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──まず最初に、ニューアルバム『DOS ANGELES』は、どんな仕上がりになりましたか?
『DOS ANGELES』は、自分の根底にある“ロック”の部分を拡大した1枚ですね。ファーストアルバムは1曲1曲が違うジャンルみたいな感じで、井上ジョーの振り幅を表現した1枚だったんです。今回は自分の原点に戻る感じの内容です。
──『DOS ANGELES』というタイトルには、どのような想いが?
生まれ育った地元のロサンゼルスに掛かってるんですけど、ロサンゼルスにはスペイン語を話すヒスパニックの方が非常に多く住んでまして、今回、僕の2枚目のアルバムということで、スペイン語で“2”という意味を持っている“DOS”を、ロサンゼルスの“LOS”に掛けて『DOS ANGELES』っていう、“ダジャレだよ〜ん”って(笑)。
──(笑)“DOS”と“ANGELES”で意味があるのかなぁと。
二人のエンジェルっていうような?有ったり無かったり(笑)。
──『DOS ANGELES』の制作に当たって、特にこだわったポイントは、どんなところでしょうか?
特にこだわったのは、感情を入れるところですかね。
──感情を入れる?
要するに歌詞の内容に関係するんですけれども、1枚目だとなかなか踏み入れることが出来なかった領域がありまして、自分の個人的なことを赤裸々に歌うことに躊躇していた部分があったんですね。でも『DOS ANGELES』では、そこの扉を開いているんですよね。
最近ライブをさせていただくようになって気付いたことがスゴクいっぱいありまして。まず、音楽って人に伝えるものですから、リスナーの皆さんが歌詞といいますか“歌”に重点を置かれているじゃないですか。もしかしたら、それは日本では当たり前のことなのかもしれないんですけど、ロサンゼルスで洋楽を聴いて育ってきた僕にとってはスゴク衝撃で。向こうの人たちは曲を曲として丸ごと聴くんですね。要するにメロディとか楽器を聴いた後に“歌詞の内容は何だっけ?”ってなるんです。“このビートがイイね”、“乗れるね”、“いいメロディだね”っていうことが先に来て、歌詞の内容に共感できるか考える前に、ただメロディを口ずさんでたりするんですよ。今まで自分の曲の書き方もメロディありきというか、割とそういう傾向にありました。
英語では“ソング”って言いますけど、日本語だと“曲”と“歌”、どっちかと言うと“歌”っていうことのほうが多いじゃないですか。それだけ“歌”に集中して皆が聴いてるんだなっていうことに気付いてから、本当に“歌”を作ることに集中するようになりましたね。
それで、やっぱり感情をフルに伝えるには、自分が感情を出せる内容の歌詞じゃなければなって。今までキャッチーさを求めていた歌詞だったんですけども、そこから一つ違うステップに持っていって、自分のこと、自分が感じていることをもっと素直に歌おうって思ったことが大きいですね。
──アルバム全体を通して、前向きな曲が多い印象を受けましたが、そこは意識されました?
確かに、思いっきり何かに向かって突き進んで行く内容の曲が多いですね。「風のごとく」もそうですし、「GO★」も明日がやって来ないかもしれないみたいな内容ですけども全てポジティブに向かっているという…どん底からどうやってポジティブに持っていくかというか、そういう心境でスゴイ書いていたので。アルバム全体を通して、もう今日で人生が終わっても良いぐらいにホント思いっきり生きようっていうコンセプトはありますね。実際にそういう内容じゃない曲であったにしろ、その時の自分の心境が100パーセントそれなので、そういったニュアンスが一文字一文字に魂として封じ込められていますよね。それはどの曲をとってもそうです。
──一方で1曲目の壮大なナンバー「Can you hear me?」の歌詞で“Save me from this mess”、“Fear is taking hold of me”という最後のほうの2行が引っ掛かりました。「Can you hear me?」を書いた時は、どんなお気持ちだったのですか?
このアルバムを作るに当たって、実は“恐怖”の感情もあったんですよね。それはやっぱり自分が幸せだから恐怖を感じるんですけど。音楽という仕事をやらさせていただいて、自分が作った曲をCDという一生残るカタチで世に何かを伝えることを許されたというか、誰にでもやって来る訳ではないそのチャンス自体が運命とか奇跡の重なりなんだなって思ったりすればするほど、それってウッカリしてると一瞬で消えるし、どん底に落ちるしっていうことも意識し始めて。まだまだやりたいことはたくさんあるし、それまでに死ぬことは出来ないなとか考えたら、色んな恐怖がやって来て。でも、その恐怖からのポジティブなんですよね、だからこそ戦うっていう。それで“明日が無くても今日が満足出来るぐらいに思いっきり生きなきゃ損だよな”っていう結論が出たんですけども。だから『DOS ANGELES』には戦っている内容の曲が多いですね。
前向きに生きようっていう気持ちと恐怖を常に感じながら作ったアルバムなので、良い意味で、かなり心をすり減らしました。心をエネルギーにして、それと引き換えにこのアルバムを作った感じです。かなり心臓に負担の掛かった…寿命縮めて作ったぐらいのアルバムですね。それぐらいの情熱が歌詞の中というか、言葉、メロディにこもっています。
──2曲目はアニメ“よりぬき銀魂さん”のオープニングテーマ「風のごとく」の“-B.B.B. Ver.-”ですが、シングル・バージョンとの違いは、どんなところですか?
“B.B.B.”は“ブリブリベース”の略なんです。ベースがブリブリいっているという。ベースで色んなフレーズを弾いているので、そこを聴かせたいなっていう。
配信限定だった「LIGHTS」とシングルの「GO★」も、『DOS ANGELES』に収録するに当たってミックスを変えました。「LIGHTS」は歌、そしてドラムとギターの一部を録り直して配信バージョンよりダイナミックな感じにしました。「GO★」は余計なモノを省いたりしてサッパリさせましたけど、一番大きい違いは、歌詞カードに載ってない歌の部分がシングル・バージョンでは聞き取りにくかったので、そこをグイー!っと上げて聴こえるようにしたことです。是非、聴いて確かめて欲しいところですね。
──ご自身で全楽器を演奏されるそうですが、ちなみに一番好きな楽器は?
ドラムですね。自分の個人的な考え方なんですけど、ビートがあればやっていけるみたいな。骨組みだからこそ、究極それがあれば曲としてのグルーブというかフィーリングが分かるじゃないですか。もちろんギター1本でも成り立つんですけど、後ろのビートが違うだけで曲の雰囲気が全く変わりますから。ギターがどう弾こうとビートは覆せない、ある意味ドラムは曲のグルーブを支配できるんですよね。
──骨組みという意味からも、一番最初にレコーディングされるのもドラムですか?
一番最初は意外とギターだったりしますね。ドラムのビートは頭の中で鳴っているので多分忘れないんですけど、メロディは忘れちゃうから早く録っておかないとっていう。それにドラムからレコーディングを始めると、一人寂しくて全然楽しくないですよ(笑)。“おかず”もメロディをイメージしながらじゃないと出来ないから、やっぱりドラムは楽器が鳴ってるところで叩きたいです。
──「風のごとく」の曲作りは、どんな風に?特に意識した点は、どんなところですか?
“よりぬき銀魂さん”に使っていただくということで意識した点もありますけど、どっちかというと歌詞は自然に出てきたんですよね。“銀魂”は回によってコメディだったり、シリアスだったり、バトルだったりするんですけど、曲もサビとメロはノリが違ったり、まさにそういう内容に自然となりまして。歌詞の内容も“風のごとくまかせて”っていう中に喜怒哀楽みたいなものが全て詰まっていると思うんですよね。出だしはスゴク男らしいサムライ言葉で歌っていて、と思えば最後は英語も混ざったりして、色んな時代、色んな言葉がこうゴッチャに混ざっている歌詞なので、“銀魂”のイメージにピッタリだったと思います。
──“男ありけり”、“我の定”、“己”という歌詞の言葉遣いが印象的ですが、どのような意図が?
男らしさを表現したかったんです。男らしいといったらサムライ、武士の志だなということで使ったんですけども。多分そういう言葉を使うに至ったのも、僕が日本人でありながらアメリカ人であるからっていうところがあるんでしょうね。憧れの気持ちを持って日本を想像しながらアメリカで育ったので、日本で育った子たちとは、また違う感覚を持っていると思うんですよね。漫画から吸収できるものはたくさん吸収しましたし、それでチョイスする言葉とかも変わってくると思うんですよね。普通の邦楽とはまた違って何かこう昔な香りがしたり…古風なというんですかね。
でも一番大きいのは、“るろうに剣心”とかサムライ漫画からの影響だったりすると思うんですよ。そういう漫画に対しての憧れも関係して、そういう言葉を選んだんでしょうね。だから、日本とアメリカの間で育った井上ジョーの日本語の使い方って、純日本人が使わないような不思議な表現だったりもすると思うんですよ。そういうところも歌詞の聴きどころ、読みどころだと思うんですよね。
──「ふたりでひとり / The Journey」は、前半と後半2曲という捉え方で良いんですか?
2部に分かれている、2つで1セット、どちらの解釈でも可です。
「ふたりでひとり」は“どストレートなラブソング”を書きたいと思って、バラードというコンセプトから書き上げました。それで締切間近にギターを弾いてたら、なんか「The Journey」を思いついて。“あれっ?いけるよね”みたいな。不思議なことにギター弾いて歌い始めたら歌詞もスッと出てきて、それで「ふたりでひとり」のお尻に繋げて合体しちゃいましたね。「ふたりでひとり」はラブソングですけど、「The Journey」になると、とんでもなく大きなことを歌っていますよね。
──「キミゴコロ」もラブソングですが、歌詞の内容からモチーフは実体験ですか?
実体験では無いんですけど、好きな女の子を自分の彼女にしたい、そんな自分本位のワガママな恋愛の世界を描いてみました。好きなコにボーイフレンドが出来ちゃた時の“クッソー!”って気持ちあるじゃないですか。スゴク可愛らしいというか、レベルの浅い恋愛の究極形みたいな感じですけど、とてもセルフィッシュな恋ですね。