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「R.I.P. / Merry Christmas」(209年11月)、「HAPPY」「魔法の料理 〜君から君へ〜」(2010年4月)、「宇宙飛行士への手紙 / モーターサイクル」(10月)と4作の先行シングルを経て、いよいよリリースとなったBUMP OF CHICKENのニュー・アルバム『COSMONAUT』。
先行シングルから5曲収録。馴染み深いアイルランド民謡テイストから、ゴスペル、アルペジオを主軸としたナンバーまで実に多彩なサウンド。そして、何より、BUMP OF CHICKENの世界観を司っているのがその歌詞。聴き手の想像力を刺激し、思い出を蘇らせ、未来をも空想させる、その普遍的な詞世界は一段と深みを増した。
長い時間をかけて、じっくりと制作されてきた今作。メンバーそれぞれも得心し、大きな手ごたえを感じているようだ。
藤原基央:音的なことは、まだ客観的にはなれないんですけど、これまでと違う所は(デモの段階で)曲がまとまって生まれていたこと。なので、集中して、いっぱいスタジオに入って作った曲たちがこのアルバムに収められています。その環境は僕らにとって、とても良かったし、すごく良い状態で作れたアルバムだと思います。
升秀夫:バラエティーに富んだ曲が入っているんだけど、すごく作品としてまとまりのあるアルバムになったと思います。
直井由文:僕も升くんと同じでバラエティー豊かなアルバムになったと思うし、すごく楽しいアルバムだなと思います。
増川弘明:まだ全体を通してこうとは言えないんですけど、1曲1曲、ものすごい曲が集まっているなと思います。
アルバム・タイトルの“COSMONAUT(コスモノート)”は、宇宙飛行士の意味。主にロシアの宇宙飛行士を指す場合が多いが、一般的な“ASTRONAUT(アストロノート)”ではなく、敢えて“COSMONAUT”をタイトルに冠した。
メジャー・リリース以降、アルバム・タイトルには、『jupiter』(木星)、『ユグドラシル』(世界樹、宇宙樹)、『orbital period』(公転周期、軌道周期)と、一貫して宇宙にまつわる言葉を用いてきたBUMP OF CHICKEN。今作のタイトルは、どんな発想から生まれたのだろうか。宇宙飛行士のヘルメットを思わせるジャケットからは、「宇宙飛行士からの手紙」のプロモーション・ビデオが連想されるが・・・。
藤原:「宇宙飛行士への手紙」という言葉は、個人的には大きな想いが詰まっている言葉で、でも、それは全然説明できない想いでもあるんですけど。きっとどこかのタイミングでアルバムのタイトルになるんだろうなと漠然と思っていたんです。でも、このアルバムの制作中に、ある1曲にタイトルをつける事になった時、「宇宙飛行士への手紙」という、頭の中にずっと仕舞ってあった言葉がポロッと出てきちゃって。曲のイメージにピッタリで“もう、これしかないわ”と思ってタイトルにしたのが「宇宙飛行士への手紙」だったんです。なので、アルバム・タイトルは、その余韻をもって“宇宙飛行士”という意味をもつ別の言葉にしたいと思って。“ASTRONAUT”と“COSMONAUT”の2つが候補に上がって、そこからみんなで話し合って、“ASTRO”より“COSMO”の方が、単語的に他にも魅力的な意味合いがあるということで、『COSMONAUT』になったんです。“また宇宙かよ”と思う人もいるかと思うんですけど、“また宇宙です!”みたいな(笑)。ホントに、確信をもって言えることは“好きだ”という事だけで。宇宙というのは、考えただけでドキドキするし、ワクワクする存在で。それは変わらないんですね。あとは、曲を聴きながらリスナーそれぞれに想像してもらえたら、僕らはすごく幸せです。
いま、夜空で輝く星の光は、何億光年も昔に放たれたもの。光の速度で何億年もかかる時間を経て、見えている光だ。だとしたら、地球以外の天体に生物がいるなら、彼らには、地球の過去も未来も見えているのかもしれない。そんな宇宙観を藤原基央が持っているのかどうかはわからないが、ニュー・アルバム『COSMONAUT』は、まるで宇宙から自身の姿を眺めているかのように、“過去”と“現在”と“未来”を縦横無尽に駆け抜けていく。アルバム制作中に、メンバーは揃って30代となった。幼なじみである彼らは、その人生のほとんどを共に過ごして来た。多くの記憶を共有している。そして、これからもまた、同じ景色を見ていくのだろう。
藤原:30代になった時は、メンバーそれぞれ思うところがあって。僕ら4人は幼なじみでもあるし、これまでを振り返ったときに、どの景色にもお互いが存在しているんですよね。そうやって、共通の記憶や経験がすごく多いので、これだけの時間を一緒にいて、バンドをやって、いま生活をしているその事実に改めて驚いたし、感動したし、切なくもなりました。いまを生きるためにちゃんと僕らはそれを確認しなきゃいけない。そして、それが確認できたから、いまに還元されて、そこから見えた未来みたいなものもある。結局、僕らメンバーはとことん一緒にいるし、このバンドでやるべき音楽は、バンドのいまを象徴した曲を出すことなんだって、改めて、そういう事を認識しましたね。「宇宙飛行士への手紙」や「ウェザーリポート」「透明飛行船」とかは、特にそういう曲ですね。
直井:このアルバム制作期間中に20代から30代になったんですけど、いま藤くんが言った事は、曲が上がってくるたびにどんどん色濃くなっていったんですよね。アルバム1曲目の「三ツ星カルテット」が、いちばん最後にできた曲だったんですけど、もう、この曲でマックスみたいな(笑)。どんどん色濃くなっていった4人の気持ちが、最後にこの曲で明確に表れたと思います。
BUMP OF CHICKENの“現在”が最も色濃く反映された「三ツ星カルテット」で始まり、グライダーという原始的な滑空機に飛び立つ勇気と不安を重ねた「beautiful glider」で締め括る全14曲。先行リリースされたシングル曲も、アルバムの世界観の中ではまた、違って聴こえてくるかもしれない。全編を通して、繰り返し聴きたいアルバムだ。