシーンが特に印象に残っていて。思い返すと、読者である自分が何かに悩んでいるときも、うだつが上がらないときも、のび太はいつも友達のままで見守ってくれていたような・・・。そうやって、のび太がいつも自分と一緒にいてくれたという感覚があるんですよね。のび太とリリルの印象的なシーンを入り口にして、自分から見たのび太、さらにのび太を通して、“ドラえもん”という作品を感じながら曲を書いていって。そのシーンはもしかしたら、自分だけじゃなくて、“ドラえもん”という作品と受け手の象徴的な1コマなのかもしれないなって思うようにもなってきて。“鉄人兵団”という窓枠を通して、自分の思いがどんどん外にも広がっていったんですよね。“鉄人兵団”のコミック版を読んでいたころの僕も、今の僕も全部そこにいて。さらに、ここまで一緒にバンドをやってきたメンバー、小学校のころの友達、スタッフ、リリースの度に取材してくれる人たち、その記事を読んでくれる読者、CDを聴いてくれるリスナー、ライヴに来てくれるお客さんにもどんどん思いが向かっていったんです。
そうして生まれた「友達の唄」を、幼なじみでもあるメンバーは、どんな風に受け止めたのだろうか。
直井由文:藤くんにデモを聴かせてもらったときにイントロからグッときて、Aメロから涙が止まらなくて。まずドラえもんやのび太の顔が浮かんできて。そこからメンバー4人の想い出とか、幼なじみと薮のなかを駆けていた記憶とか(笑)──-いろんなことが頭を過りましたね。あとは、藤子・F・不二雄先生にもう“有り難うございます”と言えないこととか・・・。“ドラえもん”は僕らにとって空気のような存在でもありますから。それを吸い込んでいる藤くんが作った曲だから、自然といろんなことを感じて涙が出てしまったんだと思います。“どうしようもなく涙が出る”って藤くんに言ったんです。そしたら藤くんはホッとした顔で“ホントによかった”って言ってくれて。今でもこの曲を聴くとヤバいですね(笑)。
升秀夫:僕も最初に聴かせてもらったときからホントにすばらしい曲だと思いました。例えば子どもだったら、この「友達の唄」をBUMP OF CHICKENの曲と認識しないで聴くわけじゃないですか。あくまで“ドラえもん”の曲として聴いてくれる。現に僕らにとっての“ドラえもん”はそういう作品だし。そういうふうに曲を届けられる機会をいただけてすごくうれしい気持ちです。あと大長編“ドラえもん”の最後って、ハッピーエンドなんだけど悲しいんですよね。必ずそこに別れがあって。“鉄人兵団”の物語に触れて、子どもでも大人でも心が揺さぶられるときにこの曲が流れることを想像したら、今から既に感動しています。
増川弘明:この曲は上手く言葉にできない感動があるんですよね。直井くんと同じように、いろんなことを想起させられるし。“ドラえもん”に関して言えば、大長編の世界観は得体の知れない怖さも描かれていて。最終的にはそれを越えていく感動があるんですけど。この曲もそういう深いところを揺さぶるようなものになったと思います。
今回は、サウンド面でも新たな試みが。バンドとしては初となるトランペットを導入。バンド・サウンド、ストリングス、ホーンが共鳴し、更に気高く勇壮な響きを得ることに成功。余韻を残す終わり方も印象的だ。
藤原:ストリングスのアイデアを出してくれたのはプロデューサーです。ホーンのメロディは、デモの段階から僕がキーボードで入れた音が鳴っていたんですけど、ここまで主張は強くなかったんです。ストリングスとホーンが絡み合う長いアウトロの最後に、アコースティック・ギターの独奏になるんですけど、それもプロデューサーが導いてくれましたね。みんなでコミュニケーションを取りながらサウンドの細かいニュアンスを作っていきました。
映画は3月5日から全国ロードショー。世代を超えて愛され続ける“ドラえもん”の中でも異彩を放つ今作。地球・宇宙規模で描かれる壮大なストーリーのエンディングに流れる「友達の唄」は、大きな感動を呼ぶ事だろう。
メンバーからのビデオ・メッセージも要チェック!!