ギターとパーカッションが斬新なグルーヴを奏でる京都出身の2人組ユニット“カケラバンク”。2008年、YAMAHA主催のアマチュア/インディーズバンドのコンテスト“Tokyo Band Summit 2008”にて1000組の中から見事にグランプリを獲得し、2009年2月にはアジア各国・地域の代表が一堂に集まってアジアNo.1を決定する“アジアンビート・グランドファイナル”にも出演! 優しい温もりに包まれるサウンドと歌詞が注目を集める実力派アコースティック・ユニットだ。
路上ライブを中心に活動を続ける彼らが、ニューアルバム『自分さがしの終わり方』をリリースする。今作が完成するまでの半年間、彼らは“自分たちが本当にやりたいことは何か?”を考え続けていたという。2008年のCDデビューからがむしゃらに突っ走り、ふと立ち止まったときに心に舞い降りた疑問…。だが、やがて路上ライブで起こった偶然の出来事から、彼らは新たな一歩を再び踏み出すことに! 桜井モトヤ(Vo & Gt)、伊藤ひろむ(Cho & Per)が辿り着いた“自分さがしの終わり方”とは?
──ニューアルバム『自分さがしの終わり方』は“体温が伝わる音楽”というか、一音一音とても温かい印象を受けました。音作りで特に意識されたことはありますか?
桜井:アコースティック・ギターとパーカッションを骨組みとして、サポートでベースとキーボード、ピアノで少し肉付けした感じです。前作の『この世にいないトリ』は打ち込みだったり、ボンゴとカホン、ジャンベとボンゴといったパーカッションの重ね録りとか、音源だけで出来ることに挑戦したんですけど、今回はライブで再現可能な範囲で音作りをしました。
伊藤:生の響き、空気感が一番だせたらいいなってアレンジから自分たちで考えてやったのが、前作と違うところですね。パーカッションを叩く一音一音も、マイクの形や位置を変えて“鳴り”を意識しました。同じ楽器でも一曲一曲若干音色が違っていたり、特に生楽器やと音の広がりがあるので体温というか、温度が出たんじゃないかなと。
アコースティック・ギターとパーカッションでバンドの真似をするのは、ちょっと違うなと思うんです。それやったら4人編成のバンドのほうが迫力出ると思いますしね。そうじゃないところに可能性を見出したいなって考えているので、今回のアルバムは、モトヤ君と僕の4本の腕で出来得る最大限の音作りが出来たんじゃないかなと思います。
──『自分さがしの終わり方』というタイトルは、どのような想いから付けたのですか?
桜井:京都から上京して1年間がむしゃらにやってきて、2年目にちょっと一息ついて、方向性なり音楽性なりに行き詰ったときに、自分たちが目指す先や本当に行きたいところはどこだったのか考えて、立ち止まったりしました。それでスタッフとミーティングしたり、“俺らは何がしたいんだ”って二人ともずっと内面と向き合ってたんです。そうしたら自然となのか、自分を見つめ続けた結果なのか分からないんですけど、去年の秋ぐらいから、最終的にはお客さんであり、一緒にやってるスタッフであり、周りの人たちを理解したい、他人と向き合いたいっていう気持ちに変わり始めたんです。そういう意識が徐々に外に出始めたときに“自分たちってなんや?”という答えが自分自身にあるんじゃなくて外にあるんだな、他人の中に“自分って何だろう”っていうヒントがあるのかなって、“自分さがし”が一つ終わったんですね。“自分さがし”は自分の中を見てても見つからずに、他人の中にあるんだなっていうのがテーマです。
伊藤:あらためて自分らを見つめた結果、モトヤ君から出てきた歌詞、曲だと思うんです。“自分さがしの終わり方”の一つの例が、この6曲に込められているのかなって思うので、このタイトルが非常にシックリきましたね。
──“自分さがし”から出た答えがこのアルバム?
桜井:2曲目の「引力」が去年の9月くらいに出来て、最新の「タイムマシーン」が今年2月くらいに出来たんですよね。一時期の気持ちとかじゃなく、この半年の2人のいろいろ変化があった中で出来た6曲なんで、一概にあのときのこの気持ちをこのアルバムにしましたって単純には言えないですけど、この半年で“自分さがし”が一段落したなっていう意味合いですね。
──ジャケット写真もお二人で決められたそうですが?
桜井:雑誌『月刊EXILE』、『DANCE EARTH』、『旅学』などで活躍されているフォトグラファー・須田誠さんの写真です。世界30カ国ぐらい旅をされてる方なんですけど、その旅の中で撮影された教会の壁画ですね。
須田さんとの出会いが「Change」という曲になったんです。この曲がアルバムのテーマでもあるのでジャケット写真をお願いしました。それで何点か写真を見せてもらったんですけど、中でもこの写真が一番印象が強かったので、ジャケットに使わせてもらえたらっていう話をしました。そうしたら、ジャケットの写真だけでなく、さらに“世の中には二つの鍵がある。ひとつはあなたが受け取る鍵。もうひとつは誰かに渡す鍵。そして大事なのはドアを開けること。”というフレーズもくださったんです。
──須田誠さんとは、どのようなキッカケでお知り合いに?
桜井:去年10月に新宿で路上ライブが終わった後、僕たちの歌を気に入ってくれた女性が、須田誠さんの“NO TRAVEL,NO Life”という写真集をくださったんです。最後に歌った「NoNoNo」という曲が“この星に住む60億が愛してるの一言で変わるんじゃないか”という歌詞だから、何か感じ取ってもらえるんじゃないかと思って、世界を旅されて出来た本をくださったんだと思うんですけど。それで家に帰って読み始めたんですが、夜も遅かったので印象的な写真と言葉を見て寝ようかなと思っていたんです。ところが、エピローグの冒頭にあった“この世の中に偶然など無い。全てが必然だ”っていう言葉がスゴク気になって、そこから一気に読み終えてしまいました。それでどうしても、この本との出会いと、本から感じた僕の想いを著者の須田誠さんに伝えたくなって、須田誠さんのホームページを探し、そこからメールを送りました。返事を期待してメールを送ったワケではないんですが、次の日に須田さんから返信が来たんです。僕のメールに感動してくれて、須田さんの本が女性に届いて、その女性が僕にくれて、本に感動した僕からメールが須田さんに届いたことが、“これは必然だったのかもしれないですね”、“この本はこのために作ったのかもしれません”と言ってくださって。
それから、僕が路上ライブをやってるんですって伝えたら、その週の路上ライブに突然来てくれて、そこで初めてお会いしました。お話しをしたらスゴク波長が合いましたね。ただ握手がすごく強いんですよ、骨が折れるんじゃないかと思うぐらい(笑)。その場で須田さんから、来月の個展で歌ってくれないかって頼まれて、須田さんの個展でも歌わせてもらいました。
その個展は、須田さんのストーリーをもとに写真を並べたみたいなんですが、最後に展示されていた写真が、ジャケットにさせていただいたコレやったんです。
伊藤:すごく印象的な写真ですし、自分を教えてもらうカギを人からもらうイメージとリンクしてるなって話したときに、実は僕たちがライブをさせてもらった個展の最後の写真だったと知りました。僕は覚えてなかったんですよ(笑)。その個展と今回のアルバムはコンセプトは違うんですけど、個展の最後の1枚と『自分さがしの終わり方』、最終的に行き着くところが一緒っていうのは、スゴイ偶然だと思いましたね。
──アルバムのテーマという曲「Change」は、須田さんとの出会いから、どのように作られたのですか?
桜井:須田さんから最初にもらったメールで、“いつかその想いを歌詞に出来たらいいね”って言われていたんです。僕も曲になったらいいなとはいう想いは漠然とあったんですけど、ただ出会いをそのまま曲にしたらシックリこないんですよ。何で路上ライブからこういう出会いが出来たのかとか、須田さんも同じ想いがあったから通じ合ったんじゃないか、そう考えると“出会い”って必然だなぁとか、いろんなことを考えるんです。その想いを消化して分解して吸収しないと、本当の深い想いは言葉にならないんで。だから「Change」が完成するまで3〜4ヶ月かかりましたね。
──「Change」の歌詞のテーマ、ストーリーの発送はどんなところから?
桜井:1番の歌詞は子供、2番が大人ってイメージで作ったんですよ。誰かの助けを待ってたり、こんなことに意味があるのかワケ分からんって思ったり、っていう部分がスゴイ子供なんですよね。でも2番は、それが必然だと分かる日がくるんじゃないかなって、必然だって決め付けるんじゃなくてただ思うだけで何かが変わるんだから、それでいいじゃないって。その態度ってスゴイ大人じゃないですか。そう考えることでスゴイ積極的になれたり、ポジティブになれるんであれば、一つの出会いでスゴイ変われたなっていう歌になりました。僕の中でこれは、ようやく大人になれた曲ですね。
伊藤:「Change」は、さっきお話しした僕らが行き詰ったときからの半年なり1年なりの過程がスゴイ出ているので、自分たちの等身大に一番近い気はします。
──「Change」はPVを制作されたそうですが?
伊藤:“歩かなきゃ景色は変わらない”という歌詞がメインテーマなので、ここを伝えるのにはどうしようってなって考えました。
桜井:歩くっていったら足じゃないですか。それで靴が歩きだしたらいいんじゃないかってなって、PVは靴が歩いてるんです。
伊藤:モトヤ君の履いている靴が突然抜け出して、街に行って靴屋さんで恋をしたりとか。単にかわいいだけやと意味ないしとか、挫折もあると思うので、靴で表現するにはどうしたらいいかとか考えましたね。
桜井:最後はライブで歌っているときに、僕のところに靴が戻ってくるんですよ。いろいろアイデアはあったんですけど、靴磨きのオジサンに出会ってピカピカにしてもらうとか、靴屋さんに置かれて買われてしまうとか、「ドナドナ」みたいになったり(笑)。広がり過ぎてストーリーが変わっていくんで、収拾つかなくなったりもしましたね。でも、そのように納得いくまでミーティングしたので、すごく面白い作品に仕上がったと思います。
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