2000年3月23日、シングル「Close To Your Heart」でのデビューから丸9年。10年目の幕開けにニュー・アルバム『THANX』をリリースした愛内里菜。今ここに自分が立っているのは、たくさんの感謝に囲まれてきたから。そのすべてに“ありがとう”を伝えたいと思い、その気持ちを詞に託したと言う『THANX』。恋人・家族・友達・仲間への感謝はもちろん、葛藤する自分自身や悲しい思い出にすら“ありがとう”の言葉を贈る12編の物語。世代、性別を超えて、誰もが自分の“ありがとうの物語”を見つけられるはず。
──3月23日でデビュー9周年を迎え、いよいよ10年目に突入ですね。10年で一区切りというような意識はありますか?
愛内:目の前の事を1つ1つきちんと大事にこなしていく。そうする事によって、1つ1つの点が繋がって先へ先へと進んでいく。デビューした時からそういう考えでやって来たので、何かをゴールにするという目標を持った事がないんですよね。特に好奇心が強いせいかもしれないんですけど、いつでも常に新しい課題が目の前にあって。だから10周年も、それを1つのゴールにするんじゃなくて、10周年を迎えた時にはもう次の事が始められるように、今から走り出したいという気持ちで、今回このタイミングで『THANX』を作ったんです。
──丸9年を経て、ご自身の変化を感じる点は?
愛内:デビューの時から歌詞を書いてきたんですけど、歌詞ってある意味、日記のようなものなので、歌詞の変化が一番わかりやすいかなって思います。最初の頃は、歌詞とはこうあるべきみたいな先入観でカッコつけたり、自分の情けない部分を隠したりしてたんですけど、少しずつ、ありのままの自分を包み隠さず表現できるようになって、自分の弱い部分を晒す事で、その共感から誰かが前向きになってくれたらいいとか、そんな風にも思えるようになったし。やっぱり、色んな経験を通して自信も生まれたし、見えてきた物もあるし、そういう成長が歌詞にも反映されているのかなって思います。
──楽曲作りは、歌詞先行ですか?曲先行ですか?
愛内:デビューの時からほとんど全曲が曲先行です。エンドレスでずーっと曲を流しっぱなしにして、音から詞の世界観をイメージしていくんですけど。
──具体的には、音をどんな風に捉えていくのですか?
愛内:私はいつも、音から受ける“色合い”みたいなものを想像するんです。そのサウンドを“色”に置き換えるんですよね。赤っぽいとか、青っぽいとか、白のイメージだな、とか。それぞれ、その色が持っているエネルギーとかパワーみたいなものってあるでしょう。そこからイメージしていくと、世界観が作りやすいし、言葉選びも広がっていくんですよね。
──そう言えば、愛内さんのシングルのc/w曲は、タイトルに“色”を用いた曲がたくさんありますよね。
愛内:色に対する意識が強いのは、ずっと大阪住まいなので、その影響もあるのかもなんて思うんですけど。
──えっ、大阪とどんな関係が?
愛内:大阪って、色が溢れてる街でしょう(笑)。建物も看板も派手やし、ウインドウ・ショッピングしてても、大阪と東京では、同じブランドの店でも置いてるものが全然違う。とにかく色彩豊かで派手なものが多い。だから、無意識のうちに色に刺激を受けてるのかなと思って(笑)。
──なるほど。それは斬新な見解ですね(笑)。
愛内:東京は、黒かグレーか紺みないなイメージで、ちょっと気分が沈んでしまうんですよね(笑)。
──色に加えて、花をモチーフにした歌詞も多いですよね。
愛内:色から花への連想となっていく事も多いんですよね。そこから、香りだったりとか、季節、風景へと広がっていって、物語の舞台が見えてきたりするんです。
──歌詞を書く時は手書きですか?
愛内:めっちゃ手書きです。私、機械に弱くて、パソコンはあんまり使えないんです(笑)。
──専用の歌詞ノートとか?
愛内:ノートなんか使った事ないです。紙です、紙!机の横にコピー用紙をドサっと置いて、1枚とって、色々書いて、線引いて消したり、ココはイキって○つけたり、アカンかったらポイって捨てて…。出来上がったら清書して提出〜!みたいな(笑)。
──ニュー・アルバム『THANX』は、実に様々な“ありがとう”が詰まったアルバムですが…。
愛内:10周年を迎えるにあたって、この1年を大事にしたいという思いが強くて、そう考えた時に、今ここに私がいるのは、たくさんの感謝に囲まれてきたからだと改めて感じたんですね。その全てに“ありがとう”を伝えたいと素直に思って、その1つ1つを歌詞にしていきました。
──“ありがとう”というテーマがある場合、曲先行で詞を書いていくのは難しいのではないですか?
愛内:2通りのアプローチがありましたね。具体的にこんな“ありがとう”を歌いたいと歌詞のイメージが出来ているものは、その雰囲気にあった曲を選んで作っていって、逆に、曲を聴いてその音に触発されて、このサウンドだったら、こんな“ありがとう”も歌えるんじゃないかって書いていった曲もあります。
──いきなり、1曲目の「THANX」から、ハードでまくし立てるようなナンバーが来たので、ちょっと驚きました。もっとしんみりしたムードを想像していたのですが。
愛内:10年目のありがとうを言って、ほっこりするんじゃなくて、次に向かって進んでいく、これからも頑張っていくという意気込みで臨んだアルバムだったので、オープニングは、その気持ちを表したパワーのある曲で始めたかったんですよね。だから、こういう勢いのある、巻き上げるようなサウンドを選んだんですけど。
──♪家族の支え 仲間の絆 恋人の温もり 友の優しさ・・・というフレーズがありますが、これから、このアルバムで色んな“ありがとう”を歌うよって告げているプロローグのような1曲ですよね。
愛内:私は、いつも、アルバムのオープニングとエンディング曲の詞は、全曲のレコーディングを終えてから書くんです。今回は、1曲1曲の“ありがとう”を作っていくうちに、“ありがとう”って思う事こそ本当に全ての始まりなんだなって実感して、その想いをオープニングで歌っています。だからこの曲は、まさにアルバムのプロローグですね。 |