中孝介が、配信限定シングル「愛しき人へ」をリリース。“NTT東日本 DENPO”CMソングとして、10月下旬からオンエア中。結婚式直前の新郎から新婦への想いを綴った優しく美しいバラードで、早くも“ウエディング・ソング”の新定番として、注目を集めている。
シマ唄の唄者としても知られる中孝介。独特のこぶし回しが持ち味だが、敢えて、こぶしを抑えた唱法で臨んだという「愛しき人へ」。ウエディング・ソングが生まれた背景から、抑えたこぶしのワケ、更には、シマ唄との出会い、故郷・奄美に対する想いまで、たっぷり聞かせていただきました。
──新曲「愛しき人へ」は“NTT東日本 DENPO”CMソング。電報のCMソングで、ウエディング・ソングという発想は、どんな所から?
“電報”と聞いて、真っ先に思い浮かんだのが祝電だったんですよね。最近、僕の周囲では結婚する友人がすごく多くて。僕は今29歳なので、年齢的にそういう時期なのかも知れないんですけど。でも、なかなか結婚式には出席できないんですよね。そういう時に、僕は必ず祝電を打っていて。今は、ケータイで簡単にメッセージが送れるし、それで済ます事もできてしまうけど、大切な人の結婚式には、やっぱり、ちゃんと準備して、祝電を送りたいんですよね。だから、そういう想いをウエディング・ソングにして、届けられたらなって思ったんです。
──ピアノとストリングスの静かなサウンドから始まって、途中から微かにリズムが入り、少しずつ音数が増えて、次第に荘厳な雰囲気になっていく。まさに結婚式にピッタリな、清らかで美しいラヴソングになりましたね。
サウンドは、次第に高揚していくんですけど、歌は逆に、そんなに壮大感を出さずに、とにかく、優しく優しくという事を心がけながら歌いました。結婚式のキラキラ感・・・花嫁さんが綺麗なドレスを着て、新郎がタキシードを着て、幸せいっぱいな顔で歩いてくる。まさにそんな感じの曲に仕上がったと思います。
──ヴォーカリストとして、歌詞への理解は、どんな風に?
僕は、歌詞を貰ったら、必ず最初に音読するんです。詩の朗読者のように、感情を入れて、声に出して読んでみるんです。それで、このフレーズはもっと強く読んだ方がいいとか、ここは静かに表現すべきだとか、朗読の感触を歌に置き換えていきます。
──では、「愛しき人へ」の歌詞は、まず朗読してみて、どんな事を?
強く激しい部分が全くない、どこまでも優しい、とってもシンプルな詞で、シンプルだからこそ、その優しさを表現するのは、すごく難しいなと思いました。言葉の押し引きという点では、引く部分が多かったですね。
──そういう意味では、こぶしも抑え気味に感じましたが・・・。
こぶしをどこに入れるかは、1曲ごとにものすごく細かく試していくんですよ、デモの段階から。やはり、曲によって、こぶしが合う、合わないがあるんですね。それは、自分の中の感性の判断なんですけど。「愛しき人へ」の場合は、すごくシンプルで、優しく相手の幸せを願うという詞なので、こぶしをまわす回数をすごく少なくしているんです。いつもなら、僕の歌は、もっともっと、こぶしの数が多いんですよね。それを、あえて抑えた。こぶしが回ると、言葉が聴き取りにくくなったりする事もあるんです。この曲は、優しく“言葉を伝える歌”だから、こぶしの使い方・・・抑え方に特に気を遣いましたね。それによって、とても想いが伝わる歌になったのではないかと思います。
──新郎から新婦への想いを綴った歌詞ですが、♪支えながら生きて、支えられて生きて・・・というフレーズ。何度聴いても、ここで感極まっちゃうんですよ。
ほんと、そうですね。支えながら、支えられてというのは、それはもう、夫婦、恋人同士だけじゃなくて、ほんとに色んな事に置き換えられますよね。家族、友達もそうだし、人によっては、それがモノの場合もあるだろうし・・・これを見てるとすごく癒されるとか、自分の支えになっている思い出の品とか・・・僕の場合は、奄美の美しい自然だとか、人との温かい交流だとか、そういう面でも、支え、支えられていると思うし。
──支えてもらってありがとう・・・という表現は少なくないと思うのですが、自分の方から“支えている”という歌詞って、なかなかないですよね。“あなたを支えている”と相手に言えるのは、その人に愛されている確信があるからこそ言えることではないかと思うのですが。
ほんとにそうですね。愛されている、支えられていると思うから、その人と一緒にいるわけで。お互いがそれを感じ合っている。すごく素敵な事だし、大事な事ですよね。それは、夫婦とか恋人だけじゃなくて、人と人の繋がり全てに言えることですよね。
──♪ずっと、ありがとう ♪いつも、ありがとう・・・という言葉も、とても平易ですけど、胸に響きますね。
そうなんですよね。ずっと一緒にいると、そこにいる事が当たり前になってしまって・・・家族もそうですけど、離れていると気にかかったりするんだけど、近くにいると、過剰に気にかけてくれる親とかに反発したり。そうは言いながら、心の奥底では感謝してる。ずっと一緒にいても、この人がいるから、自分が生きているんだっていう事を認識しているかどうか。それって、すごく大事な事で、そういう当たり前の事を再認識させてくれる詞ですよね。
──考えてみたら、「愛してる」ではなく「ずっとありがとう」「いつもありがとう」という言葉が出るというのは、恋人から家族へと2人の関係が変わった証でもあるような・・・。
あ〜、確かにそうかもしれないですね。“ありがとう”というのは、一緒に歩み続けて行くと、ついつい照れ臭くて言えなくなってくる言葉だと思うんですけど、相手がいてこその自分だという気持ちを忘れずにいよう・・・そんな想いがこもっていると思うんですよ。
──とてもシンプルな歌詞ですけど、そうやって一語一語の背景まで感じてくると、どんどん深いものになっていきますね。中さんご自身が、グっと来たフレーズはありますか?
♪言葉の花束 君に贈るよ・・・という部分ですね。こんな事、照れ臭くて中々言えないですけど、こういう事が言えたら素敵だなって思いますね。
──新郎から新婦へだけでなく、結婚する子供から親へ、逆に親から子への想いにも重なりますよね。結婚式の花束贈呈シーンにもピッタリじゃないですか。想像するだけで泣けてきちゃいますが・・・。
僕もデビュー前はよく結婚披露宴に呼ばれる事が多かったんですよ。全く知らない方の披露宴でお祝いの唄を歌うわけなんですけど。そういう時、披露宴の一部始終を見ているんですけど。最後に、新郎新婦が親御さんに花束贈呈して、新郎のお父さんが挨拶をなさるでしょう。あの場面になる度に、全く知らない方同士の結婚なんですけどね、必ず泣いちゃいますね。ほんと不思議なんですけどね。
──見ず知らずの方でも、幸せいっぱいの人を見ると、こちらまで感動しますよね。
そうなんですよね。
──「愛しき人へ」は、きっとこれから、日本中の結婚式で流れたり、歌われたりしていくと思うのですが、そういう事を思うといかがですか?
すっごく光栄ですね。僕の曲が、色々な人の祝福の場面に流れるというのは、本当に光栄に思います。
──歌詞の中に、♪遠い遠い未来 という表現がありますが、長年連れ添ったご夫婦は、既にこの“遠い未来”にいるわけですよね。そういうご夫婦が聴いても、感動的なナンバーだと思うのですが。
そうですよね。これから結婚する方達だけでなく、結婚生活何十年というご夫婦がこの曲を受け取ってくれて、結婚したばかりの若かりし頃を思い出してくれるっていうのも、すっごくうれしいですね。
──例えば、お子さんがご両親の結婚記念日のお祝いに贈る曲としても良いと思うのですが。
あ〜、それも素敵ですね。ほんとにそういう場面にもピッタリだと思います。
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