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──まず最初に、3rdシングル「やさしさを考えてみる」がどんな作品かご自身から紹介いただけますか?
酒井:私に限らず特に女性は、日々過ごす中で落ち込んだりとか、どうしようもないモヤモヤ感がスゴク溜まってきたりする時期があると思うんです。そういう時のストレス発散というか、ストレスを吐き出して“本当の自分はこうあるべき”っていうものを見つけ出すような1曲だと思います。
重松:歌詞がストレートで、誰しもが悩むようなことに共感できるなって思いましたね。自分もよく悩むほうなので、そういう人には持って来いの曲だなって思います。
歌詞は良い意味で酒井由里絵を物語っていますね(笑)。話しかけるような感じの歌詞になっていて、歌詞というよりは“言葉”として伝わるというか。手紙のように気持ちが見える感じがしましたね。
──「やさしさを考えてみる」の曲作りはどのように?
酒井:今年の2月か3月のデビューして間もない頃に、仕事から結構夜遅く家に帰ってきたんですけど、なんかもうスゴク肌も荒れてて、部屋も散らかってて、さらに洗濯も溜まっていて。それで私がイライラしているものだから、家で飼っているウサギにもイライラがうつったのか、おしっこをかけられて。その日に至っては3回もかけられて(笑)。
“なんでこんなに時に余計イライラさせるんだろう! 何もかも嫌になった!!”ってなった時に、“あれっ?このフレーズは歌なんじゃないかな”と思って作り始めました。
いつも感情にまかせて、メロディも歌詞も一緒に出てくることが多いんです。冒頭のAメロは全部スルッと愚痴のままっていう感じですね。
──そういう出来事から、どうして「やさしさを考えてみる」となったのですか?
酒井:そんな感じで生まれた曲なので、ホントはサラッサラ“やさしさ”なんて考えるつもりも無かったんです(笑)。ただ、感情にまかせて書いていったら、自然と最後に“どうかあなたがいつも ずっと優しく包まれて”というフレーズが出て来て、こんな自分でも大事な人がいるんだなっていうことを強く思いました。
こんな自分だけど、やっぱり家族が一番大事です。例えば妹が大病を患ったりしたら、私は一秒も迷わず自分の全てを捧げられますし、その思いは何があっても絶対に変わらないと思います。自分がダメ人間だなって思っても、その思いだけは強く胸を張って言えますね。
それで、大事な人にどういうやり方で“やさしさ”を伝えればいいんだろうって考えていたら、なんか曲全体が「やさしさを考えてみる」ということだったんじゃないかなって思えて、それでタイトルに付けたんです。
──「やさしさを考えてみる」の歌い出しをアカペラにしたのは、どのような想いが?
酒井:いつもメロディーや歌詞が出て来る時は、必ず風景とか背景、どういう色をしてて、どういう場所で歌っててというイメージが浮かぶんです。でも「やさしさを考えてみる」が浮かんだ時は背景が真っ黒で何も無くて“どこで歌っているんだろう?”という感じでした。それを謙太に話してたら“それなら最初アカペラで入ってみたらいいんじゃない”となったのがキッカケ…だよね?
重松:最初パソコンで歌入れしてたんですけど、彼女の歌以外、僕は何の音も聴こえなかったんです、それを聴いた時に“アカペラってスゴク良いな”と思ったんです。歌い出しの“何もかも嫌になった”は特に。そのストレートな表現がそのまま伝わればと思って、遊び心で“最初アカペラにしてみたら”って言ったら、そのまま最後まで通った感じですね。
──イントロも無く“何もかも嫌になった”という歌詞はインパクトありますよね。初めて曲を聴いた時は“えー!何?”って思いました。
重松:ホントに歌詞は強烈ですよね。
酒井:「見てみてよ」、「思想電車」のシングル2枚は、自分が好きな“ほんわか”した雰囲気のモノを作っていました。皆にも曲の“ほんわかした空気とか良いよね”と言われて、もう嬉しくて嬉しくて。でも、ほんわかしていない自分を見た時に“私コレ嘘ついてるんじゃないか”と思ったら、ドンドン罪悪感が溜まってきて。そんな罪悪感が溜まるぐらいだったらドギツイやつをやってみようと。
──「やさしさを考えてみる」の歌詞は“私”、これまでの2枚のシングルでは“僕”“自分”という歌詞が多いように思ったのですが、“私”と“僕”の使い分けは意識されてますか?
酒井:北海道でバンドをしていた時はメンバー全員が男性だったので、“私”と言っちゃうと自分だけのことを言っているような感じになるのが嫌だなと思って“僕”と書いていたというのはあります。だから“僕”って言っている時はバンドのメンバーも含めて“僕ら”っていうつもりで書いてたり。また、今まで聴いてきた音楽の影響も多分あると思うんですけど、メロディと歌詞とが一緒に出て来る時に“僕”を何の迷いも無く書いてたっていうのもありますね。でも、ある時期から自分のリアルな感情を曲にするようになって、これは“私”でも別に良いんじゃないかなと思って。自分自身のことを歌う場合は“私”のほうが気持ちも入るし。
──「やさしさを考えてみる」までのシングル全曲、歌詞は日本語のみで書かれていますが、意識してですか?
酒井:曲と歌詞が一緒に出て来る時、ただ単に英語が喋れないっていうのはあるんですけど(笑)。最近は洋楽も聴きますけど、音楽を聴き始めた頃は歌詞が何を言っているのか分からないと、なかなか聴き入ることが出来なかったりしたこともあって…。
重松:当たり前ですけどリスナーの方は日本人ですし。日本語が一番自然なカタチで伝わるんじゃないのかなって。
──チュールさんの曲は歌詞と共にリスナーに届けたい。
酒井:リスナーの方の生活に溶け込むような音楽をやっていきたいなって、ずっと思ってます。チュールの音楽は感情から出る音というか、私たちの心の中の歌、“心の歌”なんだろうなって思います。それで私たちのホームページも“ココロノウタ”という名前にしています。
重松:“ココロノウタ”は僕たちの音楽にピッタリだよね。
僕も、生活感のある、そういう人に合う曲を作っていきたいなって思っています。例えば茶碗とかお皿を洗っている時にチュールの曲が流れると一つのカタチになるというか、雰囲気を醸し出すような。人に寄り添うような音楽を作っていきたいなと思ってるんです。そういう音楽が“心の歌”なのかもしれないですね。
──「やさしさを考えてみる」は、主人公の気持ちの流れ、感情の起伏を表しているようなアレンジが印象的ですが、音作りで意識されたことはありますか?
酒井:この曲は言葉がスゴク前にあって、歌い方にしても演奏にしても、曲の頭から最後までその1日の感情、そういう風に考えるまでの感情が流れていく感じだったら良いなって思ったんですよ。今回、いきものがかりさんや秦 基博さんを手掛けられたプロデューサーの島田昌典さんと一緒にお仕事をさせていただいたんですけど、島田さんもそういう風に考えてくださってて。“嫌になっちゃっていいじゃない”という感じで歌いたいって思うようなアレンジを聴いて、ちょっと開き直ったというか、こういう風にやってみようっていう発見もあったりして面白かったです。
──「やさしさを考えてみる」はミュージックビデオを制作されていますが、どんな風に作られたんですか?
酒井:今回も「見てみてよ」、「思想電車」の時と同じ監督さんに撮ってもらいました。前回まではミュージックビデオってどんな感じなんだろうとワクワクしながら案を聞いて、“あっ!いいですね”っていう感じだったんです。でも今回は、どんな風に見せていくか何度も話し合いを重ねました。言葉を前に出したいとか、これは部屋の中が良いとか、わざと散らかしてみたらどうかなとか、皆でアイデアを言い合って作りましたね。
──ミュージックビデオは一人暮らしの女性という設定ですが、冒頭に部屋干しの下着のカットがあったり、リアルというか“生々しい”かな…と。重松さんは、いかがでしたか?
酒井:謙太はワキ毛の処理しているところがドキッとしたって(笑)。
重松:個人的には、ちょっと衝撃的でしたね(笑)。
酒井:自分の映っているところじゃないのに唯一NGを出してたよね。でも人間らしさや、かわいらしさも欲しかったので、あのシーンは良いなと思って“絶対入れてください!”と言いました。一生懸命な人がちょっとドジったりとか、シュンとなっているところを見ると、なんか可愛いなって思うじゃないですか。そういう印象もあって良いんじゃないかなって思ったんです。エクササイズしているところも好きですね。
──「やさしさを考えてみる」を通してリスナーの皆さんに、どんな想いを伝えたいですか?
酒井:私は、今も何度も歌詞と同じような気持ちになる時期があるんですけど、そういう気持ちになる時って、何で自分てこんな人間なんだろうって思う時が一番辛くて。成長してないのかなとかって思うと、悲しくてたまらなくなったりするんです。でも多分それって皆同じで、そして皆がダメな人間な訳じゃなくて…。だから、皆が同じ気持ちなんだっていうこと、そういう時は思いっ切り毒を吐いてスッキリすればいいんだって思います。100%キレイな人間なんて絶対にいないと思うんですよ。そういうことを想いながらこの曲を聴いてスッキリしてもらえればいいなって思います。
重松:僕は結構ネガティブなほうなんですよね。でもこの曲を聴いて、やっぱり何か一つ大切なモノがあるなら胸張っていいんじゃないのかなって。そういう気持ちが一番強いと思うので、伝わって欲しいなって思います。