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オトナモード 高橋啓太 インタビュー昨年3月の“情熱大陸”で 大きな話題を呼んだ「雨色」を含む、 松本隆トリビュート・アルバム 『雨の色 風の色』リリース!
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松本隆トリビュート・アルバム
『雨の色 風の色』
CDタイトル名など

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アルバム
ビクターエンタテインメント
VICL-63517
発売:2010.01.20
\2,300(税込)
収 録 曲
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01.雨色 試聴
02.風の谷のナウシカ 試聴
03.風をあつめて 試聴
04.水中メガネ 試聴
05.てぃーんず ぶるーす 試聴
06.いつか晴れた日に 試聴
07.木綿のハンカチーフ 試聴
08.哀しみのボート 試聴
09.想い出の散歩道 試聴
10.雨色(アコースティックバージョン) 試聴
オトナモード Official Website

松本隆トリビュート・アルバム『雨の色 風の色』を完成させたオトナモード。作家生活40周年を迎えた作詞家・松本隆の作品の中から8曲をセレクト。オトナモードの解釈で“詞”をひも解き、沸いてきた“映像感”をサウンドで表現。オトナモードらしい爽快感と美しさを持ったアルバムに仕上がった。
松本隆の詞を敬愛してやまないヴォーカル・高橋啓太を迎えてのロング・インタビュー。夢が叶い、昨年、松本隆とのコラボレーション・シングル「雨色」が実現。その制作の模様は、“情熱大陸”(TBS系、2009年3月)でも取り上げられ、大きな話題を呼んだが、まずは今回のアルバム制作のキッカケともなった「雨色」の話から・・・。

あれこれ想像はしていましたけど、もうホントに思いも寄らない歌詞でした。次元外です。

──松本隆さんが「雨色」の歌詞を提供されるまでのドキュメンタリーは、昨年3月の“情熱大陸”(TBS系2009年3月15日)で放映され、多くの方の印象に残っていると思うのですが、あの時が松本さんとの初対面?
オトナモード 高橋啓太そうです。“情熱大陸”は僕も見たんですけど、舞い上がって、しどろもどろになっている自分がいました(笑)。でも、逆に言うと、カッコつけずに、正直な自分で対面できたなと思います。そういう意味では、僕らしかったんじゃないかなって(笑)。松本さんは、穏やかに自然体でそこにいらした、そういう印象です。その後、何度もお会いしているのですが、最初の印象と何も変わらず、いつも本当に自然体だなって感じます。
──高橋さんが作曲したメロディーに、松本さんが詞を乗せる。いわゆる“曲先”での制作となりましたが、メロディーはどんな風に渡されたのですか?
僕らとしては、松本さんにまずオトナモードを知っていただきたいと思ったんですね。だから、バンドとしてのサウンドを仕上げて、僕がメロディーをラララで歌った状態でお渡ししました。僕の声も含めて、オトナモードの音を聴いていただいて、そこから浮かぶ言葉を書いていただければと思ったんです。2曲お渡しして、バラード調の楽曲が「雨色」となって、もう1曲の明るく軽やかな楽曲が「ミルフィーユ」となりました(シングル「雨色」のc/w曲)。
──どんな歌詞になるんだろうって、色々想像されたりしました?
あれこれ想像はしていましたけど、もうホントに全く思いも寄らない歌詞でした。次元外です。発明だなって思いました。全く何もないところから、新しいものを生み出す。松本さんの作詞は発明だって。

“ぼく”が恋人の部屋から出て行った理由?それはたぶん大人になったからではないでしょうか。

──「雨色」は、現代の“青年像”をすごく良くとらえている歌詞だとも思うのですが。
ナイキのスニーカー履いて、スタバでコーヒー飲んで、中也の詩集を読んでみたりする。僕は今24歳なんですけど、青年期のある時期は、そんな風にちょっと格好つけてしまう時間が誰しもにあると思うんですよね。だけど、この主人公にしても、じゃあなんでナイキなの? なんでスタバなの? って聞かれたらきっと答えられないんだろうなって。この詞は、主人公の気持ちというのはほとんど書かれていないんですよね。だけど、感情表現がなくても、情景描写だけで、そういう青年期の人物像が見えてきますよね。
──恋人と暮らす部屋から出て行いく“ぼく”。“ぼく”は、なぜ出て行く事を選んだのでしょう。
それはたぶん大人になったからじゃないでしょうか。歌詞の中に♪自由はいつも孤独と紙一重だね・・・という一節があるんですけど、人はある時期まで、自分を守ってくれるテリトリーの中で自由に過ごしている。だけど、ある時、そこから出てもっと自由になりたいと思うようになる。孤独を求めると言うか・・・。誰かと一緒にいても、そこに感じる隙間の孤独感、相容れない居心地の悪さみたいなものってあると思うんですよね。

“中也の詩集”というのは、ものすごく重要な意味を持っていると思います。

──ナイキ、スタバなど、具体的なモノの名前がたくさん登場する歌詞ですが、まずは、♪中也の詩集借りてく…という歌い出しがとても印象的ですね。
オトナモード 高橋啓太その詩集は、主人公の“ぼく”が彼女に、“中也いいから読めよ”とか言って以前にあげたものだったんだけど、彼女は手つかずで本棚にずっと置きっぱなしにしてもの。その詩集を持って出たんだと、僕は解釈したんですよね。本棚から抜いていく中也の詩集というのは、そこからいなくなる“ぼく”の象徴なんだって。そのあとに♪ぼくのかたちにベッドに空白がある・・・というフレーズが出てくるんですけど、その“空白”と本棚にできた一冊分の隙間がつながっているような気がして。だから、“中也の詩集”というのは、この歌において、ものすごく重要な意味を持っていると思います。

──タバコというのも象徴的な気がします。彼女に言われて半年間禁煙してたのに、無意識にタバコを探している・・・封印していたものが突然出てくる。素の自分に戻ったというか・・・。
僕はタバコは吸わないんですけど、すっごくよくわかります。男がタバコを吸い始める時の動機って大抵はカッコつけだと思うんですよね。それが彼女が“イヤ”と言ったらやめてしまう。なのに、彼女と別れた途端、タバコを探している・・・自由と孤独は紙一重という一節を、より際立たせる描写だと思います。

ビニール傘が意味するものも、すごく大きい。「雨色」というのは、ビニール傘の曲だなとも思いますね。

──ビニール傘というのも、ポイントではないですか?
そうなんですよ。新品のナイキ履いて、自分ではオシャレしてるつもりなんだろうけど、持っているのはビニール傘。そのアンバランスさっていうのも、青年期を表していると思うし。それから、松本さんがおっしゃっていたんですけど、ビニール傘がこれだけ溢れている国は世界中でも日本だけなんだそうです。エコだエコだと言いながら、渋谷のスクランブル交差点を無数のビニール傘が行き交っている。すごくありきたりのものなんだけど、ビニール傘が象徴しているものも、すごく大きいと思うんです。僕は、ラストの♪ビニール傘 ステッキにして 雨色の電車を待つ・・・という描写がすごく好きなんですよね。彼女の中にも染まれずに、一人で雨色の電車を待って、次の何かへ向かって旅立って行く・・・「雨色」というのは、ビニール傘の曲だなとも思いますね。

──ヴォーカルに関してはいかがですか。松本さんからは“さらりと他人事みたいに歌えばいい”というアドバイスがあったとのことですが。
ホントにそうなんですよね。松本さんの言葉を歌うには、“さらりと他人事みたいに”が一番相応しいんだって、歌ってみて実感しました。それ以外のことをやろうとすると、美しさが損なわれるんですよね。感情表現が必要な歌詞というのもあると思うんですけど、松本さんの詞はそれを必要としない。例えば、冷たさを表現する、青さを表現するという時、それに相応しい歌い方、響き方を見つけて歌ったりするんですけど、松本さんの詞は、言葉そのものが温度感や湿度感を持っている。だから、僕はイタコのように、言葉の美しさだけを辿っていくだけ。それで、ちゃんと物語になっていく・・・そういう感覚でした。あれこれ考えて録音した最初のテイクは、ほんとに全然キレイじゃない。美しくない歌になっていました。

松本さんの言葉からイメージされる映像を、オトナモードとして、バンドで色づけしてみたかった。

──「雨色」を経て、いよいよ松本隆トリビュート・アルバム『雨の色 風の色』がリリースに。このアルバムを作りたいと思ったのは、どんなところから?

「雨色」を書いていただいた事で、改めて、松本さんの言葉の魅力にとりつかれてしまっんです。それで、もっともっと、松本さんの詞を歌ってみたいと強く思うようになって、昨年8〜9月に、松本さんの楽曲オンリーの弾き語りツアーを行ったんです。そのソロ・ツアーを通して、松本さんの言葉からイメージされる映像を、オトナモードとして、バンドで色づけしてみたいという気持ちが強くなっていったんです。

──実際に、1枚のアルバムとして作品となったわけですが、いかがですか。
カヴァー作品でありながら、すっごくオトナモードらしいアルバムになったと思います。本当に自信作と言えます。それぞれの楽曲をいかにオトナモードとして表現していくか。作詞は全て松本さんですが、様々な作曲家の方が書いたメロディー。時代も1970年代から2000年代までと幅広く、そうした楽曲を手がける事で、改めて“オトナモードらしさ”とは何かを見つけていく良い機会ともなりました。何十年前の曲でも、初めて聴く人には、それは“新曲”。僕らの世代が知らないいい歌はまだまだたくさんあって、それを新たな表現で歌い継いでいく。とっても素敵な事だし、意義のある事だと思いました。

アルバム・タイトルは『雨の色 風の色』。目に見えない色を追い求めるのがテーマなんですよね。

──選曲は、どのように?
僕とディレクターで選曲したんですけど、女性の歌でも、アイドル・ソングでも、そういう点は全て更地にして、純粋に楽曲だけを見て、オトナモードらしく新しい解釈ができるか、そういう視点で選んでいきました。だから、すっごくいい曲なのに、泣く泣く諦めた曲もたくさんあります。

──オトナモードとしての音づくりという点では?
普段と変わらないやり方で進めました。オリジナル曲の制作の時と同じで、まず僕が弾き語りで歌ってメンバーに聴いてもらって、サウンドのイメージを伝えて、音を出していく。だから、原曲のイメージをひっぱってしまうというのは一切なかったですね。1曲1曲がオトナモードとしての新曲という感じでした。

──アルバム・タイトルの『雨の色 風の色』は、どんなところから?
雨や風を感じる曲が多い、というのもありますが、目に見えない色を追い求めるのがテーマなんですよね。オトナモードは、様々な色や映像を音楽で表現していきたいと思っていますし、それを言葉で表現する松本さんがいて、このアルバムのテーマは、目に見えないものを表現していくっていう意味合いが強かったので、アルバム・タイトルにしたんですけど。実際に雨に色があるか、風に色があるかと言ったら、それを決めるのは心ですよね。

オトナモード 高橋啓太
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January 20, 2010
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