西田昌史(EARTHSHAKER)、寺田恵子(SHOW-YA)、二井原実(LOUDNESS)。日本を代表する3大ハードロックバンドのヴォーカリストが集結、J-ROCKの名曲をカヴァーするという夢のようなユニット。その名も“西寺実”。
ロング・インタビュー第2弾では、注目のデビュー・アルバム『ふぞろいのロックたち其之壱』を、ご本人達が徹底解説。選曲ポイントや原曲にまつわる思い出、レコーディング時のエピソードなど、またまた、笑いの絶えない楽しいお話が続きます。
──収録曲は、どのように決めていったのですか?
二井原:何をやろうかっていうのは、アルバムの制作が決まってからですよ。
寺田:“私達の先輩のロック”を選ぼうというルールで。
二井原:でも、僕らより先輩と言うと、ロックの人って少ないんですよね。
西田:僕らの上の世代には、ハードロックバンドはなかったしね。
寺田:そうね。その上になるとグループサウンズになるんだけど、今回は、グループサウンズ以降にしようということで。メンバーが歌いたい曲を持ち寄ったり、プロデューサーやスタッフからの推薦曲もあって、その中から絞り込んでいったんですけど。
西田:「あゝ無情」は、僕のリクエスト。寺田に歌ってもらいたかった。みんな、聴きたいたでしょう、寺田のアン・ルイス。
寺田:私がメインで歌って、二人が途中から絡んでくるパターン。
西田:最初、俺がメインでっていう話も出たけど、この曲は、どうしても寺田に歌ってほしかった。
二井原:でも、あんなカッコして振付まで踊る事になるとは、夢にも思ってなかったですけどね(笑)。
──「あゝ無情」から「気絶するほど悩ましい」への流れは、花魁“アゲハ”とそれに翻弄される2人の男の物語として続いてますよね。特に、二井原さんと西田さんのツイン・ヴォーカルでのサビの部分は、男2人がそれぞれに想いをぶつけているようで…。
寺田:確かに、そんな解釈もできるよねぇ。この曲は、アコースティック・ライヴの時にも歌っていたから、今回も選んだんだけど。詞の世界が切なくてね、ずっと歌ってみたいなと思ってた曲ですね。
二井原:歌詞もいいし、大好きな曲ですよ。
西田:名曲だよね。
──オリジナルは77年のリリースですが、当時も聴いていましたか?
寺田:聴いてましたよ。中学生だった!
二井原:僕も聴いてましたよ。Charのデビュー・アルバム(『CHAR』)は衝撃やった。バンド始めた頃やったからね。歌も上手いし、ギターもうまいし。こんな人がおるんやと思ってビックリした。
西田:確かにCharの登場は衝撃的だったね。僕はよく観に行ってたよ、Charのライヴ。
──「ボヘミアン」は、こんなに狂おしい女心を歌っている歌だとは思っていなかったんですが、二井原さんのヴォーカルで、すごく女心が伝わってきました。
寺田:ロックの先輩で、女性といったら葛城ユキさんでしょう。それで「ボヘミアン」は是非やりたいと思って。絶対ニィヤンに歌ってもらいたいと思ったんだけど、男性が歌うことで逆に女心が伝わる、そういう事ってあるよねぇ。
二井原:詞は、飛鳥涼さんでしょう。男性が書いた詞だから、女々しさみたいなのはないよね。
寺田:女々しくはないけど、切ない。
二井原:メロディが立ってるよねぇ。
寺田:でも、レコーディングは笑った、笑った。
西田:ほんとに、笑ったわ。
──やはり、二井原さんが…?
寺田:そうなの。ミノルちゃんが、ブースに入った後もずーっと喋ってて、録音が始まっても喋り続けてて、あーだこーだ言ってるかと思ったら、いきなり、♪ボヘミア〜〜〜〜ンって(爆笑)。
西田:そうそう。こっちは笑い堪えるのに必死やったぞ(笑)。
──「私は泣いています」は、女性シンガーの曲ということで、寺田さんの選曲ですか?
寺田:そうですね。ロックの先輩というと、リリィさんもゼッタイ外せないですよね。大好きな曲でした。
二井原:僕も大好きでしたよ、リリィさん。いや、ここだけの話ですけどね、大学の時つき合ってた女の子がソックリだったんですよ、リリィさんに。
寺田:あっはははは。そういう理由かい(笑)。
二井原:しかも、ベッドの上ですよ(笑)。ベッドの上で女性が泣いてるって…これは、もう思春期のワタクシとしては、ビンビンやん。ええっマジですか〜って。
西田:あっはっはっ。そういう風に入りました?(笑)
──と言うことは、そうとう聴きこまれた?
二井原:よく聴いてましたよ。改めて、聴いてみるとね、ほんとに歌が上手い!自分の世界を持ってはるよね。
寺田:そうそう。だから、3人でやるからには、原曲を超えて全くの別物にしたいって思うじゃない。それで、今回は、私から始めて、メイン・ヴォーカルがどんどん変わっていくという趣向になったんだけど、西寺実ならではの曲になったと思いますね。
──原田真二さんの曲の中から、あえて「キャンディ」というのは意外な感じがしましたが…。
寺田:Charさんときたら、原田真二さんと世良公則さんでしょう、あの時代は。で、世良さんの曲は、以前にカヴァーした事があって、原田真二さんだけ歌った事がなかったから私が歌いたくて。最初はアコースティックということだったので「キャンディ」にしたんですけどね(笑)。
二井原:僕はね、洋楽ばっかり聴いてたから、当時の邦楽って実はあまり知らなかったりするんですよ。でも、この曲は、改めて聴いて、イギリスの匂いのするロックだと思いましたね。
西田:ほんとクオリティー高いよね。いい曲だよ。
二井原:クイーンのようなコード進行だし、メロディの切ない感じはビートルズを彷彿とさせるし。素晴らしい曲ですね。
寺田:私がメインですけど、この曲はハードな曲じゃないでしょう。だから、コーラスもハードなものは乗せられなくて。だから、コーラスがすっごく可愛いでしょう。
西田:♪ランランラン、だからね。
寺田:レコーディングの時は、ニィヤンもマーシーも見えないから、あとで、どんな顔して歌ってるのって聞いたら、二人して満面の笑みで♪ランランランって(笑)。
──あの♪ランランランは、ある意味、衝撃的でした。
西田:信じられんよねぇ。LOUDNESSとEATHSHAKERが2人揃って♪ランランランやで(笑)。
二井原:確かにね、アレンジができあがってきて、初めて聴いた時はぶったまげたけどね(笑)。でもね、俺、憧れやったんよ、♪ランランランっていうの(笑)。やってみたかったのよ、ずーっと。
西田:確かに、楽しかったなぁ(笑)。GSっぽくてね。ザ・タイガースっていう感じだったね。 |