高校2年生だった2007年9月、シングル「恋、花火」でデビュー。現役高校生シンガーソングライターとして大注目を集めた奥村初音。昨年、高校を卒業。アーティスト・ネームを“初音”と改め、ラップをフィーチャーした「恋に出逢った夏」「アカイ糸」(初音 feat.KEN THE 390)をリリース。その音楽性を大きく拡げ、躍進の年となった。
2010年は、NHK土曜時代劇“咲くやこの花”主題歌「また逢いたい」でスタート。成海璃子が主演。百人一首を題材に、主人公の成長と恋模様を描いた青春時代劇によく似合う透明感あふれるバラード・ナンバー。主人公の心情と重なる歌詞のストーリーも秀逸。ご本人を迎えてのロングインタビュー。まずは、その歌詞のお話から・・・。
──「また逢いたい」は、NHK土曜時代劇“咲くやこの花”の主題歌として書きおろしとのことですが、楽曲作りはどんな所から発想していったのでしょう?
私は、実体験で感じた気持ちをテーマにして、そこからストーリーを作っていく事が多いのですが、このドラマ主題歌のお話をいただいた頃に、私がとっても尊敬する方から、偶然手紙をいただいたんです。その中で“自分らしく、自分のペースで、自分の行きたい道を進んでいってね”と書いてくださっていて、その一節がとても励みになったんですよね。ほっとしたと言うか、肩の力が抜けたと言うか。ありのまま、自分らしくていいんだって。そう気づいた事がテーマとなって、ストーリーが生まれてきたんです。
──ありのまま、自分らしくていいんだ…というのは、ドラマの主人公とも重なりますね。
そうなんですよね。ドラマは江戸時代が舞台で、主人公は、もともと人目を惹きやすい女の子で、それを嫌って、わざと地味に目立たないように生きていこうとしているんです。でも、百人一首が得意で、その大会で勝ち進んでいく事によって、どんどん注目の的になっていく。最初は注目される事を嫌い、大会でも遠慮したりしているんですけど、思いっきり生きていく事の大切さ、素晴らしさに気づいて、どんどん自分らしさを出していくという物語なんです。その主人公が感じたであろう気持ちに、私自身の実体験を重ねて歌詞を書きました。
──主人公はドラマの中で恋をしますが、「また逢いたい」はその恋心を描いたラヴソングのようにも受け取れますね。“君”というのは、恋人の事なのかと。
私が意図した“君”は、手紙をくださった私の尊敬する方の事で、この歌は、その方への返信でもあるんです。“自分らしくあればいい”と示してくださった方へ、ただ言葉で感謝の気持ちを書くだけではなくて、私らしく生きて、私らしく成長した姿を見てもらう事こそが恩返しだと思ったんですよね。成長した姿で“また逢いたい”と思ったんです。でも、聴く人それぞれの“君”がいるんだと思います。恋人かもしれないし、友達とか、遠くに離れている大切な人であったり、それぞれに色々な人の事を想って聴いてもらえたら、それもすごくうれしく思います。
──初音さん自身も、“自分らしさ”を見失う事があった?
そうですね。2007年にデビューして、それまで夢に見ていた場所に到達する事ができたんですけど、たくさん失敗もしたし、つまづく事も多くて、そういう経験を重ねるうちに、慎重になったと言うか、何かしようと思う時に躊躇したり、考えこんでしまったりする事が多くなったんですよね。そんな時に、“自分らしくあればいい”と気づかせて貰ったんです。それで、まずは思いっきりやってみよう、自分らしく思った事をまずやろうって、改めて、そう思えるようになったんです。
──ドラマの主人公が変化していく姿と重なりますね。
ほんとにそうですね。そういう気持ちはシンクロしたかなと思います。
──c/wの「うめみ坂」は、ガラリと雰囲気が変わって、ポップなナンバーになりましたね。
この曲は、ちょっと退屈な毎日を過ごしている女の子を主人公で、その子が、ライヴを観に行って、すっごくパワーを貰って元気になって、新しく踏み出して行こうとする、そんなストーリーなんですけど。
──大阪城公園の中の風景ですよね?
うめみ坂というのは、大阪城公園の中にあって、大阪城ホールへと続く坂なんです。長い下り坂なんですけど、右側に梅林がパーっと広がっていて、そこを越えると、青屋門。その門をくぐると大阪城ホールにたどり着くんです。
──初音さんのブログでも、うめみ坂は何度か登場していますね。
たくさん写真も載せているんですけど、梅が咲くのは2月に入ってからですね。ちょうどこのCDがリリースされる頃には、咲き始めているんじゃないかと思います。ブログの方は、これからもチェックしてくださいね。
──初音さんご自身も、この歌の主人公のような経験が?
私自身も、大阪城ホールには、Dreams Come Trueさんや綾香さんのライヴを観に行った事があります。すっごいパワーと感動を貰ったので、そういう経験は歌詞に投影されていますね。
──とってもパワフルなのに、青春期特有の焦燥感や不安感を感じさせる切ない部分もありますね。
アップテンポなんですけど、ちょっと切ない感じのメロディーも入れて書きました。今の私自身も歌詞に反映されているんだと思うんです。昨年、高校卒業を機に上京して、音楽一本の生活になって、ラップとのコラボーションとか初めての経験もして、新しく踏み出したいという強い気持ちも持っているんですけど、高校という所属する場所がなくなって、ちょっと不安を感じたりもして。そういう自分自身の心情も出ているのかもしれないですね。
──同世代の方はもちろん、中学生・高校生には大きな励みとなりますね。こんな風に考えてもいいんだって。
そうですね。私自身も“自分らしくあればいいんだ”って、人に気づかせて貰ったので、私の曲を聴いて、誰かがそんな風に感じてくれたら、それはすっごくうれしいですね。
──初音さんも、いつかは大阪城ホールで?
そうですね。大阪城ホールでライヴをやりたい。その夢は持っています。
──この歌のように、初音さんのライヴに行って、人生が変わったという人が将来現れるかもしれないですね。
うわぁ、そうですね。そんな事が起きたら、本当にうれしいです。 |