DEENが夏をテーマとしたリゾート・ミュージック・アルバム『クロール』をリリース。ザ・ビーチボーイズの1988年の全米No.1ヒット「kokomo」をサンプリングしたニュー・シングル「coconuts feat.kokomo」を始め、夏の海、夏の恋、夏休みの思い出からお盆のお墓参りまで、様々な夏のシーンを切り取った新曲に、「瞳そらさないで」「Blue eyes」「月光の渚」といった人気曲のセルフカヴァー、更に「夏の終りのハーモニー」のカヴァーも加えた、これぞ2010年の“ナツベスト”。
リリース目前のDEENを迎えてのロング・インタビュー。夏を彩る多彩なナンバーについて、1曲ずつじっくりお話を伺いました!
──ニュー・アルバム『クロール』は、“夏”をテーマとした“リゾート・ミュージック・アルバム”ですが?
池森秀一(以下、池森):去年初めて、夏のリゾート・ライヴというのをやりまして、DEENのそれまでの楽曲の中から“夏歌”ばかりを集めて演奏したのですが、通常のホールツアーとはまた異なる楽しさ、心地よさがあったんですよね。今年も、リゾート・ライヴを開催するのですが、是非これを恒例化して行きたいと思って、そこから、“夏”をテーマとした“リゾート・ミュージック・アルバム”というアイデアが生まれました。
──『クロール』というアルバム・タイトルは、どんなところから?
池森:リード曲の「coconuts feat. kokomo」(シングルとしても7/14にリリース)の歌詞の中の“自由形(クロール)”という言葉の響きがすごく印象に残っていて、“クロール”と言うと、水泳競技の速く泳ぐイメージが強かったんですけど、辞書で詳しく調べてみたら、“徐行する”とか“時が徐々に過ぎて行く”とか、そんな風にも使うという事を知って、それぞれのスピードで夏を過ごす・・・そんな意味合いにもなるんじゃないかと思ったんです。すぐに夏を連想させる単語だし、響きもすごくイイし、リゾート感のあるアルバム・タイトルになったと思います。
──楽曲作りは、どんな風に?
田川伸治(以下、田川):DEENの場合は、必ず曲が先ですね。今回は、夏をテーマとしたリゾート・ミュージック・アルバムというコンセプトがありましたから、ありとあらゆる夏のシーンをイメージしました。海とか照りつける太陽とか、それをいかに音にできるか。自分の中から出て来るメロディーに、夏色のテイストをいかに加える事ができるか。そこをすごく意識しましたね。
──メロディーを作る時点では、タイトルや歌詞のイメージはないんですよね?
田川:こういうイメージで曲を作ったから、こんな詞を書いてほしいとリクエストする事はないですね。サウンドを受け止めて貰って、そこから感じる世界観でストーリーを創造してもらう。夏を感じさせる音があって、そこに歌詞が乗る事で、様々な夏のイメージの中からシーンが絞り込まれて行く、そんな感じです。
──実に様々な夏のシーンが描かれているのですが、まずは、恋愛をテーマとしたナンバーからお聞きしていきたいと思います。オープニングの「coconuts feat.kokomo」は、ザ・ビーチボーイズの1988年の大ヒット曲「ココモ」(映画“カクテル”主題歌)のフレーズを取り入れたナンバーですが、このアイデアはどんなところから?
山根公路(以下、山根):著名な曲の一部分を取り入れて楽曲を作る・・・いわゆるサンプリングという手法をDEENでもやってみたいなと思ったのがキッカケです。日本語の曲だと言葉がダイレクトで、イメージが固定され過ぎてしまう気がしたので、洋楽がいいと思って。「ココモ」は、世代を超えて誰もが耳にしている曲だと思うし、僕自身が映画も観て、大好きな曲だったので、この曲に自分のオリジナルのメロディーと加えて1曲にしてみたと思ったんですよね。楽曲使用の許諾を得るのに、1ヶ月くらいかかってハラハラしたんですけど、ザ・ビーチボーイズと共演しているような気分で、すっごくうれしいですね。
──最初からサンバのイメージで?
山根:そうですね。夏の曲という事で、最初からサンバのイメージで作っていました。
──未来へと向かっていく爽快なラブソングとなりましたが、歌詞の発想はどんなところから?
池森:「ココモ」は、アルバ、バミューダ、バハマ、キーラーゴなど南米のリゾート地の名前が次々出て来るでしょう。ココモもジャマイカのリゾート地の名前だし。その流れで、“ココ”という響きを生かしたリゾート感のある言葉で始めたいなと思ったんです。それで色々考えているうちに“ココナツだ!”って。植物のココナツと“ココ夏”というダブル・ミーニングにもなるし。
──なるほど。今、ここは夏・・・という意味だったんですね。
池森:ココナツと言うのは、夏の甘い匂いを連想させるでしょう。まず、その言葉がド頭にハマったので、そこから、歌詞のストーリーを膨らませていったんです。
──女の子の愛称が“ココナツ”なのかな、なんていう想像もしていたんですよ。南の島で、日に焼けた健康的な女の子との出会いがあって、彼女のことを“ココナツ”と呼んでいる・・・ダーリンとかベイビーのような感じで使っているのかなって。
池森:なるほどねぇ〜、そういう解釈もアリだよね。なんかすごい説得力がある。ちょっと、それ、僕の引き出しに入れさせて貰いますね(笑)。
──「ハピネス」も南の島をイメージさせるラヴソングですが、「coconuts feat.kokomo」の太陽ギラギラの雰囲気からは一転、ビーチ・リゾートでくつろいでいるイメージですね。
田川:海のイメージも色々ありますけど、この曲は、ビーチでのんびり過ごしているという感じのテイストですよね。
──歌詞も、熱いラブソングと言うより、穏やかな雰囲気ですが。
池森:“夏のアイテム+そこに君がいる”という感じなんですよね。夏の景色の中に君がいて、それを眺めているだけで幸せと言うような・・・。
──男女の恋愛だけなく、小さい子供に向けてお父さんが歌っているような、そんなイメージも浮かんで来たんですけど。
池森:ええ〜っ!?
──♪まだ消えないロンリネス〜という一行から想像が膨らんだのですが、例えば、家族に何か不幸な事があって、殻に閉じこもるようになってしまった女の子を、お父さんが旅行に連れ出す。砂浜で無邪気に遊ぶ様子を見て良かったなと思う・・・そんなストーリー。
池森:へぇ〜、なるほどねぇ。確かにそんな情景にも当てはまる。全く思いがけない事だったけど、そんな風に色々なストーリーを連想して聴いて貰えるとしたら、もう、作り手としては最高ですね、ほんとに。
──「夏の雨」は、メロディーはポップなのに、切なく苦しいラヴソング。♪強くなろうとすれば気付く 君からもらった大きさと優しさに〜というフレーズが印象的だったのですが、終わった恋から、何かを貰ったという感じってありますか?
池森:うーん、ないとは言えないですよね。やっぱり、良かった事の方が多い恋もあるだろうし。
──出会えて良かったという気持ちには、なかなかなれないんじゃないかと思いますが。
池森:現実としては、なかなかそんな綺麗事では済まされないですよね。でも、具体的に、何かにありがとうと言う事じゃなくて、その人と過ごした事によって例えば恋愛観が変わったり、次へ向かう感情が生まれたり、自分の中で何らかの変化は生じていると思うんですよね。言葉では言えないけど、音に気持ちを委ねて、言えちゃう・・・それが歌なのかなとも思いますけど。
──『クロール』は本当に多彩な夏歌が入っていますね。サーフィンをテーマにした「Surf on the weekend」は、オヤジ世代の歌?1980年前後のサーファー・ブームだった頃、学生だった青年が、今でもサーフィンをやっている。そんなオヤジ像が浮かんできましたが。
池森:もう、ほんとにそのまんまの歌です(笑)。最近やたらと“オヤジ・サーファー”という言葉を目にするようになったんですけど、若い時にサーフィンをやっていた人だけでなく、中高年になってから始める人も多いんですって。ボードからウエットスーツまで全て揃えたら数十万円はかかるし、決して気軽にできるスポーツじゃないと思うんだけど、子供も手がかからなくなり、余裕も出てきて、若い頃に憧れていたサーフィンを新たな趣味として始めるオヤジ世代が増えていると聞いて、そういう主人公で夏の歌を書いてみたいなと思ったんです。
ウィークデーは背広にネクタイ。でも、週末になったら、海が待っているんだせって、かっこいいでしょ。それがあるから、頑張れる。そんなビジネスマンの姿をストーリーにしてみました。
|