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UTAMAP review
RHYMESTER宇多丸・Mummy-D ロング・インタビュー大ヒット・アルバム『マニフェスト』から僅か1年! RHYMESTER史上最速スパンで、ニュー・アルバム『POP LIFE』リリース! いまの気分をラップで表現したRHYMESTER流ライフ・ミュージック! HIPHOPの最も新しい形がここにある!
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NEW
『POP LIFE』
『POP LIFE』 アルバム
発売:2011.03.02
Ki/oon Records
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初回生産限定盤[CD+DVD]
KSCL-1743
\3,000(税込)
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通常盤[CDのみ]
KSCL-1745
\2,800(税込)
収 録 曲
01.After The Last -Intro
02.そしてまた歌い出す
03.Just Do It!
04.ランナーズ・ハイ
05.ほとんどビョーキ
06.Hands
07.ザ・ネイバーズ
08.POP LIFE
09.Born To Lose
10.Walk This Way
11.余計なお世話だバカヤロウ
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RHYMESTERオフィシャルウェブサイト
母親にスポットを当てて、児童虐待に対する問題提起した「Hands」。何でもかんでも“イマドキのお母さん”のせいにしてしまうのは違うだろうって。

──「Hands」は、児童虐待がテーマですね。児童虐待に関する報道が多い世の中となりましたけど、そういう事が飲みの席で話題になったということ?
Mummy-D:大きなキッカケとなったのは、去年の夏の大阪のネグレクト(育児放棄)事件。幼児2人を部屋に置き去りにして死なせちゃったというのがあったでしょう(23才の母親が長女(3才)と長男(1才)を部屋に置き去りにし死に至らしめた)。あれがショックで、ちょっと黙っていられなくなって。
宇多丸:もう少し前なら、取り上げなかったと思うのね。でも、児童虐待に関しては僕も思う所があって、言いたい事が出て来ていたので、良いタミングだったと思いますね。児童虐待の報道って、ありもしない理想の母親像と比較して、このお母さんは良くない、イマドキの若いお母さんは…っていつも言ってるよね。昔の大家族時代は良かったと言った所で何の解決にもならないし、理由があって社会が変化したんだから、だったら社会が手を差し伸べる以外はないわけで。それを何でもかんでも“イマドキのお母さん”のせいにしてしまうのは違うだろうって。僕自身も怒りが貯まってたんですよね。
Mummy-D:児童虐待のニュースって、いつも男の存在がないんだよね。だいたいが女の連れ子を内縁の夫が…とか、そもそもお父さんが全くいない状態か。俺と宇多丸と男が2人で書いて、曲中に一度も男を存在させない事によって何か伝わるものがあるんじゃないかと思って。それで提案したテーマだったんだけど。
──いつの頃からか、虐待のニュースというのもそれほど驚かなくなってますよね。
宇多丸:でも、表面化、問題化しなかっただけで、昔からあった事だとも思うんですけどね。だから、逆に言うと、これほど頻繁に表に出てくると言うのは、社会がより関心を持つようになったという事でもあり、ある意味進歩でもあるんだけどね。
──RHYMESTERの楽曲としては、かなり異色の作品となるかと思いますが?
Mummy-D:キレイなピアノが鳴っただけで“大丈夫かな、俺ら”って思ったし、演ってる方も違和感があるんだから、聴き手はもっと違和感あるよね。でも、最近の俺らは、今までNG事項だった事をタガを外してチャレンジしていく時に何かちょっとしたミラクルが生まれている気がするので、この曲もそのうちの1つかなって。そういう意味ではうまくいったと思うし、アルバムのキー曲になったと思います。

尖閣諸島問題が発端となり生まれた「ザ・ネイバーズ」

──続く「ザ・ネイバーズ」は、隣国問題がテーマ?
Mummy-D:以前から、隣国との関係、隣人との関係…隣の人とどう付き合うかみたいな事は歌いたいなと思っていたんだけど、ちょうど尖閣諸島問題(尖閣諸島中国漁船衝突事件)が起こって、“じゃ、行きますか!”って。面白おかしく中国の事を歌っているけど、本当のテーマは、国に限らず、隣りの人とどう上手く付き合うかという事ですね。
宇多丸:敢えて刺激的にやってるから、中国叩きの曲みたいに取られ兼ねないけど、この曲をナショナルティックなメッセージとして捉えられるのは最も本意な事ではなくて。コミカルに描いているのは、この問題に右往左往している俺達の滑稽さでもあるわけで。隣国とどう付き合ったら良いのかわからないと言うのは、俺達自身の問題だから。
──でも、腹は立ちませんか?
Mummy-D:そりゃ腹立つよ。俺だって、自分がスーっとしたくて作った曲だし。でも、そんなに大騒ぎにならなかったと言うのは、民度と言う言葉は俺はあんまり好きじゃないんだけど、やっぱり、冷静に見れる所があるんだと思うんだよね、日本人は。
宇多丸:隙あらば他の国を盗っちゃうよっていうのが世界のデフォルトだけど、そうじゃない考え方だってあるかもしれないじゃない? そこを模索すべき時代であり、日本なんだろうと思うんですよ。とにかく隣国問題っていうのは、これこそ普遍的な問題で。隣国問題を抱えていない国なんかないんだから。だから、中国問題と言うよりは、人類が存続している限りは絶対に続く問題と言うか、隣人問題が存在するという事と付き合って生きていかなくちゃいけない、そういう事だと思います。

そもそもは「POP LIFE」というタイトル・チューンなしで、“POP LIFE”を表現するアルバムにしようと思っていたんですけど。

──続く「POP LIFE」は、アルバム・タイトル曲でもあるわけですが?
Mummy-D:このトラックは、耳も頭も休まる、優しい感触の曲にしたいなと思ったんですよね。でも、じゃあ、何を歌うのか、これが全く決まらない。色んなテーマを出してみたり、サビだけ幾つも録ってみたり。だけど、どれもしっくりこなくて。そこで行きついたのが、何か具体的なテーマを歌うんじゃなくて、なんとなくイメージしている“POP LIFE”を象徴する1曲にしたら良いんじゃないかって。そもそもは「POP LIFE」というタイトル・チューンなしで、“POP LIFE”を表現するアルバムにしようと思っていたんですけど。ないはずだった中心を最後につけたっていう感じかな。
宇多丸:ドーナツを作ってたんだけど、やめたって言うか。中にアンコいれて饅頭にしました、みたいな(笑)。
Mummy-D:今までぼんやりと言おうとしていた“POP LIFE”という概念を1曲で表すと決めてからは、それをどう表すべきなのか。考えて考えて、試行錯誤を繰り返して作った曲です。
──他の曲はいずれも○○について語っているという明確な主題が見える中で、この曲だけは“気分”しかないような気がしたのですが。
Mummy-D:その“気分”というのを表すのが難しいんだよね。これは歌だとやりやすいのかもしれないんだけど、ラップというのは行間がないから、行間も書いちゃう手法だから、どうしたって、何を言っているのか具体的になってきちゃうし、ぼんやりとしたイメージの繋がりだけでは、なかなか曲として成り立たない所があって。“気分を曲にする”という点ではすごく難しいんですよね。
──ラップで“気分を伝える”というのは、これもまた新しい表現物とも言えますね?
Mummy-D:そう言えるかもしれないですね。行間がいっぱいあるから、いっぱい入っちゃうから、いくらでも説明できちゃう。その上で、何を言ったらこの気分が表現できるかなって。今思うと、苦労したのはそこだったのかなと思いますね。

「Born to Lose」は、アルバムの全部の曲に繋がってるのかも。どの曲も、何をもって幸せとするのか?みたいな問いかけになっていたのかも。

──続く「Born To Lose」は、「そしてまた歌い出す」に通じる、強い意思表示と決意が感じられましたが。歌詞の中に♪評論家泣かせの奇跡のスポーツという表現が出てきますが、本当に体を張って、汗まみれになって、息も絶え絶えにそれでもまだ戦い続ける試合のような、まさに身を削って表現しているような1曲ですよね。
Mummy-D:そう言って貰えると、もう何も言う事はないです(笑)。
宇多丸:気分的には「そしてまた歌い出す」と対になっていますね。
Mummy-D:この曲だけは露骨に自分達の事っていう感じかなぁ。
宇多丸:普通にお金稼いでメシ食ってイイ姉ちゃん抱いて年くって死ねばいいのに、なぜ俺達は、こんな事をしているんだろうってね。でも、人間ただ生まれて死ぬだけじゃ悲しすぎる。何かひとこと言ってやりたいんだよっていう事なんじゃないかな。何も持たない貧しい黒人が、それでも表現したいと思って、始まったのがHIPHOPだから。何かを持っていないから言わざるを得ないという事でもあると思うんですけど。勝ち負けという事で言ったら、誰だって死ぬという事では確実に負けるわけじゃない?何も残らない。だけど、何か残すために、ブクツサ言ったり、本を書いたり、歌を歌ったりしてるわけで。
──「Walk This Way」にも繋がっていくテーマですよね?
Mummy-D:「Walk This Way」もそうだけど、このアルバムの全部の曲に繋がってるのかもしれないですね。どの曲も、何をもって幸せとするのか?みたいな問いかけになってるんじゃないかなって。
宇多丸:なるほどね。それは言えてるかも。
Mummy-D:LIFE、LIFEって言ってきたけど、実はそっちが核だったのかな。ハピネスを歌いたいねっていう事もずっと言ってたじゃない?俺らがあんまり得意としないテーマだけど、光が当たっているような人生の1日を書いてみたいねという会話もしてたよね。たぶん、「Born to Lose」も、まだ勝てていないその状態が実は幸せなんじゃないの?と言いたかったのかも。「Walk This Way」なんかも完全にそういう歌だし。「POP LIFE」も、なんか俺らけっこうイイよねって言う気分…毎日のこんな感じが意外と幸せなんだよねっ事を言いたかったんだと思うし。

ラスト・シーンで主人公が喧嘩。「Walk This Way」でキレイに終わらず、もう1回、ろくでもない日常に帰っていくアルバム。

──今回は、アルバムの締め括りも、これまでとは全く異なりますね。アルバム全体の流れからすると、「Walk This Way」で終わるのが自然かと思うのですが、その後にもう1曲「余計なお世話だバカヤロウ」が続くというのは?
宇多丸:元々は「Walk This Way」がラスト・シーンになる予定だったんです。まさに夕陽に向かって駈けて行くみたいな終わり方。だけど、今回のアルバムの気分としては、キレイにまとめて終わると言うより、もう1回、ろくでもない日常に帰してあげようって。 本来だったら、もっと途中に出てくるべきシーンなんだけど、主人公の喧嘩シーンを一番最後にくっつけた。輝いてる瞬間はあるけれども、でも、もう次の瞬間には、ウザったいものが襲ってくる。
Mummy-D:それもリアルな日常ですよね。
宇多丸:だから、そこにちゃんと着地して、それでいて、スカっと終わりたいなと思ったんですよ。

2011年は、RHYMESTER史上最もアクティブな年になる!まだ内緒だけど、ツアーの先に“2,000円程度の何かがあるよ”だけ言っときます!

──今年は、メジャー・デビューから10周年となるわけですが、その点については?
宇多丸:メジャー・デビューがどうこうって時代じゃないっていうのもあるけど、それはそれとして、本当にありがたい事だと思っています。僕らに価値があると思って貰える状態が10年続いているわけだから、それはありがたい事ですよ。左から、宇多丸、DJ JIN、Mummy-D
Mummy-D:こんなに好き放題にやってきて、それを10年を続ける事ができたなんて、本当にありがたい事だと思います。
──10周年目の今年は、史上最速スパンでのアルバム・リリースがあり、その後は全国ツアー。更に今年は最もアクティブな年になるだろうと予告されていますが?
宇多丸:これまでが、やたらと休眠をとったり休みすぎだったんですけどね(笑)。普通は、アルバムを出して、全国ツアーをやってお終いなんですけど、今年は更に準備している事があります。“いや〜もう見ててくださいよ。今年の俺らは違いますよ”って、これまでもさんざん言って来たんですけど。
Mummy-D:まだ言えないの?
宇多丸:まだ言えないんですねぇ。でも、1個用意してあります。大変楽しみにしていただいて間違いのないものです。言えるのは、“2,000円程度の何かがあるよ”までですね(笑)。楽しみに待っていてください。

KING OF STAGE VOL. 9
〜POP LIFE RELEASE TOUR 2011〜

5/01日(日)名古屋 Zepp Nagoya
5/05日(木・祝) 福岡 Zepp Fukuoka
5/12日(木)札幌 PENNY LANE 24
5/29日(日)大阪 なんばHATCH
6/05日(日)東京 Zepp Tokyo

 

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March 3, 2011
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