かつての恋人が“合鍵”を返しに来て、その彼女を駅まで送っていく数分間。いま、何か言えば、何かが変わるかもしれないのに、結局、何も言い出せない僕。何かを言ってくれる事を本当は待っていたのかもしれない彼女。
カラーボトルの6thシングル「合鍵」は、伝えたいのに、伝えられなかった想いをテーマにした極泣ソング!「グッバイ・ボーイ」「サヨナラ」に続く“別れうた”第3弾としても注目を集めている。
各段にドラマチックになった歌詞。その歌世界を見事に表現したバンド・サウンド。一皮むけた感のあるカラーボトルだが、こうした大きな変化は一体どこから?ヴォーカル竹森マサユキにインタビュー!
──6thシングル「合鍵」がリリースとなりました。まずは、どんな手応えですか?
竹森:また新しいカラーボトルをお見せできたんじゃないかと思っています。
──新しいカラーボトルと言うと、何か大きな変化がありましたか?
竹森:今年の2月に本格的に上京したんですけど、制作方法がものすごく変わりましたね。仙台にいた時は、ディレクターやプロデューサーとやり取りしながら作るという事ができなかったけど、今は、朝までに歌詞が上がったら、その日のうちにディレクターと会って、次のステップに進める。そういうフットワークの良さが生まれたので、それが存分に活かされてきていると思います。
──「合鍵」は、別れた彼女が、鍵を返しに来るところから始まるストーリーですが、“鍵”というテーマは、どんなところから?
竹森:♪二人並んで歩けば まだまだまだまだ・・・と“まだ”を4回連呼するところがものすごく印象的で、ここから膨らませていったんですよね。僕が一人籠って、ずーっと考えていて。“別れ”とか“涙”とか大きなテーマは決まっていたので、そういう状況を色々思い描いているうちに浮かんできたのが、僕自身が彼女に合鍵を返しに行った時の事。彼女の所に鍵を返しに行って、彼女が僕の荷物を渡してくれて、“じゃあね”って言う瞬間にめちゃくちゃ泣かれてしまった・・・その情景がワ〜と出てきたんです。同時に、僕たちが住んでいた仙台の風景とか、そういうものも出てきて。僕たちは、今年2月に仙台から東京に拠点を移したんですけど、その時、リアル・タイムで「サヨナラ」という曲を出した。それから何か月か経って、今感じている“出会いと別れ”を形にしたいなという想いもリンクして、ばーっと物語が出来てきたんです。 書き始めたら、ものすごく長い物語になってしまって、本当は15分くらい歌い続けたいんですけどね(笑)。その中から、彼女を駅まで送っていく数分間の部分を切り取ったんです。自分の気持ちを伝えたいんだけど伝えられない。このまま終わらせたくない、でも終わったちゃう・・・という葛藤をその数分間の描写に絞り込んでいきました。
──鍵を返しに来た“別れた彼女”にわざわざ“送っていく”と言う。・・・ちょっと思わせぶりというか、ズルい男だなって。
竹森:確かに、男のズルさもありますね。人との付き合い方って色々あるけど、浅い付き合いというか、自分の本当の心の内を表さずに、表面的でちょっと付き合って、すぐ別れちゃいましたみたいなのが多くなっているように感じるんですね、最近。本当に愛するってどういう事なんだろうかとか、サヨナラする事の意味って何なんだろうかとか、今回、すごく考えたんですよね。別れてもまだ想いが残ってる・・・伝えていない事が残っているというのは、実はすごく勝手でワガママな事なんじゃないかって。
──主人公が“伝えられなかった事、伝えたかった事”って、一体どんな事だったんでしょうね?
竹森:別れて悲しくて、もう一回やり直したいって思ったりもしてるんだけど、だけど、一度は自分で捨ててるんじゃんって。それも自分でわかってるから、言い出せないとか。でも、言った方がいいのか、言わない方がいいのか、そこで悩んでる姿。答えは別に提示してはいないんだけど・・・。もしかしたら、“今までありがとう”という決別の言葉なのかもしれないし、あるいは“最後にもう一回だけキスしよう”とか言っちゃうバカな男なのかもしれないし・・・主人公が何を言いたかったのかは、聴く人に任せちゃおうって。そこは、色々に想像してもらったらいいと思います。
──彼女の視点で見れば、もう1つ別のストーリーが裏側にあるわけですよね。女の子は、ある程度の年齢になると“結論を出してほしい”と思わざるを得ないし、好きなだけじゃ済まなくなる時期があるから、みんな、そんな自分の経験と重ねて、この曲で泣いてしまうんだと思うんです。
竹森:なるほどねぇ。僕は、男性目線でしか歌を書けないのがもどかしかったりするんですけど、女性から見て、どう感じるのかは是非聞いてみたいですね。
──これまでの曲調やサウンドと比べて、随分異なる印象を持ったのですが、今回の楽曲作りはどんな風に?
竹森:これまでは、僕が弾き語りでデモを作って、メンバーに聴いてもらって、みんなで細かく調整していくという作り方が多かったんですけど、今回は、soundbreakers(FUNKY MONKEY BABYS等のアレンジで知られる)の大野裕一さんと一緒にゼロから曲を作っていきました。そういう作り方も初めてだったし、大野さんはHIPHOP畑の人だから、これまで僕らが持ち得なかった視点というのがあって、ものすごく新鮮だったし、多くの事を学ばせてもらいました。
──歌詞も、各段にドラマチックになりましたね。
竹森:この曲が完成するまでに作ったデモは、20〜30作に及ぶんですけど、例えば、2人が屋上にいるっていう設定はどうだろうとか、花火が見える景色はどうだろうとか、色々なテーマやシーンが候補になって、じゃ、それでやってみようって。で、歌ってみたら、僕の声には合わなかったとか。そういう試行錯誤を繰り返して作りあげていった曲なんですけど。ショート・ストーリーとして歌を作っていくという、1つのスタイルを見つけた感はありますね。
──アレンジも、最初はピアノだけで、そこにドラムが乗って、バンド・サウンドに展開して、更に弦楽器が重なってきて・・・と、非常に繊細な音づくりですよね。
竹森:主人公の感情というのは、ヴォーカルが表すものだと思うんですけど、そこにピアノの旋律を絡めて、更にそれを包み込むようなストリングスを使いたいと思ったんですよね。これも、もう、プロデューサーと話し合いながら進めていったんですけど。ギターは、この曲の中で、どういう風に存在するのかって言ったら、物語を繋ぐ一本の線なんですよね。切れそうで切れない、僕と彼女の関係。僕と彼女の間にある緊張感。そして、ベースやドラムは、想いが高まっていく時の感情、胸が苦しくなる時の疼きだったりを表すものにしたい。1曲の中のどこを切り取ったとしても、常に緊張感のある音にしよう・・・そういうイメージで作っていきました。
──ピアノが、時々ヴォーカルのメロディー・・・主旋律をたどるでしょう。それが、心の中の表と裏のように聴こえたり。
竹森:そうですね。イントロでも、ピアノがサビの♪まだまだまだまだ・・・のメロディーを鳴らしてるんですけど。前作の「サヨナラ」もピアノがメインだったんですけど、今回も、この情感を引き出すのはピアノだなって。これも大野さんと一緒に作る中で学んだ事ですけど、ピアノが与えるイマジネーションというか、恋愛模様への影響力というのはものすごく大きいなって改めて実感しました。
──ヴォーカル・スタイルも、これまでとは少し異なる印象なのですが。
竹森:僕の元々の癖は、後ろにたっぷりためる方なんですよね。でも、この主人公は、そういうタイプじゃなくて、逆に前のめりなヤツ、前ノリのヤツなんだろうと思ったんです。でも、前ノリと言っても、バンドのヴォーカルに例えるなら、楽器を引っ張っていくようなタイプではなく、常に勝手に孤独を感じてるみたいな。基本はワガママなヤツなんですよ。自分勝手なヤツなんです。俺はなんて悲しいんだって、失恋した人特有の周りが見えてない感じ。彼女と2人で歩いていても、自分だけ孤独ぶって、一人で前を歩いていっちゃいそうな。そういう主人公を歌で演じようと・・・。
──そういう役作りでレコーディングに?
竹森:歌う前までは、そういう役作りだったんですけどね。でも、結局、後半になったら、声のかすれ具合とか、泣きの部分だったりとかは、素が出ちゃいましたね(笑)。
──前半は抑え目に、後半から激情的になっていくのは、演出かと思っていましたが。
竹森:なっちゃったんですねぇ、やっぱり。自然と激しくなっていっちゃった(笑)。でも、結果的に“かすれたこの感じがいいよ”って言ってもらえたので、ほっとしたんですけど。 |