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──ニューアルバム『目を閉じて見えるモノ』は、6月リリースの『自分さがしの終わり方』から5ヶ月というハイペースでのリリースですね。
桜井:前作『自分さがしの終わり方』の発売の時に、「目を閉じて見えるモノ」の1曲は出来上がっていたんです。それで、この曲をタイトルに出来るようにアルバムを作ろうと思って。そうしたら早いほうがいいんじゃないかと、まず11月リリースを目標として決めたんです。
伊藤:前作の『自分さがしの終わり方』は、自分というモノが何か、人生の中で必要な事は何かっていうことをストイックに突き詰めていったアルバムでした。その制作の過程で、“幸せになるにはどうしたら良いんやろ”っていう話をしていたことが、この曲の生まれたキッカケだったと思うんです。流行に流され流されやっていても僕たちの中では虚しさが残るし、でも“このままやったら幸せになれへんやん”っていう(笑)。そこから、自分の足にちゃんと合った靴を見つけることで、自然と幸せになれてるんやっていうフレーズ、メロディが出てきたんじゃないかと思うんです。“幸せとは何か?”と考えていた中から「目を閉じて見えるモノ」という曲が生まれたんだと思いますね。
桜井:“目を閉じて見えるモノ”というフレーズは、“大切なモノって何だろう?”と考えているところからポンと出てきましたね。
──それではアルバムタイトルも、最初から決まっていたんですか?
桜井:ひろむが持って来た案で、収録曲にある「半径0m」もアルバムタイトルの候補ではありました。「半径0m」とは、僕らの中では「目を閉じて見えるモノ」て何やろなって考えに考え抜いた末に出てきた、“自分自身の心の中にあるモノ”という意味だったんです。皆で話し合って、それに決まりかけたんですけど、2、3日経っってふと“意味が分からんな”と思って(笑)。それで周りの人たちにも聞いてみたんですけど、誰一人ピンと来なくて。結局は僕たちにしか意味が分からないフレーズでしたね。
また、前の2作品のタイトルも語呂が良かったこともあって、言葉の響きも重視したかったんです。「目を閉じて見えるモノ」がこのアルバムで1番の主張をしている曲であり、尚且つ響きも良かったので、最終的に『目を閉じて見えるモノ』に決めました。"
──アルバムタイトル曲となった「目を閉じて見えるモノ」は、“We can make a happy day”というサビのフレーズが印象的ですが、発想はどんなところから?
"桜井:これは鼻歌でやっていたら、割りと口から出まかせでパッと出てきましたね。特に意識して無いし、僕は英語が喋れないんで(笑)。
前作で“自分さがし”は自分の中ではなく、出会った人たちや周りにいる人たちと見つけるモノだと分かって。ただ“自分”が見つかったから良いっていう訳では無く、“自分”をどう育てていくかが大事なんじゃないかと思ったんです。出会った人たちと触れ合うことによって、今まで感じなかった“自分”が見えてきたりしますし。それは幸せと一緒で“作っていくモノ”なんだなというのが、このフレーズに凝縮されているんだと思います。
──「目を閉じて見えるモノ」を中心に考えて、収録曲はどのように?
桜井:「目を閉じて見えるモノ」以外の5曲は、この夏に10曲ぐらい作った中から選りすぐった楽曲です。「目を閉じて見えるモノ」を含めて最終的に6曲が揃った時に、僕たちの中で上京してからの2年半を走馬灯のように感じられる、東京に来てから現在までのイキサツという1つのストーリーが見えたので、曲順はスンナリ決まりましたね。1曲目で「光」を感じながら東京に出てきて、そして「家族写真」を見つめながら家族と離れて過ごした…最終的に「目を閉じて見えるモノ」の大切さを感じて、もう一度「スタートライン」に立って新たなスタートを切ろうっていう。最初からそういうコンセプトがあった訳では無くて、とにかく今感じているものを曲にしていったら、上京してからの2年半にシンクロしたというか、東京での生活が全部まとまったアルバムになりました。
──今回のアルバムの制作にあたって、特に意識したことはありますか?
伊藤:前作『自分さがしの終わり方』で、基本的にアコギとパーカッションがあって、そこに上モノを足していくっていうのが僕らの中でとてもシックリいったので、引き続き追求していこうっていうことに一番こだわりましたね。
桜井:コンセプトは変わらず、さらに良い、自分たちが前回で表現出来なかった音を出すために、それはマイクなのか、角度なのか、録り方なのかという1個1個は前作より、より一層こだわってやってますね。
──今作の印象としては、全体的にキーボードの音が耳に残りました。
桜井:バンドだったらキーボードが目立つように1つのパートとして作ると思うんですけど、このアルバムでは普通に考えるとキーボードの音数がスゴイ少ないと思うんです。ただ、ヘッドフォンで聴くと良く分かると思うんですけど、ギターのコードに添わす感じで角度を振ってるんで、ちょっと目立ってるんかなとは思います。少ない音でどれだけ印象付けられるかという意識があったので、インパクトを感じてもらえたのならスゴク嬉しいですね。
伊藤:アコギとパーカッションは音数が少ない分、聴くところにも空間があると思うんですよね。その空間に対して、ちょっとだけ音が入っているとスゴク印象が強かったりすると思うんです。だから、例えば「目を閉じて見えるモノ」は、僕らが叩いていないところ、弾いていないところ、歌っていないところに、キーボードだったり少し音が入るだけで、スパイスのような効果はあったかなと。それによって音も広がったのかなと思いますね。
桜井:とにかく二人が曲を作った瞬間に出来たアレンジを、さらに良くするためにはどうするかを考えました。前作のリリース時にバンド編成でライブをやったんですけど、その時もピアノはギターの音域と被るようにして、ワザと目立たないようにした曲が多かったと思うんです。それも、曲の中でギターの音域を倍増させるには、どうキーボードを使うのが良いかっていう考え方に徹した結果ですね。
──前回の取材では“自分さがし”が終わって、次は“自分磨き”になるのかもしれないとおっしゃっていましたが、『目を閉じて見えるモノ』の制作も含めて、この半年間はいかがでしたか?
桜井:ある程度の、やりたいサウンドとか、生き方とか、カケラバンク像みたいなのが前作ぐらいから見え出して、今の話と同じなんですけど、それを更に良くするにはどうするかっていうテーマでやっていますね。
伊藤:これからどう生きていくかみたいなところに焦点を絞れたという意味では、前作が区切りになって良かったと思うんです。でも、人生的な目標に向けて進んでいくって大変やなって(笑)。それでも進んで行こうという決意表明の時期というか、シッカリとした覚悟を持つ時期ではありましたね。
──ジャケット写真は『自分さがしの終わり方』に続き、写真家の須田誠さんとのコラボレートですが?
桜井:あらためて須田さんの写真集を見ていた時に、目を閉じている人物を撮った作品が多いことに気づいて。それで『目を閉じて見えるモノ』というタイトルにも合っているので、その中から3点を選んで打ち合わせをしたんです。僕は最終的にジャケットになった、この写真が良いなと思っていたんですけど、須田さんも予知してたのか、その写真をプリントしたTシャツを着て来られて。それで、この不思議な感覚を大事にしようと思って、ジャケットの写真を決めました。