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──「福笑い」は、ラジオ番組がキッカケで生まれた曲だそうですね?
2010年の元旦に、プロデューサーでもある箭内道彦さんのラジオ番組(TOKYO FM“風とロック NEW YEAR FES 渋谷”2010年1月1日1:00am〜5:00am)で“世界を変えるために何をしますか?”というテーマでリスナーさんからメッセージを募集したんです。その中に“世界の共通言語は英語じゃなくて笑顔”という言葉があって。
──そのフレーズから、この曲が生まれた?
みんな、いつでも笑顔でいた方がいいよな、笑ってた方がいいよなっていうのは、ずっと思ってた事だったんですよね。だけど、うまく言葉にできなかった。“世界の共通言語は英語じゃなくて笑顔”という言葉を聞いた時に、“あっこれだ!”って。僕がずっと言いたかった事を、ひとことで代弁して貰ったような気持ちになったんです。もう、すっごく感動しちゃって、番組の中でそのフレーズを絶賛しまくってたんです。そしたら、箭内さんが“そんなに感動したんなら、曲にしてみたら?”って。それで、番組終了までに1曲書きあげる事になって。
──番組放送中に完成したんですか?
1コーラス仕上げました。ものすごく急いで作ったので、ドタバタ感はありましたけど、自分の思っている事、伝えたかった事をすごくシンプルに書けたと思います。
──楽曲は、その時のまま?
ちょっとメロディーを変えた所と、歌詞の語尾が多少変わったりはしてますが、ほぼ、その時のままですね。
──“世界の共通言語は英語じゃなくて笑顔”というフレーズに、代弁して貰ったような気持ちになったと言う事ですが、高橋さんが常に思っていた事とは?
心からの笑顔。例えば、本当は悲しいのに強がって笑ってみせるとか、怒りを殺して作り笑いするとか、そういう強さも必要だとは思うんですけど、全く気を遣わず、本当にバカになって、頭も心も空っぽにして、アハハと笑ってる瞬間って幸せに通じると思うんですよね。大人になればなるほど、そういう事ができなくなってしまう気がするんですけど、鎧を全部脱いで、本当に無邪気に笑う事って、大事なんじゃないかと思うんです。そういうメッセージを、シンプルに歌う事ができたと思います。
──「福笑い」というタイトルは、どんな所から?
曲を作ってすぐに、生放送の番組内で歌ったんですけど、その時共演していたTHE BACK HORNのドラムの松田(晋二)さんが、“この歌は「福笑い」だ!”って。それをそのまま使わせて貰いました(笑)。
──「福笑い」というタイトルがピッタリだと思った?
“福笑い”というのは、目隠しして顔のパーツを並べますよね。それで色々な表情の顔ができる。楽しそうな笑顔になる事もあれば、歪んだ笑い顔になる事もある。人それぞれですよね。それって、人間そのものだなって思ったんですよ。僕自身も、自分ではちゃんと笑っているつもりでも、歪んだ笑顔になっている事もあるかもしれないし。本当に、この曲にピッタリなタイトルだと思います。
──「福笑い」は、新垣結衣さんご出演の“東京メトロ”のCMソングとして、昨年4月からオンエアされていますが?
本当に光栄な事だと思っています。
──初めてCMをご覧になった時は?
実は、プロデューサーの箭内さんにドッキリを仕掛けられまして(笑)。まだ僕がデビュー前だったんですけど、ちょうど箭内さんのラジオ番組に出演している時に、“東京メトロの新しいCMを手掛ける事になって、今日からオンエアだから、みんなで見ようよ”って。スタッフとかみんなでテレビを観ていたら、新垣結衣さんが登場して、BGMで「福笑い」が流れてる。ええ〜っ!?って。それが去年の4月1日、エイプリール・フールの日だったから、“箭内さん、すっごく手の込んだイタズラするな〜”って(笑)。最初は、嘘だと思ったんです。箭内さんも、なんかハッキリ言わないし。でも家に帰っても、そのCMやってるし。最初は、家の中まで仕掛けられたのかと思いました。しばらく半信半疑でしたね(笑)。今から思うと、すっごくワクワクする初対面だったなと思います。
──今回は両A面シングルですね。「現実という名の怪物と戦う者たち」は、アニメ“バクマン。”(NHK教育)のエンディング・テーマですか?
僕は昔から“少年ジャンプ”の読者で、“バクマン。”も連載開始時からずっと読んでいたんですよね。だから、アニメ主題歌のお話をいただいた時は、本当にうれしかったです。
──楽曲作りにあたって、アニメのストーリーは意識した?
改めて単行本を全部読み直したんですけど、“一人ではなく、誰かと一緒に頑張る”という事がテーマだと僕なりに解釈したんです。そこに、自分を重ねて書いていきました。僕自身、一人だけで何かができるわけじゃないし、例えば、あの人なしには今の自分はいないと思うような恩人とかもいるし、そういう事を改めて考える機会にもなりました。
──強烈な印象を残すタイトルですが、このタイトルはどんな所から?
“現実”という言葉は、すごく面白いなと思うんです。どこで何をしていても、生きている以上、それが現実じゃないですか。なのに“今日は、現実の事なんか忘れて楽しもう”とか“また現実に戻らなきゃ”なんて言ったりする。その“現実”って何?って思ったんですよね。たぶん、仕事とか勉強とかを指しているんでしょうけど、でも、みんなそれほど仕事や勉強がイヤなわけでもないですよね。なのに、漠然と“現実”というものを、恐ろしいものだったり、敵のように言ったりする。それで、現実って、実態のない化け物とか怪物みたいだなって思ったんです。“現実”って何?そんな疑問を突き詰めて、辿りついたタイトルです。
──「福笑い/現実という名の怪物と戦う者たち」は、3rdシングルとなるわけですが、これまでの高橋さんの作品とは、随分雰囲気が異なりますよね?
これまでのシングルは、社会に対する怒りのような曲が多かったんですよね。笑う事とか、仲間と一緒に頑張るっていいよねって言うのは、もう誰もが知ってる事だったりする。誰もがわかっている事を敢えて歌にするっていうのが、これまでの僕にはできなかったんです。だから、今回、シンプルに明るく“笑い”をテーマに歌ったというのは、僕にとっては大きなチャレンジなんです。これまでは、“高橋 優はいつも何かに怒ってる”というような印象だったかもしれない。でも、これまでの楽曲の中でも、“笑顔”や“笑い”というのは、キーワードにはなっていたんです。感じる事や伝え方は、どんどん変化するし、今回のシングルに関しては、本当に自分は楽しく生きてたのか自分自身を見直したり、出会えて良かった仲間の事とか周りを見渡すキッカケになったらいいなと思います。
──1983年、秋田県生まれの高橋さん。音楽の原点は?
父が民謡をずっとやっていて、民謡や演歌の大会にいつも出場していまして、家の中でマイクを握って練習している父の姿を物心ついた頃から見てましたから、原点と言うとそこまで遡っちゃいますね。家にカラオケ機器もあって、僕もヨチヨチ歩きの頃から、吉幾三さんの曲を歌ったりしていたらしいです(笑)。小学校の頃はB'zや、姉の影響でSMAPを聴いてました。テレビから流れてくるヒット曲を普通に聴いてた感じですね。
──音楽に傾倒していったのは?
中学3年生の時の学校祭がキッカケです。クラスの出し物でバンドをやって、GLAYをコピーしたんですけど、その時、ヴォーカル担当になったんです。以前、友達とカラオケに行った時に採点ゲームをやって、みんな75〜80点位だったのに、僕だけ95点が出たんです。“優くん、すごい!”って事になって、ヴォーカルは優くんでキマリねって(笑)。同じ頃に、エレキギターを買って、hide with Spread Beaverの「ピンクスパイダー」のリフを真似たりもしていました。
──その後、どんどん音楽に夢中に?
中3の学校祭で初めてステージに立って、その時の快感が忘れられなかったし、またスポットライトを浴びたいとか、目立ちたいとか、そういう気持ちがどんどん強くなって、高校に進学してから、バンドを始めました。周囲でも、バンドをやってる友達は多かったんですけど、でも、コピー・バンドが主流だったんです。ライヴと言うのは、みんなが知ってる歌を完コピで聴かせるものという風潮で。一度、僕のオリジナル曲でライヴをやった事があるんですけど、“え、これ誰の曲?”ってザワついちゃって、オリジナルだって言ったら“え〜っ!!”って(笑)。全く盛り上がらなかったですね。