アニメ“のだめカンタービレ フィナーレ”オープニング・テーマ「まなざし☆デイデリーム」が大きな話題を呼んでいる。歌っているのは、本作が2ndシングルとなる男性シンガーソングライターさかいゆう。
18歳の時、初めて聴いたブルースに衝撃を受け、衝動的にミュージシャンになる事を決意。地元・高知県で1年間働きづめで学費を貯め、上京。楽器に触れた事も、人前で歌った事もなかった青年が、本人いわく“何かに取り憑かれたように”始めた音楽。その情熱はすさまじく、2年後にはL.A.への音楽留学を実現。独学でピアノを習得、ソングライティングも身につけ、ヴォーカリストとしての才能を開花。19才にして初めて音楽に取り組んだ青年が、数年後には、ミュージシャンとして仕事を得るに至っていた。インディーズでの活動を経て、2009年10月、シングル「ストーリー」でメジャー・デビュー。
強烈な個性と揺るぎない自我。話を聞けば聞くほどに興味が尽きないニューカマー。注目のロングインタビュー!
──「まなざし☆デイドリーム」は、アニメ“のだめカンタービレ フィナーレ”のオープニング・テーマとしての書き下ろしですか?
元々、メロディーだけ完成していた曲があって、アニメ主題歌のお話をいただいてから、それに歌詞をつけたんですよね。だから、半分書き下ろしという事になるんですかね(笑)。
──アニメーションのオープニング映像と見事にマッチしていますね。
あれは、ミラクルでしたね。あの映像に合わせて書いたわけじゃないのに、あまりにピッタリだったので、ビックリしました。どんなオープニングになるのかは、事前に知らされていなくて、僕も第1回の放送で初めて観たんですけど、“バーン”といきなり始まるあのアレンジは、アニメ・サイドの方が映像に合わせて編集してくださったんでしょうけど、あまりに見事にハマっていて、奇跡を感じました。感動しましたね、鳥肌が立ちました。
──歌詞のテーマ、ストーリーはどんな所から?
“のだめカンタービレ”っぽいイメージの、チャーミングな歌詞にしたいなと思いましたね。
──“のだめカンタービレ”っぽいイメージとは?
不器用な感じですね、主人公の。
──「まなざし☆デイドリーム」の主人公は男の子ですが。
主人公の“のだめ”目線で先輩を見ている歌詞にするのもアリだと思うんですけど、監督さんには“特にアニメの世界に合わせなくてもいい。曲として独立したものに”と言っていただいていたので、主人公を男の子にして、自分の初恋をテーマに、不器用な感じを出したいと思ったんです。明るい楽曲ですけど、歌詞をよく読んでもらうと、主人公はけっこう暗くて、ちょっと気持ち悪いヤツなんですよ(笑)。不器用で好きな女の子に告白もできなくて、毎日、彼女の事を想って色々妄想してる。間奏では、このまま告白するのか!?という雰囲気に展開するんですけど、結局、言い出せないまま、堂々巡りで妄想を繰り返す。最後まで、その殻を破れず・・・みたいな(笑)。
──プロモーション・ビデオも拝見しましたが、コミカルなのにちょっと切なくて、楽曲の雰囲気がよく出てますよね。あのストーリー展開は、ご自身のイメージ?
クラシックの匂いと言うか、楽器の匂いがして、且つ、エンターテイメントで。そんなイメージだったんですけど、細かいところは監督さんのアイデアですね。情けない主人公がいて---それが僕なんですけど、ちょっと頑張ってみるんだけど、結局ダメで---自分で観てても、すっごく楽しい(笑)。
──ラスト・シーンは余韻を残しますね。彼女が歩み寄って来て、ハッピーエンドを予感させるような。
あの後、2人がうまく行ったか行かないか、結論を示さないままの“・・・”という感じを出したかったんですよね。結局、どうなったのかわからない感じがいいと思いますね、この曲は。
──メロディーが先に出来ていたとの事ですが、バッハの「主よ、人の望みの喜びよ」(教会カンタータ「心と口と行いと生きざまもて」の一節)を題材としたのは?
バッハがすごく好きで、バッハへのオマージュ・ソングを書きたいと何年も前から思っていたんですよね。それで、「主よ、人の望みの喜びよ」のフレーズを取り入れてメロディーを書いたんですけど。
──小さい頃から、クラシックがお好きだった?
いえいえ、全然。22〜23才の頃に1年間、L.A.に音楽留学していたのですが、バッハを初めて聴いたのはその頃です。すっごく癒されて・・・何なんでしょうね、あの流れるような感じは。それまでの僕は、すっごくリズムにこだわりがあって、バックビートが好きで、リズムをフックするって言うか・・・どういう音で詰まらせるかとか、そういう音表現に夢中だったので、リズムのない流れる音楽の心地良さというのが衝撃だったんですよね。しかも、ピアノの手の動きに色々なラインがあって、なのに、どれも無駄がなくて、すごく合理的で、ほんとに完璧だと思いました。流れるようなグルーヴと言うのは、バッハに限らず、バロック音楽の特長だと思うんですけど、僕はバッハが一番好きですね。
──1月には、イベント(のだめオーケストラアニメ編 最終楽章〜楽しい!オケ入門コンサート〜)で、「まなざし☆デイドリーム」をオーケストラと共演なさいましたが、いかがでしたか?
オーケストラって生音でしょう。マイクで拾わずに、生音でハコ(ホール)を響かす。あれも衝撃でしたね、スゴイなって。
──オーケストラは、スピーカーで音を出すわけではないですものね。
そうそう。ストリングスの生音でバランスをとっていると言うのはスゴイなって。更にオペラの場合だったら、歌も生でホール全体に響かせるわけでしょう。僕らは普段、マイクを使って歌うから、せいぜい顔とか胸あたりが響けば、けっこうな音量が出るんですけど、生音で聴かせるオペラと言うのは、もっともっと大きな部分が響いているんだろうと思うんです。
──そういう新たな発見と、衝撃があった?
ほんとにそうですね。生音のスゴさ。それを体感できた事は、大きな刺激になりましたね。
──c/wには、三井不動産レジデンシャルTV-CFソングとしてオンエア中の「ACROSS THE UNIVERSE」も収録されていますね。こちらは、ビートルズのカヴァーですが。
このCMは、「ACROSS THE UNIVERSE」を色々な方がカヴァーしているシリーズCMなので、僕が選曲したわけではないのですが、お話をいただいた時は、どう歌おうかってすっごく考えましたね。
──カヴァーに際しては、どんなテーマで?
この曲は、メロディーがすっごく好きで、だから、メロディーに特化したアレンジにしようと思ったんですよね。メロディーはほぼ原曲通りで、思い切って、キーを6つくらい上げて、ピアノでやったんですけど。聴く人が“いい曲だね”て言ってくれて、それで、ビートルズに辿り着いてくれたら、そんなうれしい事はないし、そういう自分なりのリスペクトを込めて歌いました。
──ビートルズの曲の中では、歌詞が難解と言うか、歌詞に意味がないとも評される曲ですが。
この曲の頃の彼らは、瞑想したり、ドラッグにハマっちゃったりしている時期で、その影響が色濃い曲とも言われていますけど、僕は、そういう背景を抜きにして、この詞の好きな所は、サビのフレーズなんですよね。♪Nothing's goona change my world〜という一文。それをとっても優しいメロディーで歌ってるんですよ、原曲では。“誰も僕の世界は変えられないんですよ”って、淡々とした静かに言っているような歌い方で、キュンと来ましたね。
──さかいさんは、♪Nothing's goona change my world〜のフレーズを、けっこう強く歌っていませんか?
僕は本来、一番言いたい所で声を落とした方がいいって思うタイプなんですけど、歌詞を何回も読んで、随分と考えて、あのフレーズを“誰も俺の世界は変えられない”という強いものとして解釈して、それで、歌い上げる歌い方になりました。 |